2018.07
EUにおける著作権法改革の動向
2018年6月20日、欧州議会法務委員会は、2016年9月に欧州委員会により公表された著作権に関する指令案(デジタル単一市場における著作権指令)を承認した。
改正案は、オンライン・メディアにおけるコンテンツ消費の増加への対応が主な狙いで、例えば、グーグルのようなアグリゲーターによって公表されたニュースの一部やコンテンツをめぐって、権利者であるニュースの発行者は賠償を請求する権利を有するようになる。また、アップロードされたコンテンツの違法性に関するスクリーニングや遮断について、YouTubeのようなオンライン・プラットフォームに課される要件が増加する。この他、ニュースのアグリゲーターによるニュース記事の共有に関して、権利者へのライセンス料の支払いが行われていない記事の共有を制限するといった内容や、プラットフォームによる料金の支払いが行われていない著作物を遮断する権利などが盛り込まれている。
アップロードされたコンテンツに対するスクリーニングや遮断が表現の自由を脅かす恐れがあるという懸念について、法務委員会は著作権侵害に該当しない作品が不当に排除されない方策が導入する必要があると述べた。あわせて、作品が不当に排除された場合に再アップロードを要求できるような救済システムがオンライン・プラットフォームによって確立される必要があるとも述べた。
ウィキペディアのような非営利のオンライン百科事典、あるいはGitHubのようなオープンソースのソフトウェアのプラットフォームに関しては、著作権規則の要件から自動的に除外されることが改正案に明記される。
この他、著作物の利用と報酬をめぐる著者やパフォーマーの交渉権の強化や、教育、文化遺産、テキストマイニング、データマイニング目的の利用に対する規則要件の除外といった内容も改正案には盛り込まれる。
法務委員会で承認された指令案は、7月5日の欧州議会の本会議で採決が行われたが、賛成278票、反対318票、棄権31票で否決された。上述のとおり、法案をめぐっては規制の強化や表現の自由への影響といった観点から懸念が示されており、インターネット業界のロビイングも激化していた。
今後、9月に開催される予定の欧州議会本会議における採決に向けて、さらなる検討、ならびに修正が図られることになる。