[HTML]
H1

詳細ページ

お知らせ表示

2015.07

  • 韓国
  • 電波関連
政界介入で放送用途も押し込んだ700MHz帯分配案決定

韓国のICT分野が短期間に発展した大きな要因として、政府の強力な後押しが挙げられる。しかしながら、この強力な政府の力が時としてマイナスに作用することもある。韓国の電波政策からはこのような教訓が得られる。

韓国の政界は、選挙対策から地上波放送業界に気を遣う傾向が強い。そのため、地上波業界の声にかなり配慮した政策がこれまでにも見受けられた。このようなスタンスが特に最近の電波政策分野で大きな波紋を呼び起こしている。まず、2013年の朴槿恵政権成立に伴う省庁再編で、通信と放送の政策機能を移管した統合ICT省庁の未来創造科学部が新設されたものの、野党の反発により、電波政策機能が三つの省庁に分割されてしまった。その結果、通信用途周波数は未来創造科学部、放送用途周波数は放送通信委員会、新規周波数割当てと再編は首相傘下の委員会、という非常にイレギュラーな体制となってしまった。そのため、この時点で、通信業界と放送業界間で既に綱引き状態となっていた、地デジ移行跡地の700MHz帯の用途決定が難航する下地が造られてしまった。

世界的に通信用途で700MHz帯を分配する国が圧倒的である中、韓国では地上波放送業界の強力な主張のため700MHz帯用途決定が先送りされてきた。しかし、2015年7月に、放送業界の意向を酌んだ政府の介入に屈する形で700MHz帯分配案が決定された。700MHz帯は、通信40MHz、放送30MHz、公共安全網20MHzで分配される。放送用途では地上波4社のUHD放送5チャンネルに6MHzずつ割り当てられる。

しかしながら、放送5チャンネルに分配するために、ガードバンドをかなり狭くしたことから、隣接する公共安全網、さらに日本への電波干渉を指摘する声が既に上がっている。また、携帯電話のトラフィック急増への電波供給が追い付かないとの懸念も寄せられる。今回のように世界的趨勢を無視した政界の政策介入を問題視する声も大変高い。このような形で決定された700MHz帯の分配が、果たして周波数の有効利用につながるのか、今後が大いに問われよう。