[HTML]
H1

詳細ページ

お知らせ表示

2015.11

  • インドネシア
  • 放送・メディア
ISの勢力伸長に対する情報通信規制機関による対応

インターネットの普及は、様々な情報の伝搬を容易にしている。イラク・シリア・イスラム国(Islamic State of Iraq and Syria: IS)と称するテロ集団(イラク・レバントのイスラム国Islamic State of Iraq and the Levant:ISILと称されることもある)の勢力伸長は、東南アジアの各国において、情報通信の規制権限を持つ官庁にも対応を迫っている。というのは、ISが、そのプロパガンダや構成員のリクルートにソーシャル・メディアやモバイル・アプリを最大限に活用しているからである。

インドネシアでは、2014年8月4日に宗教省が、インドネシアの国是である「パンチャシラ」(注)と相容れないものとして、ISの活動やその支援を禁止した。同日付で、通信情報省はGoogleに対してYouTubeにおけるISの動画をブロックするよう要請し、通信事業者にも、関連サイトの閉鎖やブロック、SNSにおける書き込みの監視を求めた。インドネシアでは、「2008年電子情報及びその伝搬に関する法」第28条を根拠に、反宗派的あるいは人種差別的な情報の提供を罰することができる。

2015年10月にインドネシアのInstitute for Policy Analysis of Conflictが発表した報告書によると、「伝統的な手法にも拠っているものの、宗教を議論する場が情宣およびリクルートの場になっており、インドネシアの宗教的な過激派はソーシャル・メディアなしには活動を継続できない」とし、「厳しくサイバー情報を取り締まっているマレーシアとの違い」と指摘した。報告書では、2002年を始まりとする過激派のサイバー化を、現在までを4期にわけて分析しており、2014年以降の第4期においてソーシャル・メディアが最重要なツールとなったとしている。

マレーシアでも、6月以降、通信マルチメディア委員会がウェブサイトやSNSでの武装勢力による情報提供に対し、警察との協力を強めている。7月には、15名のマレーシア人のISテロ組織への加入とシリアでの活動がネット等で広報され、それ以降、さらに警戒を強め、フォレンジック面を中心に警察への協力を進めようとしている。

インドネシアとマレーシアにはジェマー・イスラミア(Jemaah Islamiyah)、フィリピンにはアブ・サヤフ(Abu Sayyaf)といったアルカイダとのつながりの深い組織やその残党が存在しており、これらとISとの連動がSNSやネットを通じたプロパガンダビデオの配布で確認されている。

(注)パンチャシラ:Pancasila。インドネシア建国5原則で、唯一神への信仰、公正で文化的な人道主義、インドネシアの統一、合議制と代議制による英知に導かれた民主主義、国民に対する社会的公正、から成っている。