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2015.11

  • イギリス
  • 電波関連
英国で900MHz帯と1800MHz帯の年間免許料が決定

英国通信庁(Office of Communications:Ofcom)は、2015年9月24日、900MHz帯と1800MHz帯の年間免許料(annual licence fee:ALF)の料額を決定する声明文書を発表した。これらの帯域は1990年代に、GSM帯域として比較審査によって割り当てられたもので、現在は、機会費用をベースにした料額算定方法であるAIP(administered incentive pricing)が適用されている。

英国政府は、2010年12月、900MHz帯及び1800MHz帯の免許料を、完全市場価値(full market value)を反映させた料額に改定するよう、Ofcomに命令した(「Wireless Telegraphy Act 2006 (Directions to OFCOM)Order 2010(S.I. 2010 No. 3024)」)。同命令によりOfcomは「2006年無線電信法」第12条(免許付与料金)が定めるALF規定を改正した。また、政府は、料額見直しにあたり、2013年2月に実施された4G(800MHz帯及び2.6GHz帯)オークション落札額を考慮に入れるようOfcomに指示した。

Ofcomは2013年10月、英国の4Gオークション落札額、諸外国における周波数オークション結果、900MHz帯及び1800MHz帯が有する技術的・商業的な特徴などを考慮に入れ、周波数免許の市場価値を推計した。その結果、1MHz当たりのALFは、900MHz帯が199万£、1800MHz帯が119万£となった。

しかし、この新たな料額提案は、現行の5倍近い金額になることから、携帯事業者の強い反発を招いた。そのためOfcomは、4Gオークションの評価方法や、周波数価値を算定する際の計算式の見直しなどを実施し、2014年8月に新料額案を提案した。これは前回の提案よりも約2割程度引き下げられた。

その一方で、携帯事業者4社(Telefonica、EE、Vodafone 及びH3G)は2014年12月、携帯電話の音声・テキストサービスの地理的カバレッジを2017年までに90%まで拡大することなどを盛り込んだ、総額50億£の設備投資を行うことを政府に約束した。これは携帯4社のうち1社又は2社のみの携帯網しかない地域(「Partial Not-Spots」)を解消するための官民合意で、携帯各社それぞれが90%の地理的カバレッジを達成する法的責務を負う。

総額50億£にのぼる設備投資約束と引き換えに、ALFの料額が更に引き下げられるかが焦点になっていたが、2015年2月に提案された料額の下げ幅は前回を下回った。その後も見直し議論が続けられ、2015年6月に実施されたドイツのマルチバンド(700MHz、900MHz、1800MH及び1500MHz)オークション結果を踏まえながら、最終的に2015年9月に料額が決定された。

表1 900MHz帯及び1800MHz帯の年間免許料(1MHz当たりの単価/年)の見直し
(単位:£)
Ofcomの料額提案時期 900MHz 1800MHz
2013年10月10日 199万 119万
2014年8月1日 157万 96万
2015年2月19日 148万 84万
2015年9月24日最終決定 112.8万 81.5万
出所:Ofcom資料をもとに作成
表2 携帯電話事業者4社の900MHz帯及び1800MHz帯の年間免許料総額
(単位:£)
Vodafone Telefonica EE H3G 合計
現行の料額(AIP) 1,560万 1,560万 2,490万 830万 6,440万
2015年2月の提案 6,260万 6,260万 7,730万 2,580万 2億2,830万
最終決定(ALF) 4,980万 4,980万 7,500万 2,500万 1億9,960万

現在、欧州諸国の多くにおいて、1990年代に比較審査によって割り当てられたGSMバンド(900MHz帯及び1800MHz)が免許期限を迎えており、その再割当てが進められている。英国の場合は、完全市場価値を反映した免許料を課すことで、免許の更新(renewal)を実施した。一方、ドイツは、上述したように、2015年6月のマルチバンドオークションにおいて、免許期限を迎えるGSMバンドも含めてオークションを実施した。フランスは英国と同様に免許更新を適用したが、ノルウェーやデンマークなどはオークションによる再割当てを予定しており、国によってGSMバンドの再割当ての手続きに違いがあることがわかる。