英国では、2017年4月27日に、ブロードバンドのユニバーサル義務化等の内容とする「デジタル経済法」が女王の裁可を経て正式に成立した。同法は、英国がデジタル経済において世界で優位に立てるようにすべく多岐にわたる内容を含んでいる。
文化・メディア・スポーツ省(DCMS)のマット・ハンコック閣外大臣は「デジタル経済法が成立したことを嬉しく思う。本法律によってより接続性の高いより強力な経済を実現するとともに、ブロードバンドの普及や消費者支援、インターネット上の青少年の保護、そして政府サービスのさらなる変革について実現することができる」と述べている。
同法の主な内容は以下のとおりである。
目的
- 消費者に法的権限を付与し、すべての人がブロードバンドにアクセスできるようにする。
- 将来のデジタル化に適したインフラを構築する。
- デジタル技術を利用したより良い公共サービスを可能にする。
- 迷惑メールや迷惑電話から市民を保護するとともに、青少年をオンラインポルノから保護する。
主な規定事項
- 英国内のすべての世帯・事業所に高速ブロードバンド(下り速度10Mbps以上)にアクセスできる法的権利を与える。(上院の審議において下り速度30Mbps以上とする修正がなされたが下院において否決された)
- 消費者及び企業に対して、対価に見合うサービスを受けられない場合のISPの変更や自動補償についてのより良い情報を提供する。
- デジタルインフラ構築のためのコストを削減し、そのための計画ルールを簡素化する。
- ダイレクトマーケティングに関する行為準則(Direct Marketing Code)を新たに制定し、迷惑電話や迷惑メールへの対策を効果的に実施できるようにする。
- ポルノ画像を含むサイト等の提供事業者による強固な年齢認証確認を義務付け、違反者に対しては民事罰を課するとともに、基準に準拠していないサイトについてはISPレベルでアクセスできないようにする。
- モバイルネットワーク事業者に課金上限設定機能を求めることで、通信費が想定外に高額になるいわゆる「請求ショック」から消費者を保護する。
なお、議会審議の過程において提出時の法案には含まれていなかった以下の事項についても盛り込まれた。
- BTのローカルアクセス部門「オープンリーチ」の法的分離に伴う倒産時の年金債務保証制度(Crown Guarantee)を分社化後のオープンリーチに移籍するBT社員にも適用されるようにする。
- オンライン上のチケット再販市場におけるいわゆる「チケット買い占めボット」の問題に対処できるようにする。
- 電子書籍をカバーできるようにするため公共貸与権の範囲を拡大する。
- 障害者がオンデマンドテレビにアクセスできるようにする。