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2016.03

  • アメリカ
  • 電波関連
米国における全国公共安全LTEの建設に向けた最新動向

◇FirstNetの創設
米国では、2012年に成立した「2012年中間層課税控除及び雇用創出法」に基づき、第一応答者(First Responder)及びその他公共安全職員が使用するための、管轄区域を超えた相互運用可能な最先端のブロードバンド全国網構築のため、「第一応答者ネットワーク庁(First Responder Network Authority: FirstNet)」が創設された。FirstNetは、700MHz帯(Band 14:758-768/788-798MHz)を使用したLTEベースの「全国公共安全ブロードバンド網(Nationwide Public Safety Broadband Network: NPSBN)」の建設の責務を追っている。

◇官民パートナーシップの活用
NPSBNの構築は官民パートナーシップ(Public Private Partnership)に基づいて実施される。FirstNetのパートナー事業者(NPSBN構築の請負事業者)が、NPSBNのコアネットワーク、RAN(Radio Access Network)、バックホール等を構築・運用するが、一部のRANについては各州の自治体が保有するものが使用される。NPSBNの建設コストを節減するため、既存インフラの活用が推奨され、携帯用途、公共安全用途、政府用途等に使用されている既存の基地局サイトにRANをコロケーションすることが期待されている。

◇提案依頼書の公表
FirstNetはNPSBN構築に関する500頁以上にのぼる提案依頼書(Request for Proposal:RFP)を2016年1月13日に発表した。これに対する質問が同年2月12日に締め切られ、400件以上もの質問が寄せられた。入札に関心のある事業者は、2016年3月31日までにその旨を表明し、同年5月13日までにRFPに対する提案書を提出しなければならない。パートナー事業者は、2016年11月1日までに決まる予定で、落札者は2017年に建設を開始し、5年(2021年)以内に全国整備を完了させなければならない。また、RFPによると、落札者が決まった後、2年以内(2018年後半)までに、ミッションクリティカルプッシュツートーク(Mission Critical Push to Talk:MCPTT)の機能を組み込む必要がある。

◇想定される入札参加者
2016年1月28日現在、AT&TとRivada Networksの2社が入札に関心があることを表明しているが、Intel Security、 Motorola、Harris、Northrup Grumman、Seybold、Verizon等も関心があると見られている。Rivada Networksは、国土安全保障省の元幹部等が役員を務める企業で、緊急時に1ミリセカンド単位で瞬時に優先接続を提供するコア技術のDSATPA(Dynamic Spectrum Arbitrage Tiered Priority Access)を持っているのが強みとされている。また、落札者は、一つの企業ではなく、複数の企業や組織で構成されるコンソーシアムが想定され、例えば、人口密度の低い地域のカバレッジ義務の達成のために、小規模ルーラル事業者や衛星事業者の協力が欠かせないと見られている。加えて、落札後6か月以内に、700MHz帯のBand 14以外の周波数で、全国カバレッジを提供することが求められていることから、携帯の全国事業者の参加が期待されている。落札者に対しては、NPSBNの建設コストとして65億US$が補助金として支払われるが、総工費は100億~150億US$の規模になると見積もられている。そのため、既存資産を活用するなどして、建設コストをいかに節減していくかが極めて重要となっている。