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2016.09

  • アメリカ
  • セキュリティ、プライバシー
悪質なロボコール撲滅に動き出した政府、通信業界

米国では、自動音声通話を使った電話勧誘、いわゆる「ロボコール」(Robocall)が近年急増しており、ある調査によると一月あたり20億以上のロボコールが発信されているという。連邦取引委員会(FTC)によると、2016年1月から5月までの間にFTCに寄せられたロボコールに関する苦情は、過去最高の144万件と前年から50%近く増加した。この中には無料旅行の当選や債務の減免を持ちかけるものや、米国国税庁(IRS)を騙るものなど、詐欺まがいの電話も多い。この様な詐欺的なロボコールにより、2015年に米国消費者の11%が何らかの金銭的被害を被り、被害総額は年間74億ドル(約7,880億円)に達している。

米国で電話勧誘を規制する基本法には、連邦通信委員会(FCC)の「Telephone Consumer Protection Act of 1991」、FTCの「Telemarketing Sales Rule」などがあり、緊急性を要する通話や事前の書面による同意がある場合を除いて、固定電話及び携帯電話(テキストメッセージも含む)への自動音声通話による電話勧誘を行うことを禁止している。また、これらの法律に基づき、「電話勧誘お断りリスト」(National Do Not Call Registry)が2003年より運用されている。このリストの維持管理はFTCが行い、法の執行はFTC、FCC、そして州政府が行っている。

ただし、この電話勧誘お断りリストについて、効果は限定的との声が出ている。その理由として、技術の進展により発信者情報を偽装(Caller ID Spoofing)する技術が安く簡単に入手できるようになったこと、海外に拠点を置き虚偽のIDを用いて電話するケースが増加していること、そもそも詐欺グループはこのリストを気にも留めていないことなどが指摘されている。

この様な状況を受けてFCCと政府は、ロボコール規制強化に向けて検討を開始し、米国の大手通信事業者に協力を呼び掛けていた。2015年7月には、FCCのトム・ウィーラー委員長が、通信事業者は、加入者の求めに応じてネットワークレベルでロボコールをブロックできるツールを導入することは何の規則にも抵触しないと明言。大手通信事業者に対して、加入者にロボコール・ブロックツールを無料提供するよう強く要請した。

AT&Tやベライゾンなどの大手通信事業者やグーグルやアップル、アマゾンなどの大手テクノロジー企業等30社は悪質なロボコール撲滅に取り組む連合体「Robocall Strike Force」(RSF)を結成。RSF議長にAT&Tのランドール・スティーブンソンCEOが就任し、FCCとの第1回会合を8月19日に開催した。RSFは、①ロボコールのブロックを目的とした広範なソリューションの開発及び普及促進、②発信者情報の偽装を防止する技術標準規格の策定、③米国外から発信されるロボコールを特定する「Do Not Originate」の作成などに合意し、10月19日までに具体的な計画をFCCに報告するという。