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2024.04

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FCC、衛星からスマートフォンへの直接接続を可能とする新たな規制枠組みを採択
2024年3月14日、FCCは、携帯電話と衛星を直接接続する規制枠組み「宇宙からの補完的カバレッジ(Supplemental Coverage from Space:SCS)」に関して新たな規制枠組みを構築する最終規則を含む報告と命令(R&O)及び追加規則制定提案告示(FNPRM)を採択、3月15日にその全文を公表した。
 
これは、一般に「Direct-to-Cell(D2C)」「Direct-to-Device(D2D)」と呼ばれる、衛星から通常の携帯電話への直接アクセスを可能とする世界初となる規制枠組みで、地上周波数を活用することで携帯電話が圏外となるエリアでも衛星経由のユビキタスな通信が可能となる。
 
今回の決定は、衛星事業者と地上移動サービス事業者のパートナーシップを前提とするもので、既に地上サービスに割り当てられた周波数を使い、それら帯域で衛星移動サービス(mobile-satellite service:MSS)を直接端末向けに提供する枠組みを提供する。
 
SCSは、衛星ネットワークと地上波ネットワークがシームレスに連携し、どちらのネットワークも単独では達成できないカバレッジを提供する「単一のネットワークの未来(single network future)」というFCCのビジョンにとっても極めて重要な要素として位置付けられている。
 
R&Oでは、これまで地上サービスのみに分配されていた帯域で衛星通信を可能とするため、米国周波数分配表を修正し、特定の帯域で双方向のMSS二次運用を許可する。MSSの二次運用が追加されたSCS向け帯域は次のとおり。
 
  • 600MHz帯(614-652MHz、663-698MHz)
  • 700 MHz帯(698-769MHz、775MHz-799MHz、805-806MHz)
  • 800 MHz帯(824-849MHz、869-894MHz)
  • ブロードバンドPCS帯(1850-1915MHz、1930-1995MHz)
  • AWS-Hブロック(1915-1920MHz/1995-2000MHz)
 
SCSは、これら帯域において、1者以上の地上免許人(特定の「地理的に独立したエリア(geographically independent area:GIA)」全体で関連するチャネルのすべての免許を保有)が、参加する衛星事業者(所有する衛星免許がこれらの周波数とSCSを提供するGIAをカバー)に、その周波数使用権へのアクセスをリースする場合にのみ、許可される。SCS運用が認められるGIAは次のとおり。
 
  • 米国48州全土(Contiguous United States:CONUS)
  • アラスカ
  • ハワイ
  • 米領サモア
  • プエルトリコ/米領バージン諸島
  • グアム/北マリアナ諸島
 
また、パートナーとなる地上通信事業者は、すべてのSCS経由の911緊急通報(又はテキスト)を、ロケーションベースのルーティング又は緊急コールセンターのいずれかを使用して、公共安全応答ポイント(Public Safety Answering Point:PSAP)にルーティングしなければならないという暫定的な要件が課せられる。
 
FNPRMでは、公共安全問題についてさらなる意見を募集、また、電波天文サービスの保護に関する問題についてもコメントを求める。
 
D2D/D2Cサービス提供に関しては、業界の取組みも進められており、既にAppleとGlobalstarは、2022年9月に発表されたiPhone 14シリーズ以降のモデルで「衛星経由の緊急SOS(Emergency SOS via satellite)」機能を提供中。
 
他方で、同様のD2DサービスをAndroidエコシステムにも導入しようとするQualcommとIridiumの提携は、端末メーカーからの支持が集められず、2023年11月に解消されている。
 
その他にも、2022年8月に提携を発表したT-Mobile/SpaceXは、2024年1月2日にD2Dを可能とする次世代Starlink衛星6基を打ち上げ、試験を行っており、1月8日にはこのD2C衛星からT-Mobileネットワーク周波数を使って最初のテキストメッセージ送受信を行ったことを明らかにしている。T-Mobile/SpaceXは、2024年中にはD2Cテキストメッセージ、2025年には音声、データ、IoTサービスを可能とすることを計画しており、T-Mobileに加え、日本のKDDI、オーストラリアのOptus、ニュージーランドのOne NZ、カナダのRogers、スイスのSaltがD2Dサービス開始を計画している。
 
AST SpaceMobileは現在、低地球軌道(LEO)上で史上最大の商業通信アレイとなるBlueWalker 3衛星を運用中、2023年にはパートナーのAT&T、Vodafone、楽天、Nokiaと協力し、2G、4G LTE、5Gの通話、5MHzチャンネル当たり14Mbpsのダウンロード速度など、宇宙から通常のスマートフォンへの直接接続を実現した。ASTは、2024年1月18日には、Google、AT&T、Vodafoneから合計2億650万ドルの出資を受けること等を発表、ASTの既存出資者には、楽天、American Tower、Bell Canadaも含まれる。
 
Lynk Globalは、2023年12月14日、カナダの電気通信大手Rogersと同国初となる衛星とモバイル端末の通話を完了したと発表、Rogersは、2024年に衛星とモバイル端末を接続する通信サービスを提供する予定で、まずSMSテキスト、一斉通知、機械間AIアプリケーションから開始し、その後、通話とデータ通信サービスに拡大する予定。
 
2024年2月9日には、D2Dエコシステムの推進に焦点を当てる新しい業界団体「移動衛星サービス協会(Mobile Satellite Services Association:MSSA)が設立、設立メンバーには、Viasat、Terrestar Solutions、Ligado Networks、Omnispace、Al Yah Satellite Communications Company PJSC(Yahsat)が含まれ、Viasatのマーク・ダンクバーグCEOが議長を務める。