EUでは高額な携帯ローミング料金が欧州委員会ならびに携帯電話利用者によって問題視されてきた。
この問題を受け、欧州委員会は2007年から域内の携帯ローミング料金に上限を設定する規制を施行し(2009年改正)、段階的に料金の引下げを実施してきた。
ただし、欧州委員会や携帯電話利用者は依然として料金が高額であると不満を抱いている。
また、現行の規制は2012年6月末が有効期限であることから早急に新たな規制を設ける必要性が指摘されてきた。
2012年3月28日、欧州連合理事会と欧州議会は、携帯ローミング料金のさらなる引下げを行う規制案の採択に向けて合意した。
規制案は、欧州域内移動時のモバイル通信サービスの利用に際して、ユーザーに過剰な料金負担が発生しないことを目的としている。
規制案は、2012年5月に開催された欧州議会本会議で、賛成578、反対10(欠席10)の賛成多数で可決・承認された。
また、議会承認後に開催された欧州連合理事会においても採択された。新しい規則は2012年6月30日に官報に掲載され、翌7月1日に発効、料金は毎年段階的に引下げられる。
有効期限は2022年6月30日までとなる。
新規則では、競争の導入と消費者の選択肢の増加を進める構造的措置を導入することで携帯ローミング料金の高額化を抑制していく。
2014年7月1日以降、利用者は海外において、自国で契約している事業者とは別のローミング・サービスを選択することが可能になる。
併せて、いわゆる「ビル・ショック」(想定外の料金高額請求)を防ぐため、域外に滞在する加入者に対し、データ受信料が50ユーロ、あるいは本人が申し出た上限以上に達した場合にはテキスト・メッセージやメール等で警告を発する措置も実施されることになる。
公衆モバイル通信網への卸売によるアクセスについても条件設定を行う。
加えて、競争事業者がローミング・サービス市場に参入できるよう、卸売料金の上限と小売料金の間に妥当なマージンを設定する。
そのほか、料金の透明性向上や料金に関する情報提供の改善についても規定が設けられる。
規制の効果については、欧州委員会がレビューを行い、2016年6月30日までに欧州議会ならびに欧州連合理事会に対して報告書を提出する予定である。
携帯ローミング料金 小売上限価格(付加価値税別)
|
現行 |
2012年7月1日 以降 |
2013年7月1日 以降 |
2014年7月1日 以降 |
データ(1MBあたり) |
設定なし |
0.7ユーロ |
0.45ユーロ |
0.2ユーロ |
通話料金(1分あたり) |
0.35ユーロ |
0.29ユーロ |
0.24ユーロ |
0.19ユーロ |
着信料金(1分あたり) |
0.11ユーロ |
0.08ユーロ |
0.07ユーロ |
0.05ユーロ |
SMS(1通あたり) |
0.11ユーロ |
0.09ユーロ |
0.08ユーロ |
0.06ユーロ |
携帯ローミング料金 卸売上限価格(付加価値税別)
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現行 |
2012年7月1日 以降 |
2013年7月1日 以降 |
2014年7月1日 以降 |
データ(1MBあたり) |
0.5ユーロ |
0.25ユーロ |
0.15ユーロ |
0.05ユーロ |
通話料金(1分あたり) |
0.18ユーロ |
0.14ユーロ |
0.1ユーロ |
0.05ユーロ |
SMS(1通あたり) |
0.04ユーロ |
0.03ユーロ |
0.02ユーロ |
0.02ユーロ |
出所:欧州議会プレスリリース(2012年3月28日)