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「アジアにおけるインターネットの
2000年問題に関する調査研究」
RITE98-J05S
【発行】平成11年11月
【執筆者】
目 次
第1章 2000年問題にかかわるインターネットの技術的な問題点
1−1 予想される主な問題と対応策
1−1−2 「問題は起きない」か?
1−1−2 インターネットの特質上の問題点
1−2 人為的な要因によって障害が起きる可能性
1−3 危機管理体制について
第2章 プロトコル分野の技術的問題点
2−1 HTTP(ワールドワイドウェブ用通信プロトコル)
2−2 電子メールプロトコル
2−3 DNS(ドメインネームシステム)
2−4 ネットワーク管理
2−5 ネットワークニュース
2−6 リアルタイムサービス
第3章 サーバー分野の技術的問題点
3−1 OS分野
3−2 アプリケーション
3−3 DNSルートサーバーの点検
3−4 対策・テストが重要
第4章 インターネット業界の2000年問題への対応状況
4−1 インターネット・サービス・プロバイダーの動向
4−2 インターネットY2Kキャンペーン
4−3 日本におけるインターネットY2Kタスクフォース
4−4 インターネットY2Kアジア・ロードショー
4−5 ハード・ソフトベンダーの動向
[参考資料]
要 約
なぜ2000年問題なのか
コンピューター2000年問題、いわゆるY2K問題は、コンピューターを利用するほとんどすべてのアプリケーションに広く共通する問題であり、インターネットもけっして例外ではない。個々のシステム、ソフトに必要な修正を行わなければ、ネットワークの機能になんらかの障害がおきる可能性はかなり高い。関係者すべての真剣な取組みが求められている。
灯台下暗しー軽視されてきたインターネット
コンピューターのプログラムが西暦2000年に日付が変わることを正しく認識できないことから生じる、いわゆる2000年問題(英語では「Y2K」と総称される)は、もとはメモリーを節約しようとして、西暦の年数の処理を正規の4桁ではなく、下2桁に省略したことが原因で起こる問題で、2000年を意味する下2桁のデータ「00」を1900年と誤って解釈してプログラム実行してしまう可能性がある。当初は大型コンピューターを中心に、主として事務処理系のプログラムで起きる問題と思われてきたが、実際にはパソコン、ワークステーションから主に制御系に利用される無数のマイコンチップまで、年数処理に何らかの形でかかわる膨大な数の機器・システムが2000問題でトラブルを起こす可能性が高いとされる。
2000年問題は、単なるコンピューターのプログラム上のバグにとどまらず、電力、金融、飛行機、鉄道などの交通システム、水道、燃料、食料、エレベーターやビル管理まで、コンピューターシステムを活用する主要な社会インフラの全体が対象となる問題であり、これらが部分的にでも機能不全に陥れば、市民の日常生活、企業などの産業活動など、社会生活に大きな影響が出るものと懸念される。
同時に、2000年問題は、コンピューター・ネットワークである。インターネット自身が使用するシステムにも内在する問題であることは否定できない。インターネットにおいても、当然十分な点検、対策であることはいうまでもない。しかしながら、電力、金融、交通などの主要インフラ分野に対しては、政府も業界も早くから2000年問題についての点検・対策活動を推進してきたが、ことインターネットに関しては、一応通信分野の中に含まれるとされるものの、独自の分野として認識されているわけではなく、それだけ独自の対応は遅れたといえる。インターネットの関係者自身にも2000年問題を軽視する傾向は強く、全体として明らかに遅れをとったと言わざるをえない。
ところで、現在2000年問題の全体の情報公開手段として、インターネットがもっとも積極的に利用されている。また、もっとも懸念される、日付が1999年から2000年に変わる時点を中心に、2000年問題が原因となって発生した故障、事故などの報告等のために、ニュージーランドに始まり、アジア、欧州と順に日付が変わるのに対応して、世界的な情報交換の手段としてインターネットを国際的に利用することが正式に提案されている、ここで肝心あのインターネット自体の2000年対策が不十分では、「灯台下暗し」となりかねない。
問題は発生しない?
インターネットに限って2000年問題は起きないと主張するエンジニアが少なくなかった。曰く「UNIXは2038年までは大丈夫なように設計されている」、「インターネットのプロトコルに問題はない」、「インターネットは歴史が浅い分、大半の機器は最新のものだから大丈夫だ」などと主張する。しかし、インターネットは、いまや全世界で何千万台もがリアルタイムで相互接続されるいる、きわめて複雑な構造と機能によって構成された「ネットワークのネッワーク」である。充分なテスト・確認をせずに、ただ「大丈夫」と断定するのは自殺行為に等しい。
事実、テキサス州のプロバイダー協会からは、「対応済み」とされたサーバーを、実際に日付を変えてテストしたところ不具合が生じ、結果的にハードも含むシステム全体の入れ替えを余儀なくされたプロバイダーの例が報告されている。フロリダ州でも、プロバイダーの課金システムをテストしたところ、システムクラッシュが起き、オペレーションに支障があると判明した。
懸念される小規模事業者、途上国のネット
米国のほとんどの大手プロバイダーは、自社のシステムを2000年対応にするために、相当の資金と労力を割いて作業を続けている。日本でも、大手企業は対応の対策を推進しているとみられ、比較的問題が少ないと考えられる。
しかし、数的にみれば、全米で6,000社以上、日本でも3,300社以上ある商用プロバイダーの大半は中小企業である。彼らにとっては、必要な対策を推進するための資金、人員に乏しく、問題意識も薄いのではないかと懸念されている。
同様に、学術教育ネットワークや地域ネットワークなど、非営利組織が運用するネットワーク、さらに相対的に経済水準が低い途上国などのネットワークも、十分な対策を行う余力がない可能性が高いと懸念される。事実、日米の大手商用プロバイダーの間には、「自社のシステムは万全を期しているが、インターネットで相互接続されている数多くの小規模事業者の2000年対策は十分とは考えられず、ネット全体の運用を妨げるようなトラブルを引き起こす可能性が高い。そうなった場合に、自分たちのシステムを守ることは可能だろうか。アジア側からの情報もほとんど入ってこない。」と心配する声が強い。
問われる企業の社会的責任
日付が西暦2000年に変わるとき、世界中のインターネットの運用に2000年問題がどの程度の影響を及ぼすのか、正確な予測はきわめて難しい。単純に言えば「ゼロから無限大までの可能性」の要素同士を多数掛け合わせただけの組合せがあると考えられ、なにも問題が起きないか、局所・散発的にネットワークの機能が停止するか、地球全体のインターネットが動かなくなるかの、どこかの範囲に入るというしかいいようがない。しかし、2000年まで2ヵ月を切った現時点で、可能性の多寡を議論してもあまり意味はない。
インターネットの業界は、電力、金融、交通など、社会的に「主要インフラ」と規定される業界と比較して、2000年問題対策で大きく遅れをとってきたことは事実だ。ここ数年爆発的な急成長を遂げてきたが、インターネットの相対的な普及率はまだ低く、これら既存の業界が提供するサービスと比較すれば、市民の日常生活、通常の企業活動に対して、インターネットが停止したことでもたらされる影響ははるかに少ないだろう。大勢として、インターネットはまだ「主要インフラ」とは認識されていないのだ。
それではインターネットは事業者も利用者も2000年問題対策をしなくていいかというと、そんなことはない。インターネットほど世界中の多数のコンピューターがリアルタイムで相互接続されているネットワークは他にない。ソフト、システムの点検・修正、テストに始まって、緊急対応計画まで、他の業界同様に2000年問題対策を推進することは、インターネットでも当然必要になる、ネットワークが停止することで被害を受ける利用者が発生することが少しでも想定されれば、その防止に努めることは、企業の社会的責任として当然である、第三者から「社会インフラ」として認知されているかどうかの問題ではなく、なにより自己責任として認知されているかどうかの問題ではなく、なにより自己責任として認識すべき問題である。
取組みが遅れれば経営危機に
インターネット業界においては、2000年問題への認識が低いのは事実だった。残念ながら技術者の甘え、ないし過信ともいえる態度がしばしばみられた。インターネットの利用者は日本で1,500万人、米国で8,000万人、全世界では約2億人以上といわれる。ビジネスにおける日常的な業務連絡のメールから、本や株の売買、旅行の切符の手配まで、インターネットが使えなければ困る人は少なくない。最近も日米で、電子メールシステムが機能しなくなった大手プロバイダーが強い批判に晒されたことがある。アメリカでは最近、個人オークションで爆発的に急成長したEベイが22時間システムダウンし、さらにこれがマスコミに大きく報道されて株価が急落し、経営危機に直面した。業務利用を目的とする専用線ユーザーは、信頼性の確保にはきわめて敏感である。
インターネットはまだ歴史が浅く、一般にそのサービスに対する信頼性、期待度が低いことは事実だ。、メールが届かない、ウェブがダウンしているといったトラブルは、ユーザーの誰しもが経験しているところだ。しかし、かりに2000年問題によって、世界各地でインターネットの機能停止が続発し、他方、一般のインフラは対策が奏功し無事に機能したとすると、どうなるか。インターネットはリスクが大きく信頼できないとの認識が定着し、かなり長い間その信用失墜から立ち直ることはできなくなる。プロバイダーの運用担当者はシステム修復に追われ、経営者は顧客からの非難が集中し、損害賠償を請求される可能性も当然ある。機器・システムのメーカーも、十分な対策を進めなかったことで訴えられる可能性がないとはいえない。日本はアメリカほど訴訟の頻度は高くないが、「サービスが停止して受けた被害の法的責任を不問にする」という法律はない。
関係者の協調による対策が重要
そもそも、インターネットは「ネットワークのネットワーク」であり、相互接続によって成立している「分散・協調、オープンなネットワーク」だ。2000年問題の取組みを進める上でもこの基本は変わらない。自らのシステムに責任もつのは当然だが、自分だけ良くても駄目で、相互接続している相手との間を確認し、対策を推進しまければネットワーク全体の機能は確保されない。この点の取り組みが、国際的にも国内的にもまだ欠けている。ここを押さえなければ対策は万全とはいえない。
本調査は、こうした問題意識を背景に、アジアにおけるインターネットの2000年問題対策の推進状況を含め、関連する事項を調査・分析したものである。実際の調査の実施は、アジア太平洋インターネット協会(Asia
& Pacific Internet Association)事務局が担当した。
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