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【発行】平成10年12月
【研究担当者及び執筆分担】
マレーシアでは,2020年までに先進国入りをめざすことを目的とした「ビジョン2020」という国家振興策を掲げており,その中の具体化策の一つがマルチメディア・スーパー・コリドー(Mutimedia
Super Corridor:MSC)計画である。MSCは95年8月にマハティール首相が明らかにし,現在,首都クアラ・ルンプルを含む東西15キロメートル,南北50キロメートルの範囲をテストベッドとして開発が行われている。
MSCの具体的な内容は,7項目の主要アプリケーション(Flagship Application)からなる。その内訳は,1)電子政府構想,2)多目的カード構想,3)遠隔教育構想,4)遠隔医療構想,5)研究開発重点地域構想,6)製造業支援ネットワーク構想,7)ボーダーレス・マーケティング構想である。これらのアプリケーションを実施可能なものとするために,高度な技術的基盤を整備し(ハードインフラの構築),同時に制度的な側面(ソフトインフラ)を確立させることを目標にしている。
特に注目されるのは,新行政都市(プトラ・ジャヤ)と情報産業都市(サイバー・ジャヤ)の建設であり,両者はMSCにおいて要となる地域である。そこでは,最新鋭の情報インフラを整備し,勤労者の職域と住居地域をあわせもつほか,近代的なインテリジェント・ビルの開発などを含むものとなっている。
MSC計画を実現させるために欠くことのできないものの一つが,サイバー法の制定である。本報告書の目的は,MSCにおけるソフトインフラ整備の一環として重要な要素となっているサイバー法について調査を行うものである。1997年,マレーシア議会は,1997年に4つのサイバー法を制定した。それらは,1)デジタル署名法,2)遠隔医療法,3)コンピュータ犯罪法,4)1987年著作権法改正法である。また,1998年7月に通信・マルチメディア法案が議会を通過している。
本報告書は,第1章においてMSCを概観した後で,第2章以下においてサイバー法の各法律を,法律の制定の経緯(各章第1節),法文の構成内容(同第2節),主要事項解説(同第3節)といった順でとりあげる。そして,最終節の第4節には,法律の仮訳を掲載している。
なお,本年(1998年)成立した通信・マルチメディア法は,従来の電気通信法と放送法に代わって制定されたものであり,これについては,弊財団の自主研究報告書『ASEANの通信法制−マレーシア−(平成10年10月)』に掲載しているので,必要に応じて適宜参照されたい。
本報告書に掲載したサイバー法の主な内容は次のとおりである。
1)コンピュータ犯罪法
コンピュータ犯罪法は,コンピュータの不正使用罪を設置している。この法律は,コンピュータのプログラム,データ,その他の情報を所有する者が,本来それらを所有をする権限がないにも関わらず所有している場合は,推定規定によって対処しようとするものである。すなわち,その者が不正なアクセスで入手したとの推定について反証できないときは,不正アクセスが行われたと推定し,不正アクセス罪を適用することになる。また,法の適用範囲についても規定をおいている。
2)デジタル署名法
デジタル署名法は,認証機関監督官の任命と,規制の最低限として,認証機関の免許制を義務づけている。本法は,認証機関の運営において,信頼性の基本的なレベルについて定める。すなわち,免許を欠く認証機関を無効にすることによって,署名の信頼性を損なうことのないようにするものである。規定には,免許の付与条件や,免許の取り消し,罰則,認証書発行申請などがある。
3)遠隔医療法
遠隔医療法は,遠隔診断(telemedicine)とそれに関連する事項の実施にあたってのルールと国の監督体制について定める。特に,この法律は,遠隔診療行為を指定された医師によることを条件とする。また,マレーシア国外で登録されている医療関係者も遠隔診療を実施するための許可証を得ることにより,実施することが可能である。
4)著作権法改正法
著作権法改正法は,MSC計画の成功を支援する目的で,技術的進展に配慮した見直しが必要となったために,改正を行ったものである。改正法の保護対象には,教育的著作物や娯楽作品のほか,本来,著作権の対象とならないコンピュータ情報などが含まれており,ネットワーク環境に配慮した著作物の保護がはかられている。その他CD等のコピー・プロテクション装置の解除行為を処罰する規定もおく。
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