★ご購入に関するお問合せ★
総務経理部 会員サービス担当まで
【発行】平成9年10月
【研究担当者及び執筆分担】
本報告書は,当研究所の自主研究テーマの一つである「主要国の通信・放送法制」シリーズのイタリアに関する報告書である。本シリーズの編集は,全体を二つの部に区分し,第1部は「通信・放送制度の概要」として,調査対象国の一般事情や通信・放送事業を概観した後に,本報告書の中心部分である通信・放送の法制度について概説してきた。また,第2部では調査対象国の主な通信・放送法を翻訳して紹介した。今般の報告書もこれまでと同様の編集形式を採用して,調査結果をまとめたものである。以下,本報告書の大要を紹介する。
先ず第1部の構成は,前半部分は電気通信に関する事項を(第2章,第3章),後半部分は放送に関する事項を扱った(第4章,第5章)。
第1章は,「イタリアに関する一般事情」として調査対象国の基礎的理解を得ることを目的としてイタリアの一般的な事情を紹介した。すなわち本章は,次章以下で紹介する通信・放送に関するバックグラウンドが,どのような背景の中で形成されているのかを知るうえで不可欠である。たとえば,イタリアの通信・放送関係法令はかなりの数に上るが,それは通信・放送システム自体が複雑なのではなく,「立法の濫立(Orgy
of Statute-Making)」と呼ばれるイタリアの立法事情が不安定な政治的要因に裏付けられてきたことを理解する必要がある。また,イタリアの「法律」の概念が,わが国のそれと必ずしも同一でない面も多く見受けられる。特に,わが国の法律に比肩しうる法令の範囲が広いのである。すなわち,法律の下位に属すると思われる政令クラスのものでも,実質的にはわが国の法律に相当する性質を有するものも多くみられる(特に,大統領令,議会令,暫定措置令など。ちなみに郵便・電気通信法典は大統領令である)。
第2章は,「イタリアの電気通信事情」と題して,電気通信事業の歴史的経緯を簡単にまとめたものである。特にイタリアの場合は,その事業の本格的な開始がドイツやフランスのようにPTT方式に基づいた一元的な事業システムではなく,国が直接に事業を行う系統(国の直接提供システム)と,国が民間会社の所有を通じて事業に参加する系統(国の間接提供システム)が並存する二元的な事業システムが存在していた。現在は,欧州連合(EU)の要請もあって,このようなシステムは解消されているが,なぜこのようなシステムが存在したのかを理解することは,電気通信領域のみならず,イタリアの公益産業の特性を把握する上でも重要なことである。本章は次章で紹介する電気通信法制度の理解を容易にする目的で,必要となる背景的知識(電気通信事業環境)を提供するものである。
第3章は「電気通信法制の概要」であり,イタリアの電気通信領域における主な法令の体系と,主要事業における規制関係(根拠法)を整理する。電気通信の基本原則を定めたものは「郵便・電気通信法典(正式名称は,1973年3月29日の大統領令第156号)」である。しかし,法典はイタリアが加盟するEUの電気通信規制環境を考慮していないため,これまでに「1984年8月13日の大統領令第523号」による若干の改正があるにすぎない。したがって,EU指令を施行するための国内法の整備は,個別の法律で行なわれている。最近の法令はEU指令を考慮して,電気通信事業者の再編成(事業機関と規制機関の分離を含む)や電気通信の設備やサービスの市場開放を漸進的に実施してきており,法典の主旨は事実上修正される傾向にある。したがって,本章では郵便・電気通信法典の紹介だけではなく,主要事業に関する各種法令をEU規制との関連で整理した。
第4章では,イタリアの放送制度の成立過程を概観するとともに,イタリアの放送事情について,その特色と現状を紹介する。イタリアでは,放送制度を規律する法律の制定において重要な役割を担ってきたのは,立法府である議会よりも,憲法裁判所であったということができる。イタリアでは,1910年以降,無線・有線によるラジオ・テレビジョン放送は国家独占の対象とされ,1944年に,国が所有するイタリア放送協会(RAI)に放送事業免許が付与された。しかし,1974年,憲法裁判所により,放送分野における国家の完全独占は違憲であるとの判断が示された。この判決により,限られたサービス分野ではあったものの,民間放送事業者の放送市場への参入が事実上可能となった。また,1976年の憲法裁判所判決では,全国放送局については公共放送の独占体制が確認されたが,地方放送局については公共放送による独占は違憲であり,民間放送による地方のラジオ・テレビジョン放送の運営は合憲であるとの判断が示された。この判決以降,イタリアでは多数の民間のラジオ・テレビジョン局が登場したが,1990年まで放送法関連法規が整備されなかったため,民間放送局の離合集散の過程で有力局が誕生し,次第に地方放送局の系列化やネットワーク化が進んでいった。この競争の過程で,イタリア最大のメディア企業を所有するに至った人物がベルルスコーニであった。このような状況を踏まえながら,今日におけるイタリアの放送制度及び放送事情の特色を紹介していく。
第5章では,現行放送法の規定内容について概説する。イタリアでは,公共放送を規律する法律として,1975年放送法(1975年4月14日法律第103号)が制定された。これは,公共放送事業者の改革を目的とした法律であった。その後,放送分野全般を包括する法制度は,1990年まで整備されなかった。1988年の憲法裁判所による要請にしたがい,1990年,イタリアの公共・民間放送を規律する法的枠組みが整備されるにいたった(1990年8月6日法律第223号)。現在では,この1990年放送法が基本となっている。本章では,主に1990年放送法の内容を概観し,特に本法律で設置された,独立行政機関としてメディア全般を監督する「メディア監査機構」の権限と法的役割を紹介するとともに,周波数割当制度,メディアの所有規制,番組の内容規制など,重要な規定についてとりあげていく。
第2部は,通信および放送の各分野において中心となっている法令を翻訳(仮訳)して紹介したものである。掲載したものは,電気通信領域では「郵便・電気通信法典(1973年3月29日の大統領令第156号)」を,放送領域では「1975年4月14日法律第103号」と「1990年8月6日法律第223号」である。その他にも重要な法令が数多く存在するが,プロジェクト研究における諸般の事情により,それらのすべてを紹介することができないことをお断りしておきたい。
なお,本報告書の内容(第1部・第2部)は1997年8月現在のものである。
このページは、国際通信経済研究所 情報通信研究部によって運営されています。
ご意見・ご要望は下記までお願いします。
自主研究一覧へ戻る