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米英における情報教育政策
−情報リテラシーと学力向上−
【発行日】
平成15年6月
【研究担当者及び執筆分担】
第1章 米国におけるデジタル・ディバイドの解消と情報リテラシー向上政策の展開
清原 聖子(国際通信経済研究所 情報通信研究部 非常勤研究員)
第2章 英国における情報技術の教育への導入とディバイドへの対応
黒川 綾子(国際通信経済研究所 情報通信研究部 副主任研究員)
太田美紀子(国際通信経済研究所 物流・金融研究部 研究員)
【目 次】
はじめに
研究の枠組み
第1章 米国におけるデジタル・ディバイドの解消と情報リテラシー向上政策の展開
1−1 はじめに
1−1−1 デジタル・ディバイドは解消したのか?
1−1−2 本章の視点と構成
1−2 教育に対して連邦政府が果たす役割
1−2−1 連邦教育省の特徴
1−2−2 連邦政府による教育へのICTプログラムは有効か?
1−3 コミュニティ・テクノロジー・センター(CTC)・プログラム
(1)CTCプログラム概要
(2)ブラックフットとフォート・ホールのファミリー・テクノロジー・センター
(3)ファースト・フォワード・コミュニティ・テクノロジー・センター
(4)まとめ
1−4 州政府の役割とカリフォルニア州の事例
1−4−1 州政府の役割
1−4−2 カリフォルニア州の事例
1−5 民間レベルの活動
1−6 ブッシュ政権の教育におけるICT政策
1−7 結論
参考資料
第2章 英国における情報技術の教育への導入とディバイドへの対応
2−1 はじめに
2−2 英国の教育行政機関
2−2−1 教育・技能省
2−2−2 特殊法人
2−2−3 地方教育当局
2−2−4 学校理事会
2−3 学校・教育制度の枠組み
2−3−1 義務教育システム
2−3−2 ナショナル・カリキュラムと統一試験
2−3−2−1 ナショナル・カリキュラム
2−3−2−2 中等教育修了一般試験他
2−4 政府補助金
2−4−1 補助金の分配方法
2−4−2 ICT予算
2−5 1970年代以降の教育改革の流れ
2−5−1 サッチャー政権の教育改革
2−5−2 ブレア政権の教育改革(第1期)
2−5−3 ブレア政権の教育改革(第2期)
2−5−4 ブレア政権の教育改革の詳細
2−5−4−1 民間への業務委託
2−5−4−2 ICT教育政策
2−6 全国的なICT教育目標政策
2−7 地方教育当局による取り組み
2−8 教育部門におけるディバイド対策
2−8−1 Education Action Zone (EAZ)
2−8−2 EAZ概説
2−8−3 ICT教育への取り組み例
2−8−4 EiC Action Zone
2−9 2002年時点の全国的なICT環境調査報告
2−9−1 インフラ面における概況
2−9−2 教員への支援
2−9−3 授業での活用
2−9−4 結論
2−10 今後の展望
2−10−1 2003年からの新しい補助金政策
2−10−2 事例研究
付録1 地方教育当局のICT環境整備取り組み事例
付録2 Education Action ZoneにおけるICT環境整備事例
参考資料
要約とまとめ
参考資料
【概 要】
はじめに
米国では教育に対する連邦政府の役割が小さく、義務教育機関に対する連邦教育省からの補助金交付割合も極めて小さい。教育に関する中央政府、すなわち連邦政府の役割は、伝統的に「管理ではなく支援すること」と考えられている。公立学校の運営は、州の教育省が各学校区を運営する形を取っているが、個々の学校のカリキュラムや教科書の指定は、学校区によって行われる。資金面では、州政府の収入から配分される予算が主要な財源であり、民間の資金援助プログラムへの参加も奨励されている。
英国では、米国とは全く事情が異なり、教育行政機関は他の行政部門からの独立性が高くかつ中央集権的である。学校の運営資金については、各地域の要請に従って国家機関が査定を行い、教育省の補助金を分配するという方法が採られている。授業内容についても、全国統一カリキュラムが定められており、統一試験での成績向上が個々の学校の目標とされている。
本論では、上で示した教育行政の特徴を踏まえつつ、それぞれの国の政府が持つ学校へのICT導入の目標、デジタル・ディバイド解消政策の論拠と実施方法、2002年までの成果、現在の行政方針について調査結果の紹介及び解説を行う。
第1章では、米国連邦政府、州政府、民間レベルの教育機関の情報環境整備に関する役割を解説し、具体的な事例を紹介した上で、クリントン政府時からブッシュ政権への政権交代まで、情報リテラシー向上政策がどのように展開されてきたのか、全体像を明らかにする。さらにブッシュ政権の教育テクノロジー政策に関する特徴を指摘し、今後の展開について述べる。
第2章では、英国特有の教育制度を概説、カリキュラムへのICT導入にはどういった問題意識が存在するのかを概説したうえで、全国的な目標設定とそれに対する地域の実情、政府のディバイド対策に関する事例をまとめ、2002年時での成果と今後の展望を論じることとする。
研究の枠組み
本研究では、米英の教育行政機関におけるデジタル・ディバイド対応政策の流れとその成果を紹介するが、両国の政策を見る視点として、まず、
(1) 教育行政における中央政府の権限の大小
という制度的な差異が挙げられる。ここから、「学校」という機関を地域社会に帰属、地域の政策によって管理されるものと考える米国教育省と、国民全体のリテラシー向上を目的とし、国の政策に従うべきものと考える英国教育・技能省のスタンスの違いが説明される。
(2) 教育の場へのICT機器導入の意義
についても、学校インフラを地域社会の財産の一つと考える米国と、「学力向上」のツールと考える英国の見地は異なっている。どちらの場合にも個々の学校の環境整備に関しては、地域の経済力による差が何らかのディバイド対策を講じることとなるが、
(3) 学校・地域間ディバイドの解消
に際して、米国では、連邦政府補助金の他にも州の補助金があり、ユニバーサル・サービス基金の活用、市民ボランティアへの協力要請等、多様な手段に訴えるのに対し、英国では教育・技能省から配布される補助金の割り振りの問題と考えられる。学校への民間資金導入は米英の共通問題だが、米国では大企業の全国的な援助プログラムへの参加、英国では地域産業との連携が中心である。
1990年代には米英ともに学校へのICT導入及びデジタル・ディバイド解消に対して中央政府が目標を設定、米国ではユニバーサル・サービス基金を利用したE-rateプログラム、英国では教育省の特別補助金によるEducation
Action Zone計画が実施された。その結果、米英どちらにおいても小・中学校一般のICTインフラは2002年には満足すべきレベルに達し、この面でのデジタル・ディバイド政策は成功したといえる。この時点で米英の両政府が今後の問題として意識しているのが、
(4) 児童生徒の学力向上
である。米国では1980年代初め、教育レベルの低下が指摘されたため、連邦レベルの遠隔教育支援プログラムなどが行われてきた。だが地域社会における環境整備、すなわち情報アクセスの問題が大きく改善された一方で、子供達の学力格差は依然深刻な問題である。他方英国では資金供与によりインフラは整ったものの、それが学力に結びつかなかったのは、機器を授業に活用しきれない学校に対する政策的な配慮が不足であったという反省がなされた。この問題に対して米英の政府はまた異なる政策を打ち出している。米国では、学校カリキュラム選択や授業方法の自由度を増し、かつ保護者の学校選択や学校の種類を増やすことより、個々の学校の体力強化に期待している。一方英国では、人気・成績の良い学校に優先的に補助金を供与するというサッチャー政権下での学校間競争が格差を生んだという反省から、地域の学校間ネットワークの緊密化にさらなる補助金を与え、中央の政策の浸透度をより強めるという方向に向かっている。
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