マルチメディア振興センター 情報通信研究部 上席研究員 高橋 幹
2008年5月に米国の携帯電話3位のSprint NextelとWiMAXサービスプロバイダのClearwireは、両社のモバイルWiMAX事業を統合し、全米規模のモバイルWiMAXネットワーク構築とサービス提供を目的とした新合弁会社を設立することに合意した。同時にIntel、Googleら5社から合計32億ドル(約3,400億円)の出資を受けることも明らかにした。年内に関連当局の承認が得られるとみており、2009年にもモバイルWiMAX の商用化を計画している。
Sprint NextelはClearwireとの提携を一度撤回している。2006年8月に同社は第3.9世代移動通信システム(3.9G)にモバイルWiMAXを導入することを発表した。2007年7月にはClearwireとWiMAXネットワークの共有、ローミング協定、製品・サービス開発などを含む提携に合意した。同年8月、「Xohm」ブランドを立ち上げ、2010年までに人口カバー1億2,500万人に拡大するという目標を掲げた。
しかし、本業の携帯電話事業の業績が低迷し、多額の投資を必要とするXohm事業を疑問視する投資家から非難の声が強まり、2007年10月にゲイリー・フォーシー氏がCEOを退任した。Xohm事業推進の中心であったフォーシー氏を失った同社はClearwireとの提携内容を詰めることができず、11月に白紙撤回し、計画の大幅な見直しが検討されていた。
新会社は、両社のモバイルWiMAX事業を統合し、Clearwireの名前を継承し、IntelやGoogle、ケーブルテレビ3社から合計32億ドル(約3,400億円)の出資を受ける。出資額はComcastが10億5,000万ドル、Intelが10億ドル、Time Warner Cableが5億5,000万ドル、Googleが5億ドル、Bright House Networkが1億ドルである。Sprint Nextelは2.5GHz帯の免許全てとXohm資産を提供する代わりに新会社の株式51%を保有し、旧Clearwire株主と出資企業はそれぞれ27%、22%を保有することになる。
また出資企業との間では、モバイルWiMAXの卸売サービス提供を含む業務提携も締結された。具体的な内容は以下の通り。
| ・ |
Intelは、WiMAXチップセットを開発し、WiMAX機能搭載のノートブックPCやモバイル機器、家電製品の普及をサポートするとともに、新会社と共同でマーケット戦略を実施する。 |
| ・ |
Googleは、Sprint Nextelと新会社の優先的なモバイル検索プロバイダとなり、各種Googleサービス(Maps for mobile、Gmail、YouTubeなど)を利用できるようにする。またGoogleの検索連動型広告サービスを使用した広告収入分配モデルを導入する。さらに新会社はGoogle提唱の「Android」プラットフォームをサポートする。 |
| ・ |
ケーブルテレビ3社は、新会社のモバイルWiMAXネットワークおよびSprint Nextelの3Gネットワークを使用したMVNOサービスを提供する。WiMAX対応のモバイル機器、アプリケーション、サービスを共同開発する。 |
新会社のWiMAXロードマップによると、「2017年末で加入者3,075万人、フリー・キャッシュ・フロー38億ドル(約4,000億円)を達成する」との目標が掲げられた。2007年度のClearwireの米国での加入者数は35万人、売上高は約1億2,300万ドル(約130億円)であるので、加入者3,075万人はかなり意欲的な数字と思われる。
モバイルWiMAX陣営は、対抗規格とされるLong Term Evolution(LTE)と比べた際の利点として、2〜3年先行してモバイルWiMAXを商用化できる点、またベンダーと通信キャリアによるモバイルWiMAXエコシステムがすでに広がりつつある点を挙げている。LTEの商用サービス開始時期は2010年以降になるとみられているため、その時点までにモバイルWiMAX対応端末やノートPCの種類を充実させ、ユーザのニーズに応えられる革新的なモバイル・ブロードバンドサービスを提供できているかが重要になってくる。
米国では、携帯電話1位のAT&Tと2位のVerizon WirelessがLTEの導入を発表しており、T-Mobile USAもGSM/W-CDMA規格を現在使用している流れからLTEの導入が予想される。業界団体CTIAによると、2007年末現在、米国の携帯電話加入者数は2億5,540万人おり、そのうちLTE陣営で65%の市場シェアを占めている。モバイルWiMAX陣営にとって厳しい戦いが今後も続きそうである。 |