マルチメディア振興センター 情報通信研究部 研究員 坂本 博史
ITUは”World Telecommunication/ICT Indicators Database“として、全世界の情報通信市場に関する統計データを公表、3ヶ月ごとに更新を行っている。本報告では、2006年度の同データを参照し、インターネット及びブロードバンド普及率を報告する。
OECD加盟国におけるインターネット個人普及率は、データの入手できた23か国平均で約58.3%となって、前年度比で約5%上昇している。国別では、最も普及率の高い国はオランダで約88.9%であった。以下、ノルウェーの同普及率が87.8%、ニュージーランドの78.8%、スウェーデンの77.0%、オーストラリアの75.1%と続いており、北欧近郊及びオセアニアの普及率における優位が見て取れる。
256kbps以上の通信速度で定義されるブロードバンドの世帯普及率については対象国25か国平均で16.5%となっており、ほぼ横ばいといった状況である。国別では、デンマーク及びネット全体同様にオランダが約31.7%と最も普及率が高く、以下、アイスランド、スイスの29.5%、韓国の29.3%と続いている。ネット全体の普及率同様に北欧近郊の優位は目立つが、ブロードバンド市場においてはオセアニアの2国は下位に低迷しており、必ずしもネット全体の普及率動向とブロードバンドのそれが一致しているというわけではない。
上記から、2006年度のインターネット及びブロードバンド普及率は米国や日本などの主要先進国よりも北欧諸国やベネルクスといった一人当たりGDPの高い国々において高いといえる。しかし、調査対象国全体では、普及率と一人当たりGDPとの相関関係は低く、先進諸国では所得水準が普及率の要因とは言い難いという状況も明らかである。
また、所得水準以外にも、調査対象国の通信料金、通信速度、教育水準と普及率との相関関係を検討したが、全く相関は存在しなく、先進諸国ではこれらのような単純な要因を普及の説明要因とすることが難しいと見解が得られた。
おそらくは、インターネット及びブロードバンドの普及要因には、上記に見た所得水準や市場環境、教育水準といった要因も含め、その他の、例えば産業構造、人口分布、所得分配といった複数の要素が、複合的に反映されていると考えられる。
現在、日本では世界第2位の経済規模を反映して、世界最大規模の光ファイバネットワークや3Gネットワークが構築され、サービス提供が拡大する状況にある。ただし、国際的視点に立脚すれば、経済規模に基づく通信インフラ形成がインターネットの利用を拡大するという視点は必ずしも妥当ではないということが指摘できる。今後のインターネット振興政策あるいは経営戦略は、その普及要因分析と同様に、より複合的な視点をもつ必要があるといえる。 |