ネット利用の安心・安全
アメリカ
子供のネット利用におけるオンライン・セイフティ向上に向けた取り組み
米国では、未成年によるソーシャル・メディアの利用拡大を背景に、子供がトラブルに巻込まれる問題が発生したことから、 近年、子供のネット利用におけるオンライン・セイフティ向上に向けた取り組みが強化されている。
まず、子供のオンライン・セイフティ向上に関する啓発活動の推進や民間における対策の連携推進については、 2008年10月に「Protecting Children in the 21st Century Act」が成立した。 同法は、ネット上の危険について子どもを教育するために保護者、インターネット業界、教育関係者の力を結集することを盛り込んだ法律となっている。 また、同法では、学校に対して、SNSやチャットルームなどを利用する際の注意、ネット上でのいじめに対する知識と対策等を教えるカリキュラムを提供することを義務付けたほか、 保護者が子どもに見せたくないコンテンツをブロックできる技術やプログラムについて確認し、その使用を奨励する省庁間ワーキング・グループを創設すること、連邦取引委員会(FTC)によるネット上の危険について啓発する全国キャンペーンを実施することが規定された。
その後、連邦通信委員会(FCC)は、2010年10月には、インターネット・サービス利用のためE-rateプログラムから補助金を受ける学校に対して、 サイバーいじめとソーシャルネットワーキングサイトの責任ある使い方について教えることを義務付ける命令を出しており、学校における取り組み強化を図っている。 なお、全国防犯評議会の調べによると米国ティーン層の半数近くは何らかのサイバーいじめ被害を受けており、これを苦とした自殺も増えている。 FCCは今回の命令は同委員会の規定を「Protecting Children in the 21st Century Act」と一致させるものだと説明している。 なお、E-rate規定では既に補助金交付を受ける学校に対して、インターネットの安全な利用方針、不適切なコンテンツへのアクセスを防ぐフィルタの導入を義務付けており、同命令はネットの安全な利用教育をこれらに追加するものとなっている。
また、スマートフォンに代表される携帯機器の高機能化で、これらの機器を使う子供たちがネット上の不適切なコンテンツに触れる機会が増えるのではないかという懸念が保護者の間に広がっており、 携帯機器にペアレンタルコントロールを提供する製品もいくつかのメーカーから発売されている。 移動通信事業者もスマートフォン向けのペアレンタルコントロール機能を提供しているが、こちらは事業者のネットワーク経由でインターネットに接続している場合にしか機能していない。 これに対応するため、アップルの携帯機器向けには、マカフィーが所有するInternetSafety.comの「Safe Eyes Mobile」、モビシップの「Safe Browser」といった子供の目に触れては困るコンテンツをフィルタでブロックするブラウザが登場している。
EU
EU Kids Online、子どものネットいじめに関する報告書を公表
EUのインターネット安全推進戦略「Safer Internet プログラム」の資金をもとに、 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが実施している子どものインターネット利用に関する調査研究プロジェクト「EU Kids Online」は、 2011年7月に、子どものネットいじめに関する調査報告書「Who bullies and who is bullied online?(誰がいじめを行い、誰がいじめられているのか)」を公表した。 調査結果の分析によると、9歳から16歳までの93%はネットいじめをまったく経験していなかった。
しかし、3%は他の子をいじめた経験があると回答していた。 いじめる側に回る性別としては、男子も女子も同程度の比率であることが分かった。 インターネットを介さないいじめは男子の方が多いという研究の知見とは対照的な結果となっている。 なお、いじめる側といじめられる側の間には連関があり、いじめる側の60%がいじめられた経験があるという。
いじめる側もいじめられる側も、心理的に不安定か社会的に恵まれない場合が多く、 オンラインとオフラインの両方でメンタリング・スキーム(対話を通じた助言)のような支援策を講じることが事態の改善を導くと報告書では指摘している。 プロジェクトに携わる研究者の一人であるGorzig教授は、「われわれの調査によりネットいじめは深刻でないことが明らかとなった。 しかし、子どもたちが社会的・個人的に脆弱な傾向にあることもうかがえた。 いじめやその他の問題をなくすため、子どもたちに的を絞ったアクションが必要となるだろう」と述べている。
このたび公表された報告書は、EU Kids Onlineのプロジェクトチームが、欧州25か国の約2万5,000人を対象に実施したアンケート結果の分析に基づいたものである。
EUにおける青少年のSNS利用の実態と問題
2011年4月、欧州委員会はEU全域を対象に行った青少年のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)利用実態に関する調査結果を公表した。 同調査により、9~12歳の38%、13~16歳の77%がSNSにプロフィールを持っていることが明らかとなった。そのうち25%はプライベートのプロフィールを公開しており、その中には自分の住まいや電話番号を公開している者もいた。 また、SNSのプライバシー設定の変更方法を知っているのは11~12歳では56%にとどまっていた。 このようにオンラインで青少年のプライバシー情報が公開されている状況に対しては、グルーミング(性的誘引)やネットいじめといったオンラインリスクの観点から懸念が示され、対策がとられている。
EUではインターネットの安全を推進する戦略「Safer Internet」を1999年から実施しており、現在は2009年から2013年までの5か年計画である「Safer Internet プログラム」が実施されている。 同プログラムはEUの情報通信政策「欧州デジタル・アジェンダ」で優先課題の一つとして挙げられており、オンラインの安全対策はEU社会全体の課題と位置づけられている。その中で青少年のオンラインリスク対策は中核を占めている。 そしてSNSに関しても、2009年に「安全なソーシャル・ネットワーキングのための原則」を定め、事業者にSNSの安全対策を推進するよう求めてきた。
しかし、青少年のSNS利用をめぐる安全対策は不十分であるとの指摘がされている。 2011年6月に欧州委員会が公表した、未成年のSNSプロフィールへのアクセスに関する調査結果によると、初期設定で承認制を採用しているのはBeboとMySpaceの二つだけで、調査した14のSNSサイトのほとんどはヘルプによる対応や外部検索エンジンからのアクセス除外にとどまっていた。 また、欧州委員会が2011年9月に公表した「安全なソーシャル・ネットワーキングのための原則」の実行状況に関する調査によると、対象とした九つのSNSサイトのうち、承認リストに載っている人以外にアクセスを許可しない措置をデフォルトで講じているサイトはHabbo HotelとXbox Liveの二つのみであった。 こうした調査結果を受けて、欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するネリー・クルース副委員長は「子どもたちにとって安全なインターネット空間を形成するため、保護とエンパワーメントを組み合わせた包括的な戦略を2011年の後半に設定する」という見通しを示している。
イギリス
7つのメディア規制機関の共同運営によるウェブサイト「ParentPort」、不適切なコンテンツからの子どもの保護を促進
英国では、7つのメディア規制諸機関が共同で、不適切なコンテンツからの子どもの保護を促進するため、 ウェブサイト「ParentPort」(http://www.parentport.org.uk/home)を立ち上げて運営している。 これは、メディア・通信・小売り分野における広告、商品、各種サービスに関する保護者の意見を集めることを目的にしたもので、 2011年10月に8つの規制機関が共同で立ち上げた。
7つの機関は、Advertising Standard Agency(広告基準局)、Authority for Television on Demand(オンデマンドTV規制機関)、BBC Trust、British Board of Film Classification (英映画等級審査機構)、 Ofcom、Press Complaints Commission(プレス苦情委員会)、Video Standards Council(ビデオ基準審査協議会)。
同ウェブサイト設立の動きは、2011年6月に発表された「ベイリー報告書」(注)の勧告に基づいて行われたもので、 TV・ラジオをはじめ、オンライン、DVD、携帯、ゲームコンソール、新聞、雑誌、郵便、カタログ、チラシを通したコンテンツに関する苦情や意見を保護者から広く集める。
ウェブサイトでは、保護者が不適切なコンテンツ・サービスを見聞きした場合に、どのように苦情や危惧を関連規制機関に伝えることが可能かを説明しており、また同ウェブサイトからも直接、保護者のフィードバックを受け付けている。
受け付ける苦情の対象は、(1)プログラム(TV、ラジオ、DVD、携帯電話、ゲームコンソール等)、(2)広告(TV、ラジオ、野外広告、チラシ、カタログ、郵便、ゲームコンソール、 携帯、映画館、DVD等)、(3)映画(TV、映画館、DVD、携帯電話、ゲームコンソール等)、(4)ビデオゲーム(ゲームコンソール、PC、オンライン、携帯、DVD等)、(5)新聞・雑誌(記事、写真、コメント、広告等)、(6)その他(オンラインセキュリティ、おもちゃ、衣類等)となっている。
キリスト教の国際的慈善団体Mothers' Unionの代表であるReg Baileyによる独立見直し報告書「Letting Children be Children - Report of an Independent Review of the Commercialisation and Sexualisation of Childhood」。その主な勧告内容は下記のとおりである。
- 子ども向けTV放送時間帯に、適切なコンテンツを放送する仕組みづくり:一般視聴者の意見ではなく保護者の意見を重点的に取り入れる必要がある。
- 音楽ビデオへの年齢レーティングの導入
- アダルト対象オンラインコンテンツを保護者が容易にブロックできる仕組みづくり