支配的事業者規制
ドイツ
固定ブロードバンド市場の競争状況
(1)市場競争の現状
ドイツの固定ブロードバンド市場は、1998年に通信市場が自由化された後も、依然としてドイツテレコムが重大な市場支配力を有している。
これを懸念した連邦ネットワーク庁は2001年頃からドイツテレコムに対するドミナント規制を強化するなどしたため、2006年には競合事業者のシェアがドイツテレコムのそれを一時的に上回ったが、2008年以降はVDSL回線、FTTx回線の全国整備を進めているドイツテレコムのシェアが再び上回っている。
最近ではボーダフォンやテレフォニカといった通信事業者も独自のDSL/VDSL回線を敷設したり、またケーブルテレビ事業者が自社ケーブル網のデジタル化を積極的に実施してトリプルプレイサービスの提供に乗り出すなど、これら競合事業者のシェアも拡大しつつある。
2011年9月現在、固定ブロードバンド市場においてドイツテレコムは約45%の加入者シェアを獲得しており、これにボーダフォン、ドイツテレコムのDSL再販業者であるUnited Internetが共に12%、テレフォニカが9%と続き、CATV最大手Kabel Deutschlandのシェアは5%に留まっている。
(2)CATVインターネット市場の問題点
ドイツではケーブルテレビの視聴世帯が全世帯の約5割を占めるが、CATVインターネット・アクセスは普及していると言えない。
2010年末現在、DSLの加入者シェアが87.8%あるのに対し、CATVインターネット・アクセスのシェアは11%に留まっている。
これは、通信事業者がADSL2+、VDSL、FTTx回線の敷設を積極的に進めきたのに比べて、ケーブルテレビ事業者はケーブル網のデジタル化に出遅れ、IP電話やインターネット接続などの付加価値サービスの提供を怠ったことが考えられる。
デジタル化が遅れた原因として、2003年までケーブル網を所有していたドイツテレコムが競争上の理由からケーブルテレビ事業を売却しなければならなかったこと、ケーブルテレビ事業者が地域毎に分散し、全国規模のケーブルテレビ事業者が存在しなかったこと、 ドイツのケーブルテレビ伝送経路がネットワークレベル1~ネットワークレベル5まで細分化されていることなどが指摘されている。
(3)次世代通信網に対する規制
次世代アクセスネットワーク(NGA)市場において、連邦ネットワーク庁は、ドイツテレコムに対しNGAを競合事業者に開放することを義務づけ、これにより一層の競争促進を図り、ブロードバンドサービスの普及を促進するとしている。
このため、同庁は、2007年6月、ドイツテレコムに対し、同社のダーク・ファイバー並びにケーブル管路を、一定の条件の下(技術的又は容量的な理由によりケーブル管路へのアクセスが不可能な場合)、競合に提供しなければならないとした。
2009年3月には、新規のクロスコネクト・キャビネットへのアクセスを競合に提供するよう義務付けた。
2011年1月には、同社が新規に敷設する光ファイバーについても競合に開放するよう決定した。
フランス
フランス・テレコムへの支配的事業者規制は続くものの、機能分離は当面なし
仏電子通信・郵便規制機関(ARCEP)はEUの市場支配的事業者規制の枠組みに従い、固定電話、ブロードバンド、携帯電話等7つの分野で2-3年ごとに市場シェアやネットワークの相互接続等の分析を実施している。 ここで「支配的事業者」に指定された事業者には、他の事業者のネットワーク接続希望に対し、非差別かつコストベースの料金で応じること等の義務が課される。2011年7月現在、旧国営の総合通信事業者フランス・ テレコムがほぼすべての分野で支配的事業者に指定されている。
2011年6月のブロードバンド・超高速ブロードバンド市場分析でも、フランス・テレコムが支配的事業者に指定され、今後3年間の義務が決定された。この決定により、フランス・テレコムにはADSL・ 光回線及び管路について非差別・コストベースの料金での接続義務を課せられることとなった。この決定は、「国民全体を2025年までにFTTHを中心とする超高速ブロードバンド回線に接続する」旨の 「国家超高速ブロードバンド計画」との関係で特に注目されている。ARCEPはこの決定において、特にルーラル地域でのFTTH(注)サービスの伸長を重視しており、今後18か月以内にこの地域でのフランス・ テレコムのインフラ開放が進まない場合、新たな非対称規制案を発表すると述べている。
なお、フランス・テレコムも英国BTのように、ホールセール部門とリテール部門の機能を分離すれば、回線接続料金の低廉化につながり、FTTHの伸長にも有効ではないかという意見に対し、同6月に、 ARCEPは「それは他の手段がもはやない場合に限る」と回答、当面は現行の規制で対応するとしている。
(注)Fiber to the Home。一般家庭への通信回線を光ファイバ化し、電話、インターネット接続、デジタルテレビ視聴等のサービスを提供する。 光ファイバケーブルの終端の場所によりFTTB(Fiber to the Building)、FTTCab(Fiber to the Cabinet)等の方式もあり、FTTxと総称される。
韓国
通信市場競争活性化のためにMVNO参入促進策
通信市場の競争活性化と消費者の選択権拡大のため、放送通信委員会は、2010年の「電気通信事業法」改正でMVNO(注)参入の根拠を整え、MVNO参入を奨励している。 我が国ではMVNOはデータ通信サービスが主流であるが、韓国政府は家計に占める通信料金低減策の一環として、音声通信MVNOによるプリペイド携帯市場活性化を奨励している。
MVNOの根拠法整備作業は、MVNOに貸し出すネットワーク料金を事前規制とするか、事業者間協議に任せる事後規制とするかで論争となり、2006年から足掛け4年の年月を要した。 MVNOへの卸売り料金は今後3年間を事前規制とし、最大手携帯キャリアのSKテレコム1社がMVNOへのネットワーク開放を義務付けられた。その結果、SKテレコムのネットワーク卸売り料金は、 現行の小売価格の31-44%の割引率でMVNOに貸し出すというガイドラインが告示で示された。さらに、MVNOの市場参入又は競争促進効果が不十分と判断される場合には、放送通信委員会が、SKテレコムとMVNOの双方と協議して大量購買割引を価格算定に反映することにした。
放送通信委員会はMVNOのスムーズな市場参入を支援するため、2011年5月にMVNOサービス開始支援策を発表した。 これにより、2012年6月まではSKテレコムがMVNOに在庫端末を支援、発信番号表示や映像通話・MMS等の通話関連15サービスを支援、MVNOの設備構築費用支払いを2012年末まで猶予することで合意に至った。 さらに、2011年7月に放送通信委員会が制定した卸売り提供ガイドラインでMVNOの大量購買時の割引基準が設定され、2011年度の場合、MVNOは最大53%までの割引価格で卸売りを受けられるようになった。
これらの参入促進政策の結果、2010年後半以降に音声又はデータ通信ベースのMVNO参入が相次ぎ、2011年7月現在で登録しているMVNOは13社となった。
一方、放送通信委員会は2011年6月、公正競争上の観点から、携帯キャリアの子会社によるMVNO参入にはストップをかけ、携帯キャリア子会社のMVNO参入制限のための法的根拠整備の検討を開始した。
(注)自社は通信インフラを所有せず、他社のインフラを借り受けて携帯電話サービスを実施する事業者。