モバイルトレンド
アメリカ
スマートフォン人気の拡大とモバイル・キャリアの戦略
2007年のiPhoneの発売以降、急速にスマートフォンの普及が拡大したことによって、モバイル・キャリアの事業戦略も変化の渦中にある。 スマートフォン端末市場の勢力図は、この数年間で急激に変化しており、2000年代後半にはNokiaとRIMが市場を牽引していたものの、 2011年にはAppleのiPhoneとGoogleのAndroid搭載端末の2強時代となり、主役が入れかわっている。 この変化の背景には、iPhoneとAndroid登載端末が、PC並の性能をもち、ウェブサイトへのアクセスや多様なアプリケーションの利用を実現したことがある。 これにより、スマートフォン端末市場に加え、アプリ市場も急拡大しているところである。
comScoreによると、2011年7月現在で、米国のスマートフォン利用者数は8,220万となっており、2011年6月末現在で3億超の移動体通信加入者数からみて、4人に1人以上がスマートフォンユーザとなっている。 このように、スマートフォンの利用拡大のなかで、モバイル・キャリアの事業戦略では、スマートフォンへの対応の重要性が増しているところである。 AT&Tでは、2010年6月に、モバイル・データ通信のトラヒックの急増に対応することを理由に、スマートフォン向けの定額無制限データプランの提供を停止し、従量制データプランに切り替えている。
スマートフォン経由でのデータ通信の利用拡大は、モバイル・キャリアの事業戦略にも影響を与えつつある。 AT&Tが5年間のiPhoneの独占販売契約をAppleと締結していたことで、AT&Tの移動体通信加入者数の伸びは、iPhone人気により、Verizon Wirelessの伸びを上回った。 その結果、2010年第4四半期にはVerizon Wirelessの加入者数を抜き、AT&Tが市場シェア第1位となっている。 なお、2011年2月には、Verizon WirelessがCDMA-2000方式に対応したiPhoneを発売、巻き返しを図っている。
米国では、2009年に移動体通信加入者数で市場シェア第2位だったVerizon Wirelessが同第5位のAlltelを買収し、米国最大の移動体通信事業者となっている。 一方、AT&Tは、2011年3月に市場シェア第4位のT-Mobileの買収を発表し、さらに移動体通信市場の寡占化が進展するのではないかとの懸念から、合併審査が難航、2011年8月には司法省が買収差し止めの提訴を行なっている。
現在、米国のモバイル・キャリア各社は、Android登載端末やWindows Mobile登載端末の新機種や低価格帯のスマートフォンのラインナップの拡充を行っているほか、 アプリストア市場への参入、モバイル通信網の強化を行っており、今後さらにスマートフォンの利用が拡大していくと思われる。
カナダ
カナダにおけるLTEサービスの導入
カナダでは全国域でサービスを展開する競争事業者Rogers Communicationsの移動体子会社Rogers Wireless(以下、ロジャース)が2011年7月から、 東部地域におけるインカンバント事業者Bell Canadaの移動体子会社Bell Mobility(以下、ベル・カナダ)が2011年9月から、 西部地域におけるインカンバント事業者Telusの移動体子会社Telus Mobility(以下、テラス)が2012年2月からLTEサービスの提供を開始している。
ロジャースは2011年7月にオタワ、9月にトロント、モントリオール、バンクーバーの国内3大都市でLTEサービスの提供を開始し、 国内主要都市から順次カバレッジを拡大している。ロジャースLTEの人口カバレッジは2012年2月時点で1,100万人に及んでおり、 2012年内には25以上の都市で2,000万のカバレッジを実現することを目指している。
ベル・カナダは2011年9月にトロントを始めとするオンタリオ州の主要5都市でサービスを開始、11月には東部島嶼部ノバスコシア州のハリファックス及びダートマスを含む3都市を加え、 自社の支配的事業地域における計8都市でLTEサービスを提供している。
テラスは2012年2月、バンクーバー、カルガリー、エドモントンの西部主要都市に加え、 トロント広域圏、モントリオール、オタワ、ハリファックス等の全国域の14都市で同時にLTEサービスを開始している。 テラスは引き続きLTE網の拡大を実施し、2012年末までに約2,500万人の人口カバレッジを実現する計画である。
上記3社によるLTEサービスは2008年5月に実施されたAWS(高度無線サービス)帯オークションにより取得した1.7GHz/2.1GHz帯を使用し、 最大速度が75Mbps、通常時は12~25Mbpsの通信速度で提供されている。サービス料金については、ベル・カナダは月額料金45CADを標準とし、 データ通信量により段階的に料金が変動する従量制プランを提供し、ロジャースは契約期間で区別されたデータ通信量制限付きの定額制プランを提供している。 一方、テラスは新たにLTEサービスの料金プランを設けず、現行の3G料金でLTEサービスの利用を可能としている。
イギリス
国のモバイル・ネットワーク事情-3G、Wi-Fi、LTE-
英国においては、2010年末時点で、モバイルコネクションの40.9%が3G接続可能となっている。 Everything Everywhereの誕生により同社は英国最大の3Gコネクションを抱えることになった。 3Gサービスのみを提供するオペレータの3UKは、2009年時点では最大の3Gコネクションを抱えていたが、 現在そのシェアは最小となっている。
2011年第1四半期には、英国でブロードバンドに接続している家庭の75%がWi-Fiルータを利用しており、 その多くがWi-Fiが利用できるモバイル端末(ほとんどがスマートフォン)で固定ブロードバンド回線を利用して、 契約プランのデータ上限を超えないようにすると同時に、より良好なブロードバンドのパフォーマンスを得ている (2010年第4四半期時点で、固定ブロードバンドの平均下り速度は6.2Mbps、モバイル・ブロードバンドは1.5Mbps)。
パブリックなWi-Fiホットスポットもモバイル端末のデータのオフロードに貢献している。 BTは英国最大のホットスポット・プロバイダで、BT FON 網は200万のアクセスポイントを持ち、 BTが自社で展開している公衆無線LANサービス「BT OpenZone」のホットスポット数は約4,000か所となっている。 BTのブロードバンド・サービス「BT Total Broadband」の契約者はBT FONと、 BTが既に展開していた自社のホットスポット「BT OpenZone」のサービスが利用可能で、 iPhoneとAndroid端末で無料のアプリをダウンロードすると、BTのWi-Fi網にアクセスができ、 現在地に最も近いホットスポットがわかるマッピング・サービスが利用できる。 2010年10月時点で17万人がこのアプリをダウンロードしているという。
O2、Orange、Vodafone、Tesco Mobileも自社のモバイル料金プランにWi-Fiホットスポットへのアクセスサービスを含めている。 2011年1月にO2は自社独自のWi-Fi網を構築すると発表し、2013年までに1万5,000か所に拡大するという。 同じ時期にSkyもWi-FiオペレータのThe Cloud(英国全土で5,000か所のホットスポットを保有)の買収を発表しており、 モバイル網に依存しないコンテンツ伝送サービスの可能性を模索している。
なお、現在の英国のモバイル網は3G/HSPA標準となっているが、LTEネットワークの構築も試行されており、 Ofcomは2012年第1四半期に800MHzと2.6GHzの周波数オークションを実施し、2013年から商用LTEサービスの提供開始を計画している。
オランダ
オランダの携帯電話データ通信料金をめぐる問題
全世界の携帯電話事業者が抱える共通の問題として、近年のスマートフォンの急速な普及にともなって、データトラフィックが急速に増大し、携帯電話ネットワークに大きな負担がかかっていることが指摘されている。 これによって、一部の通信事業者は、データ通信料金の定額制を廃止して従量制に移行した。また、一定のデータ通信量までは自由に通信が可能だが、それ以上は従量課金にする事業者も現れた。非常に通信量の多い利用者は、ごく一部のヘビーユーザに限られているので、一定のデータ通信量の上限を超えた場合は速度制限をかける事業者や、利用停止にするという手段を講じている通信事業者もある。
オランダにおいても、世界各国と同様に、この問題を抱えている。 2011年8月、オランダの主要携帯電話事業者3社は、それぞれモバイル・インターネットの料金を引き上げることを決定した。 英国ボーダフォン傘下のボーダフォン・オランダは、8月1日よりデータ通信の利用量を制限した料金プランを導入した。 ドイツ・テレコム傘下のTモバイル・オランダは、8月15日より、定額制サービスの提供を取りやめ、顧客は追加料金を支払うことで無制限にサービスを利用できるが、その際には通信速度は制限される。
市場シェアの約50%を占める最大手のRoyal KPN NV(KPN)では、2011年の第1四半期に、通話やテキスト・メッセージよりもSkypeのようなVoIPサービスやインスタント・メッセージの利用が上回った。 こうした事態を緩和するためにKPNはSkype利用者から追加料金を徴収しようとしたが、これは議会に法律違反であるとして退けられた。 そこでKPNは、9月から定額制を撤廃し、他社と同様にデータ通信量に上限を設定し、上限を超えた場合は、追加料金を徴収するように変更した。
しかし、このように3社が足並みを揃えるように定額制を廃止したことによって、政府から疑いの目を向けられることになる。 12月6日、オランダ競争庁は、移動体通信市場の主要3社(KPN、ボーダフォン、Tモバイル)に対して、携帯電話によるデータ通信料金の価格設定に関する共謀の疑いで調査を開始した。
前述のように、データ通信定額制の問題は、オランダに限らず全世界の携帯電話事業者共通の問題である。 しかし、オランダの特徴は、SkypeなどのVoIPやインスタント・メッセンジャーサービスの利用増加に伴い、通常の通話利用が減少し、携帯電話事業者の収益が圧迫されたことである。 日本でも「禁断のアプリ」としてSkypeを導入した携帯電話事業者が話題になったが、それによって通常通話の減少を招くことはなく、Skypeがデータ通信の主要な目的となった訳でもないようである。今後のオランダの動向は、注目に値するであろう。
スウェーデン
テリアソネラ、北欧・バルト海地域のデータローミング料金を値下げ
北欧の大手電機通信事業者テリアソネラは、2011年5月に自社が事業を展開する北欧・バルト海地域でデータローミング料金の値下げを実施した。
テリアソネラの調べによると、人々は海外旅行に際して自身の携帯電話を通じたインターネット接続を望んでいるが、その多くがコストを懸念し、データローミングをオフにしていたという。 しかし、値下げの実施により顧客は自身の携帯電話で気軽にインターネットを利用できるようになった。 テリアソネラ・モバイルサービス部門長ダールストロム氏は、「北欧・バルト海地域におけるモバイル・インターネット利用は、自宅からの接続と同じくらい(コスト面で)安全である。 こうした自社の取り組みを顧客も高く評価している」と語っている。
テリアソネラは「Surf Abroad」の枠組みで海外におけるデータローミング料金の設定を行っている。 個人契約では、1日あたりの上限が20MBで49スウェーデン・クローナ(約554円、付加価値税を含む)、企業契約では、1日あたりの上限が50MBで79スウェーデン・クローナ(約894円、付加価値税を除く)となっている。
ドイツ
増大するモバイルトラフィック対策‐インフラ強化と通信量抑制
独情報通信業界連盟(Bitkom)によると、ドイツ携帯電話ユーザの3人にひとりがスマートフォンユーザである。 2011年度のスマートフォン販売台数は1,180万台となり、前年から31%増えた。 2012年度には販売台数が1,590万台に達し、携帯電話販売の55%を占めると予測している。 このように、スマートフォンの普及はモバイルデータのトラフィック増加を引き起こしており、都市圏でネットワークの混雑が目立つようになっている。
最近のトラフィック増加による通信障害の事例としてはO2のケースがある。 2011年11月、O2は全国の主要都市とその郊外でネットワークの通信速度が遅い、つながらないなどの通信障害が発生していることを発表した。 原因はネットワークのオーバーロードである。同社のサービスに不満を感じた顧客がSNSやオンラインフォーラムに書き込みをしたことから、問題が発覚し、O2が対応に追われる事態となった。
スマートフォンによるトラフィック増加への対策として、携帯各社はインフラの強化とデータ通信量の抑制を挙げている。 インフラ強化策では具体的にはデータオフロードと次世代通信システム(LTE方式)への移行、一方のデータ通信量抑制策では速度制限措置を採っている。
例えば、ドイツテレコムは、Wi-Fiアクセスポイントを利用したデータオフロード対策を実施している。 現在、独自のWi-Fiアクセスポイントを国内8,000ヶ所に設置しているが、今後さらに増加させる一方、スマートフォン側にも3GとWi-Fiを自動切換えするアプリケーションを用意している。 同社のスマートフォン料金プランはWi-Fiを無制限で利用できるオプションがバンドルされている。 また、同社はLTEネットワークへの移行を推進している。 2011年7月よりLTEサービスをケルンで開始し、2011年末現在、対象地域をハノーバー、ブラウンシュバイクなど10都市に拡大している。
Vodafon D2は光インフラ事業者euNetworksと提携し、ベルリン、フランクフルト、ハンブルク、ミュンヘンにおいて、euNetworksの光ケーブルネットワークをバックホール回線として利用することに合意している。 今回の提携によりVodafoneは、euNetworksの大規模な光ケーブルネットワークに接続して、国内のLTEカバレッジを拡大する。 2011年末現在、1,800基のLTE基地局が設置され、LTEカバレッジはおよそ800万世帯に達する。 2010年12月から開始したLTEサービスには約10万人が加入している。
O2はドイツテレコムと携帯電話ネットワーク共有に関する長期契約を締結している。 O2は携帯電話基地局へのバックホール回線にドイツテレコムの光ケーブルネットワークを利用し、同社ネットワークの高速化、大容量化、カバレッジ拡大を図る。
データ通信量抑制について、米国の携帯キャリアが従量課金制へ移行するのとは異なり、ドイツでは従来から速度制限が採られている。 データ通信量が基準量に達した場合に、通信速度が遅くなる仕組みとなっている。 例えばドイツテレコムでは、1GB定額プランを利用しているスマートフォンユーザが1GBを超えるデータ通信を行う場合には通信速度を64kbps(ダウンロード)/15kbps(アップロード)に抑えている。 Vodafoneも同様の方策を行っており、500MB超えた場合は64kbpsの速度制限をかけている。
ハンガリー
Tモバイル・ハンガリー、ブダペストで商用LTEサービスを開始
日本ではNTTドコモが「Xi(クロッシィ)」の名称で、すでにサービスを展開している次世代携帯電話ネットワーク「LTE」であるが、現在、世界各国で次々とサービスが開始されている。
ハンガリーの旧国営通信事業者で、現在はドイツテレコム傘下の携帯電話事業者のTモバイル・ハンガリーは、2010年3月、スウェーデンの通信機器メーカー、エリクソンと共同で、LTEネットワークのサービスについて発表を行った。 同社では、来るべきデータ通信トラフィックの爆発的な増大を想定して、2010年の1月より、首都ブタペストにおいて、中小企業や法人のユーザーを対象として、水面下で試験運用を行なっていた。
2012年1月1日、ハンガリー初となる商用LTEサービスを、ブダペストの10地区で開始した。サービスはNet&Roll 4Gのパッケージで提供され、3月31日までのキャンペーン期間中の料金は、2年間の契約期間で、1ヶ月あたり2,000フォリント(約620円)となっている。 サービスの利用にはUSBモデムが必要で、Tモバイル・ハンガリーはHuawei E398を契約者(2年契約)に無料で提供する。 なお、1か月のデータ転送量の上限は40GBとなっている。
今後は2012年以内に、ブタペスト全域でのサービス展開を計画している。
フランス
3事業者がLTEサービス開始予定を発表
フランスでは2011年の9月と12月にLTEサービス事業免許の公募が実施され、4事業者に免許が付与された。 うち3事業者がサービス開始予定を2012年3月に発表している。
フランス・テレコムの移動体通信部門オレンジと仏市場シェア第3位の移動体通信事業者ブイグ・テレコムが3月22日に発表した計画では、試験サービスの開始は2012年6月、一般向けのサービス開始は2013年とされている。 試験サービス地域はオレンジがマルセイユ、ブイグ・テレコムはリヨンである。
市場シェア第2位のSFRも、上記の両社に次いで3月29日に、2013年からリヨンと南仏モンペリエで一般向けサービスを開始すると発表した。 SFRはまた、3G加入の増加とLTEサービス開始に伴うモバイル・トラフィックの増大に備えて、2012年半ばから同社の3GネットワークとWi-Fiスポットの自動接続サービスを開始するという。
なお、上記3社とともに2011年9月に2.6GHzでのLTE免許を取得したフリー・モバイルは、2012年3月現在ではサービス開始予定を発表していない。
ロシア
ロシアにおけるLTE導入
ロシアの携帯電話事業者のモバイル・テレシステムズ(MTS)は、2月2日、国内初となるモスクワ市とモスクワ州におけるLTE免許を取得したと発表した。 同社は、通信規制官庁である通信・マスコミュニケーション省が付与した同免許により、2595~2620MHz帯の周波数を利用してLTE-TDD方式によるサービス提供が可能になる。 また、免許条件の規定により、同社は、2013年12月29日までにLTE網の運用を開始しなければならない。 免許の有効期限は、2016年12月29日となっている。
同社副社長のAndrei Ushatskiy氏は、LTE免許の取得は、ロシアの次世代網の展開において重要なステップであると語っている。 また、同社では、2011年末にはネットワークの更新を行っていることから、モスクワ市・モスクワ州におけるLTEネットワークの迅速な展開が可能になっているとする。 また、同社では、サービス提供開始に必要な手続きが完了次第、GSM、3G、LTEのそれぞれのネットワークをシームレスに統合した無線サービスを展開していくとしている。
韓国
LTE躍進の一方、苦戦するWiBro。政府は新政策導入でWiBro建て直しを模索
(1)成長停滞に悩むWiBro
本格的モバイルブロードバンド時代到来を見越し、国を挙げてWiBro(モバイルWiMAX)開発に力を注いできた韓国では、携帯キャリアのSKテレコムとKTが世界に先駆けて2006年6月に2.3GHz帯利用のWiBroサービスを開始した。
しかし、両社は、WiBro開始とほぼ同時期に本格化したW-CDMA方式3Gサービスとの差別化を図れず、WiBro市場は低迷。2012年2月末時点の2社合わせたWiBro加入者数は約86万。このうち、KTの加入者が80万と大半を占める。
一方、2011年7月からキャリア3社は順次LTEを開始し、同年9月から対応スマートフォンの発売を開始し、2012年4月までに3社ともLTEを全国化という具合にLTEに全力を注いでいる。 4月時点のLTE加入者数は既に400万を超える。
KTは、2010年からのスマートフォン急速普及による無線データのオフロード対策として、トラヒックをLTE、Wi-Fi、WiBroに分散させる戦略である。 2011年3月にWiBro網を全国構築したKTは、オフロード対策としてのWiBro活用に力を入れたいところである。 しかし、韓国ではWiBro市場規模が小さいため、サムスン、LG等の国内メーカーは、国内向けのWiBro対応スマートフォンを作る計画が無く、WiBro対応端末の確保で苦戦している。
(2)不発に終わった第4の移動通信事業者選定とWiBro政策の立て直し
移動通信市場の競争活性化とWiBro活性化のため、放送通信委員会は2011年12月に、2.5GHz帯利用のWiBro事業者を審査で1社選定しようとした。
移動通信市場には携帯3社が参入しているため、新規参入するWiBro事業者は、第4の移動通信事業者と呼ばれている。
既にWiBro参入しているKTとSKテレコムは今後LTEに力を入れるため、WiBroへの投資意欲はさらに低くなることが予想されており、新規参入事業者にWiBro活性化の命運がかかっていた。
新規WiBro事業参入には、インターネットスペースタイム(IST)と韓国モバイルインターネット(KMI)の2コンソーシアムが申請をしたが、審査の結果、2者とも落選となり、新たなWiBro事業者参入政策は失敗に終わった。
放送通信委員会は、代案として当面の競争政策はMVNO活性化に力を注ぐとしているが、WiBro政策は漂流状態となり、政策建て直しが急務となっていた。
その後、2012年4月、知識経済部、放送通信委員会など関係省庁が合同でWiBro建て直し政策「第4世代移動通信(WiBro Adv.)装備産業技術競争力確保対策」を発表。 この政策の骨子は、LTEの補完として2015年までに世界モバイル市場の10-20%の需要が見込まれるWiBro市場で韓国が主導権をとっていこうというもの。 WiBroはLTEに比べ、基地局・装備・端末・モデムの産業全部分にわたって、競争力のある国内中小企業のエコシステムが構築されているため、その戦略的発展を図ろうとするものである。 新たな梃入れ策がWiBro活性化につながるかが注目される。
シンガポール
シンガポールにおけるLTEサービスの導入
シンガポールでは主として移動体部門で事業を行う競争事業者であるM1が2011年6月から、インカンバント事業者のシングテルが2011年12月から商用LTEサービスの提供を開始している。 また、もう一つの競争事業者であるスターハブも2012年後半には同サービスの提供を開始する予定である。
シングテル、M1ともに中央業務地域の金融地区からLTEサービスの提供を開始し、シングテルについては都市部の代表的な商業施設でもサービス利用を可能としている。 両社ともの2012年内に全国的なLTEカバレッジを構築する計画であり、シングテルは2012年中に約80%にまで、2013年には約95%にまで人口カバレッジを拡大するという目標を示している。
シングテル、M1ともにLTE使用帯域は2.6GHz帯であり、M1は1.8GHz帯を併せたデュアルバンドでの提供となる。 2012年1月末時点では両社のLTEサービスはUSBモデムでの利用に限られており、シングテルは最高通信速度75Mbps、通常時の通信速度は約3.4Mbps~12Mbpsとなるサービスを月額料金69.90SNDで提供する。 また、M1は最大通信速度を2012年末までにサービス開始時の75Mbpsから150Mbpsに引き上げる予定であり、サービスは既存の法人加入者のみを対象に月額料金59.4SGDで提供される。
なお、スマートフォン及びタブレットの提供については両社ともに準備中であり、M1は2012年後半までの市場投入を表明している。
中国
移動体サービス加入が1億人を突破、LTEもサービス準備が進展中
中国の情報通信分野の主管庁「工業・情報化部」(MIIT)が発表した通信統計によれば、2011年9月末現在、国内携帯電話加入者数は約9億5000万、普及率71.1%となり、 うち第三世代(3G)移動体サービス加入者は約1億200万と、1億の大台を突破した。
移動体全体に3Gが占める割合は約10.8%と、成長の途上にあるが、同年1-9月期における加入数増分5,500万は、3G加入者全体の約54%を占めるなど、2011年に入り3G市場は急増傾向にある。 また、同期の新規加入者数との比較でも、同分野全体の新規増分9,800万に対し3Gの増分は約56%を占めている。
MIITの電信研究院による分析では、3Gサービスの急速な成長の主な要因にスマートフォンの普及が挙げられている。 2011年1-9月期に中国国内におけるスマートフォン端末の生産台数は、前年比倍増の7,000万台で、携帯端末全体の22%を占めている、と報告されている。 OSとして、Android、Windows Phone、Symbian、OPhone(中国移動の独自OS)がサポートされているが、そのうち、Android OS対応のスマートフォンが全体の80%を占めている。 3Gサービス市場が潜在性を有してることに加え、中興通訊(ZTE)や華為技術(Huawei)を始めとする国内有力ベンダが1,000元端末と呼ばれる低価格帯のスマートフォン端末を投入しているところから、 スマートフォンを牽引力として、3G加入者の増加傾向は今後も続くものと見られている。
通信技術では、時分割(TD)方式による中国の独自技術の開発が進められている。 中国移動(チャイナモバイル)が、TD-SCDMA方式による3Gサービスを提供しているほか、4GのLTEに関しても、TD-LTE方式による商用サービスを2012年中に提供することを目指して、上海、杭州、南京、広州、深セン、アモイ、北京などの主要都市で試験網を構築中である。 中国移動を中心に、システムベンダーからは、華為、ZTE、大唐、ノキア・シーメンス、上海ベル、モトローラ、エリクソン、普天、烽火、新郵通の10社が、チップメーカーからは、海思半導体有限公司(HiSilicon Technologies)、創毅視訊 (Innofidei)、クアルコム、Altair、Sequans、中興微電子の6社が参加している。
試験網の構築計画は、2つの段階で進められる。第1段階は、基地局1,210局を構築、周波数は2.3GHz帯及び2.6GHz帯を利用して、TD-LTEのシングルモード・システムの運用を検証するというもので、中国移動が、2011年9月末に、TD-LTEの試験網の第1段階が終了したことを発表している。 第2段階では基地局を3,400局以上に増設し、TD-SCDMAを含むマルチモードのシステム運用を検証する予定。
| キャリア | 加入者数(万) | 1-9月期増数(万) | ||
|---|---|---|---|---|
| 移動体全体 | うち3G | 移動体全体 | うち3G | |
| チャイナ・ユニコム(中国聯通) | 18,903 | 3,023 | 2,161 | 1,617 |
| チャイナ・テレコム(中国電信) | 11,695 | 2,843 | 2,643 | 1,614 |
| チャイナ・モバイル(中国移動) | 63,352 | 4,316 | 4,950 | 2,246 |
| 計 | 93,950 | 10,182 | 9,754 | 5,477 |
オーストラリア
オーストラリアにおけるLTEサービスの導入
オーストラリアでは、テルストラが2011年9月からキャンベラ周辺の首都特別地域、シドニー、 メルボルン等の主要都市中心部及び約30の地方市区においてLTEサービスを開始、同年12月末までにこのカバレッジに約50市区を追加している。 一方、オプタスは2011年9月にLTEサービスの提供計画を発表、2012年4月よりニューサウスウェルズ州のニューキャッスル、 ポート・スティーンブンス、ハンター渓谷及びマッコーリー湖周辺で、シドニーやメルボルン、パースといった主要都市では2012年中盤からLTEサービスを開始する計画である。
両社ともにLTEネットワークには1.8GHz帯を使用するが、オプタスはアナログTV放送跡地である700MHz帯もLTEサービスに使用することを計画しており、ACMA(通信メディア庁)による試験用免許の付与の下、サービス試験を実施中である。 一方、テルストラは現行の3Gネットワークである「Next G」をアップグレードすることでLTEサービスを提供する計画であり、1.8GHz帯とHSPA+の850MHz帯に向けたデュアル端末を提供することで、既存加入者の利便性を確保する意向である。 なお、現行のテルストラによるLTEサービスの最大通信速度は40Mbpsで、標準的な通信速度は1Mbps~10Mbpsとされている。
他方、オーストラリア国内の90%の建物にFTTHサービスを提供することを目標とする全国ブロードバンド網(NBN)計画においても、残り10%に該当するルーラル地域にブロードバンドを提供する手段の1つとしてLTE技術が採用されている。 NBN計画においてLTEは最大通信速度12Mbpsの固定無線アクセスサービスとして提供され、2011年2月に衛星放送事業者オースターから買収した2.3GHz及び3.4GHz帯、加えて同年7月にACMAが実施したオークションにより取得した2.3GHz帯を使用しサービスが提供される。 NBNの運営事業者であるNBN Coは2011年8月に最初にLTE固定無線サービスを提供する5市区、バララット(ヴィクトリア州)、ダーウィン(北部準州)、ジェラルドトン(オーストラリア州)、タムワース(ニューサウスウェルズ州)、トゥーンバ(クイーンズランド州)を発表し、2012年中盤にもサービスを開始する予定である。
ニュージーランド
ニュージーランドの移動体通信市場における低料金競争
ニュージーランドではテレコム・ニュージーランド、ボーダフォン・ニュージーランド、2degreesが移動体通信における設備事業者である。 2009/2010年度の市場シェアはボーダフォンが約49%、テレコム・ニュージーランドが約42%と両社で市場の90%以上を占めるが、2009年8月に市場に参入した2degreesが創業1年弱で約8%のシェアを獲得し、市場の趨勢に大きな影響を与えている。
2degreesはプリペイド専門の事業者であり、低料金プランを中心にサービスを展開している。 ニュージーランドでは移動体通信サービスの約67%がプリペイドサービスを利用しており、2degreesの急速な市場拡大は2大事業者のプリペイド利用者がMNPにより移転した結果である。 2大事業者は加入者全体のうち、ボーダフォンが約70%、テレコム・ニュージーランドが約60%のプリペイド利用者を抱えており、これら利用者の流出を防ぐための低料金戦略が課題となっている。
テレコム・ニュージーランドは旧国営事業者ではあるが、移動体通信市場では多国籍事業者であるボーダフォンに遅れをとっており、同時に加入者流出も引き続き懸念されている。 このような状況の中、テレコム・ニュージーランドはプリペイドかつ低料金のサービスを専門に提供するサブブランド「Skinny」を立ち上げることを決め、料金競争の主導権を取り戻そうとしている。
Skinnyによる標準料金プランでは1分当たりの通話料金が0.39NZDと2degreesの0.44NZDよりも低く抑えられることとなった。 しかし、ボーダフォンも含めた3社の低料金競争は今後、一層加熱すると予測される。