メディア融合
フランス
トリプルプレイの浸透により世界一のIPTV普及率
2010年末現在、フランスのIPTV視聴世帯は640万、普及率は20.6%である。 これは世界全体の3%、欧州の5.8%に比べて格段に高く、2004年のサービス開始以来、世界第1位の地位を維持している。
フランスのIPTVの普及率の高さの背景に、通信事業者のインターネット接続サービスの主流が、2000年代後半からIP電話、 テレビ番組配信と組み合わせたトリプルプレイになったことが挙げられる。 国内で固定通信事業を行っている4社はすべてトリプルプレイを実施しており、標準的なパッケージは、 「最大通信速度20Mbps台のADSL接続+通話時間無制限のIP電話+100チャンネル以上のTV番組配信」で、月額料金は30ユーロ台である。 2010年からは、これに携帯電話接続サービスを加えたクワッドプレイも開始されている。
IPTVのチャンネル構成は事業者や契約により異なるが、地上デジタルの無料放送はどの契約でも視聴できる。 有料放送は、国内唯一の大手であるCanal+の提供する映画やスポーツのパッケージが主であるが、 フランス・テレコムのインターネット部門オレンジは、同社の加入者向けに独自のパッケージを提供している。
携帯電話端末へのテレビ番組配信については、携帯電話網を通じてのサービスが実施され、地上デジタル放送の無料チャンネルを中心に、 20チャンネル以上の視聴が可能な契約が存在する。 放送電波の携帯端末での受信によるモバイルテレビについては、2008年に16のテレビ局に免許が付与された。 しかしながら、通信事業者と放送事業者の間で、サービスコスト負担に関する了解が成立せず、2011年9月現在、サービスは開始されていない。
韓国
注目を集めつつあるデジタルサイネージ・ビジネス
TV、コンピュータ、ケータイに次ぐ第4のメディアと呼ばれるデジタルサイネージ・ビジネスが最近注目されている。 KT経営研究所によると、韓国のデジタルサイネージ市場規模は2009年の1,000億ウォンから2015年には3,000億ウォンに成長する見通し。デジタルサイネージ・ビジネスに参入している主要な事業者は、通信キャリアのKTとLG U+、デジタル放送サービス企業のCJパワーキャストなど。 この他に、NHNやDaumといった大手ポータルなどのインターネットサービス事業者も参入している。 主要な事業者のデジタルサイネージ展開状況は次のとおり。
■KT
2005年から大学・大病院・マンションを中心に事業を展開しており、最近は地下鉄やバス停にも事業展開範囲を拡大中。
KTのサイネージは2012年2月現在3万9,000台だが、2012年中に4万2,000台に増やす計画。
国内最大手ポータルNaverを運営するNHNとデジタルサイネージのプラットフォーム、コンテンツ面で提携している。
■LG U+
2011年10月から居住・事務空間でデジタルサイネージ・ビジネスを開始し、約1万3,000台のサイネージを運用中。
2012年2月からCJパワーキャストとデジタルサイネージ・メディアの広告営業権共有などで提携。
■Daum Communications
2010年から「デジタルビュー」ブランドでデジタルサイネージを展開中。
ソウル地下鉄1~4号線やKORAIL首都圏電鉄など177の鉄道駅で970台のデジタルビューを運用中。
デジタルビューは46インチのメインタッチパネルと17インチの補助タッチパネルで構成され、地図、地下鉄総合情報、ニュース、エンターテインメント等のリアルタイム情報とIP電話サービスが利用できる。
政府(放送通信委員会)もデジタルサイネージの成長性に着目しており、今後は、家庭(TV)-モバイルデバイス(スマホやスマートパッド)-屋外(デジタルサイネージ)を統合管理するシステムを作り、エコシステムを構築したい考え。 一方、国内のデジタルサイネージ技術はこれまでディスプレイ主体であり、標準化と試験認証のためのシステム構築が遅れている。 今後デジタルサイネージ・ビジネスが成長軌道に乗るためには、標準化、広告効果測定、最適なコンテンツ提供、デジタルサイネージ環境に合わせた法整備、といった課題をクリアする必要がある。
中国
CMMB規格モバイル・テレビ、ネットワークが全国カバーへ
CMMB(China Multimedia Mobile Broadcasting)は中国独自の知的財産権を持つモバイル・テレビの規格で、「天地一体」(衛星+地上ネットワーク)で構成されたモバイル・テレビ・システムである。 全国放送の番組は原則衛星を利用するのに対して、受信の難しい地域、人口密度の高い都市部などは、UHF帯(470-798MHz)での放送を利用するという具合にすみ分ける。 また、地方放送局の制作した番組は、8MHzの幅を利用し、8~10チャンネルの視聴が可能となる。CMMBは、国土が広大でかつ人口分布のバラつきの大きい中国の実情に適したシステムだとされる。
CMMBは2007年10月に上海で試験サービスを成功させ、北京オリンピックの開催に合わせて受信端末を無料配布した試験的商用サービスを実施し、知名度アップにつなげた。 その際に使用された携帯端末は中国移動のTD-SCDMA方式のトライアル端末である。 このことから、TD-SCDMA方式を全力でサポートする政府の方針と相まって、モバイル・テレビの規格選定においてSARFTと対立していた工業・情報化部も、結局、CMMB機能つきのTD-SCDMA (注)端末にネットワーク接続許可を出さざるを得なかった。現在、移動電話端末への搭載はTD-SCDMA方式に限られており、2011年6月までの同方式の端末出荷台数は1,000万台に達した。
CMMBの運営会社として、2008年9月に中広衛星移動放送有限公司が設置されたが、2009年8月に中広伝播(CBC)に名称を変更し、ブランド名を「睛彩」とした。 2011年6月現在、CBCは31あるすべての省・直轄市・自治区に1,000以上の発射台を構築し、300以上の都市をカバーしている。CCTV-1(総合)などテレビチャンネルのほか、 中国国際ラジオ局(CRI)など四つのラジオチャンネルの視聴が可能となっている。
今後の目標については、CMMBネットワークを拡張すると同時に、コンテンツも強化するとしている。 番組コンテンツを豊かにし、地震等の災害に関わる応急放送サービスをはじめとする公共情報や生活情報を提供する。 また、コンテンツの多様化を図り、音声、動画の他、ミニブログの情報も収集・編集して放送することが計画されている。
一方、2009年1月に予定されていた衛星の打ち上げが大幅に遅れており、いまだにスケジュールが決まっていない。 打ち上げの遅れがいずれサービス全体の展開に影響が出てくることも懸念されるが、背景には、行政機関間の調整がついていない事情がささやかれている。
(注)中国独自の第3世代携帯電話方式。