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大手事業者の合併・買収・国外進出

アメリカ

グーグルによるモトローラ・モビリティ買収

グーグルは、2011年8月、大手端末メーカーのモトローラ・モビリティを125億ドルで買収することを発表した。 この買収は、両社の取締役会によって満場一致で承認される必要があるほか、欧州委員会、米国、カナダ、中国、イスラエル、ロシア、台湾、およびトルコにおいては独禁法審査に基づく承認が必要となっている。 司法省では、Android搭載端末を製造するメーカーにグーグルが競合社のサービスを使わないよう妨害した事実があるかなどの調査を実施、2011年9月には、米国では司法省からモトローラ・モビリティとグーグルのそれぞれに対して、追加情報の提出を求めた。 両社では、買収の完了を2011年末または2012年早々と見込んでいる。

同買収の目的は、モトローラが持つ1万7,000件の特許を取得することが大きな理由となっている。 近年、携帯端末にかかる特許を巡る紛争が激化しており、グーグルでは、モトローラを買収することで特許紛争の回避を狙っていると見られている。 ただし、同社会長のシュミット氏は、買収は特許の取得のみが目的ではないとして、ハードウェアとソフトウェアを統合できる分野を持つことも目的であるとしている。

グーグルはモトローラ・モビリティ買収でSTB (セット・トップ・ボックス)事業も手に入れるが、これによりGoogle TVの普及を拡大することも期待されている。 Google TVの人気は伸び悩んでいるが、Google TV対応端末の価格が高いことに加えて、大手メディア企業がGoogle TV経由での番組アクセスを拒否していることも影響していると見られる。 しかし、モトローラのSTB事業を買収することで、CATV事業者との関係を受け継ぐ。 今後、同社が買収したモトローラの事業を基盤として、どのような事業やサービスを展開するのか注目される。

イギリス

Everything Everywhere、中国電信ヨーロッパとMVNOパートナーとして提携合意

Everything Everywhere(オレンジUKとTモバイルUKの統合会社)は2012年1月4日、 中国電信ヨーロッパ(China Telecom Europe)が同社のネットワークを利用してMVNOサービスを開始すると発表した。 中国電信ヨーロッパは、中国電信が100%資産を統括するEMEA(欧州中東アジア)地域向け子会社。

このパートナーシップで中国電信ヨーロッパは中国以外の国で初めてMVNOサービスを提供することになる。 両社の戦略合意は、Everything EverywhereのMVNOサービスアグリゲーター「Transatel」を通して結ばれたもので、 中国電信ヨーロッパは、2012年第1四半期中に、主に在英中国人・事業所や中国人旅行者や学生をターゲットにモバイルサービスを展開する予定となっている。

Everything Everywhereの卸・M2Mの副代表オーバトン氏はこの提携合意について、中国電信ヨーロッパが英国におけるMVNOパートナーとして同社が選ばれたことを喜んでいると説明している。

スペイン

テレフォニカのデジタル戦略

スペインにおいて、最大の市場シェアを持つ通信事業者は、テレフォニカ(Telefonica)である。 テレフォニカは、以前は国営の電気通信事業者であったが、1997年2月に実施された政府保有株式の民間放出により、完全民営化を果たした。

テレフォニカは、スペイン最大の通信事業者であるだけでなく、世界中で事業を展開しているグローバル・メガキャリアの一つである。 テレフォニカ・グループは世界の23か国に進出しており、収入のうちおよそ70%以上をスペイン国外の事業が占めている。 以前はラテンアメリカを中心にした海外戦略を展開してきたが、2005年にチェコのCesky Telecomを、2006年に英国のO2を買収し、さらに中国網通にも資本参加するなど多面的戦略を展開している。 2011年9月現在で、全世界の加入者数は約4億6.900万人であり、これは欧州では第1位、全世界でも第5位の通信事業者である。

2011年9月5日、同社は組織の再編を発表した。 再編の目的は、新しいデジタル世界におけるグローバルリーダーとしての地位を強化することであり、そのために意思決定プロセスを迅速化し、組織のバランスを最適化し、合理化することにある。

再編の3本柱は、
  • 新しいビジネスユニット「Telefonica Digital」をロンドンに設立し、支社をマドリード、サンパウロ、シリコンバレー、及びアジアの複数の戦略的拠点に置く。 Telefonica Digitalには、テレフォニカの多くの子会社から2,500人の人材が集められる。
  • ビジネスの地理的混合を合理化し、バランスを最適化するため、「欧州」と「ラテンアメリカ」という2つの大きなブロック構成とする。(スペイン事業は欧州に含まれる)
  • 事業の収益性及び持続可能性を確保するために、各部門の購入を統括する「Global Resources」を設立する。

このような組織再編が行われる以前から、同社は単なる通信サービスの提供にとどまらずに、デバイス分野、コンテンツ分野、ソリューション分野にも積極的な取り組みを行ってきた。 以前にはAppleのiPhoneに対抗する形で発売された、PDAの老舗メーカーのPalm「Pre」の欧州での独占販売権を保有していたり、またNokiaとIntelが中心となっていたLinuxベースのスマートフォン向けオープンソースOSである「Meego」にも積極的な支持を表明していた。 しかしながら、Palmの「WebOS」や、Meegoの将来が不透明になった現在では、今後のこれらのOSに対する関与は不明である。

その一方で、同社は独自の試みを含めて、様々なデジタル戦略の方法を模索している。2011年6月には、電子書籍端末「Movistar ebook bq」を発表した。 Movistar ebook bqは、この種の機器の製造・販売に幅広い経験を持つスペイン企業Mundo Readerとテレフォニカが共同で考案したものである。 Movistar ebook bqの特徴は、米SiPix製の6インチの最新式タッチパネル・ディスプレイ「SiPix Glass UltraResistive」を採用したことにある。 これは長時間の読書を可能にするばかりでなく、ウェブブラウズやその他の機能(内蔵辞書や読書中の音楽鑑賞など)へのアクセスを提供し、さらに、スマートフォンやタブレットに比べてバッテリー駆動時間が格段に長く、頻繁に利用しても数日間持つという。 また同時に、テレフォニカは、国内の大手出版社と密接に連携しつつ、さまざまな電子書籍を読めるようにするための活動を行っている。

さらに2011年12月には、自社ブランドのAndroid搭載スマートフォンを中南米で販売すると発表した。 テレフォニカの携帯電話部門のブランド「Movistar」から発売される「Movistar ONE」は、クリスマスシーズンの中南米各国(メキシコ、コロンビア、ウルグアイ、チリ、グァテマラ、エルサルバドル、パナマ、ニカラグア)でまず発売され、その他の中南米の国では、2012年第1四半期に発売予定となっている。 同端末は、Android2.3(Gingerbread)を搭載し、通常のウェブブラウズ、eメール、SNSや位置情報サービス、Android Marketが利用できるほか、Movistarの独自サービスやコンテンツも利用可能となっている。 同端末の仕様は、2.8インチのタッチスクリーン、Wi-Fi、GPS、Bluetooth、2Mピクセルカメラ搭載、ダウンロード速度は最高7.2Mbpsである。 なお、この端末は、2010年に締結されたZTEとテレフォニカ間の協力合意のもとで開発された。

現在、スマートフォンやタブレットデバイス市場において、それらの市場のリーダとなってビジネスを統括しているのは、端末メーカーであり、またその上で稼動するOSを開発しているソフトウェア・ベンダーである。 一方、通信キャリアのプレゼンスは低下しているとも言えよう。 このようにテレフォニカのような巨大な通信キャリアが、端末やサービスといった方面で、どのような活躍を見せるのか、今後が注目される。

ドイツ

ドイツテレコム、米国の携帯電話事業を売却‐FTとの協力関係を強化

ドイツテレコムは2011年3月、米国の携帯電話事業であるT-モバイルUSAを、米国第2位の携帯キャリアAT&Tに390億ドルで売却することに合意した。 米国の規制当局の承認が得られれば、2012年上半期にも完了する計画だ。

ドイツテレコムは現金250億ドルを受け取るほか、AT&T株式の最大8%と取締役会の1席を得ることになる。 同社は2001年に米VoiceStreamとPowertelを計280億ドルで買収し、その後T-モバイルUSAに改称した。 通信網の拡充に多額の投資を実施したものの、最近では利用できるエリアが限られていること、人気のスマートフォンを獲得できなかったことなどを理由に顧客離れが進み、 株式上場や、米国第3位のSprintへの売却が噂されていた。

2011年8月現在、米国司法省は競争上の理由からこの買収計画の差し止めを求める訴訟を起こしている。 同省によると、「Verizon、AT&T、Sprintの3社で米携帯電話市場の9割以上を占めることになり、寡占化が進むことで競争が著しく低下する恐れがある」と指摘。 また司法省とは別に同買収の可否を審査しているFCCもこの買収に懸念を示す声明を発表している。 これに対してAT&Tは徹底抗戦する構えを見せている。

ドイツテレコムは、業績不振が続いていた英国の携帯電話事業について、フランステレコム(FT)と共同で合弁会社を立ち上げることに合意し、 2010年4月に両社がそれぞれ50%の株式を保有する新会社「Everything Everywhere」を設立している。 また、同社はT-モバイルUSA売却後、経営資源を中欧・東欧エリアの事業に集中する方針を示しており、ポーランド、オーストリア、ルーマニアでの携帯ネットワーク共有に関してFTと提携した。

さらにドイツテレコムとFTは協力関係の強化を図り、2011年2月に両社の業務提携の範囲を、欧州地域内でのネットワーク共有、Wi-Fiローミングサービスの向上、通信機器の統一化、M2M通信に関する標準の開発、 成長分野(ホームメディアサーバ/医療サービス/高度道路交通システム/動画配信サービスなど)での技術協力に拡大すると発表した。

フィンランド

DNAがWelhoの買収によりフィンランド最大のケーブルテレビ事業者に

固定電話、モバイル、ブロードバンドなど各種サービスを提供するDNAは、電気通信市場ではテリアソネラとエリサに次ぐ3番手の位置にある。 ただし同社はケーブルテレビ事業ではフィンランドで最大の市場シェアを占めている。

2010年7月、DNAは北欧のメディアグループSanomaの傘下企業Swelcomが運営していたケーブルテレビ事業者のWelhoを買収した。 フィンランドのケーブルテレビ市場で最大のシェアを持ち、ヘルシンキ首都圏で堅実な事業を展開してきたWelhoの買収によって、 DNAは市場の43%を占めるフィンランドで最大のケーブルテレビ事業者となった。 DNAの関係者は「Welhoの買収によりDNAは多様かつ広範なサービス資産を抱えることになる」とコメントしている。

DNAは2011年5月にWelhoの自社統合を完了し、DNA Welhoブランドでのサービス提供を開始した。 テレビサービス「DNA Welho TV」は18のHDチャンネルを含む約160チャンネルを提供、顧客による選択を重視した各種パッケージを販売している。 固定ブロードバンドサービス「DNA Welho Broadband」はDNAがカバーする全域で利用可能で、最大速度200Mbpsの通信サービスを提供している。

フランス

フランス・テレコムは欧州事業を整理、中東・アフリカへの進出を進める

旧国営総合通信事業者フランス・テレコム(FT)は、1990年代後半から、移動体通信事業を中心に国外市場での買収活動を積極的に進めている。 2011年末には、子会社・関連会社数は約30、その大半が同社の携帯・インターネットのブランド名「オレンジ(Orange)」を冠して事業を行っている。 進出地域は、スペイン、ポーランド、ルーマニア等の南欧・東欧圏のほかは、中東・アフリカの旧植民地系の国々が多い。

表 フランス・テレコムの進出地域
(2012年3月現在)
地域 国名
欧州 スペイン、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、アルメニア、モルドバ、ルクセンブルク、ベルギー、英国*
中近東 ヨルダン、バーレーン
アフリカ エジプト、ボツワナ、カメルーン、象牙海岸、赤道ギニア、セネガル、マダガスカル、マリ、ギニア・ビサウ、ギニア共和国、 中央アフリカ共和国、ケニア、ニジェール、ウガンダ、チュニジア、モロッコ、モーリシャス、コンゴ民主共和国
中南米 ドミニカ共和国
オセアニア バヌアツ、ニューカレドニア
*2010年にドイツ・テレコム子会社T-Mobil UKと合併(出資率は50%ずつ)、ブランド名は「Everything Everywhere」
出所:www.orange.com

FTは2010年7月、2011-2015年の事業計画「Conquest2015」を発表、国外市場への積極的進出を目標の1つに掲げている。 この計画では、特に移動体部門で、途上国市場への積極的進出を図り、新興国での加入者を2倍にするとしている。 世界全体の加入者については、約1.5倍の3億人を目指している。

2011年からは、アフリカ市場への更なる進出を目指して、コンゴ民主共和国のコンゴ・チャイナ・テレコムを買収した。 また、エジプト子会社MobiNil(持株比率70%)の株式全取得を目指して現地の他の株主との交渉が続いている。 一方欧州では、規模の小さな子会社を売却してポートフォリオの整理と投資資金の獲得を図っている。 2012年2月にはオレンジ・オーストリア(持株比率35%)を香港通信大手のHutchisonに売却することが決定、 同3月にはオレンジ・スイスの全株式(持株比率100%)を投資会社Apaxに売却した。

2011年末の業績発表で最も売上高の伸びた地域は、政変のあったエジプトとコートジボワールを除くアフリカで、 前年比6.8%を記録した。一方、欧州諸国は携帯市場の競争の進展に伴うサービス価格の引下げを反映してやや下降気味である。 加入者数については、全世界・サービスの加入者数が前年比8.0%増の2億2,630万になった。 携帯電話加入者(全世界)は前年比前年比11.3%増の1億6,740万、特に伸長が大きいのは中東・アフリカ地域で、前年比26.4%増の7,460万に達した。

中国

中国電信と米AT&T、戦略的提携協議を締結し、業務提携範囲を拡大へ

中国電信と米AT&Tは2011年11月、戦略的提携協議を締結し、今後、両社は両国間のデータ通信ネットワークを相互接続させ、ユーザにより質の良いWi-Fiローミングサービスを提供することで合意達成した。

両社間の事業協力の始まりは2000年まで遡る。 当時、両社及び上海市情報投資会社と共同で上海信天通信有限公司を設立し、AT&Tは中国においてVPNを含む通信サービスを提供するようになった。

2002年に、中国電信は米国に設置された事務所を子会社に昇格させ、米国通信市場の開拓も視野に入れながら、国際専用線、IDC、VPNなどを中心としたサービスを現地顧客に提供し続けた。 2010年までの同子会社の売上高は年率40%のペースで順調に伸びてきている。

今回の協議では、両社はインフラ及び資源の共同利用を通じて、コストを削減し、ユーザのサービス利用環境を改善し、各種アプリをはじめ、HDテレビ会議やクラウドコンピューティング・サービスといった市場の共同開拓も目指す。

協議に関する具体的な内容は次のとおりである。
  • 中国電信と米AT&Tは、米国における両社のデータ通信ネットワークの相互接続を行い、海外進出した中国企業に対して一体化した情報サービスを提供する。
  • 中国電信との提携を通じて、米AT&Tはネットワーク・技術・コスト等の面を見直し、多国籍企業に対してより質の高いサービスを提供する。
  • 両国外の市場を共同開拓する。
  • 双方の顧客により良いWi-Fiローミングサービスを提供する。
  • 企業間業務プロセスを簡素化し、効率化を図る。