ICT利活用
アメリカ
米国における電子政府ポータル・サイト「usa.gov」のクラウド化
米国では、連邦政府機関のポータル・サイトとして、usa.govを開設していたが、オバマ政権の発足直後の2009年5月、 同サイトがリニューアルされている。同施策は、オバマ政権における連邦ITシステムのクラウド化の一環として実施されており、 クラウド化によるコスト削減やモバイル・アプリ提供、ソーシャル・メディア対応等のサービス向上が図られている。
Usa.govの前身は、Firstgov.govで、2007年1月からusa.govの名称となっている。 同サイトは、年間ビジター数が1億人以上、保管文書数が5,000万件以上という巨大なサイトであり、 システムダウンが頻発していたほか、導入していたブレード・サーバ・システムが非効率だったことから、クラウドへの移行が検討・実施された。
同移行を受注したのは、Terremark WorldwideというITシステム事業者である。同社は、usa.gov向けにIaaSの「Enterprise Cloud」を提供、 連邦調達局(GSA)は、これにより同サイトのコストが50%削減されたとしている。同社によると、既存システムも仮想化にVMWareを仕様、 同社の仮想化も同じくVMWareを利用していたことから、移行には10日間しかかからなかったという。
また、このリニューアルでは、検索エンジンにMicrosoftのBingが採用されたほか、 政府データにアクセスすることができる18の無料携帯アプリが提供された( http://apps.usa.gov/からアクセス可能)。 このモバイル・アプリとしては、usa.govのモバイル版のほか、FCCのモバイル・ブロードバンドの速度計測アプリ、 代替エネルギーを提供場所のロケーター等がある。なお、usa.gov以外でも政府機関はモバイル・アプリを提供している。 2010年6月末現在、こうしたアプリは111個となっている。
- 米国におけるクラウド・サービス関連政策の動向 (PDF:別ウィンドウで開きます)
EU
EU統計局、世帯におけるインターネット利用に関する調査を公表
2011年12月14日、EUの統計局であるEurostatは、EU27か国、およびアイスランド、ノルウェー、クロアチア、マケドニア、トルコの世帯におけるICT利用に関する調査の結果を公表した。 同調査によると、2006年3月末に49%であったEU27か国の世帯インターネット利用率は、2011年3月末には73%となった。 また、ブロードバンドの接続率は2006年の30%から68%(2011年3月末)に増加した。
2006年と比較するとインターネット利用とブロードバンド接続が欧州全域で拡大していることがわかる。 その一方、各国間の差も確認される。 世帯のインターネット利用率は、オランダ(94%)、ルクセンブルク(91%)、スウェーデン(91%)、デンマーク(90%)は9割を超えているものの、ブルガリア(45%)、ルーマニア(47%)、ギリシャ(50%)は5割以下となっている。 同様に、世帯のブロードバンド接続率は、スウェーデン(86%)、デンマーク(84%)、オランダ(83%)、英国(83%)、フィンランド(81%)は8割を超えているものの、ルーマニア(31%)、ブルガリア(40%)、ギリシャ(45%)は低い値を示している。
また、インターネット非利用者の割合も各国間で大きな差がある。 EU27か国における16~74歳までのインターネット非利用者の割合は24%となり、2006年の42%から20%近く減少した。 スウェーデン(5%)、デンマーク(7%)、オランダ(7%)、ルクセンブルク(8%)、フィンランド(9%)の非利用者率は10%を切っている。 一方で、ルーマニア(54%)、ブルガリア(46%)、ギリシャ(45%)、キプロス(41%)、ポルトガル(41%)の非利用者率は高い割合を示している。
なお、本調査では電子政府や電子商取引の利用に関する調査も行っている。 インターネット利用者のうち、過去1年以内に公的機関のウェブサイトから情報を入手した人は48%、税金申告などの電子政府サービスを利用した人は28%、インターネット経由で商品やサービスを購入した人は58%となっている。
デンマーク
地球環境対策にITを活用
デンマークでは、地球環境対策にITを活用するアクションプラン「GreenIT」を2008年より実施している。 「デンマークは世界的にも先進的なIT国家であり、ITを活用した地球環境対策を実施するのに非常に適した国家である」という自己認識に基づき、 市民、企業、公的機関によるエネルギー効率の高いITソリューションの利用や、エネルギー消費を削減するITベースのソリューション開発を推進していくアクションプランを設定している。
(1)市民、企業、公的機関がITを環境対策に利用する
市民は環境に優しいITを上手に活用する必要がある。また、エネルギー効率のよいIT製品を市民が選択できるようになるのが望ましい。
企業はITを活用した環境保護の取り組みを企業の社会的責任に組み込むことが求められる。
公的機関はエネルギー消費を抑制するITソリューションの開発を促していくべきである。
(2)エネルギー消費の削減にITを活用する
スマートなITソリューションはエネルギー消費を削減し、二酸化炭素排出量の削減にもつながる。
インテリジェントな管理機能を持つ電子機器を使うことで未使用時の電力を抑えることができる。
電子メールや電子政府の機能を活用することで紙の使用や交通機関の利用を抑えることができる。
こうしたITソリューションを開発することにより持続可能な未来が達成される。
ドイツ
ICT利活用の基本戦略「ドイツデジタル 2015」
2010年11月、連邦政府は2015年までのICT分野の基本戦略となる「ドイツデジタル2015」を閣議決定した。 ドイツデジタル2015では、ICT利活用やブロードバンド推進のための政策目標や具体的な施策が示されており、 その中の政策目標の柱の一つとして、「デジタル化を通じた新たな成長・雇用確保」(2015年までにICT分野において3万人の雇用の確保等)を掲げている。
そして、この目標達成に向けて、特に重点的に取り組むべき分野として、エネルギー、電気自動車、テレマティクス、クラウドコンピューティングなどを挙げている。
エネルギー分野ではスマートグリッド(次世代送電網)導入より、2020年までに電力供給全体に占める再生可能エネルギーの比率を30%以上に高める。 電気自動車の分野では、2020年までに電気自動車を100万台普及させる。クラウド分野では、「クラウド・コンピューティング・アクション・プログラム」を策定している。
このほかICT利活用に関連する政策として、ICT技術に基づいた未来のエネルギーシステムの開発・構築を目指す官民共同プロジェクト「E-Energy」(注1:2006年12月)、 国家エネルギー戦略に位置づけられる「エネルギー・コンセプト2050」(注2:2010年9月)、「e-mobility国家前略」(注3:2009年8月)などがある。
注1:経済・技術省が4,000万ユーロ、環境省が2,000万ユーロ、経済界が8,000万ユーロを投資する。2008年に全国6ヵ所のスマードグリッド導入のモデル都市を選定しており、 2012年にはこの実地テストの結果に基づいてスマートグリッドの具体的提案を行う。
注2:エネルギー消費全体に占める再生可能エネルギーの割合を2030年に30%、2040年に45%、2050年に60%まで段階的に増加させる。 特に電力供給に占める再生可能エネルギーの割合は2020年に35%、2030年に50%、2040年に65%、2050年に80%まで高めるとした。
注3:2020年に100万台、2030年に600万台の電気自動車の普及を図る。2009年1月、「第2次景気対策パッケージ」の施策の一つとして、2009~2011年間に5億ユーロの拠出を決定。 2010年5月、産学官連携機関「National Electric Mobility Platform」を設立し、2011年5月、同プロジェクトに対し、2013年度までに10億ユーロを追加投資することを閣議決定した。
- EUの情報通信政策動向の整理――欧州デジタル・アジェンダを中心に (PDF:別ウィンドウで開きます)
フランス
仏政府は先端産業育成の国家計画でICT利活用開発を支援
仏政府は、国債収入を財源に先端産業育成を支援するため、2010年に発足した「未来への投資」計画の一環として、ICT利活用推進につき、2017年までの予算として約25億ユーロを設定した。
計画実行に当たって中心的な役割を担う経済・財政・産業省は2011年3月、「未来への投資」のデジタル経済分野で、以下の8つを重点投資分野とし、 政府支援プロジェクトの財政管理に携わる預金供託金庫(CDC)への預託金から総額14億ユーロの政府投資基金を設置、民間資本の営利プロジェクトに関する貸付を実施すると発表した。
- クラウド・コンピューティング
- コンテンツのデジタル化
- 埋め込みソフトウェア開発
- eヘルス
- 通信網のセキュリティ確保
- インテリジェンス・システムを用いた輸送
- デジタル都市計画
- 電子教育
これに先立ち、上記8テーマにナノテクノロジーを加えた9分野で、2010年末から研究開発に関する助成対象プロジェクトの公募が行われている。 こちらについては、やはりCDCへの預託金から総額8億5,000万ユーロの助成金が設定されている。
「未来への投資」ではさらに、スマートグリッドに2億5,000万ユーロの予算が設定され、2011年7月には6つのパイロットプロジェクトへの助成(合計2,800万ユーロ)を開始した。 このほか、eヘルスに関しては、2011年6月に労働・雇用・医療省が国家戦略の概要を提示した。同省はeヘルスに関する技術の発展と普及を支援し、特に全国レベルでのプラットフォームの構築に注力するとして、以下のアクションを提示した。
- 医療機関間での情報共有システムに関する専門委員会の設立
- 個人の病歴や受診記録を記載し、複数の医療機関で利用できる電子カルテの普及
- 自治体の遠隔診断プロジェクトに対する助成、2011年に3,200万ユーロ
- 経済・財政・産業省のeヘルス関連システム開発プロジェクトへの支援
- EUの情報通信政策動向の整理――欧州デジタル・アジェンダを中心に (PDF:別ウィンドウで開きます)
カタール
ictQATAR、デジタル・メディアの普及状況に関する報告書を公表
2011年8月、カタールの規制当局である最高情報技術評議会(ictQATAR)は、デジタル・メディアの普及状況に関する報告書を公表した。 同報告書では、カタールのデジタル・メディア・エコシステムの状況を概観し、一般ユーザーや企業へのインターネットの影響、ならびに、デジタル・コンテンツの利用、関心、選好のトレンドなどが示されている。
個人ユーザーのインターネット利用率は82%に達し、電子メール、音楽・映像配信、商品検索などに活用されている。 とりわけ若年層のインターネット利用が活発となっている。 インターネットの利用環境は家庭からの接続が89%、モバイル端末からの接続が24%となっている。
デジタル・コンテンツの種別では、英語コンテンツへのアクセスが多いのが特徴的である。 カタール人口の42%の第1言語がアラビア語であるにもかかわらず、アラビア語のコンテンツにアクセスしているのは29%であった。 英語とアラビア語の両方を話す者は検索エンジンやフェイスブックのようなソーシャルメディアを好む傾向にある。
オンライン新聞も38%のユーザーが利用している。 その中で最も人気が高いのは現地の英字紙Gulf Timesで、次にアラビア語の新聞Al-Sharqが続く。 テレビ局のウェブサイトについては、英語の話者にはBBCの人気が高く、アラビア語の話者にはアルジャジーラの人気が高い。
報告書では以上のような現状をふまえて、今後のデジタル・メディアの利用拡大には、政府による支援や企業によるインフラ整備が必要であると指摘し、プライバシー、データのセキュリティ、個人情報の保護、知的財産保護が課題であるとしている。
インド
インド政府、TRAIの勧告に基づき、サービスプロバイダに再生可能エネルギー使用を義務づける指令を発出
インド政府は1月4日、TRAIが2011年4月に提出した勧告「グリーンテレコムへのアプローチ」を了承し、サービスプロバイダに対して再生可能エネルギー使用を義務付ける等の内容を含んだ指令を発出した。 同指令の主な内容は下記のとおり。
*サービスプロバイダに対し、ハイブリッドパワー(再生可能エネルギーとグリッドパワー)によるタワー運営を義務付ける。 目標は、2015年までにルーラル地域の全タワーの少なくとも50%、都市部は20%、2020年までにルーラル地域の全タワーの少なくとも75%、都市部は33%がハイブリッドパワーにより運営されること。
*全てのテレコム機器・製品・サービスに対し、2015年までに「グリーン・パスポート」による認証を義務付ける。 テレコム・エンジニアリング・センターがレイティングを実施。
*全てのサービスプロバイダに対し、ネットワーク運営による二酸化炭素排出量の報告を義務付ける(年2回報告)。
*サービスプロバイダは自主的な実施規則を導入し、二酸化炭素排出削減のために、エネルギー効率の良いネットワーク設計、インフラ・シェアリング、エネルギー効率の良い技術の採用、再生可能エネルギーの導入を実施すること。
*サービスプロバイダは、規範に基づき「カーボン・クレジット・ポリシー」を展開すること。
*サービスプロバイダは、モバイルネットワークの二酸化炭素排出削減の目標を、2012~2013年までに5%、2014~2015年までに8%、2016~2017年までに12%、2018~2019年までに17%とすること。
韓国
行政・教育・医療分野におけるICT利活用
(1)行政分野
ブロードバンドを国家インフラとして早期に整備した韓国では、2001年に「電子政府法」を制定し、その後策定された電子政府ロードマップに従って計画的に電子政府を整備した。
韓国の電子政府は2010年に国連の電子政府評価で1位になったことを契機に、世界からの注目が一層高まり、行政安全部の発表によると、電子政府関連輸出額が前年比で223%増加した。
2010年から2011年にかけての電子政府関連輸出は、エクアドル・インドネシア・バングラデシュ・マリ・スリランカ・ベトナム等の諸国への輸出で実績を伸ばしている。
(2)教育分野
教育分野では、2007年からデジタル教科書試験事業が実施されてきた。当初は2013年の小学校へのデジタル教科書導入が計画されていたが、クラウド化の進展とネットにつながった新たなスマートデバイスの登場という急速な技術革新による変化を考慮し、
教育科学技術部は2011年6月、内容を一新したデジタル教科書計画を盛り込んだ「スマート教育推進戦略」を発表した。この戦略により、2015年までに国家教育競争力で世界上位10か国入り、2025年には上位3か国入りを目指す。
戦略に盛り込まれた課題は、1)デジタル教科書開発と導入、2)オンライン授業活性化、3)オンラインを通じた学習診断体制構築、4)教育コンテンツの自由な利用及び安全な利用環境整備、5)教員のスマート教育実践力強化、6)クラウド教育サービス基盤整備、である。
このうち、戦略の目玉は、2015年からの小中高等学校へのデジタル教科書導入と教育クラウド化。 デジタル教科書は教科書と参考書、問題集、写真、ノート、マルチメディア要素資料の機能を連携した形となり、PC・スマートパッド・スマートTV等のあらゆるデバイスでの利用が可能となる。
また、2008年末から開始されたリアルタイムIPTVが積極的に公共サービスに導入され、教育分野では、2010年から全国の小中高等学校にIPTVが導入され、また、低所得世帯児童及び青少年のためのIPTV学習室設置が全国の自治体で進められている。
(3)医療分野
高齢化が急進展する韓国ではICTと医療を融合させたuヘルスケア分野への注目も高い。
知識経済部は2010年5月、uヘルス市場を2014年までに3兆ウォン規模に育成するための「uヘルス新産業創出戦略」を発表し、治療部門のuメディカル、高齢者対象のuシルバー、健康管理サービスのuウェルネスの三分野に分けて政策を実施することにした。
また、医療分野のICT利活用促進につながる政策として、放送通信委員会の「グリーンIT国家戦略」でIPTV利用の遠隔医療サービス推進が盛り込まれている。
- 2015年までに小中高校へのデジタル教科書導入を目指す韓国のスマート教育推進戦略 (PDF:別ウィンドウで開きます)
中国
電子政府事業の促進
電子政府の建設は、国家情報化推進の重点項目として進められてきた。 その中で、1990年代以降、中央政府主導の下、「三金プロジェクト」と呼ばれる、「金橋」(経済情報プロジェクト)、「金関」(税関ネットワーク化プロジェクト)、 及び「金カード」(電子マネープロジェクト)が進められてきた。
2006年3月に国家情報化リーダー・グループが「国家電子政務の総体枠組み」を発表した。 その中で、「第11次5か年規画」期間(2006~2010年)における電子政府の発展目標として、2010年までに、全国レベルで相互接続のできるネットワークを基本的に完成し、 管理体制を一層整備し、50%以上の行政許認可手続をオンラインに切り替え、オンライン・サービスの利用による行政コストの削減を実現し、監督・管理能力や公共サービスの質を高めるとしている。
また、2006年5月、国務院の発表した「2006~2020年国家情報化発展戦略」においても、電子政府の推進が取り上げられた。 中央と地方が協力し、多種の技術手段が互いに結合する電子政府の公共サービスの体系を徐々に構築すること、電子政府の公共サービスが町内、コミュニティとルーラル地域への延伸の推進を重視すること、 サービス内容を徐々に増やし、サービス範囲を拡大させ、サービスの質を高めることによって、サービス型政府の建設を推進するとの方針が示された。
最新の5か年規画に当たる「第12次5か年規画」では、同規画期間中(2011~2015年)において、電子政府建設の更なる発展を推進するとしている。 特に、重点は各部門が独自に構築したネットワーク間の相互接続、及び業務の高度化に置かれる。