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国家ブロードバンド計画

アメリカ

オバマ政権によるブロードバンド普及促進策である「国家ブロードバンド計画」

OECDによると、米国のブロードバンド普及は、2010年12月末現在、100人当たり27.7、 OECD諸国内における普及ランキングは、15位となっている。米国は、2000年代初頭には、 ブロードバンド普及で同ランキング第4位(2001年末現在)であったが、徐々に順位を下げ、2006年以降は第15位となっている。

オバマ政権では、米国のブロードバンド普及率の向上を政策目標の一つに掲げた。 2009年2月に可決した「米国再生・再投資計画法」では、連邦通信委員会(FCC)に対して、 「国家ブロードバンド計画(National Broadband Plan)」を策定することを求めた。 そこで、FCCは、2010年3月16日に、以下の6つの長期的目標が盛り込まれた「国家ブロードバンド計画」を連邦議会に提出、 その計画に基づき関連施策を推進しているところである。同施策により、ブロードバンドの高速化、モバイル・ブロードバンド化、 公共安全分野やクリーン・エネルギー分野でのブロードバンド活用が進展することが期待されている。

「国家ブロードバンド計画」における6つの長期目標
目標1
1億世帯以上の家庭が、下り速度が実測100Mbps以上、上り速度が実測50Mbps以上の安価なアクセスを持つ (2015年までには、1億世帯以上の家庭が、下り実測50Mbps以上、上り実測20Mbps以上の安価なアクセスを持つ)。
目標2
米国は、世界最速かつ世界で最も規模の大きな無線ネットワークを持ち、モバイル・イノベーションで世界一となる (2020年までに500MHz幅の周波数を新たにブロードバンド向けに利用可能とすべき(2015年までには300MHz幅を利用可能とする))。
目標3
すべての米国人は、堅牢なブロードバンド・サービスへの安価なアクセス手段を持ち、 自らの選択に従いサービスに加入する手段と技能を持つ(90%以上の採用を実現)。
目標4
すべてのコミュニティは、学校、病院、政府機関の建物といったアンカー組織において 1Gbps以上の安価なブロードバンド・サービスへのアクセス手段を持つ。
目標5
米国人の安全を確保するため、全ての一次応答者は全国規模で相互運用可能な無線ブロードバンドの 公共安全ネットワークへのアクセス手段を持つ。
目標6
米国がクリーン・エネルギー経済において世界をリードすることを確保するため、 すべての米国人は自身のリアルタイムのエネルギー消費を追跡し、管理するためブロードバンドを利用する。

カナダ

普及支援政策と市場競争の相乗効果で拡大するカナダのブロードバンド市場

カナダ産業省は2009年7 月から全国域でのブロードバンド普及促進計画「ブロードバンド・カナダ(Broadband Canada: Connecting Rural Canadians)」を開始し、2011/2012年度まで実施している。 同計画ではブロードバンドの定義については上り・下りとも1.5Mbps以上とされ、国内全居住者の7%が居住するブロードバンド非提供地域及びブロードバンドが十分に提供されない地域 (1.5Mbps未満の通信速度でのみ利用可能な地域)に対し総額2億2,500万CADの政府支出を補助金として配分している。2011年5月現在、国内6つの州・準州で86件のプロジェクトが実施中であり、 約21万世帯にブロードバンド接続が計画により提供されている。

カナダラジオテレビ電気通信委員会(CRTC)の調査によれば、2009/2010年度の国内ブロードバンド加入者数は約900万、普及率は77%と前年度比で9.2%の増加と市場は順調に拡大している。 ブロードバンド市場は支配的地域通信事業者(ILEC)であるベル・カナダ及びテラスと、ケーブルテレビ網に立脚する競争通信事業者(CLEC)であるロジャース、ショウ及びビデオトロンによる競争が十分であり、 サービス料金についても東京、パリ、ロンドン等のカナダよりも地理的要件に優れた都市と比較してもやや高水準である状況に留まっている。 ブロードバンドの通信速度は1.5Mbps以上での利用が70%と前年度比で8%増加、5Mbps以上での利用が52%と前年度比で8%増加し、 民間事業者の市場競争とブロードバンド・カナダによる政策措置が相乗効果でブロードバンド市場の拡大を推進していることが伺える。

このような状況を踏まえ、CRTCは2011年5月にカナダ全国域でのブロードバンド接続に関する達成目標を「すべてのカナダ居住者が2015年末までに下り5Mbps/上り1 Mbpsの通信速度でブロードバンドに接続する」ことに改めて設定すると発表した。 CRTCはこの達成目標は民間投資、政府支出あるいは官民連携等の多様な施策によって達成されると考えており、中でも通信衛星の新規打ち上げや次世代の無線技術がルーラル地域や遠隔地域におけるブロードバンド接続の利便性を高めることを可能にするとしている。

ブラジル

国家ブロードバンド計画―2014年までに人口の88%で利用可能に

ブラジル政府は2010年5月に「国家ブロードバンド計画」(PNBL)を策定した。 512kbps程度のブロードバンドサービスを35レアル(約1500円)以下で提供することにより、2014年までに全国の4,000万世帯、ブラジル人口の88%で利用可能になるという。 さらに教育・研究機関、病院、図書館、テレセンターなどの公共施設や、政府・自治体をブロードバンドでつなぎ、公共サービスと行政サービスの充実を図る。

政府発表によると、政府、民間企業によるPNBL投資額は2014年までにそれぞれ264億米ドルと490億米ドルになる。 また、2010年末現在、1400万人であった(固定のみ、ITU調べ)ブロードバンド加入者数が固定で3,000万人、無線で6,000万人に拡大すると見通している。

(1)目的
政府はPNBLの実施目的として、以下の項目を挙げている。
  • ブロードバンド基盤の整備により新市場および雇用の創出
  • 社会的不平等の解消
  • 経済および社会開発の加速、電子政府サービスの利用拡大
  • デジタルインクルージョンの実現
  • 国際競争力の強化
(2)取組み
  • 国が保有する光ファイバ網を利用し、2010年からブロードバンドサービスの運用開始。
  • PNBLを主導する運営体としてTelebrasの再国営化を実施し、国庫庁が2014年までに32億2,000万レアルの補助金を交付する。
  • 民間企業に対する投資インセンティブの一環として減税措置を実施。加えて、ブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)が75億レアルを融資する。
  • ケーブルテレビ事業者などによる固定および無線ブロードバンド市場への新規参入を拡大。
  • 450MHz帯、2.5GHz帯、3.5GHz帯のオークションを実施。

(3)Telebrasの役割
Telebrasは、国が保有する光ファイバ網を利用して、学校や病院などの公共施設をブロードバンド回線で接続する。また、これらの光ファイバ網を民間企業にホールセールし、ブロードバンドサービスの普及促進を図る。 非採算地域ではTelebras自らがラストワンマイル事業を実施する。

また、同社は、光ファイバ網の貸与について、連邦政府系の複数の電力会社、石油会社と交渉を進めており、電力大手Eletrobras、石油大手Petrobrasとの契約締結に関して、ブラジル電力庁(ANEEL)に承認を求めている。 さらに、光ファイバ網を補完する目的で、2014年に通信衛星の打ち上げを計画している。

EU

高速ブロードバンドの普及に向けたEUの取り組み

EUでは現在、欧州経済戦略「Europe2020」の枠組みのもとで、ICT推進政策「欧州デジタル・アジェンダ」を実行している。 同アジェンダでは「超高速インターネットを基盤として、ヨーロッパ全体の『デジタル単一市場』を創設し、これにより持続可能な経済的、 社会的便益を得ることが可能になること」を全体目標として掲げている。 この目標を達成するために高速・超高速ブロードバンドの普及は必須であり、(1)2013年までに全市民のブロードバンド利用を実現、 (2)2020年までに全市民が最大通信速度30Mbps超のブロードバンドに接続、(3)同年までに50%以上の市民が最大通信速度100Mbps超のブロードバンドに接続、 という具体的な数値目標を掲げて、高速・超高速ブロードバンドの普及にかかわる政策を実施している。

2010年9月、欧州委員会はEUの高速・超高速ブロードバンドの普及を促進するため、(1)次世代網のアクセスに共通の規制アプローチを設定する勧告、 (2)無線周波数政策プログラムの確立を欧州議会と欧州理事会に働きかける提案、(3)ブロードバンドの普及目標の達成に向けた政府や民間による投資促進に関する指針(コミュニケーション)という三つの補完的政策を採択した。

また、欧州委員会では高速・超高速ブロードバンドの普及を図るために公的資金の投入を行っている。2011年1月には、EUの国家補助ガイドラインに基づき、ブロードバンドの普及に関連する公的基金の補助申請20件の承認を発表した。 補助金の総額は18億ユーロ超にのぼり、カタルーニャ、フィンランド、バイエルンなどの地域におけるブロードバンドの普及に充てられた。 そして、2011年10月には、高速ブロードバンド網の敷設、およびブロードバンド利用サービスにかかわるプロジェクトに対して、2014年から2020年の間で約92億ユーロの投資を行う提案が欧州委員会から発表された。 投資は株式、債券、助成の形式で行われ、民間投資の補完、ならびに地域、地方、国家、EUレベルの公的基金の補助を狙いとしている。 なお、92億ユーロの投資のうち70億ユーロは高速ブロードバンドのインフラ整備への利用を想定している。

イギリス

英国の国家ブロードバンド政策

現在の英国における国家ブロードバンド戦略の基本政策としては、2010年10月発表の財務省の「国家インフラ計画(National Infrastructure Plan)」と、 2010年12月の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)とビジネス・イノベーション・技能省(BIS)の共同発表による「英国の超高速ブロードバンドの未来(Britain’s Superfast Broadband Future)」が挙げられる。

(1)財務省による「国家インフラ計画」
財務省は、2010年10月25日、英国のインフラの直面している課題と持続可能な経済成長のために必要な投資を示す「国家インフラ計画」を公表した 。 その中で、経済活動の基盤としてエネルギー、交通、デジタル通信、洪水、廃棄処理が取り上げられている。

デジタル通信に関しては、それがビジネスの生産性向上、公共サービス向上及び雇用創出に寄与するものとして、2015年までに欧州最速の超高速ネットワークを構築するとともに、 国民の誰もがブロードバンドにアクセスできる体制を目指すこととしている。そのために政府が講じる措置の概略は次のとおり。

●民間投資の促進
  • 多数の通信事業者がBTの既存ネットワークの管路・電柱の使用を希望していることから、OfcomにBTと共同で管路等の開放方針を策定させること
  • ブロードバンドに対応したビルの認証方法を2010年12月までに策定すること
  • 2011年度中にも次世代モバイル・ブロードバンドに適した800MHz及び2.6GHzの周波数帯のオークションを実施すること
  • 公共セクターが利用している5GHzのうち少なくとも500MHzを今後10年間の新たなモバイル通信分野に開放すること
●民間投資が期待できない地方の対策
  • 4地域においてパイロット事業を実施すること
  • 2010年中にも、地方の官民共同体(Local Enterprise Partnerships)や地方自治体、地域住民と共同でパイロット事業の具体的な方針を決定すること
●政府の公約
  • 2010年12月までにBISの担当下で国家ブロードバンド戦略(National Broadband Strategy)を策定すること
  • 2014年度までの間に(BTが予定している25億ポンド等の民間投資とは別枠で)5億3,000万ポンドを民間投資が期待できない地域への超高速ブロードバンド整備を実施すること

(2)DCMSとBISによる「英国の超高速ブロードバンドの未来」
DCMSのハント大臣は、2010年12月6日、「英国の超高速ブロードバンドの未来」を発表した。これは英国が2015年までに欧州一のブロードバンド網を整備するという政府目標の一環であり、 同計画が実施されれば8億3,000万ポンドの公的資金が投入され、国内の至るところで「デジタル・ハブ」が出現することが期待されている。

ハント大臣は、超高速ネットワークは経済に活力をもたらすもので、何十万もの雇用創出と数十億ポンドものGDP押し上げ効果があると述べるとともに、超高速ブロードバンドの便益は経済効果にとどまらず、 行政サービスのオンライン化などを通じて社会の繁栄と公平性確保に寄与するとしている。

同計画中の主な具体策としては下記が掲げられている。

  • すべての地方自治体に「デジタル・ハブ」を2015年までに構築
  • 地方部へのブロードバンド実証実験の第2段階として5,000万ポンドを投入
  • BTの管理する管路や電柱を開放
  • ブロードバンド敷設を前提としたビル建設を行うよう、建設事業者へのガイドラインを作成
  • 州政府等と協力して、道路下に光ファイバを敷設できるよう、道路制度を改定
  • 次世代携帯サービスを可能とするため、800MHz帯と2.6GHz帯の開放

キャメロン首相は、2010年前半に保守党マニフェストを発表した際に、情報格差の是正の重要性を説き、英国内が電子的につながりデジタル先進国となるための援助を実施していきたいとしている。

ドイツ

2014年までに50Mbsp以上のブロードバンドが全世帯の75%で利用可能に

ドイツ政府は2009年2月に第2次景気対策パッケージの一環として、全国ブロードバンド網整備計画を発表した。 2014年までにブロードバンド世帯普及率を75%に拡大することにより、2015年までにIT業界で3万人の新規雇用を目指すとしている。

ルーラル地域など固定ブロードバンド網の構築が困難な地域には、地上デジタル放送への移行によって利用が可能になったアナログ跡地 (790~862MHz)を割り当て、ワイヤレス・ブロードバンド・アクセスの普及を促進する。

具体的な目標は、(1)2010年までにブロードバンド・ゼロ地域を解消する(ドイツでは約2%に当たる約60万世帯がブロードバンド未整備地域にある)、 (2)2014年までに全世帯の75%で50Mbps以上のブロードバンドを利用可能にする。

政府は2009年6月にアナログ跡地利用の一環として、790-862MHzをワイヤレス・ブロードバンド・アクセスに割り当てることを承認しており、 2010年4月には周波数オークションを実施し、ドイツテレコム、ボーダフォン、O2に800MHz帯の周波数ライセンスを付与した。

800MHz帯の落札者には、LTEサービスの事業展開に関して、「ホワイトスペース」と呼ばれるブロードバンドサービスが提供されていない地域から優先的に展開してからでなければ、 人口密度が高い大都市でサービスを提供開始してはならないとこが義務付けらた。2016年初頭までにブロードバンド・カバレッジをホワイトスペースの人口の約90%にまで引き上げることが求められている。 なお、ボーダフォンは2010年12月から、ドイツテレコムとO2は2011年夏からLTEの商用サービスをルーラル地域で開始している。

フィンランド

フィンランド西部のKarvia市のブロードバンド整備プロジェクトに初の国家補助

2012年2月8日、規制当局のフィンランド通信規制庁(FICORA)は、ブロードバンド整備プロジェクトに初の国家補助を行ったと発表した。 今回、国家補助が実施された「Karviaブロードバンド計画」は、西スオミ州サタクンタ県Karvia市の光ファイバ網を整備するプロジェクトで、 市、サタクンタ地方議会、運輸通信省が計画策定に協力した。補助金の合計は33万4,824ユーロ(約3,446万円)で、 光ファイバ網の敷設を行うSuupohjan Seutuverkko Oyに対して補助金が支払われる。なお、Karvia市も国家補助と同額の支出を行う。

今回、国家補助が実施されたプロジェクトは、2015年までに、過疎地域で最大100Mbpsのブロードバンド接続を実現する国家計画の一環である。 同計画に則し、補助要件を満たしたプロジェクトの敷設コストは国、自治体、EUが66%を負担する。残りの費用はネットワークを敷設する通信事業者が負担し、 通信事業者はネットワークの所有権も保有する。ブロードバンド整備プロジェクトへの国家補助は、総額1億3,000万ユーロの予算が計上されており、 うち6,600万ユーロはFICORAから拠出される。

フランス

「国家超高速ブロードバンド計画」はディバイド解消を志向

仏Fillon首相は2010年6月14日、国内世帯の100%を2025年までに光ファイバ網に接続するという目標を掲げた「国家超高速ブロードバンド計画」を発表した。 この計画では、特にディバイド解消が重視され、助成金の使途として、(1)人口密度は高くないが「収益性は確保」できる地域への通信事業者による投資を活性化、(2)地方自治体の地域インフラ構築プロジェクトの支援、が挙げられた。 この計画は、国債収入を基に先端産業育成を支援する「未来への投資」計画の一環であり、2017年までの予算として約20億ユーロが設定されている。

(1)については、通信事業者は自治体単位でインフラ構築プロジェクト(自治体との共同でもよい)を示し、当該の地域の5年以内の世帯カバー率を100%まで引き上げることを条件に国の基金から投資額の50%までの貸付を受けることができる。 (2)については、地方自治体主導で行われるプロジェクトに対して、国が費用の33%までを負担する。なお、地理的事情等で光ファイバの敷設が難しい地域に対しては、衛星、モバイル・インターネット、ADSLの高速化等の代替手段での対応が要される。

2010年秋に7つの自治体のプロジェクトが選出され、各プロジェクトに対して50万ユーロまでの助成が実施されることになった。これと同時に、政府は通信事業者に対し、2015年までの光ファイバ網整備に対する投資計画の提出を求めた。 これに応じたフランス・テレコムは、2015年までに2億ユーロを投じて1,000万世帯をカバーするFTTH網を構築、さらに2020年までにこのネットワークを全国の世帯の約60%をカバーする1,500万世帯まで広げる計画を提示している。

2011年、政府は事業者と地方自治体からそれまでに提出された光ファイバ網構築計画を検討した結果、20億ユーロの予算の配分方法を以下のように決定すると発表した。

  • (1) 事業者の投資計画への貸付:10億ユーロ
  • (2) 地方自治体(事業者の投資計画から外れた地域)主導の光ファイバ網構築計画コストの(一部)負担:9億ユーロ
  • (3) 国家宇宙研究センター(Centre Natinal d'etude Spatiales)が管理する衛星ブロードバンドに関するR&D活動への助成:4,000万~1億ユーロ

インド

全国光ファイバ網敷設計画「NOFN」承認。全長110万キロメートルの光ファイバ網で全国の村落をつなぐ

インド政府は10月25日の閣議で、全国への光ファイバ網の敷設事業を実施する計画「National Optical Fiber Network:NOFN」を承認した。 計画では、全長110万キロメートルの光ファイバ網で全国の村落をつなぐ。

事業費用は、地方開発のためのユニバーサル・サービス基金(USOF)を通じて支出される。第1期の事業費用は2,000億ルピー(約3,059億円)。 その後、民間セクターによって、各家庭にまでブロードバンド・サービスを普及させるために、ほぼ同額の投資が期待されているところである。

政府は、同計画により、e-ヘルス、e-バンキング、電子教育を含む電子政府プロジェクトを促進すると同時に、 これにより、雇用の確保、教育、ヘルス、農業等の分野の電子化を図り、ルーラル地域から都市部への人口の流出も防ぎたい考えである。

シンガポール

官民一体で推進される次世代全国ブロードバンド網(NGNBN)

シンガポール政府は2006年6月に発表した10か年情報通信マスタープラン「インテリジェント・ネイション2015」 (Intelligent Nation 2015:iN2015)の一環として、「次世代全国ブロードバンド網(The Next Gen National Broadband Network: NGNBN)」と名付けられた超高速ブロードバンド網の構築が計画されている。 NGNBNは既設の通信基盤を活用し、最大速度1Gbps以上の光ファイバ網として構築される。政府は2010年度に世帯及び法人の60%、2012年までに概ね100%がNGNBNに接続可能となることを目標としている。

NGNBN によるブロードバンドサービスは、(1)同網基盤の設計、建設、設備運用を担う事業者「Network Company(NetCo)」、 (2)同網により提供されるブロードバンド接続の卸売サービスについて料金等設定・運用を担う事業者「Operating Company(OpCo)」及び、 (3)これらを法人及び世帯向けに小売サービスとして提供する事業者「Retail Service Providers(RSPs)」の3層の事業者により提供される。 NGNBNは政府により、NetCo及びOpCo双方に相互接続約款の作成が義務付けられたオープンアクセスのネットワークであり、 競争的な環境で利便性の高いサービスを法人・世帯に提供することを期待されている。

情報通信分野の所管当局である情報通信開発庁(IDA)は2008年9月にNetCoとして通信事業者最大手であるシングテル中心の4社による合弁会社「オープンネット(OpenNet)」を、 加えて、2009月5月にOpCoとして通信事業者第2位であるスターハブの新規完全子会社「ニュークリアス・コネクト(Nucleus Connect)」をそれぞれ選定した。 2010年8月末にニュークリアス・コネクトがNGNBNの卸売サービス事業を開始、9月からRSPsとしてシングテル及びスターハブ等がNGNBNの小売サービス事業を開始し、法人及び世帯における超高速ブロードバンドの利用が開始されている。

韓国

世界最高水準のネットワーク高度化計画

1990年代半ばから、国家インフラとしてブロードバンド網構築を進めてきた韓国では、現在に至るまで持続的にネットワーク・インフラの高度化を進めている。

-2004~2010年 広帯域統合網(BcN:Broadband convergence Network)構築計画
2004年から2010年にかけて、情報通信部(放送通信委員会の前身)が策定したBcN構築計画により、IPTVや画像通話等の新サービス提供基盤となるブロードバンドインフラが整備された。 その結果、2010年度の計画完了時には当初の普及計画を上回るレベルで、1,482万世帯に50Mbps級有線ブロードバンド・サービス、3,090万人に1~2Mbps級無線ブロードバンド・サービスが普及した。

-2009年~ ギガ級ブロードバンド網構築計画
BcN構築後のさらなるインフラ高度化計画として、放送通信委員会は2009年1月に放送通信網中長期発展計画を発表。 この計画に基づいて2013年までに構築されるALL-IP基盤の超広帯域融合網(UBcN:Ultra Broadband convergence Network)では、2012年から有線で最大1Gbps、2013年から無線で平均10Mbpsのサービスを提供する。 2010年度はギガ級インターネット試験サービスとして、3DマルチアングルIPTV、KTのホームネットワーク・サービス、Nスクリーン・サービス(1回線のネットでケータイ、PC、TVなどのネットにつながった各種デバイスで放送等又はネットコンテンツを視聴するサービス)、 スマートビューア(TV基盤の画像通話、映像教育、監視カメラ等)等の新サービスが提供された。

中国

固定・モバイルブロードバンド網における政府の取組み

通信分野を所管する工業・情報化部をはじめ、複数の関係政府機関(日本の省庁相当)が連名で、2010年3月に、光ファイバ・ブロードバンド網、及び3G網の整備を推進する二つの政策を打ち出した(表参照)。 名を連ねたこれらの関連政府機関から分かるように、政府は、固定及びモバイル・インフラの整備がスムーズ、かつ迅速に展開できるように、財政、税務面での支援強化にとどまらず、土地、建物利用の面からも 有利な環境が確保できるように後押ししようとしている。政府がブロードバンドの高速化に関してこれほど具体的な数値目標を打ち出したのは、今回の政策が初めてである。

表 固定・モバイルブロードバンド網の高速化促進策の概要
光ファイバ・ブロードバンド網 3G網
2010年3月17日 発表時期 2010年3月17日
工業・情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部、財政部、国土資源部、住宅・都市農村建設部、国家税務総局 関係機関 工業・情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部、財政部、国土資源部、環境保護部、住宅・都市農村建設部、国家税務総局
- 同ネットワークの整備推進は、内需拡大、成長確保、及び雇用確保の実現だけではなく、長期的には国全体の競争力向上にも重要な戦略的な意義を持つ。
- 現状では、都市、農村間の発展が不均衡で、利活用が不十分。さらに、収益性の低い農村地区におけるインフラ整備に通信事業者の積極性が欠けている。
問題意識 - 3G網の構築は3Gサービスの発展における重要な段階だけではなく、同サービスの成否にかかわることでもある。
- 現状では、基地局構築用地の選定が困難に直面し、アプリケーションサービスが不足している。
年内に、光ファイバ・ブロードバンドのポート数を8,000万か所以上に増やし、都市部の平均接続速度を8Mbps以上、農村部を2Mbps以上、オフィスビルを100Mbps以上に引き上げる。 今後3年間に1,500億元以上を投じ、新規ユーザ5,000万の獲得を目指す。 目標 年内に、すべての地方都市、大部分の県、郷・鎮、主要高速道路、観光地等をカバーできるように3G網を整備し、投資総額は4,000億元、基地局数は40万以上の達成、1億5,000万の3Gユーザ獲得を目指す。
- 各関係機関を通じて所管分野内での調整を求める。
- 一定の条件を満たした企業に対して税制優遇措置を与える。
- 関連製品・サービスを「国家自主創新製品リスト」と「政府調達用自主創新製品リスト」にリストアップする。
- 既存の「村村通電話」プロジェクトや、その他の農村の情報化推進政策などの進行もあわせて進める。
- 電子政府、医療、都市管理等分野での普及を促進する。
- 研究開発への投入拡大を強化する。
- 事業者間相互接続の関連措置を改善し、インフラの共同建設・利用の改善を図る。
主要措置 - 各関係機関を通じて所管分野内での調整を求める。
- 一定の条件を満たした企業に対して税制優遇措置を与える。
- 認定されたTD-SCDMA製品・サービスを「国家自主創新製品リスト」と「政府調達用自主創新製品リスト」にリストアップする。
- 行政の情報化及びeビジネスにおいてのTD-SCDMAを初めとする3G技術の利用を奨励する。
- 重点プロジェクト、技術改造専用資金等の利用を徹底する。
- 事業者間相互接続の関連措置を改善し、インフラの共同建設・利用の改善を図る。
出所:発表政策を基に作成

特に、光ファイバ・ブロードバンド網整備の目標実現について、工業・情報化部は他の関係機関からの協力を呼びかける一方、 既存の「村村通電話」プロジェクトや、その他の農村の情報化推進政策などの進行もあわせて進めるようにしている。固定ブロードバンド網の整備は都市部に限定されず、 広大な農村地域まで大掛かりに拡大しようとしている狙いが伺える。 一方、3G網については、現時点では比較的経済発展が進んでいる地域に限定し、3方式(TD-SCDMA、W-CDMA、CDMA2000)(注)あるネットワークのうち、 中国政府が威信をかけて育成してきたTD-SCDMA方式を手厚く支援する姿勢は変わらない。

(注)いずれも第3世代携帯電話(3G)方式の一つ。 「符号分割多元接続」(CDMA)と呼ばれる無線通信の技術標準に基づく。TD-SCDMAは中国独自の仕様である。CDMA2000は北米、W-CDMAは日本及び欧州で主に用いられている。

オーストラリア

政府系事業者NBN Coが推進する全国ブロードバンド網(NBN)

オーストラリア政府は2009年4月、全国域で光ファイバ網を新規に構築し、ブロードバンド利活用の拡大を図る「全国ブロードバンド網(National Broadband Network: NBN)」計画を始動させた。 NBNは計画発表と同時に設立された政府系事業者NBN Coにより構築され、オープン・アクセス・ネットワークとして運営される。

NBN計画ではNBN Coの構築する光ファイバ網により2020年までに国内の約93%の建物にFTTHによる100Mbps~1Gbps級のサービスを、 その他7%のルーラル地域や遠隔地域の建物にはNBN Coが代替的に提供するLTE規格による固定無線アクセスあるいは衛星通信による12Mbpsのサービスを、 総計約1,300万建物に提供することが目標とされている。NBN Co.は2013年6月までにFTTH、固定無線アクセス及び衛星によるブロードバンド・サービスを全国の約170万建物で利用可能とすることを当面の目標としている。

NBN計画は8年間の総予算額を約409億AUD、ネットワーク構築に対する資本支出総額を約359億AUDと予定する巨大プロジェクトである。 NBN Coは政府から総額約275億AUDに及ぶ出資を受け、同時に2015年からは最大で約134億AUD規模の債券を発行し、資金調達を行う。NBN CoはNBN建設期間中は政府の全額出資企業となるが、後に株式は民間に売却される予定である。

NBN Coは民間通信事業者から既存インフラを調達し、光ファイバによるバックホール回線とアクセス回線を構築する。2011年6月にNBN Coはテルストラから既存インフラの使用権を得るために約110億AUDを支出する協定を締結した。 この協定によりNBN Coはテルストラの既存インフラを再利用の上、ネットワークを構築することとなる。

NBNの建設及び稼働はオーストラリア本州に先行し、タスマニア州で実施され、2010年8月にNBN Co子会社であるNBN Tasmaniaが商用サービスの提供を開始している。 本州でも主に郊外地域から、2010年3月に第1期着工地5地区、2010年7月に第2期着工地14地区での先行的なNBN建設計画が発表され、前者は2011年5月から試験サービスを漸次開始、後者は2011年10月からの着工開始が予定されている。 この先行地区でNBNが利用可能となる建物は約5万7,200に及ぶとされている。

ニュージーランド

政府と民間事業者が設立する地域事業者が超高速ブロードバンド網を構築

2009年9月、ニュージーランド政府は2019年までに国民の約75%がFTTHを利用可能となることを目標に、 全国域で光ファイバ網を新規に構築するプロジェクト「超高速ブロードバンド(Ultra-fast Broadband: UFB)イニシアティブ」を始動させた。 UFBイニシアティブでは最大通信速度100Mbps/50MbpsのFTTHサービスを約110万の家庭、約10万の企業、1,300以上の学校、 6,000以上の医療機関に提供する全長約2万5,000kmのネットワークが構築される。 なお、2015年までは学校、病院といった公共性の高い施設や企業が優先され、これらの施設に対して先行してネットワーク構築が実施される。

政府はUFBイニシアティブに関して総額15億NZDの政府支出を決定しており、この投資の管理事業者として「クラウン・ファイバ・ホールディングス(Crown Fibre Holdings: CFH)」を設立している。 CFHはUFBイニシアティブに参加する民間事業者を入札により地域ごとに選定し、これら事業者との対等投資により「地域ファイバ事業者(Local Fibre Companies:LFCs)」を設立する。 LFCsは各地域でのUFBネットワークの建設を担い、また、これによるオープンアクセスのFTTH卸売サービスの提供事業者となる。

LFCsの設立に参加する民間事業者には、ニュージーランド・テレコムのアクセス網事業部門Chorus、新規事業者であるNorthpower、UltraFast Fibre 、Enable Networksの計4社が選定されている。 各LFCsはNorthpowerが北島北部のファンガレイ(Whangarei)で、UltraFast Fibreが北島中央部のハミルトン(Hamilton)、北島北東部のタウランガ(Tauranga)及び北島西海岸のワンガヌイ(Wanganui)の3都市で、 Chorusは2012年6月末までの第1次計画でウェリントン、オークランドを含む計10都市でUFBネットワークの建設を進めている。

一方、政府はUFBネットワークのカバレッジ対象外となるルーラル地域については「ルーラルブロードバンド(Rural Broadband:RB)イニシアチブ」を策定し、制度的な補完を図っている。 RB計画の実施事業者は2011年4月にテレコム・ニュージーランドとボーダフォンNZに入札で決定している。両社は政府より約2億5,200万NZDの財政支援を受け、 2017年までにルーラル地域世帯の86%について最大通信速度5Mbps以上のブロードバンド接続を提供し、また、ルーラル地域の学校の95%に光ファイバ網による最大通信速度100Mbpsのブロードバンド接続を提供する計画である。

エジプト

エジプト政府、中長期の固定・移動のブロードバンド普及目標を提示

エジプト政府は2011年11月、「eMisr 国家ブロードバンド計画」を発表し、2015年、2021年までの固定・移動ブロードバンドの普及率目標を提示した。 計画の実行は2012年4月からの予定で、官民の総投資額は24億米ドルと見積もられている。 カバレッジ及び普及率の目標は以下のとおり。

カバレッジ:
固定
2015年までに人口の75%に最大通信速度2Mbpsのサービス
2021年までに人口の90%に最大通信速度25Mbpsのサービス
移動
2015年までに人口の98%に3Gサービス
2021年までに人口の90%に3G/LTEサービス
普及率:
固定
2015年までに450万世帯(22%)
2021年までに900万世帯(40%)
移動
2015年までに800万人(10%)
2021年までに1,450万人(15%)

また、この計画では、官公庁への固定ブロードバンド普及目標も提示されている。 2015年には中央・地方政府機関の50%が最大通信速度25Mbpsのブロードバンド接続を達成することとされており、2021年にはこの目標値が100%に引き上げられる。

エジプトはアフリカ大陸の諸国では比較的電気通信サービス環境が良好であるとされており、2011年初めの政変では、Facebook等のSNSがアジテーションの手段として多用されたことが話題になった。 しかしADSLを中心とする固定ブロードバンドの普及率はまだ低く、2010年末現在で2%に足らない(注)。

一方でモバイル・ブロードバンドの伸長は著しく、2007年に導入された3Gサービスの加入者は携帯電話契約者全体の20%に近づいている。 他のアフリカ諸国と同様、今後のブロードバンド利用はモバイルが中心になると見られており、上記の目標は移動体分野については十分達成可能と考えられている。 なお、国内の固定インフラは国営事業者テレコム・エジプトがほぼ独占しているが、移動体通信事業者3社はいずれも外資系であり、MobiNilはフランス・テレコム、ボーダフォン・エジプトは英ボーダフォン、Etisalat MisrはUAEのEtisalatの子会社である。

(注)ITU統計( http://www.itu.int/ITU-D/ICTEYE/Indicators/Indicators.aspx )による。