アメリカ
スマートフォン
米国におけるスマートフォン市場の急拡大と端末市場シェアの動向
米国では、2007年にAppleがiPhoneを発売して以来、急速にスマートフォンの利用が拡大、近年では、 Googleが開発を主導しているモバイルOSのAndroidを搭載したスマートフォンが多数市場に登場しており、 市場拡大を牽引しているところである。なお、2007年当時には、フィンランドのNokiaのモバイルOSである 「Symbian OS」を搭載した端末や、カナダのRIMが提供している法人向け端末である「BlackBerry」が、スマートフォンの中心となっていた。
iPhoneの発売により、スマートフォンの個人利用が拡大したばかりでなく、2008年には、iPhone 3Gの発売と同時に、 Appleがモバイル・アプリの提供プラットフォームであるApp Storeを開始、モバイル・アプリ市場が成長している。 一方、Androidを搭載した端末は、2008年10月にT-Mobileが端末を発売して以降、徐々にスマートフォン市場シェアを拡大し、 2010年には、米国内でiPhoneの市場シェアを抜いている。 なお、2008年10月には、Android向けのモバイル・アプリの提供プラットフォームであるAndroid Marketも開始されている。
調査会社のcomScore社によると、2011年4月現在、米国内におけるスマートフォン端末保有者数は、7,460万となっている。 また、米国内のスマートフォン端末の市場シェア第1位はAndroid搭載端末で市場シェアは36.4%、 第2位はAppleのiPhone OS搭載端末で同26.0%、第3位はRIMの端末で25.7%、第4位はMicrosoftの端末で同6.7%となっている。
- Androidにみるオープンソースソフトウェアの課題 (PDF:別ウィンドウで開きます)
- 米国FCCによるモバイル用周波数の需要予測 (PDF:別ウィンドウで開きます)
クラウド・コンピューティング
サービス開発競争が進展する米国のクラウド・サービス市場
米国では、2000年代後半から、各社のクラウド・サービス開発競争が進展しているところである。 具体的には、Amazon、Google、Microsoftといったネット系企業のほか、 IBMやHP、Appleなど多数のIT企業がクラウド・サービスの提供を行っており、各社が法人向けサービス、 個人向けサービスの拡充を急いでいる。
米国の法人向けクラウド・サービスを提供している主な企業としては、 2006年に法人向けのIaaS(Infrastructure as a Service)型のクラウド・サービスの提供を開始したAmazonがある。 そのほか、Sales Forceが法人向けのSaaSで業績を伸ばしているほか、 IBMがIaaSやソリューション・サービスと組み合わせたクラウド・サービスで収益化に成功しつつある。 また、GoogleとMicrosoftは、2010年以降、政府機関向けのクラウド・サービスを拡充氏、政府機関からの受注競争を 展開しているところである。なお、GoogleとMicrosoftはそれぞれAndroidプラットフォーム、 Windows Phoneプラットフォーム上でのモバイル・アプリ提供を強化しており、モバイル・クラウド市場についても戦略的に重視している。
個人向けのクラウド・サービスでは、GoogleがGmail等早くからサービスを拡充してきたが、 近年ではメディア分野におけるクラウド化も進展しつつある。例えば、電子書籍端末であるKindleをアプリ化し、 SaaS型のクラウドで提供を行っている。さらに、2011年3月には、クラウドによる音楽配信サービスである「Amazon Cloud Drive」を開始、 個人向けのサービス強化を図っている。また、同年6月には、Appleもクラウドによる音楽配信サービスの「iCloud」が発表された。 なお、2010年4月に発売されたAppleのiOSを搭載したタブレット型端末であるiPadが人気となっているほか、 Androidを搭載したタブレット型端末も多数登場しているところである。個人向けのクラウド・サービスはこうしたタブレット型端末からの 利用が拡大すると見られている。
- 米国におけるクラウド・サービス関連政策の動向-連邦政府機関のITシステムのクラウド化推進策と受注競争の展開- (PDF:別ウィンドウで開きます)
FTTH網構築
大手通信事業者が牽引する光ファイバによるブロードバンド接続
米国では、大手通信事業者であるAT&TとVerizonが光ファイバ網への投資を活発化していることから、光ファイバ網の加入世帯数は増加傾向にある。
ファイバ・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)評議会の調査によると、2011年3月現在、エンド・トゥ・エンドに光ファイバで接続されている世帯は709万世帯となった。 また北米でFTTH回線が到達している世帯も2011年3月末現在で2,091万世帯に増加した。
AT&Tの光ファイバ網によるブロードバンド接続サービス「U-Verse」の加入者数は、2011年9月現在で320万となっている。 また、同社では、敷設した光ファイバ網を利用して、2006年1月からIPTVサービスである「U-Verse TV」を提供している。 同サービスの加入者総数は360万人に達しているものの、加入者数の伸びは鈍化傾向にある。 AT&Tでは、IPTVのサービスの付加価値を向上させるため、2011年10月末に、STB(セット・トップ・ボックス)とTVの間を無線で接続可能な端末の提供を開始している。 なお、U-verseネットワーク構築はほぼ完了しており、約3,000万世帯に達している。
また、Verizonの光ファイバ網によるブロードバンド接続サービスである「FiOS」は、2011年9月の加入者数は462万である。 同社でも、光ファイバ網によるIPTVサービスの「FiOS TV」を提供しており、同加入者数は、398万となっている。 FiOSネットワークは2011年6月末現在で1,610万世帯に到達している。 最終的にVerizonの光ファイバ網は、営業地域の約3分の2に該当する1,800万世帯をカバーする見込みとなっている。 光ファイバ網を敷設しない営業地域については、LTE方式による無線ブロードバンドの提供を行い、DSLによるブロードバンド・サービスとのバンドルを行う計画である。
大手事業者の合併・買収・国外進出
グーグルによるモトローラ・モビリティ買収
グーグルは、2011年8月、大手端末メーカーのモトローラ・モビリティを125億ドルで買収することを発表した。 この買収は、両社の取締役会によって満場一致で承認される必要があるほか、欧州委員会、米国、カナダ、中国、イスラエル、ロシア、台湾、およびトルコにおいては独禁法審査に基づく承認が必要となっている。 司法省では、Android搭載端末を製造するメーカーにグーグルが競合社のサービスを使わないよう妨害した事実があるかなどの調査を実施、2011年9月には、米国では司法省からモトローラ・モビリティとグーグルのそれぞれに対して、追加情報の提出を求めた。 両社では、買収の完了を2011年末または2012年早々と見込んでいる。
同買収の目的は、モトローラが持つ1万7,000件の特許を取得することが大きな理由となっている。 近年、携帯端末にかかる特許を巡る紛争が激化しており、グーグルでは、モトローラを買収することで特許紛争の回避を狙っていると見られている。 ただし、同社会長のシュミット氏は、買収は特許の取得のみが目的ではないとして、ハードウェアとソフトウェアを統合できる分野を持つことも目的であるとしている。
グーグルはモトローラ・モビリティ買収でSTB (セット・トップ・ボックス)事業も手に入れるが、これによりGoogle TVの普及を拡大することも期待されている。 Google TVの人気は伸び悩んでいるが、Google TV対応端末の価格が高いことに加えて、大手メディア企業がGoogle TV経由での番組アクセスを拒否していることも影響していると見られる。 しかし、モトローラのSTB事業を買収することで、CATV事業者との関係を受け継ぐ。 今後、同社が買収したモトローラの事業を基盤として、どのような事業やサービスを展開するのか注目される。
モバイルトレンド
スマートフォン人気の拡大とモバイル・キャリアの戦略
2007年のiPhoneの発売以降、急速にスマートフォンの普及が拡大したことによって、モバイル・キャリアの事業戦略も変化の渦中にある。 スマートフォン端末市場の勢力図は、この数年間で急激に変化しており、2000年代後半にはNokiaとRIMが市場を牽引していたものの、 2011年にはAppleのiPhoneとGoogleのAndroid搭載端末の2強時代となり、主役が入れかわっている。 この変化の背景には、iPhoneとAndroid登載端末が、PC並の性能をもち、ウェブサイトへのアクセスや多様なアプリケーションの利用を実現したことがある。 これにより、スマートフォン端末市場に加え、アプリ市場も急拡大しているところである。
comScoreによると、2011年7月現在で、米国のスマートフォン利用者数は8,220万となっており、2011年6月末現在で3億超の移動体通信加入者数からみて、4人に1人以上がスマートフォンユーザとなっている。 このように、スマートフォンの利用拡大のなかで、モバイル・キャリアの事業戦略では、スマートフォンへの対応の重要性が増しているところである。 AT&Tでは、2010年6月に、モバイル・データ通信のトラヒックの急増に対応することを理由に、スマートフォン向けの定額無制限データプランの提供を停止し、従量制データプランに切り替えている。
スマートフォン経由でのデータ通信の利用拡大は、モバイル・キャリアの事業戦略にも影響を与えつつある。 AT&Tが5年間のiPhoneの独占販売契約をAppleと締結していたことで、AT&Tの移動体通信加入者数の伸びは、iPhone人気により、Verizon Wirelessの伸びを上回った。 その結果、2010年第4四半期にはVerizon Wirelessの加入者数を抜き、AT&Tが市場シェア第1位となっている。 なお、2011年2月には、Verizon WirelessがCDMA-2000方式に対応したiPhoneを発売、巻き返しを図っている。
米国では、2009年に移動体通信加入者数で市場シェア第2位だったVerizon Wirelessが同第5位のAlltelを買収し、米国最大の移動体通信事業者となっている。 一方、AT&Tは、2011年3月に市場シェア第4位のT-Mobileの買収を発表し、さらに移動体通信市場の寡占化が進展するのではないかとの懸念から、合併審査が難航、2011年8月には司法省が買収差し止めの提訴を行なっている。
現在、米国のモバイル・キャリア各社は、Android登載端末やWindows Mobile登載端末の新機種や低価格帯のスマートフォンのラインナップの拡充を行っているほか、 アプリストア市場への参入、モバイル通信網の強化を行っており、今後さらにスマートフォンの利用が拡大していくと思われる。
国家ブロードバンド計画
オバマ政権によるブロードバンド普及促進策である「国家ブロードバンド計画」
OECDによると、米国のブロードバンド普及は、2010年12月末現在、100人当たり27.7、 OECD諸国内における普及ランキングは、15位となっている。米国は、2000年代初頭には、 ブロードバンド普及で同ランキング第4位(2001年末現在)であったが、徐々に順位を下げ、2006年以降は第15位となっている。
オバマ政権では、米国のブロードバンド普及率の向上を政策目標の一つに掲げた。 2009年2月に可決した「米国再生・再投資計画法」では、連邦通信委員会(FCC)に対して、 「国家ブロードバンド計画(National Broadband Plan)」を策定することを求めた。 そこで、FCCは、2010年3月16日に、以下の6つの長期的目標が盛り込まれた「国家ブロードバンド計画」を連邦議会に提出、 その計画に基づき関連施策を推進しているところである。同施策により、ブロードバンドの高速化、モバイル・ブロードバンド化、 公共安全分野やクリーン・エネルギー分野でのブロードバンド活用が進展することが期待されている。
| 目標1 |
|---|
| 1億世帯以上の家庭が、下り速度が実測100Mbps以上、上り速度が実測50Mbps以上の安価なアクセスを持つ (2015年までには、1億世帯以上の家庭が、下り実測50Mbps以上、上り実測20Mbps以上の安価なアクセスを持つ)。 |
| 目標2 |
| 米国は、世界最速かつ世界で最も規模の大きな無線ネットワークを持ち、モバイル・イノベーションで世界一となる (2020年までに500MHz幅の周波数を新たにブロードバンド向けに利用可能とすべき(2015年までには300MHz幅を利用可能とする))。 |
| 目標3 |
| すべての米国人は、堅牢なブロードバンド・サービスへの安価なアクセス手段を持ち、 自らの選択に従いサービスに加入する手段と技能を持つ(90%以上の採用を実現)。 |
| 目標4 |
| すべてのコミュニティは、学校、病院、政府機関の建物といったアンカー組織において 1Gbps以上の安価なブロードバンド・サービスへのアクセス手段を持つ。 |
| 目標5 |
| 米国人の安全を確保するため、全ての一次応答者は全国規模で相互運用可能な無線ブロードバンドの 公共安全ネットワークへのアクセス手段を持つ。 |
| 目標6 |
| 米国がクリーン・エネルギー経済において世界をリードすることを確保するため、 すべての米国人は自身のリアルタイムのエネルギー消費を追跡し、管理するためブロードバンドを利用する。 |
ICT利活用
米国における電子政府ポータル・サイト「usa.gov」のクラウド化
米国では、連邦政府機関のポータル・サイトとして、usa.govを開設していたが、オバマ政権の発足直後の2009年5月、 同サイトがリニューアルされている。同施策は、オバマ政権における連邦ITシステムのクラウド化の一環として実施されており、 クラウド化によるコスト削減やモバイル・アプリ提供、ソーシャル・メディア対応等のサービス向上が図られている。
Usa.govの前身は、Firstgov.govで、2007年1月からusa.govの名称となっている。 同サイトは、年間ビジター数が1億人以上、保管文書数が5,000万件以上という巨大なサイトであり、 システムダウンが頻発していたほか、導入していたブレード・サーバ・システムが非効率だったことから、クラウドへの移行が検討・実施された。
同移行を受注したのは、Terremark WorldwideというITシステム事業者である。同社は、usa.gov向けにIaaSの「Enterprise Cloud」を提供、 連邦調達局(GSA)は、これにより同サイトのコストが50%削減されたとしている。同社によると、既存システムも仮想化にVMWareを仕様、 同社の仮想化も同じくVMWareを利用していたことから、移行には10日間しかかからなかったという。
また、このリニューアルでは、検索エンジンにMicrosoftのBingが採用されたほか、 政府データにアクセスすることができる18の無料携帯アプリが提供された( http://apps.usa.gov/ からアクセス可能)。 このモバイル・アプリとしては、usa.govのモバイル版のほか、FCCのモバイル・ブロードバンドの速度計測アプリ、 代替エネルギーを提供場所のロケーター等がある。なお、usa.gov以外でも政府機関はモバイル・アプリを提供している。 2010年6月末現在、こうしたアプリは111個となっている。
- 米国におけるクラウド・サービス関連政策の動向 (PDF:別ウィンドウで開きます)
ネット中立性
オバマ政権下における「ネット中立性」規則を巡る動向
米国では、2000年代中盤ごろより、インターネット上で流通するトラヒック管理について、 「ネットワーク中立性(ネット中立性)」として政策的な対応のあり方について議論が高まり、2010年12月には、 連邦通信委員会(FCC)が関連規則を策定した。同規則は、もともと、2007年にケーブルテレビ事業者であるコムキャストが、 同社が提供しているブロードバンド接続サービスにおいて、P2Pのトラヒックに制限をかけたことから、議論が活発化したものである。
オバマ政権では、ネット中立性の維持を政策として掲げている。オバマ政権下で民主党系委員が優勢となっているFCCにおいては、 ネット中立性を維持する内容の規則が2010年12月に策定された。同規則では、固定ブロードバンド・プロバイダに対して、 ブロードバンド上におけるサービスについて、ウェブ・コンテンツやアプリケーションの不当な遮断を禁じる一方、 効果的なネットワーク管理の必要性も認めるものとなっている。また、モバイル向けのブロードバンド・プロバイダに対しては、 ウェブ・コンテンツや競合する音声サービス、映像サービスへの接続を妨害してはならないと規定され、 固定ブロードバンド・プロバイダに対するよりも緩やかな規定となっている。
このネットワーク中立性に関しては、大手ブロードバンド事業者が反発しており、FCC規則策定後には、同事業者から裁判が起こされたほか、 連邦議会においてもFCCの権限に関する議論が起こり、2011年3月には下院で同規則を廃止する決議案が採択されている。 しかし、同規則の連邦議会による無効化について法案が可決されたとしても、オバマ大統領が拒否権を発動すると見られており、今後の同規則の動向が注目されている。
ネット利用の安心・安全
子供のネット利用におけるオンライン・セイフティ向上に向けた取り組み
米国では、未成年によるソーシャル・メディアの利用拡大を背景に、子供がトラブルに巻込まれる問題が発生したことから、 近年、子供のネット利用におけるオンライン・セイフティ向上に向けた取り組みが強化されている。
まず、子供のオンライン・セイフティ向上に関する啓発活動の推進や民間における対策の連携推進については、 2008年10月に「Protecting Children in the 21st Century Act」が成立した。 同法は、ネット上の危険について子どもを教育するために保護者、インターネット業界、教育関係者の力を結集することを盛り込んだ法律となっている。 また、同法では、学校に対して、SNSやチャットルームなどを利用する際の注意、ネット上でのいじめに対する知識と対策等を教えるカリキュラムを提供することを義務付けたほか、 保護者が子どもに見せたくないコンテンツをブロックできる技術やプログラムについて確認し、その使用を奨励する省庁間ワーキング・グループを創設すること、連邦取引委員会(FTC)によるネット上の危険について啓発する全国キャンペーンを実施することが規定された。
その後、連邦通信委員会(FCC)は、2010年10月には、インターネット・サービス利用のためE-rateプログラムから補助金を受ける学校に対して、 サイバーいじめとソーシャルネットワーキングサイトの責任ある使い方について教えることを義務付ける命令を出しており、学校における取り組み強化を図っている。 なお、全国防犯評議会の調べによると米国ティーン層の半数近くは何らかのサイバーいじめ被害を受けており、これを苦とした自殺も増えている。 FCCは今回の命令は同委員会の規定を「Protecting Children in the 21st Century Act」と一致させるものだと説明している。 なお、E-rate規定では既に補助金交付を受ける学校に対して、インターネットの安全な利用方針、不適切なコンテンツへのアクセスを防ぐフィルタの導入を義務付けており、同命令はネットの安全な利用教育をこれらに追加するものとなっている。
また、スマートフォンに代表される携帯機器の高機能化で、これらの機器を使う子供たちがネット上の不適切なコンテンツに触れる機会が増えるのではないかという懸念が保護者の間に広がっており、 携帯機器にペアレンタルコントロールを提供する製品もいくつかのメーカーから発売されている。 移動通信事業者もスマートフォン向けのペアレンタルコントロール機能を提供しているが、こちらは事業者のネットワーク経由でインターネットに接続している場合にしか機能していない。 これに対応するため、アップルの携帯機器向けには、マカフィーが所有するInternetSafety.comの「Safe Eyes Mobile」、モビシップの「Safe Browser」といった子供の目に触れては困るコンテンツをフィルタでブロックするブラウザが登場している。