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マレーシア

モバイル

東マレーシアでの携帯ネットワーク整備

2014年12月、マレーシア第三位の携帯電話事業者Digiは、サバ州都、コタ・キナバルでのLTEサービスの開始を発表した。Digiは、最低1Mbpsの接続を市内の84パーセントの地域で提供できるとしており、1年以内にサバ、サラワク州の他の街でもサービスを開始したいとしている。

サバ、サラワク州からなる東マレーシア地域(ボルネオ島のマレーシア地域でもある)は、もともとは熱帯雨林に覆われ、人口密度が低いためにICTの普及が西マレーシア地域に比べて遅れている。

一方、旧インカムベント系のセルコム・アクシアタは、2014年11月の時点で、2年以内にサバ州の全域を少なくとも3Gでカバーし、90パーセントの地域をLTEでカバーする計画を発表している。発表時点で同社のネットワークは、都市域の100パーセント、近郊域の90パーセントをカバーしているとされている。2013年からコタ・キナバル、クチン(サラワク州都)でLTEを提供しているマキシスも、今後、その他の街への浸透を図るものと見られる。

マレーシアではユニバーサル・サービス基金改革の結果、セルラー塔設置についても基金の使用が可能であり、さらには、所得が一定以下で高校に子女を通わせているといった条件を満たした家庭には、コンピュータ端末も配布されている。ネットワークの高速化は、ルーラル地域でのICTの利活用をさらに進める可能性が高い。

(2015年2月)

ソーシャル・サービス

オンライン情報拡散への政府の対応

政府開発公社(1Malaysia Development Bhd:1MDB)をめぐる不正な資金の流れに関する様々な情報の流通や、SNSを通じて人種間の緊張が高まった事案(注1)が発生したため、マレーシア政府は「通信マルチメディア法」や「治安維持法」の適用により、Webサイトへの接続停止や出版停止の処分を下している。

また、政権の引き締めを狙った内閣改造で任命された新通信マルチメディア大臣Salleh Said Keruak氏は、2015年8月初旬のインタビューで、10月予定のサイバー関連法改正でのポータルニュースサイトの免許制への移行や、通信マルチメディア委員会(CMC)に「国益を損なう」ウェブサイトへの接続を停止させる権限を持たせるなどの規制強化などについてコメントしている。大臣は「この規制変更は1998年に制定されたサイバー法をその後の技術革新の変化に合わせて改正するもの」で、昨今のSNSでの政府批判などを反映したものではないとしている。現行の法制度下でのオンライン情報規制は、CMCウェブサイトにまとめられている(注2)。

なお、1MDBに関して虚偽の情報を流し国民からの苦情を受けているとして、通信マルチメディア法に基づき(注3)Sarawak ReportのWebサイトに対するアクセスが、7月19日より停止された。同サイトはマレーシア国内に当該データを置いておらず、事務所も英国にあるため、マレーシア警察は、刑法違反(注4)で代表者に対する逮捕状を請求し、国際指名手配する構えである。

(注1)2015年7月12日にクアラルンプールの商業モールLawYat Plazaでマレー系住民が差別的な扱いを受けたとされる情報がSNSを通じて拡散して、暴動が起こった。
(注2)http://www.skmm.gov.my/FAQs/Online-Content-Problems/What-are-the-steps-required-for-me-to-lodge-compla.aspx(別ウィンドウで開きます)
(注3)第211条(侮辱的な表現の禁止)及び第233条(不適切なネットワーク設備やサービスの利用)を適用。
(注4)第124条(議会の成員に対する攻撃)のいくつかの項を適用。

(2015年8月)

ブロードバンド

携帯電話事業者間の競争とデータトラフィックの増大への対応

2013年12月にU Mobile(2013年9月時点の加入数第4位、他三社と比べてシェアが小さい)が首都圏クランバレーの一部地域等でLTEサービスの提供を開始し、4G免許事業者すべてのサービス提供が出そろった。各社ともに、4Gサービスの開始によって、モバイルデータ・トラフィックが急増することは認識しており、インフラの構築を進めるとともに、共用や提携を通じて、アクセスのみならず、バックボーンやバックホールの帯域の確保に努めている。

2011年から共同でインフラを構築しているセルコム・アクシアタ(加入数第1位)とDiGi (加入数第3位)は、半島部中に張られた固定網事業者テレコム・マレーシアのNGN網を両社が共同で設置しているアクセスポイントに接続し、帯域を借り入れる協定を締結した。これはテレコム・マレーシア側にとっても、4億~6億リンギットの収入をもたらす取引になり、この資金を自社のブロードバンド網の更なる強化に投入するとCEOが言明している。 一方で、「携帯電話サービス」というくくりで見た場合には、すでに市場は、飽和を始めており、競争が新たな次元に動きつつある。言い換えると、これは料金競争から、サービス内容やバンドルサービスの形態、魅力的なアプリケーションを提供できるかという局面に移行しつつあるということである。

たとえば、インフラの弱い地域では、規制機関が問題視するほどのレベルで、携帯電話の通話の中断が発生しており、それを解消することもサービス内容の競争につながる。また、2013年には、若年層を中心に加入者の流失が大きかったMaxis(加入数第2位)の場合、系列会社で有料放送を手掛けているAstroのコンテンツを4Gサービスに組み合わせるなどの対抗策を考えているようである。一方、SMSベースのゲーム・コンテンツのヒットなどで加入者を獲得したセルコム・アクシアタの場合は、アプリケーションの開発に力を入れている。各社ともに料金競争で減少したARPUを、いかにして引き上げるかということに苦心している。

いずれにせよ、こうしたサービスの強化のためには、データトラフィックの増大に対応できるインフラが必要で、各社はコスト効果の高いインフラ増強策を試行錯誤している。

(2014年1月)

ブロードバンド・ICT基盤整備

新内閣が通信マルチメディア省を設置

マレーシアでは、2013年5月5日に実施された総選挙の結果を受け、15日に「国民戦線(Barisan Nasional:与党連合)」からナジブ(Mohd. Najib Abdul Razak)首相が選出され、組閣を行った。その結果、新内閣では、通信マルチメディア省(Ministry of Communication and Multimedia)が設置され、アハマド(Ahmad Shabery Cheek)氏が大臣に指名された。

通信マルチメディア省は、前内閣時の情報通信文化省から文化担当部局を切り離す形で設置され、情報総局と通信総局及び省の管理部門を中心として、国営放送を所管するJabatan Penyiaran Malaysiaや国営通信社であるPertubuhan Berita National Malaysia (BERNAMA)を外局として傘下に置く。これまで、文化部門と一緒になっていたり、エネルギー部門や水部門と一緒になっていたりの変遷をたどってきたが、このたび、単独で情報通信セクターを所掌する省となった。

なお、副大臣に指名されたジャイラニ(Jailani Johari)氏は、通信マルチメディア委員会の元幹部職員で、今回の総選挙で議員として選出され、副大臣に就任した。ICT産業界からは、ブロードバンド化の進展等、関連施策の推進の加速化について、専門的な知見を発揮することが期待されている。

野党勢力が伸長してくるなか、リモート・ルーラル地域を数多く抱えるサバ州、サラワク州(共にボルネオ島=東マレーシア地域に位置)での国民戦線の議席確保が、政治的に大きな意味を持ってきているため、今後5年間で各種のデジタル・デバイド縮小のための政策が実施されることが予想される。

(2013年6月)

スマート社会

「世界初の」デジタル自由貿易ゾーンの設立

2017年3月、マレーシア政府は、デジタル経済化の進捗を図るため、首都圏地域に「世界で初めてとなる(1)」デジタル自由貿易ゾーン(Digital Free Trade Zone: DFTZ)を設置した。スタート時には電子商取引のハブの確立が目標とされており、物流面を支える「DFTZ@Aeropolis」をクアラ・ルンプール国際空港内に設定し、東南アジアをターゲットに定めた国内外の関連企業を誘致するために「クアラ・ルンプール・インターネット・シティ」を設定している。

1990年代に開始されたマルチメディア・スーパー・コリドー計画以来、マレーシア政府は、特定産業の育成・成長のために地域指定(ゾーン)方式の開発政策を選好している。

DFTZにおいては、インターネット関連のスタートアップ企業の育成や、既存大手とのマッチアップを図る予定である。そのため、高速回線、保税倉庫等のインフラの整備を行い、政策誘導や規制緩和といった側面支援を実施し、スタートアップ企業には税制面での優遇を与えている。また、ゾーン内への電子商取引による輸入については、500リンギ(約13,000円、5月10日時点)以下の商品については非課税とする予定である。

DFTZは、マレーシア政府が電子商取引の国内総生産(GDP)への寄与を、現在の10.8%から2020年には20%に引き上げようとしている政策の一環でもある。

5月にはナジブ首相が、アリババの本社を訪問し、杭州市、アリババとDFTZの推進主体であるMalaysia Digital Economy Corp (MDEC、旧MDC)との協力協定締結の立会人となった。

(1) ナジブ首相は開設式において、そのように紹介した。

(2017年5月)

放送・メディア

地上波デジタル放送インフラ構築事業者の決定

マレーシア通信マルチメディア委員会(Communications and Multimedia Commission:CMC)は、2014年1月8日にPuncak Semangat Sdn Bhd(PSSB)社をDVB-T2方式の地上波デジタル放送のインフラを構築し運営する事業者に指名した。これは、2012年に開始された選考過程の結果、66社が関心を示し、一次審査で8事業者に絞り、二次審査で3社(PSSB、i-Media Broadcasting Solutions Sdn Bhd、Redtone Network Sdn Bhd)に絞ったうえでの決定である。

PSSBは、開始時点で45波のSDと15波のHDチャンネルを準備して、地上波デジタル放送関連のデジタルマルチメディア・ハブやネットワークの構築を行う。また、その時点では現時点で免許を受けているすべてのTV局とラジオ局がデジタル・プラットフォームに移行する。いくつかの主要地域に限定された放送の開始は、2014年の第3四半期が予定されており、現在地上波放送を視聴することが可能な地域(国土の98%)をカバーできしだい、アナログ停波の予定である。

なお、マレーシアは、各放送事業者がインフラを構築するのではなく、共通統合インフラ事業者が全国網を構築する方式を採用した。これは、インフラ構築コストを抑え放送事業者の資源を有効に利用させるための方式である。また、これによって価値のある低い帯域の周波数から生じる「配当」が有効に利用されると規制機関は考えている。一方で、ネットワーク構築に経験の浅いPSSBが迅速にプロジェクトを完遂できるかどうかについては、疑問を呈する声もある。

(2014年2月)

マルチメディアコンテンツ開発基金の創設

マレーシア通信マルチメディア委員会(Communications and Multimedia Commission:CMC)は、2013年9月7日にAT&T社と協賛で、革新的なモバイルアプリケーションを厳しい時間的な制約の下で作成する「Malaysian Developer’s Day 2013」というコンペティションを開催した。

ソフト開発や小規模ビジネスの立ち上げを夢見る参加者は、会場でチームを作り24時間以内に彼らのアイディアを具体的なアプリケーションに具現化する。最高賞金は1万米ドルで、開発者、デザイナー、マーケティングの専門家、企業家といった200名の面々が参集してアイディアと技術を競った。

2013年第2四半期に家庭からのブロードバンド接続が66.8%に達し、携帯電話の普及率が143.5%に達しているマレーシアでは、一層の情報通信の普及のためには魅力的なアプリケーションやソフトの開発が急務であり、CMCの担当局長も今回のコンペは「マレーシアには、彼らの生活を豊かにしてくれるようなアプリケーションを待ち望んでいる多くのユーザが存在している」とコメントしている。

委員会では、また、1億リンギット規模の「Creative Industry Development 基金」を創設し、マレーシアでの創造的、独創的かつ商用に耐えうるようなマルチメディアのコンテンツを後押しすることになっている。

今回のコンペの背景には、CMCの調査(2012年)によるとマレーシアでは20-39歳の携帯電話利用者のうち59%がモバイルアプリケーションを頻繁に利用しており、60%以上のスマートフォン利用者が10以上のアプリケーションをダウンロードしているという事実がある。

(2013年9月)

電波関連

通信マルチメディア委員会、700MHz帯割当て手続きを発表

マレーシア通信マルチメディア委員会(Malaysian Communications and Multimedia Commission (MCMC)は、2017年10月11日、700 MHz帯の割当てに関する方針「2017年マーケティング計画1号」(Marketing Plan No. 1 of 2017)を発表した。700 MHz帯は、現在、アナログ放送用の周波数として分配されているが、デジタル放送への移行に伴う周波数移転の後、LTE等のモバイル・ブロードバンドへ再分配することが、2017年9月、省令「700 MHz帯周波数の再分配に関する省決定(2017年決定第1号)」(Ministerial Determination on 700 MHz Spectrum Reallocation, Determination No. 1 of 2017)により定められている。MCMCの方針は、上記省令を受けて、同帯域の割当方法の詳細を明らかにしたものであり、2017年10月25日まで利害関係者からの意見募集を行う。

主な内容は以下の通りである。
  • 周波数帯域:
    • 分配される帯域は、703 MHz - 743 MHz/758 MHz - 798 MHz(40 MHz幅×2)。
    • 5 MHz幅×2ごとの周波数ブロックに分割し、計8ブロックを割り当てる。
    • 1事業者の保有は、4ブロック(20 MHz幅×2)までを上限とする。
  • 免許期間
    デジタル放送への周波数移行終了後、2019年1月1日から15年間。
  • 選定方法
    以下の項目に関する計画・実績の比較審査により事業者を選定する。
    • ① サービス及び設備計画
      MCMCが指定する、以下のサービスカバレッジを達成するための基地局・通信網の敷設等の事業戦略。
      • LTE等のモバイル・ブロードバンドサービスの人口カバレッジを、2020年に95%、2023年に98%とする。
      • 2023年までに主要高速道路・主要鉄道沿線をカバーする。
    • ② インフラの共有(infrastructure sharing)
      • ネットワーク設備(鉄塔、床スペース、アンテナ等)共有に関する計画。
      • 伝送能力(トラフィック、第三者事業者へのアクセス条件等)の共有に関する計画。
    • ③ サービス料金・サービス品質
      • 現行の料金よりも低廉な価格でモバイル・ブロードバンド・サービスを提供するための戦略。
      • 2020年までに、30 Mbpsを最低速度としてデータサービスを提供するための戦略。
    • ④ その他
      • 過去のサービス実績記録。
      • 財務実績及び計画。
      • 組織管理・技術管理等に関する実績記録。
  • 割当てに対し事業者が支払う料金
    割当を受けた事業者は、周波数ブロックを単位に定められた料金を支払う。
    • 周波数価格(price component)
      1ブロック(5 MHz幅×2)当たりの周波数の料金が固定価格で定められている。価格は、一括、5年、10年、15年の支払い方法により異なり、事業者は以下のいずれかを選択することができる。
      • Option 1(一括支払い(one lump sum)):215,535,000リンギ
      • Option 2(5年支払い(Five equal annual payments)):260,595,000
      • Option 3(10年支払(Ten equal annual payments)):328,380,000
      • Option 4(15年支払(Fifteen equal annual payments)):417,120,000
      例えば、事業者A社が、2ブロック(10 MHz幅×2)の割当てを受け、10年支払いを選択した場合、1ブロック当たりの固定価格は328,380,000リンギ、2ブロックの総額は656,760,000リンギ。各年の支払額は、10年の割賦により65,676,000リンギとなる。
    • 年間料金(annual fee component)
      割当を受けた事業者は、割当て期間中、1ブロック当たり年間18,539,000リンギを支払う。

MCMCの予定では、利害関係者から募集した意見を踏まえ、2017年10月末に割当て方法を最終決定し、2018年1月2日まで割当て申請者を募集することとしている。

(2017年10月)