韓国

モバイル

FinTechサービス動向-割り勘習慣拡大がモバイル送金利用拡大の追い風に―

2015年からのフィンテック(FinTech)促進政策の追い風を受け、2017年もFinTechブームの勢いはとどまりそうにない。FinTech促進政策は2016年までの2年間で雇用創出において最も成果を上げた政策としても評価されている。FinTech企業数に関する統計は無いが、スタートアップ企業が増えており、2016年上半期時点でFinTech支援センターでは400社程度を把握しており、実際はその倍以上の企業が存在するのではないかと見られている。

FinTechブームを受け、金融機関と通信事業者の提携も拡大した。移動通信最大手SKテレコムはハナ金融グループと折半出資で資本金500億ウォン規模の合弁会社Finnqを立ち上げ、2017年上半期からモバイルベースの資産管理、P2P金融などのサービスを提供予定。ウリ銀行は、総合通信最大手KTが近日オープン予定のネット専業銀行「Kバンク」への資本参加やサービス共同開発などでKTとの協力範囲を拡大中。KB金融グループは、総合通信大手LG U+との提携で、通信コンテンツと金融ポイントが融合した新概念の会員サービス「Liiv Mate」を2016年秋に開始。

2016年中に、モバイルベースの金融サービスは急成長を見せた。2016年9月時点でスマートフォン・バンキング登録者数は7,203万となり、ネットバンキング登録者全体の63%を占める。モバイル決済とモバイル送金利用実績も急増中の注目分野である。モバイル送金はこれまで、銀行口座を持たない人が多い途上国でのサービスというイメージが強かった。韓国ではFinTech促進策による規制緩和を受け、銀行やネットサービス大手、FinTechベンチャーが、SMSや電話番号ベースの手軽なモバイル送金サービスを次々と開始した。特に、FinTechベンチャーViva Republicaが提供するモバイル送金サービスTossが使い勝手の良さから利用者数を伸ばしている。

モバイル送金利用拡大の背景には、様々なサービス開始と共に、特に、若者の間で割り勘の習慣が広まりつつあることも追い風になっている。韓国では食事の際は先輩格がおごるのが一般的であったが、最近では、食事代を一括で払った人にモバイル送金で自分の分を支払うケースが増えつつある。

(2016年12月)

音声無制限・データ通信従量制の割安プラン導入で新局面を迎えた携帯料金競争

政権公約として通信料金引き下げを進める韓国では、MVNO促進、携帯電話加入費廃止、消費者差別的な端末販売支援金を厳しく取り締まる端末流通法施行等の各種施策が2014年中に進められた。2015年に入ってからは、移動通信事業者のサービス競争を活性化させるため、データ通信利用が主体となった最近の携帯電話利用状況を反映した割安の「データ中心料金プラン」の導入誘導が図られてきた。ICT主管庁の未来創造科学部は、当初2017年までの「データ中心料金プラン」導入を目指して2015年初めから通信事業者との協議を進めてきた。その結果、2015年5月、移動通信3社が相次いで、音声通話部分を定額かけ放題、データ通信を従量制とした「データ中心料金プラン」を導入し、料金競争が本格化している。

各社の新プランは、2万ウォン台からデータ通信容量に合わせて7~9段階で設定。全てのプランで固定電話も含めた通話とSMSが無制限。これまでの通話無制限プランは5万1,000ウォンであったため、特に、音声通話中心の利用者にとって通信費の大幅節約につながる。3社の新プランは早くも爆発的人気となっている。

通信事業者がこれまでこだわってきた携帯音声収入を事実上放棄した背景には、若者を中心に、携帯電話の利用スタイルが変わったことが根底にある。カカオトーク等チャットアプリの利用増で音声通話やSMS利用が減る半面、動画やゲーム等のデータ通信利用が大幅に増えた。今回の料金競争開始を契機に、通信市場がモバイルを中心に再編され、革新的なコンテンツや融合サービスが出現することが期待されている。

(2015年6月)

端末流通法施行で韓国端末市場に変化の兆し

国内端末メーカーの最上位機種が圧倒的に強く、海外メーカーが次々と撤退したことで「海外端末の墓場」とも呼ばれた韓国の携帯電話端末市場に異変が起きている。原因は、2014年10月に、端末奨励金(補助金)の根絶を狙いとして施行された端末流通法の影響と見られている(同法の内容と影響については、下記リンクの研究員レポートを参照)。

まず、同法では発売から15か月以内の端末に補助金上限を定めているため、最近では規制対象外の発売から15か月を過ぎた端末への補助金が厚くなり、これらの型落ち端末の在庫一掃ともいえる商戦が過熱化している。

さらに、海外メーカーの端末が韓国市場に商機を見出そうとするようになった。キャリアは最新端末に手厚い補助金を出すことができなくなったため、中低価格の海外端末の需要が拡大しつつある。iPhone以外の海外端末が大苦戦した韓国市場であるが、モバイル市場第3位のキャリアLG U+が、2014年末からHuaweiのスマートフォンX3を発売したのに続き、最大手キャリアSKテレコムも中国家電メーカー大手TCLアルカテルの端末の2015年中の発売に向けて準備を進めている。MVNO市場も拡大を続けていることから、海外メーカーの中低価格端末への注目は当分続きそうである。さらに、キャリア以外の経路で入手した端末での通信サービス加入時にも料金割引のインセンティブが与えられるようになったため、SONYやHuaweiもキャリア以外のルートを通じての端末販売に乗り出すなど、商機を見出そうとしている。

また、韓国市場は最もiPhoneが売れない市場と言われてきた。特に、スマートフォン時代になってからは、国内端末市場はサムスン電子のシェアが60%超の一強時代となり、iPhoneのシェアは10%前後であった。しかし、2014年秋にキャリア3社を通じて発売されたiPhone 6が国内端末市場でのシェアを伸ばした。発売直後の2014年11月の国内市場でのAppleのシェアは3割超を記録。スマートフォン時代になってから国内市場で、海外メーカー端末のシェアが2割を超えたのはこれが初めて。この背景としては、国内メーカーの最新機種に集中的に手厚く支給された補助金慣行が弱まり、海外メーカー端末の競争の下地が整備されたことに加え、キャリア3社間の一斉発売によるマーケティング競争の影響、が挙げられる。これらの変化が定着したものとなるか、今後の推移が注目される。

(2015年2月)

モバイル・メッセンジャーアプリ成長で変わるインターネット・サービス勢力図

1.国内インターネット・サービス市場で圧倒的強者のNHN
韓国のインターネット・サービス市場の圧倒的な強者は国内のポータル事業者であった。韓国のポータルサイト市場シェアは、NHNが運営するNaverが7割、Daumが2割を占めており、残り1割の中でGoogleや国内ポータル数社が苦戦している。最近特に、ポータル市場におけるNaverとDaumの二強体制が顕著となったため、2012年7月にポータル市場第5位のParanが閉鎖、Yahoo!Koreaも2012年末で韓国から撤退することになった。

2.スマートフォン化で急変するインターネット・サービス市場勢力図
一方、スマートフォン時代に突入した2010年から、インターネット・サービス市場の勢力図に変化が生じている。日本では2012年から無料モバイル・メッセンジャーアプリLINEが話題となったが、スマートフォン普及速度が速い韓国では、既に1年以上前からモバイル・メッセンジャーアプリの先駆者ともいえるカカオトークが社会現象と化している。LINEはNHNが提供するサービス。カカオトークの運営会社カカオは独立系ベンチャーだが、2010年3月にモバイル・メッセンジャーを開始してから、短期間にインターネット・サービス市場でNHNを脅かす存在に急成長しつつある。NHNは2013年2月、モバイル化への迅速な対応とカカオトークへの対抗のために、会社分割する方針を発表。ポータルNaverを運営するNHNとゲーム事業のハンゲームを分離し、モバイル専門法人「キャンプモバイル」とグローバルLINE事業を支援する「LINE Plus」を設立する。本国での事業再編に伴いNHN Japanもゲーム事業のハンゲーム株式会社(仮称)と、LINE/Naver/ライブドア等ウェブサービス事業のLINE株式会社(仮称)に分割されることになった。

3.グローバル・モバイルプラットフォーム化を目指す韓国メッセンジャーアプリ
今やモバイル・メッセンジャーがインターネット市場での成長のカギとなった。LINEは2013年1月に世界の登録利用者数が1億を突破し、FacebookやTwitterをしのぐ速度で急成長中。このうち約4,100万が日本国内の利用者。一方、カカオトークは全利用者数7,000万(2012年末現在)のうち日本国内利用者数は870万(2013年1月半ば現在)だが、韓国では年代を問わずスマートフォン利用者のほぼすべてが利用する。カカオトークとLINEは、ゲームやSNS等様々な機能を拡大しながら世界的なモバイル・プラットフォームとしての成長を目指している。NHNはLINEの日本での成功を基に中国・米国市場への拡大を狙い、国内では先行するカカオトークからの巻き返しを図る。一方、独立系のカカオトークは資金難に苦しんでいたが、2012年夏から開始したゲームアプリとの連携で、9月に初めて単月黒字を達成した。10月からはYahoo!Japanと提携して日本でのマーケティングを本格化している。カカオトークやLINEという新勢力が世界的なモバイル・プラットフォームとしての地位を確立できるかが注目される。

(2013年2月)

クラウド、ビッグデータ、コネクティッド

AI活用の金融連携サービス開発に力を入れるICT業界

2017年後半にかけてもAI、FinTechブームが続く韓国だが、最近は特に、ICT業界によるAI活用・金融連携の新サービス導入の動きが活発となっている。

通信キャリアは、音声認識AIスピーカーをベースとした金融領域サービスを拡大している。移動通信最大手SKテレコムは2017年下半期、音声認識AIスピーカー「NUGU」(2016年9月発売)に、証券取引と銀行サービス機能を追加する。サムスン証券との提携で、関心種目の株価動向照会や株・ファンド推薦、証券顧客センター通話等の新サービスを提供する。当初は照会機能が中心だが、投資収益分析や対話型商品お勧め機能も順次提供する方針。また、ハナ銀行との提携で、NUGUを通じた残高照会や取引明細確認、送金サービスを開始する予定。今後はカード・保険分野も加え、金融領域全般にサービスを拡大する方針。

総合通信最大手KTは国内証券最大手未来アセット大宇と提携し、2017年6月末に音声認識AIスピーカー「ギガジニー」(2017年1月サービス開始)に、株価と指数、国内外市況等の音声認識照会サービスを追加している。今後は非対面での口座開設や株取引機能、KT系列のネット専業銀行Kバンクとの連携サービスを順次追加する。9月にはギガジニーでの音声ベースのクイック送金や口座照会ができるカウチバンキング機能を新たに提供する計画。

インターネットサービス大手NAVERも最近、未来アセット大宇との関係を強化し、AI活用金融サービス市場に乗り出す方針。カカオトークの運営会社として知られるカカオも9月までに音声認識AIスピーカー「KaKao Mini」を発売する。カカオは決済、送金などの金融プラットフォーム機能を強化していることに加え、近日中にネット専業銀行も開業する。AIスピーカーと金融サービス連携も視野に入れることになるであろう。ITサービス大手LG CNSはデジタル金融事業部門を大幅に強化し、2017年末にAI活用の対話型金融チャットボットシステムを投入する計画である。日本以上に勢いがあるFinTechとAIの組み合わせで、独創的な新サービスの登場に期待したい。

(2017年7月)

2017年のIoT市場動向:通信キャリア3社のLPWAネットワーク活用サービス競争が本格化

2017年の韓国IoT市場は、通信キャリア3社のLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク活用IoTサービス競争本格化が大きなトレンドとなっている。2016年までに周波数開放等IoT関連産業促進のための規制緩和が進められた結果、通信キャリアのLPWA全国ネットワーク構築が進んだ。SKテレコムはLPWAネットワークの一つであるLoRaの全国ネットワーク構築を2016年6月に完了。KTとLG U+はNB-IoT規格のLPWA全国ネットワークの共同構築を進め、2017年6月までに構築完了の予定。SKテレコムとKTはそれぞれ、LoRa/LTE-M、NB-IoT/LTE-Mと2種類のLPWAネットワークを保有し、用途に応じて使い分けている。LoRaとNB-IoTは主に、少量のデータ通信で活用する。

世界に先駆けてLoRa全国ネットワークを構築したSKテレコムが従来よりも大幅に引き下げたIoT料金プランを導入したことは我が国でも大きく注目された。SKテレコムのLoRaネットワーク活用サービスラインナップは、当初は公共・産業向けを中心に拡大されてきたが、2017年5月の一般向けサービス3種(子供やペットの位置追跡、衝撃監視センサーでの自動車情報通知、IoTブラックボックス)発売を契機に、今後は一般向けサービス拡大に力を入れる方針。SKテレコムのLoRa活用サービスは2017年5月現在で22種であるが、2017年末までに50種に拡大の予定。

KTとLG U+は、首都圏でのNB-IoTネットワークを構築した2017年4月末のタイミングで、ネットワークの商用サービス開始を発表。両社は試験サービスと今後のサービス提供予定も明らかにしている。KTは、4月からサムスン電子のNB-IoT対応端末「多用途位置トラッカー」を利用する位置追跡のβテストを進めるなど、複数サービスの準備を進めている。LG U+はNB-IoT活用の都市ガス配管ネットワーク管理システムの試験運用を首都圏一部地域で開始する。2017年中に貨物追跡や物流管理等のサービスも提供する計画。

(2017年5月)

人工知能(AI)を中核事業化するICT業界

2016年3月に行われたGoogleの人口知能(AI)アルファ碁とプロ棋士の囲碁対局を目の当たりにし、いわゆるアルファ碁ショックからAIブームとなった韓国ICT業界では、AI技術開発と商品化がスピードアップしている。

インターネットサービス最大手NAVERは、2016年8月、AI活用自動翻訳アプリpapagoを開始。Papagoでは写真の中の文字まで通訳・翻訳が可能で、金額にかかわる内容の場合はリアルタイムのレートも適用して翻訳。ネット接続が不安定な環境下では事前搭載の生活会話コンテンツ活用に切り替える。10月に開催したNAVERの開発者向けイベントでは、AI基盤研究開発の具体的ビジョン「Ambient Intelligence」を紹介。研究開発組織を2017年初めに分社し、今後はロボティクスや自動走行といったAI活用技術に力を入れる方針。

移動通信最大手SKテレコムは音声認識技術とディープラーニングを適用したAIサービス「NUGU」を8月に開始。円筒形の家庭用AIスマートデバイスNUGUは、音声認識により、出前注文、音楽ストリーミング、スマートホーム、家電制御、音楽推薦・自動再生、天気やスケジュール情報案内、スマホ位置情報等の情報とサービスを提供する。また、クラウド上のソフトとAIプラットフォームのアップグレードで今後も多彩な機能を追加していく。

大手財閥SKグループのITサービス会社SK C&Cは、AI、ビッグデータ、クラウド、スマートファクトリーを今後の中核事業に据えた。中でもAIに最も力を入れ、IBMワトソン技術とビッグデータの融合で、産業別に特化したAIサービスを提供する計画。AI活用で無人コールセンター、児童癌検診、スマートホームショッピング推薦といったB2Bシステム構築を手始めに、自動対話型教育サービスやスマートホームのB2C/B2B2C型事業に拡大する計画。

(2016年11月)

IoT市場動向-スマートホーム等個人向けIoTサービスが続々登場

2016年もグローバルなICT分野ではIoTがキートレンドとなっているが、韓国ICT分野においても引き続きIoTが最大のトレンドとなっている。政策面でも2014年から多面的なIoT促進策が導入され、IoT専門ベンチャーの海外展開につなげようとしている。

通信キャリアや大手メーカーも2015年からIoTビジネスに本腰を入れている。本業の通信ビジネスの成長が見込めない中、キャリアにとってIoTは今後の重要な成長エンジンという位置づけである。大手キャリアのKT、SKテレコム、LG U+の3社は2015年中にスマホアプリで家の状態を遠隔制御できるIoTスマートホームサービスを本格化。中でも、総合通信キャリアLG U+は、2020年までに世界最高のIoT企業になることを目指し、IoT事業に最も力を入れる。LG U+のスマートホームIoT加入者は2016年2月に20万人を超え、最も人気のサービスは、窓やドアの開閉をスマホに通知する開閉感知センサー。キャリア各社はスマートホームIoTラインナップと提携事業者を拡大中。

メーカーのサムスン電子は2020年には全ての自社製品をIoTでつなぐ計画を打ち出しており、2016年中はIoTを中核に据える。一方、LG電子はIoT対応家電を増やす方向ではなく、既存の家電に取り付け可能なセンサーでIoT環境を実現することで、スマートホームの早期普及拡大を狙う戦略。

政府統計によると、2015年から国内IoT市場規模は前年比28%成長の4兆8,125億ウォン(約4,813億円)。IoT活用サービス分野別では、スマートホームやヘルスケアを含む個人向けサービスが31%と最も多いことが特徴。個人向けIoT製品として、自動水やり機能付きのスマート植木鉢やお肌の状態を測定できるマジックミラーといったアイディア商品も登場している。

(2016年2月)

O2Oマーケティングやナビで積極的導入が進むビーコン

Bluetooth技術を基盤とする位置特定技術ビーコンは、O2Oやナビ等における有効手段として注目度が大きく、我が国でも試験的導入の動きが相次いでいる。韓国でも2014年から、幅広く積極的にビーコンの本格導入を進める、ブーム的状態が続いている。韓国の特許庁によると、ビーコンの特許出願件数は2011年には10件に過ぎなかったが、2014年には118件に急増、2015年に入ってからも前年を上回るペースが続いている。技術分野別ではビーコンのサービス分野への出願が40%と最も多い。特に、マーケティング目的のO2O、建物内案内、電車時間案内、迷子防止等の位置追跡サービスを提供する技術が注目されている。

国内の通信事業者、クレジットカード業界、メーカー等の各種プレイヤーが早くからビーコンサービス開発に取り組み、多彩なソリューションが開発されている。中でも、移動通信最大手のSKテレコムは2013年前半から、大学病院での世界初のビーコン活用ナビシステム導入を皮切りに、系列プラットフォーム会社SKプラネットと協力してビーコンビジネスに積極的である。ピョンチャン冬季五輪の公式スポンサーとなった総合通信大手KTは鉄道公社と組んで、駅舎に設置したビーコン端末を活用し、スマートフォンを改札でかざさなくても鉄道料金が自動で決済できるシステムを構築する計画を発表している。通信事業者による、野球場等競技場でのビーコンによる座席案内や商品予約といったサービスも既に開始されている。

2014年後半から、ビーコン活用のO2Oマーケティングシステムを導入する店舗も急増している。中でも、ITマーケティングベンチャーのアイポップコーンが独自開発したハイブリッド型ビーコン技術を活用したモバイル財布アプリ「Yap」が利用者を伸ばし、成功事例として注目を集めている。2015年4月には、ビーコン活用の出席管理システムを導入する大学も出てきた。

一方、ビーコンの幅広い普及のためには、セキュリティや個人情報の問題、アプリダウンロードの必要など、様々な課題もある。これらの課題の解決と、どれだけお得度と便利さを訴えることができるかが、今後のサービス発展のカギを握る。

(2015年5月)

次世代ICT

広範な分野でブロックチェーン導入に向けた取組みが本格化

金融分野から始まったブロックチェーン技術活用に向けた取組みが、2017年からは金融以外の広範な分野に広がっている。金融業界では2016年中は個別銀行ごとに、認証サービスや金取引等でブロックチェーンを導入してきた。FinTech支援政策の焦点も2016年末からはブロックチェーン技術開発に軸が置かれている。金融委員会の主導で、銀行業界と証券業界はそれぞれブロックチェーンコンソーシアムを立ち上げ、2017年中に試験サービスを開始する。

金融分野以外でのブロックチェーン導入を進めるため、科学技術情報通信部(旧未来創造科学部)主管で、医療保険支払い手続き処理、P2P電力取引等の非金融4分野における実証試験が2017年を通じて実施される。政府の試験事業以外にも、韓国インターネット振興院で専門タスクフォースを立ち上げ、4月初めにブロックチェーンオープンフォーラムを設立するなど、支援体制も整備されている。

電子政府分野でのブロックチェーン活用にむけた検討も2017年初めから開始されている。自治体ベースでは、京畿道が国内で初めて住民提案事業の審査システムにブロックチェーンを取り入れている。

ITベンダー各社はブロックチェーン事業部門を大幅に強化し、2017年に入ってから相次いで新サービスを発表している。サムスンSDSは産官学で構成する海運物流ブロックチェーンコンソーシアムを立ち上げ、2017年中に海運輸出入プロセス全般でのブロックチェーン活用について実証試験を行う。韓国電力公社は世界初のブロックチェーン活用による電気自動車充電スタンドの構築に向けて準備を進めている。

2017年中は主に実証試験の形で導入されるブロックチェーン技術が、今後どこまで広がるか注目したい。

(2017年8月)

Connected Car事業に乗り出す通信キャリア

世界に先駆けた5G商用サービス化を目指す韓国のモバイルキャリア3社は、代表的な5G活用サービスとしてConnected Car開発にこぞって力を入れている。

SKテレコムはBMWと組んで、5G活用のConnected Car技術を2016年11月に世界に先駆けて公開した。両社は5G対応端末搭載のコネクティッドカー「T5」を公開。これまでの5G試験ネットワークが小規模単位で構築されたのに対し、今回の試験ネットワークは2.6kmのトラックをカバーする広範囲で構築された。SKテレコムはソウル大学等と組んで自動走行技術開発も進めている。2016年10月には関連技術開発でインテルと提携。2017年には道路上で5G基盤のコネクティッド自動走行技術とサービスを実証する方針。

KTは先進運転支援システム(ADAS)開発投資を進めており、関連技術開発のためスタートアップ企業CarViに20億ウォンを投資するなど共同開発を進めている。京畿道での自動走行車実証団地整備事業にも参加し、今後は自動走行車関連技術開発に拍車をかける方針。

LG U+は2016年9月から、双竜自動車、インドのマヒンドラグループ系列社とLTE基盤のConnected Car事業での協力を進めており、今後3年以内でConnected Carサービスを発売する計画である。

他方、サムスン電子も2016年に、Connected Carソリューション「サムスン・コネクトオート」の公開、11月には米国の自動車部品大手ハーマン買収発表で、Connected Carのトータルソリューション企業への脱皮を図ろうとしている。

(2017年1月)

ソーシャル・サービス

実生活に深く根付いたスマートフォン活用

韓国政府は毎年、2万5,000世帯の満3歳以上の家族構成員(約6万3,500人)を対象として、インターネット利用実態調査を実施しており、最新版の2014年度調査結果が2014年12月に発表された。今回の調査で明らかになった特徴としては、ネットショッピングでスマートフォンを利用する人の割合が最近3年間で2.5倍増加、中高年層におけるチャットアプリとSNS利用率増加など。韓国では携帯電話加入者の7割以上がスマートフォン利用者であり、世界的にもスマートフォン普及率が高く、ほとんどの年代でスマートフォンによるネットサービス活用が実生活に深く定着した様子が覗える。

インターネット利用者のうち、最近1年以内のネットショッピング利用者の割合は51.3%。このうち、スマートフォンでネットショッピングをする人の割合は58.6%。

世帯のスマートフォン保有率の上昇が続く一方で、PC保有率は持続的に減少している。また、チャットアプリ利用増加の反面として電子メール利用の減少が見られる。60歳以上のインターネット利用者の55.1%が、カカオトーク、LINE等のメッセンジャーを利用しており、我が国以上に幅広い年代でメッセンジャーが活用されている。最近1年以内にFacebookやtwitter、ブログ等のSNSを利用したインターネット利用者(満6歳以上)の割合は60.7%。

(2015年1月)

ブロードバンド

ギガビット級ブロードバンド競争に乗り出す通信各社

政府主導で世界に先駆けて固定網ブロードバンドインフラが整備された韓国では、我が国と同様、ADSLよりも高速の光LAN方式やFTTHの加入割合が高いことが特徴である。2014年9月末現在のブロードバンド方式別の加入者割合は、FTTHが27%、光LANが37%、ケーブルモデム(HFC)が26%、xDSLが10%である。

韓国では既に100Mbps級のブロードバンドが一般的となっているが、通信事業者は2014年後半から一斉に、ギガビット(Gbps)級ブロードバンドサービスの拡大に力を入れ始めた。最高速度1Gbps級のブロードバンドサービスは、国内ではCATV最大手(加入者ベース)のCJハロービジョンが他社に先駆けて2011年から商用サービスを開始しているが、大手固定通信事業3社(KT、SKブロードバンド、LG U+)のサービスは、地域を限定した試験サービスレベルに長らくとどまっていた。このような状況下で、固定通信最大手KTが2014年10月にギガビット級ブロードバンドを全国サービス化すると、同月末には競合他社もギガビット級ブロードバンドサービスの範囲を拡大し、インフラ整備にも拍車がかかる見通しである。

各社がギガビット級固定ブロードバンド網整備競争に乗り出した背景には、今後の超高画質映像コンテンツサービス提供や、IoT(モノのインターネット)ベースの教育や医療等他産業と通信の融合サービス拡大のために、基盤となる超高速インフラ整備が必要との考えがある。なお、今後の課題となるギガビット級ブロードバンド普及のためには、ブロードバンド活用の新規融合サービスのビジネスモデル発掘の努力が求められている。

(2014年11月)

事業者のM&A・国際展開

移動通信最大手SKテレコムとCATV最大手CJハロービジョンの合併計画とん挫で苦境のCATV業界

2015年末の移動通信最大手SKテレコムによる、CATV最大手CJハロービジョンの買収合併計画の行方は大きく注目された。公正取引委員会が異例的な長期間の審査を進めていたが、2016年7月、両社の合併が有料放送市場、移動通信小売市場及び卸売市場等の競争制限につながる恐れがあると判断され、合併計画はとん挫した。

韓国の通信業界は、固定・移動を合わせた総合通信最大手KT、LG電子系列の総合通信事業者LG U+(ユープラス)、移動通信最大手SKテレコムと固定通信子会社SKブロードバンドを合わせたSKテレコムグループの3勢力が競争を展開している。通信業界の再編は、2008年にSKテレコムが当時固定通信業界二番手であったSKブロードバンド(旧ハナロ・テレコム)を買収・子会社したことを契機に、2009年から2010年にかけて、KTとLG U+が系列の通信事業者間で合併をしたことで、国内通信業界の再編が進んだ。

業界再編の口火を切ったのはSKテレコムであるが、SKブロードバンドとの合併の動きは見せてこなかった。そして、2009年以降は、プラットフォーム部門の機動性を高めるためにプラットフォーム専門子会社SKプラネットを分社し、半導体大手のハイニクスを買収するといった独自路線を取ってきた。

CATV最大手のCJハロービジョンは、国内最大手メディアコングロマリットのCJグループの系列会社で、MVNO市場においても第1位。なお、有料放送市場では、合併会社がのCATVとSKブロードバンドのIPTVという二種類のプラットフォームを保有することになり、CATVの23放送区域のうち21区域でシェア1位となることなどが競争制限要因と判断された。特に、公取委は、合併後に有料放送料金の引き上げにつながる可能性を重視した。

なお、有料放送市場で通信事業者のIPTVにシェアを奪われて加入者減少傾向のCATV業界は、今回の公取委の合併不許可判断で苦しい立場に置かれる。CJハロービジョン以外にも買収を模索するCATV事業者は複数存在するが、今回の公取委判断で、通信事業者による買収が当分閉ざされる可能性を不安視する向きもある。

(2016年8月)

放送・メディア

世界初の地上波UHD(4K)本放送が首都圏で開始

KBS、MBC、SBSの地上波4社は2017年5月31日午前5時から世界に先駆けた地上波UHD(4K)本放送を首都圏で開始した。地上波各社では2017年末を目途にIP基盤の双方向サービスも開始し、VODやスマホでの視聴も可能となる。ピョンチャン冬季五輪中継では、正規編成にとらわれずに視聴者が見たい種目競技を見たり、各種競技情報をリアルタイムで確認できる新概念の放送サービスを提供する予定。

地上波UHD許可条件により、地上波3社に対してUHD番組の編成比率が定められている。UHD編成比率は今年の5%から毎年5%ずつ引き上げられ、2019年は15%となる。サービスエリアは、2017年12月から5つの広域市とピョンチャン冬季五輪開催地域、2021年までに全国拡大の計画。

地上波UHD本放送は当初今年2月末の開始を予定していたが、業界からの要請で5月末に延期された経緯がある。地上波UHD放送を視聴するには、今年初めから国内メーカーが発売した地上波UHD(ATSC3.0)対応TVの購入とアンテナが必要となる。既存のDVB-T2方式のUHD TVで地上波UHDを見るには専用チューナーを別途購入する必要がある。DVB-T2方式TVは推計で約100万人が購入している。政府は一般向けに「地上波UHD放送受信ガイド」をインターネット等を通じて配布している。

なお、有料放送加入率が高い韓国では、地上波放送のみを受信する世帯は5%程度であり、地上波UHDコンテンツの種類も現時点では限られている。2018年2月開催のピョンチャン冬季五輪開催に合わせ、政府が「世界初」のタイトルにこだわって地上波UHD導入を急いだ背景も有り、地上波UHD本放送は様々な点で準備不足の印象は否めない。従って、地上波UHDが一般に体感されるにはまだ時間がかかりそうである。

(2017年6月)

有料放送市場の動向-IPTVがCATVを圧倒へ-

韓国の世帯の9割が、CATV、IPTV、衛星放送の有料放送に加入している。各プラットフォームの開始時期は、CATVが1995年、衛星放送が2002年、IPTVが2008年。事業者数はCATVが約90社、衛星放送がKTスカイライフの1社、IPTVが3社。IPTVは、KT、SKブロードバンド、LG U+の固定通信キャリア3社が提供するサービスで、韓国では、通信・放送融合サービス促進のため、IPTVに力を入れてきた経緯がある。KTスカイライフは通信キャリアKTの子会社であり、衛星放送とIPTVの融合サービスも提供している。

有料放送市場ではかつてはCATVが圧倒的強者であったが、現在は、通信キャリア3社が提供するIPTVが、携帯電話と組み合わせたバンドルサービスを強みとして急速に加入者を伸ばし、CATVの加入者が奪われている状況である。2015年下半期のプラットフォーム別加入状況(2015年下期6か月平均)は、CATVが1,380万人、IPTVが1,099万人、衛星放送が307万人で、有料放送市場におけるシェアはそれぞれ、50%、39%、11%。2017年までに加入者数でIPTVがCATVを上回りそうな勢いである。

現在の有料放送分野の政策面の動きとしては、CATV、IPTV、衛星放送を同じ有料放送サービスとして同一の規制を適用するため、放送法とIPTV法を、統合放送法として一本化する作業が進められている。IPTVの導入時にどの法律で規制するかについて、当時の省庁間の激しい管轄争いとなり、サービス開始時期が大幅に遅れた。その解決策として、IPTVを開始するために、放送法とは別途でIPTV法が制定された経緯がある。そのため、例えば免許圏域など、IPTVとCATVで規制の違いがあることが問題となっている。

さらに、CATV業界の梃入れが問題となっている。他社による買収を模索する動きも表面化している。CATV最大手CJハロービジョンのモバイルキャリア最大手SKテレコムによる買収計画の行方は注目の的であったが、2016年7月に公正取引委員会は合併・株式買収不許可の判断を下した。これにより、当面は買収を主な出口戦略と目してきたCATV業界は、通信キャリアによる買収の可能性が閉ざされることを懸念している。そのため、有料放送行政の管轄省もCATV業界梃入れ対策を近日中にまとめる意向を示唆している。

(2016年8月)

再び期待を集めるデジタルサイネージの現状と課題

各方面から成長が期待されてきたデジタルサイネージであるが、未だにぱっとした成果が見当たらない。しかし、最近の世界的な景気回復基調、政府のスマートメディア産業育成戦略の戦略育成サービスの一つにデジタルサイネージが盛り込まれたこと、IoTサービスとの連携、といった観点で、再び期待を集めている。

政策面では、2014年12月に未来創造科学部がまとめた「スマートメディア産業育成計画(2015~2020年)」で戦略育成プロジェクトに指定され、2015年中に規制改善やデジタルサイネージ産業への投資促進を目的とした振興法を制定する計画である。同時に屋外広告物の規制緩和も進められる。

関連業界も再び新たな動きを見せている。スマートフォンに代わる成長エンジンを模索中のサムスン電子はB2Bビジネスへのシフト姿勢を見せており、2015年3月に米国のLEDデジタルサイネージ専門企業YESCO買収を発表した。サムスン電子は2014年中に、スペインや英国の空港運営ソリューション企業との提携を拡大し、世界の空港のデジタルサイネージ商戦に向けて体力を増強中。LG電子も2014年末にデジタルサイネージ事業強化に向けた組織再編を行っている。

デジタルサイネージのソリューションを提供する主なプレイヤーは、通信事業者やCJパワーキャスト等である。総合通信最大手KTは、消費者の生活空間の動線に沿ったサイネージ提供のために各種媒体確保に向けて動いている。2018年ピョンチャン冬季五輪の公式スポンサーでもあるKTは、鉄道公社と提携し、仁川空港からピョンチャンまでの鉄道と駅のデジタルサイネージ導入等で協力する。

一方、スマートフォン普及に対応し損ねた失敗事例もある。コンテンツ提供面での主要プレイヤーのインターネットサービス大手ダウムカカオは2010年から、ソウル地下鉄などの駅に46インチのタッチパネル式の情報端末サイネージ「デジタルビュー」を設置してきた。しかし、スマートフォン普及に伴いデジタルビューの利用者は減少の一途のため、最近、地下鉄駅からの撤去が決定された模様。

今後は、店内や家庭内の家電と連携したインドア方式や参加型のデジタルサイネージの成長が相対的に高くなるとの予想もある。なお、デジタルサイネージ振興法制定は既に遅れが指摘されており、予定通りに規制緩和が進むかが注目される。

(2015年3月)

ブロードバンド・ICT基盤整備

未だ輪郭が見えない文在寅政権のICT戦略

朴槿恵大統領弾劾により繰り上げ実施された大統領選で政権交代が実現し、文在寅政権の手腕が注目されている。雇用創出を最大目標に掲げる文政権では、2017年7月に任期中の政策全体のロードマップ「国政運営5か年計画」を発表。5つの政策の柱の一つに第4次産業革命への対応を掲げている。

第4次産業革命関連のICT分野国政課題には、大統領直属の第4次産業革命委員会新設、自律走行車やドローン等未来型新産業育成、ソフトウェア企業育成、5G・IoTインフラ構築等が盛り込まれた。5Gについては2019年の早期商用化を目指す計画。通信料金引き下げについては別立て扱いで政策課題に盛り込まれている。5G早期商用化やIoTインフラ構築、AI活用等は前政権からの継続路線であり、新機軸は見られない。韓国では李明博政権から3代に渡る政権が続けて通信料金引き下げを政権公約として掲げ、その内容は通信キャリアにどんどん厳しいものとなってきている。

続いて8月にまとめられた2018年度政府予算案では、第4次産業革命対応予算は予想よりも増えなかったというのが大方の見方。AI等の研究開発予算は小幅増額にとどまり、通信分野では、5G融合分野と無料公共Wi-Fi拡大以外にはほとんど増額された分野が見られない。

今のところ、通信料金引き下げ政策については詳細な施策が盛られる反面、第4次産業革命対応関連のICT戦略の輪郭が見えてこない。9月に官民有識者で構成する第4次産業革命委員会が立ち上げられる。委員会では第4次産業革命対応の総合的戦略を政府横断で議論するため、今後の展開に期待したい。

(2017年9月)

モバイル・チャットアプリからスマートTVまで拡大するネット中立性問題

(1)カカオトークを契機にネット中立性論議本格化
韓国での本格的なネット中立性論議は、スマートフォン向けの無料チャット・アプリ「カカオトーク」の大ヒットにより、2011年3月から本格化した。 カカオトークは2010年前半のサービス開始以降、短期間で急成長を遂げ、スマートフォン利用者のほとんどが利用する国民アプリとなった。 そのため、モバイル・キャリアのネットワークへの負荷が増え、キャリアによるカカオトークへのサービス制限の可能性が取りざたされた。 これに引き続き、2011年中には、国内大手キャリア3社がサムソン電子、LG電子、Apple等のスマートTVメーカーに対し、スマートTVによるデータ・トラヒック急増に対するネットワーク利用対価を支払うよう文書で求めるという動きも起こっている。 カカオトークを契機として無線分野で起こったネット中立性問題が有線分野でも本格化した。

(2)ネット中立性ガイドライン発表後も続く混乱
放送通信委員会は、事業者間の紛争勃発を防ぐために仲裁に入り、2011年12月に「ネットワーク中立性及びインターネット・トラヒック管理に関するガイドライン」を発表した。 2012年1月から施行されたガイドラインには、1.利用者の権利、2.トラヒック管理の透明性、3.合法コンテンツ、アプリケーション、サービス及びネットワークに危害を加えない機器や装置の遮断禁止、4.合法コンテンツ、アプリケーション、サービスの不合理な差別禁止、5.合理的トラヒック管理、の基本5原則が盛り込まれた。 ガイドライン施行による詳細措置は2012年中に決定される予定だが、ガイドラインの規定は曖昧で具体性に欠け、これだけでは解決にはなっていない状態。 そのため、2012年になってからスマートTVとスマートフォンの無料通話(m-VoIP)アプリを巡って混乱が生じている。

(3)KTのスマートTV遮断事件とm-VoIPアプリ問題
2012年2月、KTがトラヒック負荷を理由にサムスン電子のスマートTVのネットワーク接続制限を断行するという事態が発生した。 さらに、6月、カカオトークが国内でm-VoIPの試験サービスを開始すると大きな物議を醸した。 既に複数のm-VoIPサービスが提供されているが、国内で3,500万人が利用するカカオトークの影響力は段違いに大きい。 そのため、m-VoIP利用者増によるキャリア音声サービス収入の減少を懸念した最大手SKテレコムは、通信料金引き上げの可能性も示唆するなど強硬に反発。 一方、第3位キャリアのLG U+はm-VoIPサービスに対する制限解除に転じ、相反する反応を見せている。 国内キャリアとしてm-VoIP全面許容に踏み切るのはLG U+が初めて。 LG U+は競合2社よりも加入者が少ないことと、キャリア3社のLTE全国網早期構築でLTEでの差別化が難しくなるため、m-VoIP開放で差別化を強調し、LTE加入者を集める戦略に出たものと見られている。 こうした問題を受け、放送通信委員会がどのような具体的政策方針を出すのかが注目されている。

(2012年6月)

モバイル

端末補助金上限廃止で注目される今後の影響

韓国では携帯電話端末の補助金上限が法で厳密に定められてきたが、2017年10月1日から補助金上限が廃止された。韓国では端末販売時の差別的な補助金が消費者差別に当たるとされ、補助金上限の導入と撤廃が繰り返されてきた。これまでは、2014年10月に制定された端末流通法と関連告示により、発売から15か月以内の端末についてはキャリアによる補助金の上限を33万ウォンに制限。違反した場合は罰金に加えて営業停止処分など罰則は重い。

しかしながら、文政権の通信料金引き下げ公約の一環として、補助金上限の撤廃が盛り込まれた。補助金上限設定はもともと2017年9月末までの時限措置とされていたため、期限切れの10月からは自動的に補助金上限が廃止された格好。

そのため、補助金上限廃止による影響に関心が集まっている。大型連休期間中の10月第1週では従来の上限を超えて補助金水準を上げた端末はKTが発売するGalaxy J7のみ。比較的静かな出足となっている。

現在のところ、次の理由から補助金の支給額は急に上がらないとの見方が支配的。
  • 9月15日から補助金に相応する通信料金割引が25%に引き上げられた
  • 補助金支給額は公示日から7日間変更できないルールは従来どおり

現状では、特にハイエンド端末購入者の9割が補助金ではなく、25%の通信料金割引を選択する。また、高額な補助金を投入しても7日間支給水準が変更できないことはキャリアにとってきつい状況である。そのため、今後の補助金はハイエンド端末よりも中低価格端末を中心に引き上げられることが予想される。さらに、キャリアは補助金よりも代理店へのリベートを増やす方向に動くのではないかとも見られている。

(2017年10月)

最新MVNO動向-成長の曲がり角を迎えたMVNO市場-

2010年以降にMVNO参入が本格化した韓国では、2017年3月時点で携帯電話加入者のうちMVNO契約割合が11.3%超となり、契約者数は700万を突破した。政府の強力なMVNO促進政策の後押しを受け、毎年ベースの卸料金引き下げや2013年からの郵便局でのMVNO代行販売で契約ペースを急拡大したMVNO市場であったが、2016年から成長ペースが鈍化に転じ、曲がり角を迎えている。

約40社のMVNOが市場参入しているが、大部分が中小企業で、最大手MVNOは、ケーブル放送最大手CJハロービジョンと、携帯キャリアSKテレコム系列会社のSK Telink(国際電話や法人向け通信サービス等を提供)。この2社が3割のシェアを占める。

これまでは激安路線で話題を集める場合が多かったMVNOだが、持続的な成長のために様々な努力が必要とされている。最近では、料金プランの工夫や提携カード割引、コンビニやオンラインなど郵便局以外の販売チャネル拡大努力で活路を見出そうとしている。また、MVNO業界団体の韓国MVNO事業者協会は、2017年4月から、端末紛失や破損などのサポートや各種付加価値サービスが受けられる、協会所属MVNOの共通サポートサービスを新たに開始する計画である。

(2017年4月)

見直しを迫られるモバイル新規参入政策

SKテレコム、KT、LG U+のキャリア3社体制の韓国移動通信市場に、競争促進策の一環として、2010年以降7回に渡り、第4のキャリア新規参入政策が試みられてきた。しかし、7回目となった2016年1月の事業者選定の結果、名乗りを上げた3者は全て落選となり、モバイル新規参入政策は方向転換を迫られている。

これまでは、2.5GHz帯利用TD-LTE方式又はWiBro方式での第4のキャリア選定が試みられたが、主として候補企業が財政面で基準に満たないことで、その都度頓挫してきた経緯がある。そこで、今回は財務体力のある事業者を呼び込むためにFDD-LTE方式による参入を初めて許容。2.5GHz帯/2.6GHz帯を審査方式により1者に割り当てる方針であった。申請企業は、中堅通信事業者の世宗テレコム、新規で立ち上げられたクウォンタムモバイルとKモバイル。しかしながら今回も、あらかた予想された結果ではあったが、財務面や、サービスの安定的提供能力が不透明という評価であった。

国内モバイル市場は既に飽和に達しており、キャリアは本業の通信ビジネスの業績は完全な頭打ち状態。さらに、近年は政府がMVNO促進に力を入れており、携帯電話加入者に占めるMVNO契約割合は10%を超え、ビジネス的にMNOの新規参入は厳しいとの見方がもともと支配的であった。

さらに、最近、世界的には、各国のモバイル市場がキャリア4社から3社体制に再編される動きが急速に進展しつつある。ちなみに、韓国の人口は約4,900万なので、市場のパイも大きくはない。このような国内外の趨勢から、今後は韓国も新規参入政策を棚上げし、その分、MVNO促進にさらに力を入れることが予想される。

(2016年2月)

不法な販売奨励金根絶を目指す端末流通法が施行

我が国では最近、年度末やiPhone発売時期に、キャリアによるキャッシュバック競争が過熱化することが問題視されるようになってきた。韓国ではこのような端末販売奨励金は「補助金」と呼ばれ、朴槿恵政権になってからの2013年以降、消費者差別につながる不法な補助金の取り締まりが大幅に強化された。その結果、2014年10月1日から、補助金の支給内容透明化を図ることで不法な補助金の根絶を目指す、「移動通信端末装置流通構造改善に関する法律(以下、端末流通法)」が施行された。世界に類例のない法律であるが、法律施行で次のように変わる。

これまでの補助金取締対象はキャリアのみであったが、今後は端末メーカーと代理店・販売店にも罰則が適用される。補助金支給の上限額は放送通信委員会が25万〜35万ウォンの範囲内で定めるが、10月からの上限額は30万ウォンに決定。補助金上限額は6か月ごとに見直しされる。規制対象となるのは、発売から15か月以内の端末。補助金の透明化を図るため、キャリアは端末の出庫価格と補助金をすべて自社ホームページで公示する。いったん公示された価格は、最短でも7日間変更できない。なお、代理店ではキャリアの補助金の最大15%までの奨励金を上積みできるので、実際の販売価格は代理店で確認する必要がある。キャリア以外の経路で購入する端末については、通信料金で補助金に代わる割引を受けられるようになる。

一方、端末流通法の目玉の一つとして、補助金内容の透明化を図るため、キャリアが出す補助金とメーカーが出す奨励金を区分して公示する「補助金分離公示制度」の導入が試みられたが、メーカーや政府内での反対で見送りとなった。そのため、端末流通法の目的である補助金の透明化が難しくなったという指摘が相次いでいる。

法律施行後、全体的に端末の実質販売価格が高くなり、端末市場縮小を懸念する向きが大きい。補助金縮小でマーケティング費用を抑えられるキャリアにはメリットがあるが、肝心の消費者のメリットにつながるのか、今後の推移を見守りたい。

(2014年10月)

クラウド、ビッグデータ、電子政府

AIがもたらす社会変化への対応本格化

2016年3月に、韓国でプロ棋士とGoogle DeepMind社が開発した囲碁AIプログラム「アルファ碁」の対局が行われたことを契機に、韓国では幅広くAIの重要性が認識され、アルファ碁ショックとも呼ばれるAIブームにつながった。そして、アルファ碁ショックが韓国のAI分野対応政策をスピードアップした。

2016年中は、まず、今後5年間でのAI分野育成基本方針を盛り込んだ「知能情報産業発展戦略」発表(3月)、ICT戦略育成分野にAIを追加指定、国策によるAI技術研究所開設(10月)など、国を挙げたAI分野育成に向けた体制づくりの第一歩が開始された。そして、12月にAI社会に包括的に対応する政府横断的総合対策の「第4次産業革命に対応する知能情報社会中長期総合対策」がまとめられた。

総合対策では2030年までの政策推進課題を盛り込んでいるが、2017年は、AIがもたらす社会変化に包括的に対応するための本格的制度整備元年となる。2017年の具体的施策として、国防・安全・教育の基本的国家サービス分野でのAI活用を進める方針。さらに、AI活用がもたらす社会変化に対応するため「知能情報化基本法(仮称)」を制定する計画。国の最上位ICT戦略決定機関の情報通信戦略委員会はAI活用社会を意識して、「知能情報社会戦略委員会」に拡大再編する方針。

ICT主管庁の未来創造科学部は2017年度のAI分野研究開発に前年比47%増額の総額1,630億ウォンを投じる。技術開発だけでなく、AIの安全性や事故発生時の法的責任、倫理的課題についての議論も進め、年内に方向性がまとめられる計画。

(2017年3月)

公共分野主導でビッグデータ活用活性化へ

韓国政府は2012年11月に政府横断的な「ビッグデータ・マスタープラン」をまとめ、公共分野主導でビッグデータ活用を促進する方針を打ち出した。2013年に成立した朴槿恵政権でもこの路線は継承され、政権の政策ブランドとして掲げられた「政府3.0」では、カスタマイズ行政サービス提供、省庁協業活性化、ビッグデータ活用を目指す。これを受け、2013年以降は各省でのビッグデータ戦略がまとめられ、行政分野でのビッグデータ活用を盛り込むため電子政府法も改正され、公共分野主導のビッグデータ活用の動きが活発化している。

内政を担う安全行政部は2014年1月、行政全般のビッグデータ活用を本格化するためのビッグデータ活用拡大対策をまとめた。2017年までに97のビッグデータ活用事業を進め、関連サービスの提供拡大を目指す。特に、安全行政部と未来創造科学部の重点支援課題となっている、国民生活・安全、雇用創出、国政課題関連の23事業は予算が優先的に充てられる。また、2013年末に構築したビッグデータ共通基盤プラットフォームを通じ、行政機関が公開した情報と民間のデータを自由に収集・分析・共有できるように支援する。

ICTと科学技術分野を所掌する未来創造科学部は関係省庁と合同で、ビッグデータ活用促進と関連産業育成のための「ビッグデータ産業発展戦略」を2013年12月にまとめた。医療や交通・物流等の有望6業種でのビッグデータ活用プロジェクトを進め、データ仮想化や分散技術など7つの中核技術開発を進める。ちなみに、2013年には同事業で、ソウル市深夜バス路線策定、中小企業創業支援のための商圏・店舗評価サービス開発等のビッグデータ活用サービスを開発している。ビッグデータ産業発展戦略推進により、2017年までに国内ビッグデータ市場を2倍以上に拡大、7分野で中核技術開発による技術競争力向上、5,000人以上の高度人材確保、10社以上のグローバル専門企業育成といった効果が期待される。

(2014年6月)

スマート社会

2016年のFinTechの三大トレンドはロボ・アドバイザー、ビッグデータ活用、海外展開

日本では2015年後半から、金融とICT活用を組み合わせた概念のFinTech(フィンテック)のキーワードに着目する向きが急速に拡大している。海外の先行事例に目を転じると、早くからサービス展開する米国、都市整備と絡めてFinTech集積地を整備した英国、急速に国境を越えたサービス展開が拡大しつつある中国、が主に紹介されてきた。一方、ICT分野を得意とする韓国では、規制の多さがネックとなり、FinTech分野のサービス導入で出遅れていた。韓国独特の金融規制の例として、財閥系大企業による銀行の私金庫化を防ぐ狙いから、金融以外の業種の銀行業参入が禁じられており、インターネット専業銀行が存在しなかった。2013年に成立した朴槿恵政権では規制緩和によりICT活用融合サービス拡大による成長戦略を描いており、中でもFinTechを有望分野と位置付け、戦略的育成を図っている。

金融行政を担う金融委員会は2015年5月に広範なFinTech産業活性化政策パッケージをまとめ、国内FinTech産業のエコシステム構築に向けた、大規模規制緩和と促進戦略を並行して進めている。規制緩和の一環として、ネット専業銀行の参入が可能となり、2016年中に、通信キャリア最大手KTと、カカオトークで知られるネットサービス大手カカオがそれぞれ、ネット専業銀行を設立することになった。ICT業界2社によるネット専業銀行では、既存銀行のオンラインバンキングとの差別化のため、ビッグデータや人工知能(AI)等の新技術活用や革新的サービス導入を計画しており、ビジネスモデルが注目されている。この他に、2016年1月にクラウドファンディング法施行、金融分野ビッグデータ推進のための世界初の信用情報統合管理機関設立など矢継ぎ早に関連施策が実行に移されている。また、FinTech分野のスタートアップ、ベンチャー育成のため、起業から海外展開までをワンストップで支援するFinTech支援センターが2015年3月に政府主導で立ち上げられた。

2016年中のFinTech促進戦略のキーワードは、ロボ・アドバイザー、ビッグデータ活用、海外展開の促進である。ロボ・アドバイザーとは、顧客資産の分析や運用を自動で行うサービスや事業者を指す。韓国では2015年から金融業界が競ってロボ・アドバイザー導入を開始し、政策面でも2016年中にロボ・アドバイザーによる完全自動化が実現するための規制緩和が進められる。海外展開もターゲット地域を年度で選定し、政府がバックアップする。国際展開を視野に入れてスピーディに展開される韓国のFinTech促進戦略の今後の展開が我が国にも刺激になりそうである。

(2016年7月)

成長エンジンとしてドローンに期待する韓国、2016年から産業活性化に向けた試験事業開始

国内外でドローン活用新ビジネスが脚光を浴びつつあるが、韓国では今後の経済成長エンジンの一つとして、政府がドローン産業の重点育成を進めている。経済主管庁の産業通商資源部(部は省に相当)と科学技術・ICT主管庁の未来創造科学部は、2016年の集中投資新産業10分野として、フィンテックやドローンを指定。未来創造科学部では2016年度のICT分野事業のうち、ドローンの中核技術開発予算を増額している。

国交省に相当する国土交通部ではドローン試験空域5か所を決定し、2016年から2年間、配送、災害救助、国土調査、農業等の8つの産業分野での実証実験を行い、2020年までの実用化を目指す。実証実験には、CJ大韓通運、現代ロジクス、ユーコンシステム、大韓航空、KT等15社が参加する。利用機種は重量5㎏以下~150㎏までの合計47種。実証実験第一弾として、2016年3月までの間は、山岳地域を多く抱える江原道ヨンウォル郡で、山火事対応、遭難者救助のための活用可能性テストが行われる。国土交通部は試験事業をドローン産業活性化に向けた第一弾として、今後は規制改善を進め、ドローン活用ビジネスの事業化を積極支援する方針。政府実証実験の他にも、2015年から、通信事業者や地方自治体等による、ドローン活用事業本格化に向けた動きが活発化している。

(2016年3月)

旅客船沈没事故を契機に2017年までに国家災害通信網構築

2014年4月に起きた旅客船セウォル号沈没事故の反省を受け、朴槿恵大統領が国民に、2017年までに国家災害無線通信網構築を約束した。セウォル号事故は社会の様々な問題点を浮き彫りにするものであったが、統合された国家災害通信網の不在が救助の初動態勢の遅れの一因にもつながってしまった。

国家災害通信網は、700MHz帯利用のPS-LTE方式のネットワークで、2017年までの完了を目指して段階的に構築される。第一段階として、冬季オリンピック・パラリンピックが開催されるピョンチャン地域等での試験事業、第二段階で地方拡大事業、第三段階の2017年末までにソウルと5つの広域市へのネットワーク拡大の順で実施する計画。国家災害通信網構築の主管機関は国民安全処だが、国土交通部が構築を進める鉄道無線網(LTE-R)、海洋水産部が進める海上通信網(LTE-M)とも連携して構築を進める計画。

国家災害通信網構築は、ICT分野の大規模公共事業として国内外から大きな関心を集めている。事業者選定は、ネットワーク設計・試験事業・本事業の各段階で実施される。試験事業の請負事業者として、第1事業(ピョンチャン地域)で総合通信最大手KTが率いるコンソーシアム、第2事業(カンヌン、チョンソン地域)では移動通信最大手SKテレコム主導のコンソーシアムが2015年10月に選定され、2016年6月まで試験事業を進める。試験事業では、ドローン型、リュックサック型等の災害現場で通信を確保するための新概念携帯基地局が活用される。新概念の移動型基地局を開発したKTは、これらを災害安全通信網ソリューション・パッケージとして海外輸出することを目指している。

(2016年1月)

ICT融合新サービスの基盤となるIoT分野を集中育成

韓国政府は2020年までに未来成長エンジンとして集中育成を図るICT分野13事業を2014年に指定しており、5Gやビッグデータと共にIoT(Internet of Things)に力を入れる方針。IoTは通信と他分野の様々な融合新サービスを開発する基盤となるため、政府は2014年中に体系的なIoT育成策を相次いで発表している。

IoT育成の根本政策となるのは、ICT分野の最高意思決定機関の情報通信戦略委員会が2014年5月にまとめた「IoT基本計画」である。同計画では、現在23兆ウォンの国内IoT市場規模を2020年までに30兆ウォンに拡大、利用企業の生産性・効率性の30%向上等を目標として、(1)政府横断・官民協力による取り組み推進、(2)オープンプラットフォーム活用、(3)大企業と中小企業の同時成長支援等を進める方針。

基本計画に基づいて、IoT分野中小企業育成策としては、2014年7月から、サービス開発のために活用できるインフラが整った専門センター開設、海外展開のための資金援助等の支援事業が相次いで実施に移されている。2015年からは、政府系研究所9機関が連携・管理する形で、まず、ヘルスケアとスマートシティ分野での実証事業が本格化され、商用サービス化に向けた支援が実施される。この他に、ICT主管庁の未来創造科学部と政府系研究機関が、通信事業者のIoT活用の位置情報サービスのコンテンツ開発支援にも乗り出している。

(2014年12月)

セキュリティ、プライバシー

大規模個人情報流出事故を契機に個人情報保護政策強化に動く韓国

韓国では近年、個人情報流出事故が大規模化し増加傾向となっていたが、2014年1月に発生した大手クレジットカード会社3社による大規模個人情報流出事故は特に社会的衝撃となった。カード会社の事故では、住所やカード利用歴等を含む個人情報延べ1億400万人分が流出し、これらの情報がさらに複数の貸出仲介事業者に流出するという二次被害にもつながった。

この事故を契機として、韓国では全政府的取り組みとして個人情報保護政策を強化している。2014年7月に、政府18機関によりまとめられた「個人情報保護正常化対策」では、事故再発防止に向けた総合対策や官民での点検体制強化を盛り込んだ。オンライン上の個人情報保護政策を管轄する放送通信委員会は、全政府的取り組みと連携しながら、過度の個人情報収集・保管等の慣行を改善するためのガイドライン作成、情報流出事業者に対する罰則を強化するための情報通信網法改正を進めた。

また、国民の出生時から全員に割り当てられている住民登録番号の扱いについても、オンライン・オフラインの両方で収集と利用を制限するための法改正が進められた。これまで本人認証手段として一般的に住民登録番号が広く使われてきたことが個人情報流出時の反省点となったため、まず、2012年の情報通信網法改正により、2012年8月以降のオンライン上の住民登録番号の収集禁止と、2014年8月までの既存保有情報の破棄が義務付けられた。オフラインでの住民登録番号取り扱いについても、2014年8月の個人情報保護法改正により、法律で定める場合と災害時の身元確認を除き、収集・利用・提供の原則禁止が実施された。

(2015年10月)

放送・メディア

現政権のスマートメディア産業育成戦略

近年の韓流ブームにより、テレビドラマやK-POP等の韓国コンテンツの注目度が海外で大きく高まった。一方、韓国メディアコンテンツの輸出先はアジア中心、品目はドラマ中心とかなり偏っているため、輸出品目と輸出先の多角化が継続的な課題となっているのが実情。現在の朴槿恵政権になってからの2013年以降も、コンテンツ産業振興や輸出拡大に向けた戦略が打ち出されている。

現政権の基盤となる放送産業成長戦略として、放送行政関連3省庁(未来創造科学部、放送通信委員会、文化体育観光部)が2013年12月にまとめた「放送産業発展総合計画(2013~2017年)」は、コンテンツ投資拡大、スマートメディア産業育成、グローバル市場進出等の5つの戦略を盛り込んでいる。総合計画を基に、2014年12月に、関係省庁合同の「スマートメディア産業育成計画(2015~2020年)」がまとめられた。スマートメディアには、従来型の放送サービスのみならず、インターネットでの動画サービス(OTT)や体験型メディア、デジタルサイネージも含まれる。

育成計画では、2020年までに技術開発とベンチャー支援に4,515億ウォンを投じ、スマートメディア市場規模を2020年までに2014年時点から5倍の13兆6,000億ウォン規模に拡大するとともに雇用創出につなげることをねらいとしている。主な施策としては、メディアベンチャーが海外進出するためのライフサイクル的支援体系構築、体験型メディア等の開発新技術をピョンチャン冬季オリンピックで披露、デジタルサイネージの振興法制定、規制緩和などが進められる。

(2015年8月)

電波関連

2018年までに28GHz帯と3.5GHz帯で1300MHz幅の5G用途周波数確保

政府は2017年1月、第4次産業革命に対応する中長期周波数総合計画「K-ICTスペクトラムプラン」をまとめた。同プランでは今後10年間で合計40GHz幅の移動通信用途周波数を確保・供給する計画。

今回は特に、5G周波数政策の方向性とロードマップが示されたことが最大のポイント。5G用周波数として、2018年までに28GHz帯で1000MHz幅、3.5GHz帯で300MHz幅の新規周波数を少なくとも1300MHz幅確保する。28GHz帯については、今後の隣接帯域の整備状況や端末の開発状況により、さらに帯域を確保できる可能性もある。LTEを含めて5Gの低帯域周波数としては、1.4GHz/2.1GHz/2.3GHzの各帯域から合計140MHz幅を確保する計画。5G用途周波数の割当て計画は2018年に策定される。未来創造科学部は近日中に5G割当て方法研究グループと割当対価制度改善関連研究グループを立ち上げる予定。

5Gの他に、NB-IoT、スマート工場レーダー、小型自動車無線充電、新規ムグンファ衛星等の産業用途で早急な周波数分配を必要とする分野についても研究グループを近日立ち上げる。また、周波数利用効率化のため、周波数共有に向けた制度整備も今後進められる方針。

(2017年2月)

予想外に静かに終わった2016年周波数オークションが示唆するもの

2011年から周波数オークションが導入されている韓国で、既存モバイルキャリア3社を対象とした、第三回目となるLTE周波数オークションが2016年4月末から5月初めにかけて実施された。前2回のオークションは、50回以上のラウンドを重ねてヒートアップした。今回は特に、国内史上最大の複数帯域140MHz幅(700MHz/1.8GHz/2.1GHz/2.6GHz)を一挙に5ブロックで開放するため、早くから注目を集めていた。

しかしながら、今回のオークションは予想に反し、過熱化することなく2日目に8ラウンドで終了。競願となったのは2.6GHz帯のみで、700MHz帯(40MHz幅)は買い手が付かずに流札となった。そのため、最低入札価格は2兆5,779億ウォンであったが、最終落札価格はこれを下回る2兆1,106億ウォン(約2,111億円)となった。落札の内訳は、SKテレコムが2.6GHz(60MHz幅)、KTが1.8GHz(20MHz幅)、LG U+が2.1GHz(20MHz幅)。

今回のオークションの分析として、キャリアがLTE全国網整備を完了した時点で必要な周波数のみの確保に主眼を置くようになったことなどが挙げられている。また、今回の対象帯域はキャリアにとってLTE主力バンドではなく補助バンドでもある。キャリア3社は世界に先駆けた5G本格サービス開始に向けて5Gに資金を投入するため、過度な投資は避けたいところ。このような趨勢から、今後政府はオークション収入を財源の当てにできなくなりそうである。

また、今回のオークションで、FDD方式LTEに利用可能な周波数の大部分が割り当てられたため、移動通信市場新規参入向けにはTD-LTE用帯域だけが残される形となった。政府はこの6年間で7度にわたりモバイルキャリア新規参入を試みては挫折を繰り返している。新規参入向け周波数の選択肢が減ったことから、今後の競争政策からキャリア新規参入は外れ、MVNO活性化が中心になるものと見られている。

(2016年5月)

政界介入で放送用途も押し込んだ700MHz帯分配案決定

韓国のICT分野が短期間に発展した大きな要因として、政府の強力な後押しが挙げられる。しかしながら、この強力な政府の力が時としてマイナスに作用することもある。韓国の電波政策からはこのような教訓が得られる。

韓国の政界は、選挙対策から地上波放送業界に気を遣う傾向が強い。そのため、地上波業界の声にかなり配慮した政策がこれまでにも見受けられた。このようなスタンスが特に最近の電波政策分野で大きな波紋を呼び起こしている。まず、2013年の朴槿恵政権成立に伴う省庁再編で、通信と放送の政策機能を移管した統合ICT省庁の未来創造科学部が新設されたものの、野党の反発により、電波政策機能が三つの省庁に分割されてしまった。その結果、通信用途周波数は未来創造科学部、放送用途周波数は放送通信委員会、新規周波数割当てと再編は首相傘下の委員会、という非常にイレギュラーな体制となってしまった。そのため、この時点で、通信業界と放送業界間で既に綱引き状態となっていた、地デジ移行跡地の700MHz帯の用途決定が難航する下地が造られてしまった。

世界的に通信用途で700MHz帯を分配する国が圧倒的である中、韓国では地上波放送業界の強力な主張のため700MHz帯用途決定が先送りされてきた。しかし、2015年7月に、放送業界の意向を酌んだ政府の介入に屈する形で700MHz帯分配案が決定された。700MHz帯は、通信40MHz、放送30MHz、公共安全網20MHzで分配される。放送用途では地上波4社のUHD放送5チャンネルに6MHzずつ割り当てられる。

しかしながら、放送5チャンネルに分配するために、ガードバンドをかなり狭くしたことから、隣接する公共安全網、さらに日本への電波干渉を指摘する声が既に上がっている。また、携帯電話のトラフィック急増への電波供給が追い付かないとの懸念も寄せられる。今回のように世界的趨勢を無視した政界の政策介入を問題視する声も大変高い。このような形で決定された700MHz帯の分配が、果たして周波数の有効利用につながるのか、今後が大いに問われよう。

(2015年7月)