韓国
スマートフォン
急速なスマートフォン化で無線インフラ競争に拍車。携帯3社は2012年上半期中に世界に先駆けてLTE全国サービス化、2012年下半期にはVoLTE開始へ
(1)世界最速で進行中のスマートフォン化
2009年末の韓国のスマートフォン加入者は携帯加入者中わずか2%であったが、同時期にiPhone発売で始まったスマートフォンブームで、
スマートフォン加入者数は2011年12月末には2,258万加入となり、契約率は40%超に急成長。世界最速スピードでのスマートフォン化が進展している。
2012年上半期には携帯加入者に占めるスマートフォン普及率は50%に迫ろうというハイペース。
韓国の場合、スマートフォン化は単なる端末の置き換えにとどまらず、通信以外の分野でも積極的にスマートフォン利用のサービス導入の動きがあり、
政府も積極的に後押しをしていることが特徴的である。
(2)データ・オフロード対策とLTE計画前倒し
無線インターネット利用促進政策を進めてきた政府は、新たなビジネスモデル発掘、規制緩和面等でスマートフォン普及を積極的に後押しし、
モバイル・エコシステムを構築して雇用創出や景気拡大、国際競争力向上につなげようとしている。
2010年8月以降、携帯3社がスマートフォン加入促進を狙って3Gデータ無制限定額プランを導入すると、加入ペースと共にデータ通信利用増に一層拍車がかかった。
そのため、携帯3社はWi-Fiエリア拡大とLTE商用化スケジュール前倒し、WiBro網活用等のデータ・オフロード対策を急ぎ、2010年から無線インフラ競争に拍車がかかっている。
その一環として携帯3社はLTE展開計画を前倒しし、2012年上半期中のLTE全国サービス展開を計画している。
特に、LG U+は2012年3月に世界初のLTE全国サービスを開始し、2012年10月には世界初のVoLTE(Voice over LTE)を開始する計画である。
| 事業者 | LTE開始計画 | Wi-Fi構築計画(2011年末) |
|---|---|---|
| SKテレコム | 2011年7月開始、2012年4月全国化 | 6万2,000か所 |
| KT | 2012年1月開始、2012年4月全国化 | 10万か所 |
| LG U+ | 2011年7月開始、2012年3月全国化 | 8万か所 |
一方、各社が競って独自のWi-Fiサービスエリアを拡大した結果、インフラ重複構築、電波混信が問題化した。 その結果、携帯3社は2012年上半期までに空港・鉄道・総合バスターミナル等の公共の場所で1,000か所のWi-Fiサービスエリアを共同構築することで2011年7月に合意に至った。 混信解消については、現在の2.4GHz帯に加えて5GHz帯利用Wi-Fiエリアの拡大を図る方針。
クラウド・コンピューティング
2010年から通信事業者中心に立ち上がりつつあるクラウド・サービス市場
韓国では通信事業者、ITソリューション事業者、インターネットサービス事業者がクラウド・サービスを提供しているが、本格的クラウド・サービス市場は、2010年から大手通信事業者を中心とした立ち上がりを見せており、 2011年は通信各社がサービス・ラインナップ拡大に力を入れている。
通信事業者のなかでも最もクラウドに力を入れている総合通信最大手KTは、2010年8月に総合的なクラウド戦略を発表し、2011年までに総額1,200億ウォンを投じて個人向けと法人向けサービスを順次拡大する計画を発表した。 KTは2010年6月から個人・法人別のストレージ型サービスを開始し、同年後半のクラウド・データセンター完成以降の2011年には法人向け本格クラウド・サービスとしてIaaSのラインナップを段階的に拡大してから、PaaS、SaaSを開始する計画。
KTは2011年の海外展開事業の中でクラウドが最も有望と見ている。2011年5月にはソフトバンク・テレコムと組んで日本企業向けクラウドとデータセンター・サービス事業を発表。日本への進出を契機にアジア地域進出に力を入れる。 一方、国内最大手ポータルNaverを運営するインターネットサービス大手NHNも、2010年に買収して子会社化したライブドアを通じ、日本企業向けの災害復旧システム構築及びデータセンター、クラウド・サービスを開始する計画を7月に発表している。
2011年初めにクラウド・データセンターを構築した携帯最大手SKテレコムは、中小企業向けの経営管理ソリューションやIT資源統合ソリューションを提供する方針。 総合通信事業者LG U+は2010年から個人向けクラウド・サービス開始に引き続き、Microsoftと提携して中小企業向けSaaSを開始した。2011年は6月にIaaSを開始した後、分散処理、CDN等のソリューションと連携したPaaSを開始する予定。
メディア融合
注目を集めつつあるデジタルサイネージ・ビジネス
TV、コンピュータ、ケータイに次ぐ第4のメディアと呼ばれるデジタルサイネージ・ビジネスが最近注目されている。 KT経営研究所によると、韓国のデジタルサイネージ市場規模は2009年の1,000億ウォンから2015年には3,000億ウォンに成長する見通し。デジタルサイネージ・ビジネスに参入している主要な事業者は、通信キャリアのKTとLG U+、デジタル放送サービス企業のCJパワーキャストなど。 この他に、NHNやDaumといった大手ポータルなどのインターネットサービス事業者も参入している。 主要な事業者のデジタルサイネージ展開状況は次のとおり。
■KT
2005年から大学・大病院・マンションを中心に事業を展開しており、最近は地下鉄やバス停にも事業展開範囲を拡大中。
KTのサイネージは2012年2月現在3万9,000台だが、2012年中に4万2,000台に増やす計画。
国内最大手ポータルNaverを運営するNHNとデジタルサイネージのプラットフォーム、コンテンツ面で提携している。
■LG U+
2011年10月から居住・事務空間でデジタルサイネージ・ビジネスを開始し、約1万3,000台のサイネージを運用中。
2012年2月からCJパワーキャストとデジタルサイネージ・メディアの広告営業権共有などで提携。
■Daum Communications
2010年から「デジタルビュー」ブランドでデジタルサイネージを展開中。
ソウル地下鉄1~4号線やKORAIL首都圏電鉄など177の鉄道駅で970台のデジタルビューを運用中。
デジタルビューは46インチのメインタッチパネルと17インチの補助タッチパネルで構成され、地図、地下鉄総合情報、ニュース、エンターテインメント等のリアルタイム情報とIP電話サービスが利用できる。
政府(放送通信委員会)もデジタルサイネージの成長性に着目しており、今後は、家庭(TV)-モバイルデバイス(スマホやスマートパッド)-屋外(デジタルサイネージ)を統合管理するシステムを作り、エコシステムを構築したい考え。 一方、国内のデジタルサイネージ技術はこれまでディスプレイ主体であり、標準化と試験認証のためのシステム構築が遅れている。 今後デジタルサイネージ・ビジネスが成長軌道に乗るためには、標準化、広告効果測定、最適なコンテンツ提供、デジタルサイネージ環境に合わせた法整備、といった課題をクリアする必要がある。
モバイルトレンド
LTE躍進の一方、苦戦するWiBro。政府は新政策導入でWiBro建て直しを模索
(1)成長停滞に悩むWiBro
本格的モバイルブロードバンド時代到来を見越し、国を挙げてWiBro(モバイルWiMAX)開発に力を注いできた韓国では、携帯キャリアのSKテレコムとKTが世界に先駆けて2006年6月に2.3GHz帯利用のWiBroサービスを開始した。
しかし、両社は、WiBro開始とほぼ同時期に本格化したW-CDMA方式3Gサービスとの差別化を図れず、WiBro市場は低迷。2012年2月末時点の2社合わせたWiBro加入者数は約86万。このうち、KTの加入者が80万と大半を占める。
一方、2011年7月からキャリア3社は順次LTEを開始し、同年9月から対応スマートフォンの発売を開始し、2012年4月までに3社ともLTEを全国化という具合にLTEに全力を注いでいる。 4月時点のLTE加入者数は既に400万を超える。
KTは、2010年からのスマートフォン急速普及による無線データのオフロード対策として、トラヒックをLTE、Wi-Fi、WiBroに分散させる戦略である。 2011年3月にWiBro網を全国構築したKTは、オフロード対策としてのWiBro活用に力を入れたいところである。 しかし、韓国ではWiBro市場規模が小さいため、サムスン、LG等の国内メーカーは、国内向けのWiBro対応スマートフォンを作る計画が無く、WiBro対応端末の確保で苦戦している。
(2)不発に終わった第4の移動通信事業者選定とWiBro政策の立て直し
移動通信市場の競争活性化とWiBro活性化のため、放送通信委員会は2011年12月に、2.5GHz帯利用のWiBro事業者を審査で1社選定しようとした。
移動通信市場には携帯3社が参入しているため、新規参入するWiBro事業者は、第4の移動通信事業者と呼ばれている。
既にWiBro参入しているKTとSKテレコムは今後LTEに力を入れるため、WiBroへの投資意欲はさらに低くなることが予想されており、新規参入事業者にWiBro活性化の命運がかかっていた。
新規WiBro事業参入には、インターネットスペースタイム(IST)と韓国モバイルインターネット(KMI)の2コンソーシアムが申請をしたが、審査の結果、2者とも落選となり、新たなWiBro事業者参入政策は失敗に終わった。
放送通信委員会は、代案として当面の競争政策はMVNO活性化に力を注ぐとしているが、WiBro政策は漂流状態となり、政策建て直しが急務となっていた。
その後、2012年4月、知識経済部、放送通信委員会など関係省庁が合同でWiBro建て直し政策「第4世代移動通信(WiBro Adv.)装備産業技術競争力確保対策」を発表。 この政策の骨子は、LTEの補完として2015年までに世界モバイル市場の10-20%の需要が見込まれるWiBro市場で韓国が主導権をとっていこうというもの。 WiBroはLTEに比べ、基地局・装備・端末・モデムの産業全部分にわたって、競争力のある国内中小企業のエコシステムが構築されているため、その戦略的発展を図ろうとするものである。 新たな梃入れ策がWiBro活性化につながるかが注目される。
放送トレンド
地上波再送信有料化問題で激化する放送事業者間紛争
(1)韓国の有料放送市場
国内世帯の9割が、ケーブルTV、衛星放送、IPTVの有料放送に加入している。
ケーブルTVは国内で94社がサービスを提供しており、加入者数は約1,496万(2011年9月時点)。
ケーブルTVの世帯普及率は8割を超える。衛星放送はKTスカイライフが提供しており、2011年末時点の加入者数は326万。
通信キャリア3社が提供するIPTV加入者数は500万を超える。
(2)地上波再送信紛争
2008年にIPTVの地上波再送信開始にあたり、IPTV事業者が地上波放送事業者に再送信料金支払いで合意したことから、ケーブルTVの地上波再送信有料化への圧力が強まった。
地上波再送信有料化をめぐり、地上波陣営とケーブル陣営の紛争は激化して訴訟に発展した。
両者の紛争は激化の一途をたどり、2011年末には、国内のケーブルTV全社が地上波3社の高画質放送を8日間中断した。
さらに、2012年1月に、ケーブルTV各社は公共放送チャンネルKBS2のアナログ・デジタルの放送全面中断を強行するという事態が28時間続き、放送紛争が広範囲の視聴者被害を及ぼすという最悪の事態を招いた。
(3)地上波再送信制度の見直しが急務
地上波再送信紛争の解決を目指す通信・放送行政機関の放送通信委員会は、義務再送信制度の見直しと再送信料金算定基準策定等を2011年末までに進める予定であったが、これらの政策は2012年に持ち越された。
現在、再送信義務がある地上波チャンネルは公共放送のKBS1と教育放送のEBSの二つで、あとの地上波放送チャンネルの再送信は、事業者間協議に任せられている。政策策定の遅れに加え、KBS2ブラックアウトという史上初の事態を防げなかった放送通信委員会に対する風当たりは強い。
国家ブロードバンド計画
世界最高水準のネットワーク高度化計画
1990年代半ばから、国家インフラとしてブロードバンド網構築を進めてきた韓国では、現在に至るまで持続的にネットワーク・インフラの高度化を進めている。
-2004~2010年 広帯域統合網(BcN:Broadband convergence Network)構築計画
2004年から2010年にかけて、情報通信部(放送通信委員会の前身)が策定したBcN構築計画により、IPTVや画像通話等の新サービス提供基盤となるブロードバンドインフラが整備された。
その結果、2010年度の計画完了時には当初の普及計画を上回るレベルで、1,482万世帯に50Mbps級有線ブロードバンド・サービス、3,090万人に1~2Mbps級無線ブロードバンド・サービスが普及した。
-2009年~ ギガ級ブロードバンド網構築計画
BcN構築後のさらなるインフラ高度化計画として、放送通信委員会は2009年1月に放送通信網中長期発展計画を発表。この計画に基づいて2013年までに構築されるALL-IP基盤の超広帯域融合網(UBcN:Ultra Broadband convergence Network)では、2012年から有線で最大1Gbps、2013年から無線で平均10Mbpsのサービスを提供する。
2010年度はギガ級インターネット試験サービスとして、3DマルチアングルIPTV、KTのホームネットワーク・サービス、Nスクリーン・サービス(1回線のネットでケータイ、PC、TVなどのネットにつながった各種デバイスで放送等又はネットコンテンツを視聴するサービス)、スマートビューア(TV基盤の画像通話、映像教育、監視カメラ等)等の新サービスが提供された。
ICT利活用
行政・教育・医療分野におけるICT利活用
(1)行政分野
ブロードバンドを国家インフラとして早期に整備した韓国では、2001年に「電子政府法」を制定し、その後策定された電子政府ロードマップに従って計画的に電子政府を整備した。
韓国の電子政府は2010年に国連の電子政府評価で1位になったことを契機に、世界からの注目が一層高まり、行政安全部の発表によると、電子政府関連輸出額が前年比で223%増加した。
2010年から2011年にかけての電子政府関連輸出は、エクアドル・インドネシア・バングラデシュ・マリ・スリランカ・ベトナム等の諸国への輸出で実績を伸ばしている。
(2)教育分野
教育分野では、2007年からデジタル教科書試験事業が実施されてきた。当初は2013年の小学校へのデジタル教科書導入が計画されていたが、クラウド化の進展とネットにつながった新たなスマートデバイスの登場という急速な技術革新による変化を考慮し、
教育科学技術部は2011年6月、内容を一新したデジタル教科書計画を盛り込んだ「スマート教育推進戦略」を発表した。この戦略により、2015年までに国家教育競争力で世界上位10か国入り、2025年には上位3か国入りを目指す。
戦略に盛り込まれた課題は、1)デジタル教科書開発と導入、2)オンライン授業活性化、3)オンラインを通じた学習診断体制構築、4)教育コンテンツの自由な利用及び安全な利用環境整備、5)教員のスマート教育実践力強化、6)クラウド教育サービス基盤整備、である。
このうち、戦略の目玉は、2015年からの小中高等学校へのデジタル教科書導入と教育クラウド化。 デジタル教科書は教科書と参考書、問題集、写真、ノート、マルチメディア要素資料の機能を連携した形となり、PC・スマートパッド・スマートTV等のあらゆるデバイスでの利用が可能となる。
また、2008年末から開始されたリアルタイムIPTVが積極的に公共サービスに導入され、教育分野では、2010年から全国の小中高等学校にIPTVが導入され、また、低所得世帯児童及び青少年のためのIPTV学習室設置が全国の自治体で進められている。
(3)医療分野
高齢化が急進展する韓国ではICTと医療を融合させたuヘルスケア分野への注目も高い。
知識経済部は2010年5月、uヘルス市場を2014年までに3兆ウォン規模に育成するための「uヘルス新産業創出戦略」を発表し、治療部門のuメディカル、高齢者対象のuシルバー、健康管理サービスのuウェルネスの三分野に分けて政策を実施することにした。
また、医療分野のICT利活用促進につながる政策として、放送通信委員会の「グリーンIT国家戦略」でIPTV利用の遠隔医療サービス推進が盛り込まれている。
- 2015年までに小中高校へのデジタル教科書導入を目指す韓国のスマート教育推進戦略 (PDF:別ウィンドウで開きます)
支配的事業者規制
通信市場競争活性化のためにMVNO参入促進策
通信市場の競争活性化と消費者の選択権拡大のため、放送通信委員会は、2010年の「電気通信事業法」改正でMVNO(注)参入の根拠を整え、MVNO参入を奨励している。 我が国ではMVNOはデータ通信サービスが主流であるが、韓国政府は家計に占める通信料金低減策の一環として、音声通信MVNOによるプリペイド携帯市場活性化を奨励している。
MVNOの根拠法整備作業は、MVNOに貸し出すネットワーク料金を事前規制とするか、事業者間協議に任せる事後規制とするかで論争となり、2006年から足掛け4年の年月を要した。 MVNOへの卸売り料金は今後3年間を事前規制とし、最大手携帯キャリアのSKテレコム1社がMVNOへのネットワーク開放を義務付けられた。その結果、SKテレコムのネットワーク卸売り料金は、 現行の小売価格の31-44%の割引率でMVNOに貸し出すというガイドラインが告示で示された。さらに、MVNOの市場参入又は競争促進効果が不十分と判断される場合には、放送通信委員会が、SKテレコムとMVNOの双方と協議して大量購買割引を価格算定に反映することにした。
放送通信委員会はMVNOのスムーズな市場参入を支援するため、2011年5月にMVNOサービス開始支援策を発表した。 これにより、2012年6月まではSKテレコムがMVNOに在庫端末を支援、発信番号表示や映像通話・MMS等の通話関連15サービスを支援、MVNOの設備構築費用支払いを2012年末まで猶予することで合意に至った。 さらに、2011年7月に放送通信委員会が制定した卸売り提供ガイドラインでMVNOの大量購買時の割引基準が設定され、2011年度の場合、MVNOは最大53%までの割引価格で卸売りを受けられるようになった。
これらの参入促進政策の結果、2010年後半以降に音声又はデータ通信ベースのMVNO参入が相次ぎ、2011年7月現在で登録しているMVNOは13社となった。
一方、放送通信委員会は2011年6月、公正競争上の観点から、携帯キャリアの子会社によるMVNO参入にはストップをかけ、携帯キャリア子会社のMVNO参入制限のための法的根拠整備の検討を開始した。
(注)自社は通信インフラを所有せず、他社のインフラを借り受けて携帯電話サービスを実施する事業者。
デジタルコンテンツ振興
コンテンツ市場拡大に向けた取り組み
韓国の放送及びコンテンツ市場は主要先進国に比べて規模がかなり小さい。放送通信委員会によると、2009年度の国内放送市場規模は米タイムワーナー1社の年間売上げの3割程度に過ぎない。 日本では近年、韓国ドラマの存在感が増しているものの、韓国の地上波番組の輸出先の8割は日本・台湾・中国の3か国が占めており、とりわけ最近数年間は日本への輸出が全体の6~7割を占める。 さらに、輸出番組の主力はドラマが90%以上とジャンルもかなり偏っている。したがって、韓国の放送コンテンツ市場拡大のためには、ドラマ以外の幅広いジャンルの番組制作力向上、輸出市場開拓等が課題となっている。
放送通信委員会は2011年度、放送通信コンテンツ・広告市場の拡大と競争力強化に重点を置いた政策を進めている。 放送通信コンテンツの競争力強化のために、外部制作番組比率のジャンル別調整による番組制作力強化、有料放送の市場範囲制限緩和、モバイル・放送コンテンツへの投資ファンド運用、 携帯キャリアやOSに関係なく利用できる統合アプリストア開設等の施策を2011年度中に進める。
さらに、放送コンテンツ制作環境の整備も進められ、ドキュメンタリー等の高品質番組制作への資金面での支援の他、中小番組制作会社のために、放送通信委員会と文化体育観光部の共同事業として、 デジタル放送コンテンツ支援センターを2012年竣工を目指して構築中である。
支援センターは、番組の企画・制作・送出・流通の過程全般をワンストップで支援する複合施設で、ソウルに隣接する京畿道高陽市に設立される。 番組の海外進出支援策として、2011年度は中南米・東欧等の新規市場開拓のためのショーケース開催、政府間協力の形で海外マーケティング支援を強化する。
また、2011年5月に政府横断的なコンテンツ産業育成戦略として「コンテンツ産業振興基本計画」が発表された。2013年までに1兆6,000億ウォンの予算を投じ、2015年にはコンテンツで世界上位5か国入りすることを目標としている。
- 韓国の地上波放送広告販売制度改善をめぐる論点 (PDF:別ウィンドウで開きます)
ネット中立性
モバイル・チャットアプリ大ヒットで本格化した韓国のネット中立性問題
韓国での本格的なネット中立性論議は、スマートフォン向けの無料チャット・アプリ「カカオトーク」の大ヒットにより、2011年3月から本格化した。 カカオトークは2010年前半のサービス開始以降、短期間で急成長を遂げた(2011年11月時点で3,000万ダウンロード突破。うち海外利用者割合は約2割)。 そのため、モバイル・キャリアのネットワークへの負荷が増え、キャリアによるカカオトークへのサービス制限の可能性が取りざたされた。 これに引き続き、2011年中には、国内大手キャリア3社がサムソン電子、LG電子、Apple等のスマートTVメーカーに対し、 スマートTVによるデータ・トラヒック急増に対するネットワーク利用対価を支払うよう文書で求めるという動きも起こっている。 韓国ではカカオトークをきっかけに、無線分野で起こったネット中立性問題が有線分野でも本格化する動きを見せた。
政府は、事業者間の紛争勃発を防ぐため、2011年5月に、年内にネット中立性政策をまとめる方針を発表。 これにより、2011年12月に放送通信委員会は「ネットワーク中立性及びインターネット・トラヒック管理に関するガイドライン」を発表した。 2012年1月から施行されたガイドラインには、(1)利用者の権利、(2)トラヒック管理の透明性、(3)合法コンテンツ、アプリケーション、 サービス及びネットワークに危害を加えない機器や装置の遮断禁止、(4)合法コンテンツ、アプリケーション、サービスの不合理な差別禁止、(5)合理的トラヒック管理、の基本5原則が盛り込まれた。一方、ベストエフォートのネット品質が適正水準以下に落ちない範囲内での管理型サービスの提供が認められており、管理型サービスの市場への影響は放送通信委員会が監視することとされた。ガイドライン施行による後続措置は、2012年に進められる。
放送・メディア政策
スマートTV活性化戦略でグローバルTV市場での主導権確保へ
米国のGoogle TV、Apple TVに続き、サムスン電子とLG電子も2010年からスマートTVに力を入れている。 韓国メーカーは2011年をスマートTVの本格化元年と位置づけ、サムスン電子は2011年度の薄型TV全体の販売目標(4,500万台)のうちスマートTVの割合を約25%(1,200万台)に設定しており、 LG電子は2011年度に販売するTVセットの半数以上をスマートTVにする計画である。 スマートTV市場はまだ立ち上がり段階にあるため、各社が独自プラットフォームを利用している。
スマートTV市場は今後、プラットフォームを中心としたエコシステム間競争となることが予想される。しかし、プラットフォーム技術力では、韓国企業はアップルやグーグルよりも劣っており、 また、デバイス・コンテンツ・ネットワーク・サービスの各分野間の連携も依然として課題である。 スマートTVは従来のTVと違い、ハードウェアの競争力だけでは成功できず、コンテンツ、インターネット網などTVをとりまくエコシステムを活性化することが重要となる。
そこで、政府は2011年4月、関連3省庁(放送通信委員会(KCC)、知識経済部、文化体育観光部)合同で「スマートTV産業発展戦略」を発表。 戦略ではスマートTV競争力の向上、コンテンツ及びサービスの育成、インフラ構築、の3分野で重要政策課題を設定し、政府横断で進める計画である。
また、KCCは2011年7月に発表した今後3年間の主要政策方向において、高成長が見込まれる「7大スマートサービス」を重点支援する方針を明らかにしており、スマートTVはその一つに指定されている。 KCCはスマートTV活性化のための政策検討を開始し、スマートTVの法・制度的位置づけのためのガイドラインを設ける方針。
周波数関連政策
2011年に初の周波数オークション実施。モバイル広開土プランで2020年までに600MHz幅以上の新規周波数を確保
(1)韓国の周波数割当方式
急速なスマートフォン化の進展により、2010年中に携帯キャリアの無線データ通信トラフィックは前年比で100~300%急増し、
携帯キャリアへの早急な周波数追加割当てが急務の政策課題となっている。
韓国の周波数割当方式は2000年以降、対価割当方式と審査割当方式の二種類が用いられてきた。
移動通信等の経済的価値の高い周波数は経済的価値を反映した対価を受け取って周波数を割り当てる対価割当方式を適用してきた。
一方、審査割当ては周波数共用通信(TRS)、ページャー等のニッチ市場向けサービス用途周波数に適用される。
対価割当方式は、審査割当てとオークションの中間的な性格を持つ。
2010年7月の「電波法」改正により、対価割当方式の一種という位置づけで新たに周波数オークション制度が導入された。
今後は移動通信等の経済的価値が高い事業用周波数の割当時には、基本的にオークションを原則とするが、
競争的需要がない場合等には既存の対価割当方式が適用されることになった。
(2)LTE追加周波数帯をオークションで割当て
初めてのオークションは2011年8月、800MHz/1.8GHz/2.1GHzの3帯域50MHz幅で同時に実施された。
当初オークションでの割当て予定は2.1GHz帯の1枠であったが、放送通信委員会は携帯キャリアへの周波数追加供給を急ぐため、
3帯域同時オークションを急遽決定した。オークションの結果は次の表のとおり。
| 対象帯域 | 周波数幅 | 最低入札価格/落札価格(ウォン) | 落札事業者 |
|---|---|---|---|
| 800MHz | 10MHz | 2,610億/2,610億 | KT |
| 1.8GHz | 20MHz | 4,455億/9,950億 | SKテレコム |
| 2.1GHz | 20MHz | 4,455億/4,455億 | LG U+ |
今回最も需要の高い2.1GHz帯への入札は、公正競争の観点から、既に同帯域を保有しているSKテレコムとKTの2社に対して参入制限が設けられたため、 同帯域を保有していなかったLG U+が最低入札価格で獲得した。1.8GHz 帯をめぐってSKテレコムとKTの競争となったが、結果的にSKテレコムが落札した。 各社は今回獲得した帯域でLTEサービスを展開する。
(3)今後の周波数開放計画
放送通信委員会はさらなる周波数逼迫問題に対応するため、2020年までに600MHz幅以上の新規周波数を発掘する「モバイル広開土プラン」を2012年1月に発表。
プランに基づき、2013年に700MHz、2.1GHz、1.8GHzの各帯域から合計170MHz幅が割り当てられる予定。
なお、700MHz帯の用途については通信業界と放送業界の綱引き状態となっており、2013年に割り当てる700MHz帯(40MHz幅)は移動通信用だが、残りの700MHz帯の用途決定は先送りされている。
その他
スマート先進国を目指す韓国の重点育成新サービス戦略
スマートフォン等ネットにつながったデバイスの普及とクラウド化で、時間や場所を選ばずにサービスが利用できるスマート時代が到来した。 韓国では、スマート時代到来を契機に、新規雇用創出と将来的な経済成長を牽引するスマートエコシステム構築と新産業創出を目指す戦略を打ち出している。 放送通信委員会は2011年11月、スマート先進国となるために2013年までに進める政策方向の実行計画と予算を盛り込んだ「放送通信基本計画」をまとめた。 同計画によると、スマートエコシステム構築のために、他産業等の連携と成長性が見込める、クラウドやM2Mなどの次の7つの新サービスを集中育成する方針。
- クラウド : モバイル、韓流コンテンツ、メディアをクラウドと連携させ、競争力あるビジネスモデルを発掘
- M2M : 超低電力技術と標準プラットフォーム開発など
- NFC : 2015年までに国内150万箇所にモバイル決済インフラ構築
- スマートTV
- Tコマース : スマートTV等の双方向放送対応TV基盤の電子商取引活性化
- 位置情報サービス
- 3D放送 : 試験サービス実施により商用サービス基盤拡大