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インドネシア

モバイル

ライドシェア・アプリ規制の導入

インドネシアでは、バイクタクシー等の配車アプリケーションについて、新技術・サービスの活用と既存事業者の育成をどのように図っていくか、実力行使を伴って、様々な議論が展開されてきた(1)。

運輸省は、2017年3月31日付で、運輸大臣令No. 26/2017「一定の路線をたどらない公共交通機関」(2)を公布し、ライドシェア・アプリケーションを使用する事業に一定の枠をはめた。大きな改正点は、2点で、まず、ライドシェア・アプリケーションを使用する事業者については台数制限が課された。たとえば、ジャカルタ首都圏においては、人口1,000人当たり、3-5台に制限される。また、料金に関しても上限と下限が運輸大臣によって定められることとなった。

これを受けて、GO-Jek、Grab Indonesia、Uberの大規模事業者は、不服を申し立てている。一方、大臣は既存のタクシー事業等への目配りから、「調和ある公共交通機関の育成」を呼びかけている。また、実際の規制の開始は、各方面への調整を経たうえで、3-4か月後をめどに実施するとしている。

先進国においては、隙間に参入してくる事業は、既存事業者と消費者の双方にWin-Winの結果をもたらしている場合が多いが、産業が未成熟、かつ巨大なインフォーマル・セクターを抱える新興国においては、様々な課題を内包していると考えられる。

(1)ICT Global Trend 2016年1月記事
(2)http://jdih.dephub.go.id/produk_hukum/view/VUUwZ01qWWdWR0ZvZFc0Z01qQXhOdz09

(2017年4月)

高速インターネット接続提供のためにインフラ整備を急ぐモバイル事業者

東南アジア地域で、ブロードバンド・インフラストラクチュアの全国整備が遅れている国のひとつとみなされているインドネシアでは、電子商取引の拡大やオンデマンドのコンテンツサービスの隆盛により、各方面からインターネットの高速化が要求されている。

たとえば、インドネシア・インターネット協会(Asosisasi Penyelenggara Jasa Internet Indonesia:APJII)会長は、事業者と政府の優柔不断によりインフラの整備がゆっくりとしたペースでしか進行しないと指摘している。

一方、事業者は、高速化を進めるために4Gネットワークの展開を加速しているとしている。加入数第4位の携帯電話事業者XLアクシアタは、2016年6月、計画を前倒しして、6月時点に58都市で4Gでのインターネット接続を実現しており、年内に100都市に拡大するとしている。XLアクシアタは、また、加入数第2位のIndosat Ooredooとセルラー塔の共有を進めて、インフラ整備を加速化する方針も公表している。XLアクシアタが攻勢に出ているのは、近年、市場シェアを落としているという、お家の事情にもよるとみられる。

2014年に国内で最初に4Gをサービスインさせた加入数第1位のTelkomselは、4月時点で4,500の基地局を整備して、100都市での提供を実現し、このネットワークで約500万の加入者を収容していると発表している。計画では今年度中の4G加入数を1,200万にする予定である。

(2016年7月)

バイクタクシー・アプリの禁止を撤回

スマートフォンの普及が著しいインドネシアの都市部では、GO-Jekを筆頭とする(注1)アンドロイドやiOS用のバイクタクシーの配車アプリケーションが、重宝されている。

2016年12月17日に運輸省は、そうしたアプリケーションの使用を禁止した。理由は、バイクタクシー自体が、法(注2)で定める公共交通機関にそぐわないためとした。これに対し、アプリケーションを利用してサービスを提供している企業のみならず、利用者も猛反発し、大統領が「運輸相に再考を求める」と発言する事態となった。

これを受けて、運輸省は、充分な公共交通サービスの提供の実態と法の理念にはギャップがあり、このギャップを埋めるためにはバイクタクシーの利用もやむなしとして、翌日、禁止令を撤回した(注3)。

「時間節約」ビジネスを謳うGO-Jekについては、人を運ぶサービスのみならず、モノを運んだり、簡単な買い物を頼める等、多種の運輸関連サービスを提供しており、都市部で非常に人気が高い。同社とマレーシアから来たGrabBike社がこうしたアプリケーションの二大スタートアップ企業として注目されている。新たな技術の応用は伝統的な規制との不整合をおこす可能性があり、今回は、それが比較的スムースに解消された事例と見ることができる。

(注1)インドネシア語でバイクタクシーはOjek、よってJekという語を含むアプリケーションがいくつか利用されている。
(注2)2009年法第22号 交通及び陸上運輸法
(注3)インドネシア、特にジャワ社会では体面は非常に重要であり、今回のように下がる余地がある場合には、動きは早いと思われる。

(2016年1月)

競争と電波塔の共用

インドネシアで、加入数第二位(6,300万加入)の携帯電話事業者XLアクシアタは、2014年10月1日、所有するセルラー用の電波塔3,500基を約4.6億米ドルでSolusi Tunas Prima (SUPR)社に対して売却することを発表した。SUPRは、傘下に光ケーブルインフラストラクチュアを構築・運用できる子会社を抱えている。

飽和に近づくに伴って競争が激化しているインドネシアの携帯電話市場では、2014年初にXLアクシアタによるAxis Telekomの買収が行われ、事業者の再編が進行している。今回の電波塔の売却は、経営の安定化のために資産を現金化するための行動だとアクシアタ経営陣は説明している。

インドネシアでは、中央‐地方政府の権限をめぐる綱引きの結果、規制緩和が行われ、共有インフラストラクチュア事業者(わが国でいうところの旧ゼロ種事業者)が存在しており、携帯電話市場での競争の激化に伴い、その存在感が増している。というのは、低ARPU下で競争にあえぐ各携帯電話事業者がコストを圧縮するために、共用の電波塔を利用することを選好するためである。

共有インフラ事業者最大のTower Bersama Infrastructure Group(TBIG)は、7月1日時点で1万1,266の設備を保有しており、そのうち1万0,159が電波塔である。SUPRは、今回の買収で4,187の電波塔を保有することとなった。

(2014年10月)

クラウド、ビッグデータ、コネクティッド

SNSサービスの展開と支払い手段の多様化

2016年8月、国営銀行の一つであるマンディリは、Facebookと組んで、Facebook上の広告に対する支払いをDebit決済で可能とした。これまでもカード決済を行っていたが、カードの審査に通らない層をも取り込むための展開と見られる。

この措置は、主として広告をSNS上で展開している国内の6,000万近い中小企業の取り込みとしており、今後5年間でデジタル化する中小企業が急拡大することを見越しての措置である。マンディリの顧客数は1,700万程度で、そのうち中小企業が85万程度。また、2020年までの計画に織り込むなど、ASEANを上げて、中小企業によるICT化を促進する方向にある。

銀行の側では、近年は手数料収入が、収益の大きな部分を占めるようになってきている。マンディリの場合、今年に入っての手数料収入は700億円程度で全体の収益の14.5パーセントを占める。そして、その大部分は、管理料、送金手数料が占めているようである。

インドネシアはFacebook大国であり、6月には1億1,000万のアクティブなユーザを抱えているとFacebookは、発表している。また、同国におけるWeb広告の売上高の一位、二位はGoogleとFacebookである。

(2016年9月)

収益源を音声からデジタル・サービスへ

旧国営事業者テルコム・インドネシアは、収益の増大のために「デジタル・サービス」に注力していくことを、機会があるごとに表明している。11月末には当面CEOを務める(注)Indra Utoyo氏が、「2015年度は、デジタル・サービス部門の売上げの成長率を2けたにして、100兆ルピア(82億米ドル)を見込んでいる総売上げの9パーセントとする」という目標数値を発表した。

具体的にどのサービスがデジタル・サービスに当たるかについて、財務報告書等では定められていない。Indtra Utoyo氏が、移動通信を提供する子会社の「テルコムセルを通じて、若い顧客に訴求するアプリケーションのラインナップを豊富にする」、「M2Mをテルコムセルの収益源に育て上げる」と発言していることから、そうした新しい上位レイヤー関連の事業を指しているものと思われる。なお、固定と移動体の通話からの収益は、2014年度の第3四半期までで、売り上げの半分を占めているものの、昨年同期との比較で2.4パーセントの成長にとどまっている。

テルコム社は、シリコンバレーを意識したデジタルバレーというICT系のスタートアップ企業を支援する取り組みも行っており、既にバンドンとジョグジャカルタに続いて、11月末にジャカルタでもデジタルバレーが立ち上がった。

こうしたコンテンツの展開を支えるブロードバンド・インフラの整備については、政府の5か年計画を支えるために、通常は20兆~25兆ルピアのインフラ整備予算について、2015年には45兆ルピアを投入することが10月に発表されている。

(注)前CEOのArief Yahya氏が、JokoWidodo大統領の組閣時に運輸交通大臣に任命されたために、現在、Acting Director GeneralのIndra Utoyo氏が最高経営責任者である。

(2014年12月)

事業者のM&A・国際展開

財務省‐Google間で納税に関し合意

2017年6月13日、財務省は、Google Asia(本社シンガポール、Googleの地域統括会社)との間で、納税額に関して合意に達したと発表した。

この問題は、昨年来協議されてきたもので、当初、両者の主張する納付額には10倍以上の開きがあったとされる。6か月にわたる交渉の末、Google側は2016年の申告を基礎として納付することになった。なお、課税額については、交渉の結果非公開となった。参考までにインドネシア側は、税と罰金分を含めて4億米ドル前後を主張していた。

今回の合意については、FacebookやYahooといった他のインドネシアに進出しているメガICT企業にも波及してくることになる。

インターネット利用者の増加に伴い、OTT(Over The Top)企業の収益が拡大しているが、世界規模のICT企業は移転価格等を利用して節税に努めている。税収基盤の弱い新興国にとっては、こうした制度の利用は、なるべくは避けたいところである。一方で、安定して直接投資を呼び込み技術移転を促すためには、重課税は得策ではない。新興国では、バランスを取るための様々な調整が行われていると想像される。

(2017年7月)

Telkomによるグアムへの海外進出計画

国内市場で厳しい競争にさらされているインカムベント事業者Telkomは、グアムでCATV、ブロードバンド・サービス、携帯・固定音声サービスまでを提供しているGTA Teleguamの支配的な株式を、投資ファンドから3億米ドル程度で譲り受けることで6月上旬に合意した模様である。これが実現すると、インドネシア企業による最大級の海外での企業買収となる。米国公益事業委員会並びにFCCによる認可は、2015年7月10日時点では下りていない。

Telkomは、2014年にも海外進出を画策して、ニュージーランドの事業者との交渉を進めていたが、価格面で折り合いがつかず断念していた。

Telkomの国際部長は「グアムは非常に面白い市場で、我々の国際戦略に合致している」と発言している。GTA自体は従業員350名程度の小さな事業者であるが、いわゆるフルサービス事業者であり、海外事業の経験を積むために適切という判断があったことが想像される。しかし、それより大きな理由は、グアムは太平洋ケーブル網の要衝であり、南太平洋からインド洋にかけて大きな国土と海域を有するインドネシアにとって、地政学上の重要な意味を持つことにある。Telkom、GTA Teleguamは、ともに、東南アジアからグアム・ハワイを経由してカリフォルニアをつなぐSEA-USケーブルのコンソーシアムのメンバーである。

(2015年7月)

ブロードバンド・ICT基盤整備

Telkom1衛星システムダウンによる通信障害

インドネシアでは、設計耐用年数を超えて使用してきた1999年打ち上げのTelkom 1衛星が2017年8月25日にシステムダウンしたため、国内通信に大きな影響が出た。2016年の検査時には、2019年までは運用可能との診断が出ていたとされ、当日には軌道位置の近隣を大量のデブリが通過したともされている。

特に影響が大きかったのは、銀行を中心とした金融機関のネットワークで、セントラル・アジア銀行では、全体の30%にあたる5,700台のATMが使用できなくなり、126のキャッシュオフィスと呼ばれる支店もお金を動かせなくなった。

国内最大の電気通信事業者Telkom社ではTelkom 1で提供していたネットワークを他のTelkom現用衛星や他社の衛星に振り替えて、迅速なネットワークの復旧に努め、たとえばセントラル・アジア銀行のキャッシュオフィスは2日間で121支店が営業を再開した。一方で、全ネットワークの移行までには、2-3週間かかると発表している。

衛星を保持・運用してきたTelkom社は、2018年に東経108度のTelkom 1の軌道位置にTelkom 4(仮称)を打ち上げ代替する計画を発表している。

(2017年9月)

Telkom-3S衛星打上げ成功

2017年2月15日、国内最大の総合通信事業者テルコム・インドネシアは、フランス領ギアナよりTelkom-3S衛星の打ち上げに成功したと発表した。軌道位置は東経118度でTelkom-2の後継機となる。トランスポンダは、49本搭載しており、これまでのシリーズには搭載してこなかったKuバンドのトランスポンダの搭載が、新しい試みとなっている。

この衛星は、3T地域(1)の住民にICTサービスを提供することを最重要課題として設計されている。具体的には、HDTV、携帯電話及び広帯域インターネットのカバレッジを向上させることである。kuバンド・トランスポンダの搭載は、ネットワークの広帯域化の有効な手段とみなされている。

インドネシアでは、光ファイバで全国を接続する野心的なパラパリング計画が進行しているものの(2)、世界最大の島嶼国を有線で接続することは並大抵ではない。よって、不断の衛星通信ネットワークの更新は、インフラ整備を続けるために不可欠なものと見なされている。そうした文脈において、国内調達率の向上や国内での技術者育成といった、ネットワーク整備に留まらない、より大きな課題を抱えつつ、ネットワーク整備が進行している。

(1) Daerah Terdepan, Terluar, dan Tertinggal;辺境、外縁、未開地域。
(2) ICT World Trend(2016年12月)インドネシア記事参照

(2017年3月)

パラパ・リング計画の進捗-中央工区

2006年に開始された野心的なパラパ・リング計画は、中央工区の核となる部分が2016年秋に着工され、11月20日には、フィリピンから40分の距離にあるモロタイ島が接続された。

パラパ・リングは、島嶼国であるインドネシアの情報通信バックボーンを形成するための光ファイバー敷設を中心としたプロジェクトで、技術的にも資金的にも様々な課題を抱え、ストップ&ゴーを繰り返してきている。現行計画では、未接続の114を含む514市/県を接続するために、新規敷設分の工区を東、中央、西の3つに分けてKerja Sama Pemerintah-Badan Usaha(政府及び企業共同方式、スキームはBuild-Own-Operate-Transfer形式)で整備している。

中央工区を担当しているのはPT Len Telekomunkasi Indonesia(このプロジェクトのための合弁)で、カリマンタン、スラウェシ、北マルク地域で 2,700 キロを整備して、新たに17市/県を接続する。LTIは、政府と8月に契約に調印している。

なお、東工区はPT Penjaminan Infrastruktur Indonesiaが9月末に、西工区はPT Palapa Ring Baratの合弁が政府との契約に調印している。

(2016年12月)

モバイル

スマートフォン部品の現地調達率規制を計画

インドネシア政府は、国内で販売されるスマートフォン端末部品の40パーセント以上を現地調達しなければならないとする規制を2017年より導入しようとしている。

2015年2月にRudiantara通信情報大臣は、速やかに規制案を策定して、パブリック・ヒアリングにかけた上で、年央には公布するとコメントした。国内ICT産業の振興が、この規制の目的である。

インドネシア市場でも、アップル、サムソンを中心に外国製の端末が人気で、加入者の約3分の1がスマートフォンを利用しているとされる。クレディスイスの調査によると、インドネシア消費者の55パーセントが、支出の余裕があればスマートフォンの購入や、インターネットへのアクセスに使用したいとしていることから考えると、非常に規模の大きな市場であるといえる。

現地端末ベンダのHartono Istana Teknologiは、既に部品の約35パーセントは現地調達されているので、2017年までに規制に適合した端末を製造することは難しくないとしている。一方で、こうした規制が、密輸を増加させたり、部品価格の高騰をまねいて消費者の負担を増加させると懸念する声も聞こえる。また、米国通商代表部(USTR)は、この規制が米国ICT企業のインドネシア市場進出を妨げるとして規則の見直しを申し入れている。

(2015年3月)

クラウド、ビッグデータ、電子政府

オープンデータ政策の進展

2014年9月5日、インドネシア政府は、データ公開のためのポータルをオープンさせた(http://data.id/)。9月12日現在は、ベータ版の位置づけだが、正規版になった時点でURLを移行させる予定である(http://data.go.id)。オープンの時点で、24政府機関の700のデータベースにポータルから接続できる。ポータルは、より信頼される政府、より良い市民サービス、社会イノベーションの促進をうたっている。

統計資料等のビジュアライズを利用者が容易に行えるようなアプリケーションや、データをどのように利用して行くかについて意見を交わせるようなアプリケーションを組み込み、データの活用につなげていくようなポータルの設計がなされている。

10月に就任するJoko Widodo新大統領は、「変革」を旗印に掲げており、非効率性や汚職が問題視されている行政部門にメスを入れることを宣言している。たとえば、ジャカルタ特別州知事時代に一定の成果を上げているe-budgeting、e-purchasing、e-catalogue、e-auditing、租税オンライン、といった行政事務の透明化を図るためのICT関連の道具立てを、現行制度との調整を図りつつ最大限活用し、さらに強化することが既定の路線となっている。

こうした環境下において、オープンデータ関連の施策についても、今後の進展が容易に想像される。一方で、ポータルの運営については、その継続性が重要であり、今後、利用者の関心をいかにして引いていくかについては、世界共通の課題である。

(2014年9月)

スマート社会

電子商取引に対する課税

電子商取引の隆盛により、各国の税務当局が消費税、付加価値税や一般売上税の課税について、様々な施策を展開しているが、インドネシアにおいても近日中に規制概要が発表されるようである。

財政のバランスを目指して、各国で税収を増加させるために様々な取組みがなされている中、これまで電子商取引への課税が行われてこなかった国においては新たな米櫃となる可能性がある。

簡単に行かないのは、外国事業者の提供する越境電子商取引への課税である。インドネシアの金融当局においても「基本は、販売を行った国での収税であるが、国際的な協調によって消費国においても応分の分与が考えられるのではないか」と発言している。

8月には中央銀行から、インドネシア電子商取引の規模は2016年で56億ドルと発表されており、単純にインドネシアの現行付加価値税の10%を適用した場合、5.6億ドルの増収が見込まれる。

(2017年10月)

セキュリティ、プライバシー

情報及び電子商取引改正法の成立

2016年11月25日、インドネシア国会は「2008年情報及び電子商取引法」を改正し交付した。改正法は、「2016年法第19号情報及び電子商取引改正法(Information and Electronic Transaction Law No.19 of 2016)」となる。

同法は、もともと、電子商取引・契約、認証、電子署名、ドメイン名管理から個人情報保護やサイバー犯罪規制までを包含する法である。本改正では、大規模な改正は行われなかったものの、個人情報保護やサイバー空間における規制が強化された。

これまでも数次にわたって報告してきたように(1)、インターネット空間の到達範囲の拡大とイスラム回帰的な社会の変容により、ここ数年、インドネシアではサイバー空間上の情報の取り扱いが非常にセンシティブになっていた。

改正法第40条の規定により、政府は、電子的な違法情報を削除し、配布者を罪に問う権限を確定された。また、第43条ではサイバー・ポリスの設置が規定されている。

改正法の公布後、どのような情報が違法となるのかについて様々な議論が行われるとともに、インドネシアでも世界中を揺るがせているFake Newsの特定についてもどのように行うかについて議論がなされている。

(1) ICT World Trend(2014年11月)(2015年11月)(2016年2月)のインドネシア記事参照。

(2017年1月)

サイバー防衛関連庁の設置を計画

2015年1月、Rudiantara通信情報大臣とTedjo Edhy Purdijanto政治・法制・治安調整大臣が共同で、Joko Widodo大統領にサイバー防衛を所管する庁の設置を進言した。

現在は政治・法制・治安調整大臣府が、サイバー攻撃への対応を調整しているが、インターネットへの接続の拡大・高速化のペースに追い付いていない。通信情報省のデータでは、2013年の上半期に毎日42,000か所でサイバー攻撃が感知され、過去3年間で3,660万回のサイバー攻撃が確認されている。主要な攻撃の形式は、ウイルスやマルウェアであり、その検知は年々、困難になってきている。政治・法制・治安調整大臣は、その他にも重要インフラストラクチュアへの攻撃や、米国で起こったような主要企業への攻撃も想定できるとして、対策の重要性を力説している。

インドネシアは、サイバー攻撃の発信源ともなっており、Akamaiの調査では、2014年第2四半期には中国に次いで第2位で、全世界の15パーセントのサイバー攻撃はインドネシア発とされている。

これに先立つ2014年12月末には、Rymizard Ryacudu国防大臣が、重要4課題の一つとしてサイバー防衛の重要性を主張するとともに、対策のために必要な人材と資金の不足を問題視した発言を公式に行っている。なお、残りの3つの課題は、テロ対策、疫病対策、麻薬対策である。

(2015年1月)

放送・メディア

表現の自由とインターネット・サイト・ブロッキングII

2016年1月27日にインドネシアの最大手の電気通信事業者Telkomは、グループ企業からのNetflixへのアクセスをブロックすることを発表した。Telkomはその理由を「Netflixは、インドネシアで番組を提供するために必要な免許を保有しておらず、加えて、国内では違法とされるコンテンツがアップロードされている(1)」としている。

Telkomは傘下に国内最大の移動体通信事業者Telkomselや最大のWi-Fi接続事業者を抱えるため、その影響は有線での接続に留まらない。ブロードバンド接続の中心がモバイル網であるインドネシアにおいて、この措置による不利益は小さくない。

情報通信大臣は、「関連した政府判断を待って行動したTelkomの判断を理解し尊重する」とコメントした。一方で、2月1日時点で、他の電気通信事業者が、Telkomに追随するかどうかは不明であり、政府はNetflixへの接続を禁止しているわけではない。Netflixは、配信範囲を全世界に広げるとして130か国での配信を12月に開始したばかりで、インドネシアは、そのひとつの国である。

インドネシア情報通信省は、Netflixがどのように規制されるべきか、放送規制委員会と調整を行っているところであり、28日付で放送事業者に対して、免許条件を順守するように勧告している(2)。

(1)インドネシアではポルノと認定されるコンテンツのみならず、たとえば、取り扱いが非常にセンシティブな「9月30日事件」を扱ったドキュメンタリ―映画「The Act of Killing」がアップロードされている
(2)Surat Edaran Menteri Komunikasi dan Informatika Republic Indonesia Nomor1 2016

(2016年2月)

ISの勢力伸長に対する情報通信規制機関による対応

インターネットの普及は、様々な情報の伝搬を容易にしている。イラク・シリア・イスラム国(Islamic State of Iraq and Syria: IS)と称するテロ集団(イラク・レバントのイスラム国Islamic State of Iraq and the Levant:ISILと称されることもある)の勢力伸長は、東南アジアの各国において、情報通信の規制権限を持つ官庁にも対応を迫っている。というのは、ISが、そのプロパガンダや構成員のリクルートにソーシャル・メディアやモバイル・アプリを最大限に活用しているからである。

インドネシアでは、2014年8月4日に宗教省が、インドネシアの国是である「パンチャシラ」(注)と相容れないものとして、ISの活動やその支援を禁止した。同日付で、通信情報省はGoogleに対してYouTubeにおけるISの動画をブロックするよう要請し、通信事業者にも、関連サイトの閉鎖やブロック、SNSにおける書き込みの監視を求めた。インドネシアでは、「2008年電子情報及びその伝搬に関する法」第28条を根拠に、反宗派的あるいは人種差別的な情報の提供を罰することができる。

2015年10月にインドネシアのInstitute for Policy Analysis of Conflictが発表した報告書によると、「伝統的な手法にも拠っているものの、宗教を議論する場が情宣およびリクルートの場になっており、インドネシアの宗教的な過激派はソーシャル・メディアなしには活動を継続できない」とし、「厳しくサイバー情報を取り締まっているマレーシアとの違い」と指摘した。報告書では、2002年を始まりとする過激派のサイバー化を、現在までを4期にわけて分析しており、2014年以降の第4期においてソーシャル・メディアが最重要なツールとなったとしている。

マレーシアでも、6月以降、通信マルチメディア委員会がウェブサイトやSNSでの武装勢力による情報提供に対し、警察との協力を強めている。7月には、15名のマレーシア人のISテロ組織への加入とシリアでの活動がネット等で広報され、それ以降、さらに警戒を強め、フォレンジック面を中心に警察への協力を進めようとしている。

インドネシアとマレーシアにはジェマー・イスラミア(Jemaah Islamiyah)、フィリピンにはアブ・サヤフ(Abu Sayyaf)といったアルカイダとのつながりの深い組織やその残党が存在しており、これらとISとの連動がSNSやネットを通じたプロパガンダビデオの配布で確認されている。

(注)パンチャシラ:Pancasila。インドネシア建国5原則で、唯一神への信仰、公正で文化的な人道主義、インドネシアの統一、合議制と代議制による英知に導かれた民主主義、国民に対する社会的公正、から成っている。

(2015年11月)

表現の自由とインターネット・サイト・ブロッキング

インドネシアでは、インターネット上のコンテンツをめぐり、表現の自由の確保や産業振興の手段として過度な規制を避けるべきか、社会の秩序を維持するために厳しく規制すべきかという議論が盛んになっている。

これまでも様々なメディアが規制について同種の経験をしてきているが、議論の発端となったのは、5月に政府が国内のISPにAssociated Pressの提供するすべての動画サイトをブロックするよう指示したことである。Associated Pressの提供するサイトのひとつVimeoに掲載された動画が、インドネシアの反ポルノ法に抵触していることが指示の根拠となっている。一方で、該当のビデオを掲載したURLのみをブロックするのではなく、サイトすべてをブロックしたことについて、行き過ぎではないかという意見が国内外から出た。政府は、それに対してAssociated Pressの提供するサイトには約1万5,000件の違法情報が掲載されていると反論した。

その後、世界的な発信力のある動画サイトへのアクセス禁止について、インドネシアのクリエイター達や言論の自由を求める人々の抗議が続いた。11月に入り、新政権下で任命された通信情報相Rudiantara氏が、インドネシア法を尊重するという条件付きでVimeoに対するアクセス禁止を解く方向で事態の収拾を図ろうとしている。

イスラム教徒が大多数を占めるインドネシアでは、ポルノやギャンブルに関する情報がメディアを通じて流布することを禁止しており、また、多様な民族から構成される国家であるために、宗教や人種に関する意見や情報の流通に関しても厳しく目配りをしている。

厳しい規制をかけている一方で、コンテンツ規制の判断基準が明確に示されていないことが、議論を呼んでいる。望ましくないコンテンツを掲載するインターネット・サイトを規制するための情報通信大臣令(Ministerial Decree No. 19/2014)では、約75万のサイトをアクセス禁止とした。

Vimeo上で問題になったコンテンツについても、ポルノか芸術かといった議論もあり、もともと線引きが難しい問題であるうえ、規制強化か規制緩和かの議論は今後も継続してゆく。

(2014年11月改定)