フランス
スマートフォン
2011年に入ってスマートフォンとモバイル・インターネット利用が急増
仏通信事業者協会(FFT)等によれば、2011年9月末で仏国内の移動端末所有に占めるスマートフォンの割合は1年前の10%台から40%に増加、2011年末には50%を超えると予測されている。
仏国内のスマートフォン端末は、導入当初iPhoneが圧倒的な人気を得ていたが、2011年に入ってAndroid系が優位に立ち、30%以上のシェアを得ている。 Bada、Window Phone7等のユーザも順調に増加、対応コンテンツも増えている。
2011年後半に入り、各事業者は特に35歳以下のスマートフォンユーザに向けた低価格の対応契約の開発に注力している。 例えばフランス・テレコムの移動体通信部門で、国内市場シェア第1位のオレンジの「Sosh」では、端末購入に際して契約期間の設定による割引はないが、 月額料金は最低契約期間24か月の同等のサービス契約に対し、20ユーロ近く割安となっている。 標準的なサービスでは、通話5時間+1GBまでのデータ利用(テザリング可)+250件までのSMS/MMS送信+オレンジのWi-Fiホットスポット接続無制限がセットになっている。
スマートフォン普及に伴ってモバイル・インターネット利用者も前年比34%の増加を見せ、1,830万となった。 利用者のうち、約1/3に当たる600万が毎日何らかのサイトにアクセスしており、その数は1年前の2倍である。 契約の多くが「インターネット接続無制限」を標榜していること(注)も普及を後押ししたと考えられている。
モバイルサイトのビジター数比較では、グーグル検索が第1位、次いでFacebookで、Twitterは6位、通信事業者やローカルサービスのポータルも上位を占めている。 アプリケーション利用については、やはりグーグルが第1位を占めており、次いでYouTube、iTunes、Facebookとなっている。
(注)実際には多くの契約がデータ利用量の上限を設定、例えば月のデータ利用が1GBを超えた時点で接続速度が低下する等の措置がとられている。
クラウド・コンピューティング
大手事業者は企業向けのクラウド・データセンターサービスに注力
仏国内では、2009-2010年に固定通信の大手事業者が相次いでクラウド・サービスを開始、2010年末までに1,000を超える企業が関連サービスを利用している。
フランス・テレコムの企業サービス部門であるオレンジ・ビジネス・サービスは、2009年末から提供ソリューションの中核をクラウドに置き、 国内で1万数千のサーバを運用したデータセンター・サービスを実施している。同社は2006年から自社サーバを仮想化、3年間でサーバ維持費用を 1,700万ユーロ削減したという経験を踏まえ、企業のITコスト削減手段としてのデータセンター利用を推奨している。
主なサービスには、プライベート・クラウド構築支援「Infrastructure as a Service」、Web接続や電子メール送受信に対してセキュリティ・ツールを提供する 「Security as a Service」、時間・場所や端末を問わず、共通ポータルからの音声・データ通信やコラボレーションツールへのアクセスを可能にする「Business Together as a Service」等がある。
また、2011年6月には航空通信事業者SITAとの提携により、世界規模でのデータセンター構築計画を発表した。2012年9月までにアトランタ(米)、 フランクフルト(独)、シンガポール、香港、ヨハネスブルグ(南ア)及びシドニー(豪)のデータセンターから、IaaS、PaaS、SaaSを提供するという。
ブロードバンド市場シェアでフランス・テレコムに次ぐSFRは、2010年7月から企業向けに「オンデマンド型」のデータセンター・サービスを実施している。2011年2月には、国内で初めて個人向けのデータ保護サービスを開始した。 これは同社のインターネット接続サービス加入者が、Windows PC上で用いるデータのストレージ及びファイル修復サービスを受けられるというもので、SFRの回線を通じて呼び出せるデータ量に制限がないのが特徴である。
メディア融合
トリプルプレイの浸透により世界一のIPTV普及率
2010年末現在、フランスのIPTV視聴世帯は640万、普及率は20.6%である。これは世界全体の3%、欧州の5.8%に比べて格段に高く、2004年のサービス開始以来、世界第1位の地位を維持している。
フランスのIPTVの普及率の高さの背景に、通信事業者のインターネット接続サービスの主流が、2000年代後半からIP電話、テレビ番組配信と組み合わせたトリプルプレイになったことが挙げられる。 国内で固定通信事業を行っている4社はすべてトリプルプレイを実施しており、標準的なパッケージは、「最大通信速度20Mbps台のADSL接続+通話時間無制限のIP電話+100チャンネル以上のTV番組配信」 で、月額料金は30ユーロ台である。2010年からは、これに携帯電話接続サービスを加えたクワッドプレイも開始されている。
IPTVのチャンネル構成は事業者や契約により異なるが、地上デジタルの無料放送はどの契約でも視聴できる。 有料放送は、国内唯一の大手であるCanal+の提供する映画やスポーツのパッケージが主であるが、フランス・テレコムのインターネット部門オレンジは、同社の加入者向けに独自のパッケージを提供している。
携帯電話端末へのテレビ番組配信については、携帯電話網を通じてのサービスが実施され、地上デジタル放送の無料チャンネルを中心に、20チャンネル以上の視聴が可能な契約が存在する。 放送電波の携帯端末での受信によるモバイルテレビについては、2008年に16のテレビ局に免許が付与された。 しかしながら、通信事業者と放送事業者の間で、サービスコスト負担に関する了解が成立せず、2011年9月現在、サービスは開始されていない。
FTTH網構築
事業者はようやくFTTxネットワーク投資を本格化
フランスでは2006年から政府が「超高速ブロードバンド網整備」をデジタル経済活性化計画の中心に掲げ、旧国営事業者の管路開放や、建物内の複数事業者の回線共有等、様々な政策的対応をとってきたにもかかわらず、FTTxサービスの普及は進んでいない。
政府は2008年に2011年までに400万世帯を光ファイバに接続するという目標を掲げていたが、2011年9月現在、サービス地域は大都市圏のみで、加入者数はまだブロードバンド加入者全体の2%程度である。 光ファイバ回線が設置可能な建物数は135万に過ぎない。
FTTx普及の遅れについては、既存のADSL網でのサービスで、IP電話やIPTVが支障なく利用できるため、消費者の高速化要求が低い、ネットワーク敷設にかかる費用の回収期間が長い(30年以上)ため、事業者が投資に消極的である、等の理由があげられてきた。
しかし2011年に入って、政府の「超高速ブロードバンド計画」の枠組みでの助成環境が整い、事業者のプロジェクトへの貸付のための基金が設定されると、各事業者はようやく大都市以外の地域でのネットワーク構築計画を始動させたように見える。2011年2月、フランス・テレコムは2015年までに20億ユーロを投じて1,000万世帯をカバー、さらに2020年には全国の1,500万世帯にサービスを提供する計画を発表した。同社の2011年の光ファイバ網構築への出費は約1億5,000万ユーロであったが、2012年にはこれを3億~3億5,000万ユーロまで増加させるという。
フランス・テレコムはまた、人口密度が比較的低い地域では、複数事業者の共同基盤構築によるカバレッジ拡大が望ましいという政府の指針に従い、2011年7月に固定通信市場第3位の事業者フリー、11月には同第2位の事業者SFRと協約を結んでいる。この協約に基づいて構築されるネットワークは、合計で1,600万世帯をカバーする予定である。
大手事業者の合併・買収・国外進出
フランス・テレコムは欧州事業を整理、中東・アフリカへの進出を進める
旧国営総合通信事業者フランス・テレコム(FT)は、1990年代後半から、移動体通信事業を中心に国外市場での買収活動を積極的に進めている。 2011年末には、子会社・関連会社数は約30、その大半が同社の携帯・インターネットのブランド名「オレンジ(Orange)」を冠して事業を行っている。 進出地域は、スペイン、ポーランド、ルーマニア等の南欧・東欧圏のほかは、中東・アフリカの旧植民地系の国々が多い。
| 地域 | 国名 |
|---|---|
| 欧州 | スペイン、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、アルメニア、モルドバ、ルクセンブルク、ベルギー、英国* |
| 中近東 | ヨルダン、バーレーン |
| アフリカ | エジプト、ボツワナ、カメルーン、象牙海岸、赤道ギニア、セネガル、マダガスカル、マリ、ギニア・ビサウ、ギニア共和国、 中央アフリカ共和国、ケニア、ニジェール、ウガンダ、チュニジア、モロッコ、モーリシャス、コンゴ民主共和国 |
| 中南米 | ドミニカ共和国 |
| オセアニア | バヌアツ、ニューカレドニア |
FTは2010年7月、2011-2015年の事業計画「Conquest2015」を発表、国外市場への積極的進出を目標の1つに掲げている。 この計画では、特に移動体部門で、途上国市場への積極的進出を図り、新興国での加入者を2倍にするとしている。 世界全体の加入者については、約1.5倍の3億人を目指している。
2011年からは、アフリカ市場への更なる進出を目指して、コンゴ民主共和国のコンゴ・チャイナ・テレコムを買収した。 また、エジプト子会社MobiNil(持株比率70%)の株式全取得を目指して現地の他の株主との交渉が続いている。 一方欧州では、規模の小さな子会社を売却してポートフォリオの整理と投資資金の獲得を図っている。 2012年2月にはオレンジ・オーストリア(持株比率35%)を香港通信大手のHutchisonに売却することが決定、 同3月にはオレンジ・スイスの全株式(持株比率100%)を投資会社Apaxに売却した。
2011年末の業績発表で最も売上高の伸びた地域は、政変のあったエジプトとコートジボワールを除くアフリカで、 前年比6.8%を記録した。一方、欧州諸国は携帯市場の競争の進展に伴うサービス価格の引下げを反映してやや下降気味である。 加入者数については、全世界・サービスの加入者数が前年比8.0%増の2億2,630万になった。 携帯電話加入者(全世界)は前年比前年比11.3%増の1億6,740万、特に伸長が大きいのは中東・アフリカ地域で、前年比26.4%増の7,460万に達した。
モバイルトレンド
3事業者がLTEサービス開始予定を発表
フランスでは2011年の9月と12月にLTEサービス事業免許の公募が実施され、4事業者に免許が付与された。 うち3事業者がサービス開始予定を2012年3月に発表している。
フランス・テレコムの移動体通信部門オレンジと仏市場シェア第3位の移動体通信事業者ブイグ・テレコムが3月22日に発表した計画では、試験サービスの開始は2012年6月、一般向けのサービス開始は2013年とされている。 試験サービス地域はオレンジがマルセイユ、ブイグ・テレコムはリヨンである。
市場シェア第2位のSFRも、上記の両社に次いで3月29日に、2013年からリヨンと南仏モンペリエで一般向けサービスを開始すると発表した。 SFRはまた、3G加入の増加とLTEサービス開始に伴うモバイル・トラフィックの増大に備えて、2012年半ばから同社の3GネットワークとWi-Fiスポットの自動接続サービスを開始するという。
なお、上記3社とともに2011年9月に2.6GHzでのLTE免許を取得したフリー・モバイルは、2012年3月現在ではサービス開始予定を発表していない。
国家ブロードバンド計画
「国家超高速ブロードバンド計画」はディバイド解消を志向
仏Fillon首相は2010年6月14日、国内世帯の100%を2025年までに光ファイバ網に接続するという目標を掲げた「国家超高速ブロードバンド計画」を発表した。 この計画では、特にディバイド解消が重視され、助成金の使途として、(1)人口密度は高くないが「収益性は確保」できる地域への通信事業者による投資を活性化、(2)地方自治体の地域インフラ構築プロジェクトの支援、が挙げられた。 この計画は、国債収入を基に先端産業育成を支援する「未来への投資」計画の一環であり、2017年までの予算として約20億ユーロが設定されている。
(1)については、通信事業者は自治体単位でインフラ構築プロジェクト(自治体との共同でもよい)を示し、当該の地域の5年以内の世帯カバー率を100%まで引き上げることを条件に国の基金から投資額の50%までの貸付を受けることができる。 (2)については、地方自治体主導で行われるプロジェクトに対して、国が費用の33%までを負担する。なお、地理的事情等で光ファイバの敷設が難しい地域に対しては、衛星、モバイル・インターネット、ADSLの高速化等の代替手段での対応が要される。
2010年秋に7つの自治体のプロジェクトが選出され、各プロジェクトに対して50万ユーロまでの助成が実施されることになった。これと同時に、政府は通信事業者に対し、2015年までの光ファイバ網整備に対する投資計画の提出を求めた。 これに応じたフランス・テレコムは、2015年までに2億ユーロを投じて1,000万世帯をカバーするFTTH網を構築、さらに2020年までにこのネットワークを全国の世帯の約60%をカバーする1,500万世帯まで広げる計画を提示している。
2011年、政府は事業者と地方自治体からそれまでに提出された光ファイバ網構築計画を検討した結果、20億ユーロの予算の配分方法を以下のように決定すると発表した。
- (1) 事業者の投資計画への貸付:10億ユーロ
- (2) 地方自治体(事業者の投資計画から外れた地域)主導の光ファイバ網構築計画コストの(一部)負担:9億ユーロ
- (3) 国家宇宙研究センター(Centre Natinal d’etude Spatiales)が管理する衛星ブロードバンドに関するR&D活動への助成:4,000万~1億ユーロ
- EUの情報通信政策動向の整理――欧州デジタル・アジェンダを中心に (PDF:別ウィンドウで開きます)
ICT利活用
仏政府は先端産業育成の国家計画でICT利活用開発を支援
仏政府は、国債収入を財源に先端産業育成を支援するため、2010年に発足した「未来への投資」計画の一環として、ICT利活用推進につき、2017年までの予算として約25億ユーロを設定した。
計画実行に当たって中心的な役割を担う経済・財政・産業省は2011年3月、「未来への投資」のデジタル経済分野で、以下の8つを重点投資分野とし、 政府支援プロジェクトの財政管理に携わる預金供託金庫(CDC)への預託金から総額14億ユーロの政府投資基金を設置、民間資本の営利プロジェクトに関する貸付を実施すると発表した。
- クラウド・コンピューティング
- コンテンツのデジタル化
- 埋め込みソフトウェア開発
- eヘルス
- 通信網のセキュリティ確保
- インテリジェンス・システムを用いた輸送
- デジタル都市計画
- 電子教育
これに先立ち、上記8テーマにナノテクノロジーを加えた9分野で、2010年末から研究開発に関する助成対象プロジェクトの公募が行われている。 こちらについては、やはりCDCへの預託金から総額8億5,000万ユーロの助成金が設定されている。
「未来への投資」ではさらに、スマートグリッドに2億5,000万ユーロの予算が設定され、2011年7月には6つのパイロットプロジェクトへの助成(合計2,800万ユーロ)を開始した。 このほか、eヘルスに関しては、2011年6月に労働・雇用・医療省が国家戦略の概要を提示した。同省はeヘルスに関する技術の発展と普及を支援し、特に全国レベルでのプラットフォームの構築に注力するとして、以下のアクションを提示した。
- 医療機関間での情報共有システムに関する専門委員会の設立
- 個人の病歴や受診記録を記載し、複数の医療機関で利用できる電子カルテの普及
- 自治体の遠隔診断プロジェクトに対する助成、2011年に3,200万ユーロ
- 経済・財政・産業省のeヘルス関連システム開発プロジェクトへの支援
- EUの情報通信政策動向の整理――欧州デジタル・アジェンダを中心に (PDF:別ウィンドウで開きます)
支配的事業者規制
フランス・テレコムへの支配的事業者規制は続くものの、機能分離は当面なし
仏電子通信・郵便規制機関(ARCEP)はEUの市場支配的事業者規制の枠組みに従い、固定電話、ブロードバンド、携帯電話等7つの分野で2-3年ごとに市場シェアやネットワークの相互接続等の分析を実施している。 ここで「支配的事業者」に指定された事業者には、他の事業者のネットワーク接続希望に対し、非差別かつコストベースの料金で応じること等の義務が課される。2011年7月現在、旧国営の総合通信事業者フランス・ テレコムがほぼすべての分野で支配的事業者に指定されている。
2011年6月のブロードバンド・超高速ブロードバンド市場分析でも、フランス・テレコムが支配的事業者に指定され、今後3年間の義務が決定された。この決定により、フランス・テレコムにはADSL・ 光回線及び管路について非差別・コストベースの料金での接続義務を課せられることとなった。この決定は、「国民全体を2025年までにFTTHを中心とする超高速ブロードバンド回線に接続する」旨の 「国家超高速ブロードバンド計画」との関係で特に注目されている。ARCEPはこの決定において、特にルーラル地域でのFTTH(注)サービスの伸長を重視しており、今後18か月以内にこの地域でのフランス・ テレコムのインフラ開放が進まない場合、新たな非対称規制案を発表すると述べている。
なお、フランス・テレコムも英国BTのように、ホールセール部門とリテール部門の機能を分離すれば、回線接続料金の低廉化につながり、FTTHの伸長にも有効ではないかという意見に対し、同6月に、 ARCEPは「それは他の手段がもはやない場合に限る」と回答、当面は現行の規制で対応するとしている。
(注)Fiber to the Home。一般家庭への通信回線を光ファイバ化し、電話、インターネット接続、デジタルテレビ視聴等のサービスを提供する。 光ファイバケーブルの終端の場所によりFTTB(Fiber to the Building)、FTTCab(Fiber to the Cabinet)等の方式もあり、FTTxと総称される。
ネット中立性
通信基本法改正により、「ネット中立性」原則が示される
仏政府は2011年8月末、電気通信分野の基本法である「郵便・電子通信法典」の改正を発表した。 同法典は、1952年制定以来、EUの通信指令や市場の変化に応じて数度の改正を受けている。 今回の改正は、2009年にEU政府が発行した一連の通信指令を反映したもので、「ネット中立性」の原則が示されている。
同法典の「ネット中立性」の特徴は、「技術中立」である。通信事業者には、その用いるネットワークの性質にかかわらず、 最大多数のエンドユーザに情報・アプリケーション及び各種サービスへのアクセスを提供することが義務付けられている。 また、各事業者がサービスの質の維持のため、通信網の飽和を避ける必要から、トラフィック制御を行う可能性がある場合、その旨を契約条件に明記すべしとされている。
近年のモバイル・インターネット利用の急増により、フランスの移動体通信事業者の多くは、3Gサービスパッケージで、データ利用量に上限を設けている (月の利用量が1GBを超えると通信速度を低下させる等)。 仏政府によれば、これは行政機関の指導によるものではなく、政府は固定/移動ともにインターネットユーザのデータアクセスに制限を設ける意図はないという。 また、固定通信に関しては、ADSL等を介したインターネット接続サービス契約で、データ利用量に制限を設ける計画を発表した事業者は、2011年8月現在では存在していない。
放送・メディア政策
2011年11月末に予定どおりアナログ放送が終了
仏政府は11月29日、30日の午前0時に南部のラングドック・ルション県及び海外領土でアナログ放送が停止され、国内全域の地上テレビ放送が完全にデジタル化されると発表した。 地上放送のデジタル化は2009年9月に開始され、現在までに97.3%の地域で無料チャンネルが視聴可能になっている。 これは2006年にデジタル化計画が発足した時点で設定された目標値の95%を上回っている。 アナログ停波実現のために新たに設置された送信塔の数は約2,000とされている。
地上放送の電波が届かない地域では、ルクセンブルクの衛星事業者SES ASTRAが、無料で地上デジタルチャンネルを視聴できるプログラム「TNTSat」を提供している。 また、国内の通信事業者のIPTVプログラムでは、地上デジタルの無料放送がすべてプリセットで視聴できる。 政府は、当該地域での衛星アンテナ設置、あるいはIPTV接続について、一世帯につき最大250ユーロの補助金供与を実施している。
現在、地上デジタルの無料チャンネル数は全国放送で19、うち4チャンネルはHDTV放送も行っている。ローカル放送チャンネルは42で、各地方で少なくとも1チャンネルのローカル放送を視聴することができる。 有料チャンネル数は10で、内容は映画とスポーツが中心である。 政府はまた2011年10月、新たに6つの無料チャンネル(HDTV放送)の公募を開始した。 2012年5月には選定を完了し、2012年秋には放送が開始する予定である。
なお、放送事業者規制機関CSAによる市場レポートによれば、2011年6月末には、仏国内のほぼすべての世帯がテレビ受像機を所有しており、うち98%に当たる3,250万世帯が何らかのデジタルテレビサービスを利用している。 利用サービスの方式別割合は、地上デジタル:51.6%、衛星:18.8%、ADSL:22.7%、ケーブル:7%。地デジ対応受像機の所有世帯割合は62.6%であった。
周波数関連政策
ARCEP、オークションによる4G用周波数割当へ
フランスにおいて国家レベルの電波監理に関する業務は、全国周波数庁(Agence Nationale des Frequences:ANFR)が所管する。 ただし、周波数の割当に関しては、対象となる無線業務を所管する主管庁に周波数を分配し、当該主管庁が各業務に周波数を割り当てる。 通信分野では、電子通信・郵便規制機関(ARCEP)がこれを行っている。
通信基本法の「郵便・電子通信法典」では、ARCEPが、周波数資源の希少性等の理由から、免許件数に制限を加え、免許人の選定に比較審査や入札などを実施できる旨規定している(第L42-2条)。 「超高速モバイル」(Ultra fast mobile)推進を目的としたLTE方式の第4世代(4G)移動体通信向けの800MHz帯(4ブロック)と2.6GHz帯(14ブロック)の割当手続では、オークションを選定基準の一つに加える評価方式を採用している。
このうち2.6GHz帯に関しては、2011年9月に割当事業者が決定、同10月に4事業者に免許が付与された。 選定方法には、周波数ブロックごとに申請者が提示する支払金額とMVNOへのネットワーク開放の計画の有無を基準にする総合評価方式が採用され、 その結果、ブイグ(Bouygues)テレコム(15MHz)、オレンジ(20MHz)、フリー・モバイル(20MHz)、SFR(15MHz)が周波数の割当を受けることになった。 入札総額は9億3,600万ユーロであり、1ブロック当たり5,000万ユーロ(総額7億ユーロ)とした最低価格よりも総額で2億3,600万ユーロ上回った。 各事業者に割り当てられた周波数帯域は、図表3の通りである。 なお、これらの事業者は、ネットワーク拡張義務として免許取得後4年間で25%、8年間で60%、12年間で75%の人口カバー率を達成することとされている。
800MHz帯についても、2011年12月22日に割当事業者が決定、2012年1月17日に免許が付与された。 この帯域の選定基準には、ブロックごとの支払料金とMVNOへのネットワーク開放のほか、人口カバー率を基準としたネットワーク拡張計画(任意ベースで、 全ての県における人口カバー率を免許取得後15年間で95%とする)の有無が加えられていた。 また、割当事業者には、義務ベースで、全国での人口カバー率を免許取得後12年間で98%、15年間で99.6%を達成する義務と、人口過疎地域(人口18%、面積63%)の 「優先開発地区」において、免許取得後5年間で40%、10年間で90%を達成する義務が課されることとなっている。
800MHz帯で割当を受けた事業者は、ブイグ・テレコム(ブロックA)、SFR(ブロックB及びC)、及びオレンジ(ブロックD)である。 入札総額は約26億4,000万ユーロで、これも4ブロックの最低価格の合計18億ユーロを8億ユーロあまり上回っている。 なお、応札事業者は上記の既存3社にフリー・モバイルと同じ通信グループIliadに属するフリー・フレカンス(Free Frequence)を加えた4社であったが、金額上の競争から、フリー・フレカンスは割当を受けることが出来なかった。
その他
新たな国家デジタル経済計画「フランス・デジタル2012-2020」
仏経済・財政・産業省は2011年11月30日、新たな国家デジタル経済計画「フランス・デジタル2012-2020」を発表した。 これは2008年に発表され、全国民のブロードバンド接続等を目標とした「フランス・デジタル2012」の継続発展を目指し、5つの主目標の下で57の具体的目標が提示されている。
- デジタル化による仏経済の競争力強化: デジタル関連産業の中小企業育成、クラウド・コンピューティング発展支援、デジタル技術導入による企業一般のサービス改善等
- すべての国民のデジタル網へのアクセス: FTTH普及促進、LTEカバレッジ拡大、地上デジタル伝送方式の移行(DVB-TからDVB-T2へ)、本国と海外県・領土間のデジタル・ディバイド解消等
- デジタル・コンテンツの生産・提供の活発化: 音楽ファイルやビデオにおける不正コピーの流通の阻止、付加価値税の調整、文化財デジタル化、ビデオゲーム産業支援等
- デジタル・サービス、デジタル利用の多様化: すべての国民の適正価格でのデジタル・コンテンツへのアクセス、デジタル手段を通じた政治参加、グリーンICT推進、電子政府サービスの充実等
- デジタル経済のガバナンス刷新: 行政サービスのデジタル化に応じた政府組織の改変、国内外の諸機関との連携等
- 中小企業を含む100%の企業がデジタル・サービスを利用
- 超高速ブロードバンドへの接続人口を2020年には70%、2025年には100%
- モバイル超高速ブロードバンド・サービスに対し、2020年までに450MHz分の周波数を新たに割当て
- すべての地上デジタルチャンネルをHDTVにし、少なくとも1つの3Dチャンネルを創設
- 各種行政手続きのうち、利用頻度の高いものは2013年まで、それ以外も2020年までにはすべてデジタル化
-
2010年までに国民のすべてが月額35ユーロ以下の料金でブロードバンドに接続可能とするため、2009年前半に地域ごとの「ブロードバンド・ユニバーサル・アクセス」事業者の入札を実施する。
地域ごとの事業者選定は行われていないが、ADSLの人口カバレッジは100%に近づいている。ADSL経由のトリプルプレイ(ブロードバンド接続、IP電話、IPTVのセット契約)の月額料金は平均30ユーロ。
-
2012年までにFTTH加入世帯を400万に引き上げる。
2011年9月末でもFTTx加入世帯数は60万程度で、ブロードバンド加入全体の2%程度に留まった。
-
2008年10月末に、地上放送におけるアナログ停波計画を完成する。
2011年11月末、予定どおり全国でアナログ停波が実現した。
-
放送デジタル化による余剰周波数の割当手続きを2009年に開始する。
800MHz帯の空き周波数の一部をLTEサービスに割当てるための入札申請手続きが2011年6月に開始された。