EU

ソーシャル・サービス

欧州委員会、グーグルに過去最高となる27億2000万ドルの罰金

欧州委員会は6月27日、グーグルがEUの反トラスト規則に違反しているとして、同社に過去最高となる27億2000万ドルの罰金を科すことを発表した。

同委員会は、グーグルがオンライン・ショッピングの価格比較サービスの検索結果で自社サービスを競合する他のサービスよりも上位に表示することで、価格比較サービスの健全な競争を阻害したと説明している。また、同社が90日以内にこのような自社サービス優遇行為を止めなければ、親会社であるアルファベットの世界的な売上の1日平均分の5%に相当する罰金を追加するとしている。アルファベットの昨年度の売上は900億ドルで、これを基にすると1日当たりの追加罰金は約1230万ドルに達する。

これに対しグーグルは、これまでいかなる不正行為も行っていないと主張しており、今回の決定についても不服を申し立てる可能性があるとしている。

今回の罰金は欧州規制体による7年間にわたる調査の結果であり、欧州委員会が言い渡した過去最大の金額となる。

欧州規制体が抱えるグーグルに対する反トラスト案件は、今回の件とは別にもう2件調査が進められており、ひとつはAndroid OSの市場支配性、もうひとつは検索広告プラットフォームに関するものである。

(2017年7月)

欧州連合司法裁判所、オンラインのファイル共有プラットフォーム「パイレート・ベイ」による著作権侵害を認定

2017年6月14日、欧州連合司法裁判所(欧州司法裁:CJEU)は、著作権で保護された作品をオンラインで共有するプラットフォームを提供している「パイレート・ベイ」は著作権侵害に該当するという判断を示した。

著作権者の権利保護団体であるオランダのBreinが、同国のISPであるXS4AllやZiggoに対してパイレート・ベイへの接続の遮断を要求した事案について、オランダの最高裁判所が欧州司法裁に意見照会を求め、同裁判所はEUの著作権指令の観点からパイレート・ベイのプラットフォームは問題であると判断した。

その判断理由として欧州司法裁は、パイレート・ベイは著作物のダウンロードにつながるファイルのインデックスやカテゴライズを行うなど著作物の無断使用における「重要な役割」を担っている、XS4AllやZiggoの加入者の多くがパイレート・ベイを利用している証拠が確認された、パイレート・ベイの運営者は同サイトを通じて著作物を権利保有者の許可なく利用できるといった情報を提示している、パイレート・ベイのようなオンラインのファイル共有プラットフォームは広告による利益を獲得するために運営されている、といった点を挙げた。

(2017年7月)

欧州委員会、ソーシャルメディアのヘイトスピーチ対策強化を評価

欧州委員会と主要なソーシャルメディア・プラットフォームであるフェイスブック、ツイッター、YouTube、マイクロソフトは2016年5月31日に違法なオンライン・ヘイトスピーチに対抗するための行動規範を共同発表していたが、欧州委員会は6月1日、その一周年記念として各ソーシャルメディアのヘイトスピーチ対策に対する評価を発表した。

欧州委員会の評価報告によると、フェイスブック、ツイッター、YouTubeといったソーシャルメディアは、ヘイトスピーチ対策の強化を求めるEUからの呼びかけに応じ、自社プラットフォーム上に投稿されるヘイトスピーチの削除件数を増やしているほか、対応も迅速化している。

特にフェイスブックは、2016年12月に行動規範に盛り込まれた「苦情から24時間以内の対応」という目標に沿って、苦情の大半に対してこの時間枠内での対応を見せているとして、高く評価された。

具体的には、フェイスブックは苦情の58%に24時間以内で対応しており、昨年12月の50%から改善している。ツイッターも24時間以内に対応した苦情の割合が23.5%から39%に向上している。一方、YouTubeは60.8%から42.6%に低下している。

なお、いずれの事業者もヘイトスピーチ削除件数は大きく増加している。全体では苦情が報告されたケースの59.2%でコンテンツが削除されており、12月の28.2%から倍以上に増えた。

(2017年6月)

インターネット利用者の約6割がオンラインで商品やサービスを購入

欧州委員会で統計を担当する部局であるユーロスタット(Eurostat)は、2012年のインターネット利用者のオンライン・ショッピング利用状況に関する調査結果を公表した。

EU28か国で過去1年以内にオンラインで商品やサービスを購入したインターネット利用者は約60%に上った。国別では英国(82%)、デンマーク(79%)、スウェーデン(79%)、ドイツ(77%)、ルクセンブルク(73%)、フィンランド(72%)の割合が高く、他方、ルーマニア(11%)、ブルガリア(17%)、エストニア(29%)、イタリア(29%)の割合は低かった。

2012年の間に購入された商品・サービスの種別では、衣服、スポーツ用品、旅行商品の割合が32%で最も多かった(2008年調査では21%)。また、書籍、雑誌、eラーニング教材の購入割合が23%に達した(2008年調査では19%)。他方、食料品・生活雑貨の割合は低く9%にとどまった(2008年調査では6%)。

(2013年12月)

ブロードバンド

EUにおけるLTEの人口カバレッジ、25%にとどまる

欧州委員会の調査によると、EUにおけるLTE(4G)の人口カバレッジは25%にとどまり、ルーラル地域では事実上LTE接続が確保されていないことが明らかとなった。

LTE展開の遅れは次のような現状にも表れている。

  • キプロス、アイルランド、マルタの3か国ではまだLTEサービスが開始されていない。
  • LTE展開が進んでいる国はドイツ、エストニア、スウェーデンにとどまる。
  • 世界のLTE加入者に占める欧州の割合はわずか5%にとどまる。

LTEの進展が低調である理由として欧州委員会は、周波数割当てが各国レベルで実施され手続きや免許交付で遅滞が生じていることや、周波数オークション価格の高騰が事業者の財政を圧迫しネットワーク整備に支障をきたしていることなどをあげた。結果として世界の4G競争でEUは後れを取っていると欧州委員会は指摘している。

(2013年9月)

EU市民はインターネット利用に際して接続速度を重視

欧州委員会の最新調査によると、インターネット利用者の最大の関心は接続速度で、約半数(45%)の世帯ではより接続速度の速いブロードバンド・サービスを提供する事業者への変更を望んでいることが明らかとなった。欧州委員会は利用料金の差が縮まったことで接続速度が競争面で重要な位置を占めるようになったと指摘している。

本調査の主な要点は以下のとおりである。

接続速度への関心
  • 競争が料金の低下をもたらした。結果、接続速度への関心が高まった。
  • 接続速度が不十分であるためオンライン・コンテンツやアプリケーションの利用に支障をきたしたと約4割が回答。
サービスの品質
  • 回答者の約2割がオンライン・コンテンツへのアクセスで問題が発生したり、携帯電話アプリの利用をブロックされたりした経験があると答えた。
  • 音声通話の品質に高い関心が示されている。携帯電話の音声通話の品質に満足している利用者は38%にとどまった。
オープン・インターネットとネット中立性
  • 映像の遮断がネット中立性や著作権問題で最も懸念される。
  • 成人の約34%がVoIPサービスを利用している(2012年は27%)。
トレンド
  • 世帯の44%で少なくとも1件のモバイル・インターネット契約が行われている(2012年は30%)
  • 45%の世帯がテレビ、ブロードバンド、電話、モバイル・サービス等がセットになったバンドル・サービスを購入
  • バンドル・サービス契約を行っている世帯のうち4割はプロバイダの変更を検討している。
(2013年8月)

EUのブロードバンドサービス、広告表示速度を実現しているのは74%

2013年6月26日、欧州委員会は消費者が利用するブロードバンド速度に関する調査結果を公表した。調査を通じて、広告表示に相当する速度でブロードバンドを利用している消費者は74%にとどまることが明らかとなった。

調査結果の要点は次のとおりである。
  • 下り速度の広告表示で最も信頼がおけるのはケーブル:広告に掲載された下り速度を実現しているのはxDSLでは63.3%にとどまる。一方、ケーブルでは91.4%、FTTxでは84.4%が広告に表示された速度を満たしていた。
  • 下りピーク時の実測は欧州平均で19.47Mbps:FTTxが41.02Mbps、ケーブルが33.1Mbpsを計測したがxDSLは平均7.2Mbpsにとどまった。
  • 上り速度は広告表示と概ね一致:欧州平均の上り速度は6.2Mbpsで広告表示の約9割と合致していた。接続種類別ではFTTxが19.8Mbpsで最も早く、以下ケーブルが3.68Mbps、xDSLが0.69Mbpsと続いた。

調査結果について、欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は、消費者は本データをサービス選択に際しての参考にしてほしいとコメントを寄せた。

(2013年7月)

ブロードバンド・ICT基盤整備

欧州議会、欧州連合理事会、および欧州委員会、無料の公衆Wi-Fiホットスポット計画「WiFi4EU」について合意

2017年5月29日、欧州議会、欧州連合理事会、欧州委員会の3者は、EU全域の広場、公園、病院などの公共空間における無料のWi-Fiホットスポットの設置を支援するイニシアティブ「WiFi4EU」について、政治的合意に達したことを発表した。

このたびの政治的合意には、EU加盟国の6,000~8,000の地方自治体の公衆無線Wi-Fiサービスに、総額1億2,000万ユーロの補助金を割り当てる施策も含まれている。同施策の資金については、EUの2014~2020年にかかる予算枠組み(Multiannual Financial Framework)のレビューに関する審議で決定される見込みであり、支援制度の確立後は、各国の地方自治体は簡易な手続きによって補助金申請が可能となる。

デジタル単一市場担当のアンドルス・アンシプ副委員長は、イニシアティブに対する合意をデジタル単一市場実現への重要な一歩として評価すると同時に、欧州規模での周波数協調や高速通信網への投資促進など、現在抱えている課題に取り組んでいく意向を示した。

(2017年6月)

欧州委員会、デジタル化の進展を示す指標を公表

2016年2月25日、欧州委員会は加盟国のコネクティビティ、デジタルスキル、公共サービスの進捗を示す指標である「デジタル経済と社会指標(DESI)」の2016年版を公表した。

全体の傾向としては、デジタル化は着実に進展している。コネクティビティは、世帯における高速ブロードバンドの接続率が前年比9%の71%となり、モバイル・ブロードバンドの加入率も前年比11%増の64%に達した。デジタルスキルの面では、STEM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Math:数学)を専攻する学生の増加が認められた。そして、公共サービスについては、各種サービスのオンラインを通じた提供が進んだ。

国家レベルでは全体として指数のスコアは伸びているが進展速度は鈍化傾向にある。国別ではデンマーク、オランダ、スウェーデン、フィンランドがランキングの上位に位置し、オランダ、エストニア、ドイツ、マルタ、オーストリア、ポルトガルは指数が大きく伸びた。一方で、ルーマニアは継続して最下位に位置している。

結果を受けて、欧州委員会はデジタルの機会から十分に利益を得るために、EUと加盟国双方のレベルでアクションを実行していく必要があるという見解を示した。

(2016年3月)

「Horizon 2020」におけるICT分野の2016年-2017年研究開発

EUにおける研究開発計画は「Horizon 2020」(2014~2020年)において策定されており、情報通信(ICT)分野の研究開発も同計画に含まれている。同計画では、2年ごとに実行内容が策定されており、ICT分野では、2016年~2017年の実行計画「Horizon 2020 Work Programme 2016-2017  ICT」が2015年10月に決定された。

ICT分野では、9テーマ、39項目が研究開発の対象とされており、次世代情報システム、次世代コンピューティング、フューチャー・インターネット、コンテンツ技術・情報管理、ロボット工学の技術開発のほか、開発技術情報の発信・普及、政府による率先的調達、人材育成、新技術の社会的有益性の確保、新興国との技術協力等に係る制度整備などもプロジェクトに含まれている(下表参照)。予算は、2016年が4億6,350万ユーロ、2017年が6億450万ユーロ。

「Horizon 2020」におけるICT分野の研究開発(2016年-2017年)
テーマ 対象事項
(1)新世代要素技術・システム
  • スマート・サイバー/フィジカルシステム
  • 薄型・有機・大規模エレクトロニクス
  • スマート・システムインテグレーション(SSI)
  • スマートエニシング・エブリウェア・イニシアティブ
(2)高度コンピューティング、クラウドコンピューティング
  • カスタマイズ・低エネルギーコンピューティング
  • クラウドコンピューティング
(3)フューチャー・インターネット
(Future Internet)
  • 5G:官民パートナーシップ(Public-Private Partnership:PPP)によるクリティカル技術・システムの研究・実証
  • 5G:PPPによる融合技術
  • 5G以降のネットワーク研究
  • ソフトウェア技術
  • 持続可能性・社会イノベーションに関する認知のための共同プラットフォーム
  • ネット・イノベーション・イニシアティブ
  • フューチャー・インターネット実験(欧州試験インフラの構築)
(4)コンテンツ
  • ビッグデータ:PPPによる部門間・言語間データ統合・実験
  • ビッグデータ:PPPによるデータ牽引型(data-driven)イノベーションの最大受益部門における大規模パイロットアクション
  • ビッグデータ:PPPによるデータ経済の主要技術課題への研究
  • ビッグデータ:PPPによる支援、産業スキル、ベンチマーク、評価
  • ビッグデータ:PPPによるプライバシーを確保するビッグデータ技術
  • メディア及びコンテンツ融合
  • クリエイティブ産業におけるスマートデジタルコンテンツ用ツール
  • クリエイティブ産業への技術移転の支援
  • 学習・スキル習得技術
  • アクセサビリティに関するインターフェイス
  • ゲーム及びゲーミフィケーション
(5)ロボット工学、自律システム
  • 高度ロボット能力研究と導入(take-up)
  • システム能力、開発、パイロット設備
  • システム能力、SME適合技術・ベンチマーク、安全性認証
  • ロボット工学の競争、協調、支援
(6)ICT分野の革新技術
(Key Enabling Technologies:KET)
  • フォトニクス:2016年 KET開発
  • フォトニクス:2017年 KET開発
  • ミクロ/ナノエレクトロニクス技術
(7)イノベーション促進、起業支援
  • Raderプロジェクト:成長・イノベーションに関する欧州規模の事業立ち上げ(start up)への支援
  • イノベーション調達のためのネットワーク作り
  • 政府による率先調達(Pre-Commercial Procurement)
(8)責任と創造性
  • 責任あるICT関連研究・イノベーション
  • アーティスト、クリエイティブ業界従事者、技術者間のシナジー効果の推進
(9)国際協力活動
  • 中国:フューチャー・インターネットに関するコラボレーション
  • メキシコ:ICTにおけるコラボ
  • 低所得・中所得国における国際パートナーシップの構築

なお、上記9テーマ以外に、日本、ブラジル、韓国との技術パートナー構築が本計画の柱の一つとして挙げられている。日本とは、以下の3分野での技術標準化、技術システムの相互運用性の確保を目指すとしている。

  • 5G:3GPPにおける標準化での協力、SDN/NFV(Software Defined Networking/Network Functions Virtualization)技術の標準化協力
  • IoT/クラウド/ビッグデータにおけプラットフォーム(クラウドデータ管理のスケラビリティ、地域間クラウド、分散ストレージ、センサーネットワーク等)
  • 情報指向ネットワーク(Information-Centric Networking):今後の大量データや新アプリケーションに対応する次世代インターネットのテストベッド
(2016年2月)

欧州委員会、ブロードバンド調査の結果を公表

2015年10月22日、欧州委員会は、EUおよびアイスランドとノルウェーを対象に実施したブロードバンドの実態に関する三つの調査の結果を公表した。

まず、ブロードバンド速度に関する調査では、下り速度の実測は公称値の75%にとどまっていることが明らかとなった。また、継起的な投資が行われているにも関わらず、実測の上昇が鈍化しており、2014年の下り速度の実測平均は38Mbpsで、2013年の30Mbpsから8Mbpsの上昇にとどまった。

次いで、小売価格の調査では、ブロードバンド利用料金の低下が確認された。EU28か国のブロードバンド利用料金は、2012年から2015年の間に12%低下した。特に30~100Mbpsのカテゴリで料金が大きく低下した。ただし、地域によって利用料金に差があり、同程度のサービス利用で料金に3倍以上の差があるケースが確認された。なお、他国と比較すると、12Mbps超のブロードバンドサービスは米国より割安であったが、30Mbps超のブロードバンドサービスではEUは韓国や日本よりも割高であった。

最後にカバレッジについて、固定もしくはモバイルによるブロードバンドの接続世帯数は、2014年末の結果では、全体の99.4%にあたる2億1,600万世帯に達した。LTEを基盤とする高速4Gの普及率は、2013年の59.1%から2014年は79.4%に上昇した。また、NGA技術(次世代アクセス:30Mbps以上の通信速度)の世帯普及率は、2013年の61.9%から2014年は68.1%に上昇した。

(2015年11月)

欧州委員会、デジタル・アジェンダの2014年における達成状況を発表

2014年5月28日、欧州委員会はデジタル・アジェンダの2014年における達成状況を発表した。2015年までの完了を目標としている101のアクションのうち95が完了に向けて順調に進んでいる。EU市民と事業者によるオンラインにおける活動は増加し、オンライン・ショッピングも増加した。そしてEU市民はICTに関する自信とスキルを持つようになった。しかし、特に地方ではデジタル利用欲求を満たし得る高速ブロードバンド環境の欠如も認められる。さらにデジタルスキルをめぐるギャップは依然大きな問題として残されている。

欧州委員会はデジタル・アジェンダの目標に関して十分な進捗が認められる分野として以下の項目を挙げている。

  • 定期的なインターネット利用の増加
    インターネットを週に1回以上利用する人の割合は2010年の60%から72%に増加した。改善が見られた国としてギリシャ、ルーマニア、アイルランド、チェコ、クロアチアがあげられる。
  • 社会的に不利な立場にあるグループのインターネット利用が改善
    失業者、低学歴者、高齢者のインターネット利用は4年前の41%から57%に増加した。欧州委員会では2015年までに利用率60%の実現を目標としている。
  • インターネットの非利用者が20%に
    インターネットの非利用者は4年前比で3分の1減の20%となった。現状のペースでインターネット非利用者が減少した場合、デジタル・アジェンダの目標である2015年までに非利用者15%という目標の達成が見込まれる。
  • オンライン・ショッピング利用者の割合が増加
    オンライン・ショッピングの利用者は47%に増加した。2015年までに利用率50%という目標は達成が見込まれる。
  • ブロードバンド・カバレッジ
    ブロードバンド・カバレッジは100%を達成した。接続手段の選択肢もファイバ、ケーブル、ADSL、3G・4Gのモバイルなど多岐にわたる。ただし衛星ブロードバンドへのアクセスは限られている。

一方、改善に向けた努力が必要な分野として以下の項目をあげている。

  • 小規模事業者は機会を逸している
    雇用者が250名未満の事業者で商品やサービスをオンラインで販売しているのは14%にとどまる。2015年までの目標である33%の達成に近づいている国は1か国もない。
  • ルーラル地域は危機的な状態にある
    ルーラル地域で高速ブロードバンドに接続している世帯は18%にとどまる。
  • 電子政府サービスの停滞
    電子政府サービスを利用する人の割合は42%で、現在の増加率のままでは2015年の目標である50%に到達できない。
(2014年6月)

電気通信の単一市場構築に向けた改革パッケージが欧州議会で承認

欧州議会は2014年4月3日、2013年9月に欧州委員会によって提案された電気通信の単一市場構築に向けた法案を盛り込んだパッケージを賛成多数で承認した。

パッケージの承認に伴う改革の目玉の一つはネット中立性の保護である。EUの電気通信規制機関の代表者によって構成されるBERECの調査によると、現在、いくつかのインターネット接続事業者が「スカイプ」などのサービスに対して接続や速度の制限などを実施しているが、そうしたインターネット接続を妨げる措置は法律により禁止される。また、欧州委員会の提案では接続制限や速度制限の実施に関して「例外」を設けていたが、欧州議会は「例外」について、裁判所の命令、ネットワーク・セキュリティの保護、一時的なネットワーク混雑への対応に限定すべきという意見を提示した。そして制限措置の実施に際しては透明性、非差別性、適切性の確保が欠かせないと付け加えた。

改革のもう一つの目玉は、EU域内の携帯電話利用に課されるローミング料金の撤廃である。現在、モバイル端末を通じた通話、テキストメッセージ、インターネット接続を居住国以外で行う際には追加料金が課されているが、これが同パッケージの規定により2015年12月15日以降撤廃されることとなる。

(2014年5月)

欧州委員会、電気通信の単一市場の構築に向けた改革パッケージを採択

2013年9月11日、欧州委員会は電気通信の単一市場構築に向けた改革法案を盛り込んだパッケージ「欧州大陸の接続:電気通信の単一市場の構築」を採択した。

パッケージに含まれる主なプランは次のとおりである。

  • EU域内のローミング料金の撤廃
    2014年7月1日より国外滞在中にかかる着信接続料金は撤廃される。事業者にはEU全域で適用される料金プランの設定が期待される。消費者は居住国で契約している事業者以外に、安い料金でサービスを提供するローミング事業者を選択できるようになる。
  • 電気通信事業者に適用される規則の簡略化
    EU加盟28か国の電気通信事業の権限を一元的に取り扱う仕組みをつくる。また、他の事業者からネットワークを借用する際のハーモナイゼーションを進め、サービス競争の推進を図る。
  • 法律によるオープン・インターネット(ネット中立性)の保護
    事業者によるインターネットのコンテンツに対するブロックや帯域制限を禁止し、利用者の開かれたインターネットへのアクセスを保障する。事業者は「特別サービス」(IPTVやビデオ・オン・デマンド等)の提供に際して、特別サービスを利用しない消費者のインターネットの速度に影響を与えてはならない。
  • 欧州域内の国際通話の割増料金の撤廃
    居住国から海外への通話に対して事業者は固定・携帯の両方で割増料金を設定しているが、今後は固定通話については国内の長距離通話を超える料金を課してはならない。また携帯電話の通話については1分あたり0.19ユーロを上限とする。

このほかにも電気通信サービスの契約における消費者の権利強化、周波数割当てにおける協調、投資促進などの計画がパッケージに盛り込まれている。

欧州委員会のバローゾ委員長は改革パッケージについて、電気通信分野における欧州単一市場の本格的な進展は欧州の戦略的な利益や経済発展において非常に重要であるとコメントを寄せた。

(2013年10月)

欧州委員会、ブロードバンド敷設コストの削減案を提示

2013年3月26日、欧州委員会は高速ブロードバンド敷設コストの3割削減を目標とする新たな規則案を提示した。ブロードバンドの整備ではファイバ敷設に際しての道路掘削といった土木工事関連の費用が80%を占めているが、欧州委員会は規則の適用を通じて、土木関連費用の削減等を含む総額400~600億ユーロの節約効果を見込んでいる。

高速ブロードバンドの普及は電気通信およびデジタル単一市場実現の要であるが、規則や行政手続きの断片化により進捗に滞りが見られる。欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は「現行の(ブロードバンド関連)規則は欧州の競争推進を妨げている」「すべての市民が高速ブロードバンドを享受する権利を持つ。欧州委員会は高速で料金の安いブロードバンドの普及を進めていく」という見解を示した。

欧州委員会は高速ブロードバンドの普及・推進に向けて取り組むべき課題として次の四つをあげている。

  • 高速ブロードバンドの構築に向けた新たな体制を確立する。
  • 公平で合理的な条件でのインフラへのアクセスを開放する。対象には料金、ダクト、導管、マンホール、キャビネット、鉄塔、マスト、アンテナ設備、基地局などが含まれる。
  • ネットワーク事業者はインフラ事業者と交渉を行うことで、土木工事における連携を改善していく。
  • マストやアンテナの設置申請など、複雑で時間のかかる許認可の手続きを簡素化する。

なお、欧州委員会から提示された案が欧州議会および欧州連合理事会により採択された場合には、EU全域で規則が直接適用されることになる。

(2013年4月)

欧州委員会、モバイル5Gの研究開発に5,000万ユーロを割り当て

2013年2月26日、欧州委員会のクルース副委員長は、モバイル5G技術の研究開発に対して、2020年までに5,000万ユーロを割り当てると発表した。狙いは世界のモバイル産業で欧州が主導権を握ることにある。クルース副委員長は、研究開発の推進により欧州は5Gのパイオニアになると期待感を示した。

METIS、5GNOW、iJOIN、TROPIC、Mobile Cloud Networking、COMBO、MOTO、PHYLAWSといったEUの研究開発プロジェクトが最先端4Gおよび5Gに必要な設計や機能の研究開発を手がける。

これらのプロジェクトにはBT、ドイツ・テレコム、フランス・テレコム(オレンジ)、テレコム・イタリア、テレフォニカ、ポルトガル・テレコムといった大手通信事業者、ならびにアルカテル・ルーセント、エリクソン、ノキア、ノキア・シーメンス・ネットワークス、タレス・コミュニケーションズといった世界的な製造業者が参加する。この他、欧州で最大級のソフトウエア会社のSAPや世界的に有名な自動車メーカーのBMWもプロジェクトに参加する。

(2013年3月)

欧州委員会クルース副委員長、高速ブロードバンド投資促進に関する政策声明を発表

2012年7月12日、欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は高速ブロードバンド投資促進に関する政策声明を発表した。クルース副委員長は声明の中で、eヘルス、クラウド、コネクテッドTVなど新たなアプリケーションやサービスの登場は、欧州を新たなデジタル社会へと移行させ、市民や事業に多くの恩恵を与え、経済を活性化させるが、銅線のADSLブロードバンド網では新たなアイデアの実現は難しいと指摘した。そのうえで新たな高速インフラへの投資が必要であると述べた。

欧州では約10年前に電気通信市場の競争導入に成功した。結果、消費者や事業者に利益がもたらされた。だが、次世代高速網への移行には費用がかかるほか、既存のネットワークとの共存といった課題もある。加えて民間投資にはリスクも伴う。こうした問題に対応するために公共部門による支援が必要とされる。欧州委員会では、2011年10月に二つのコンサルテーションを立ち上げ、電気通信ネットワークへの卸売り接続の規制や、高速ブロードバンドの目標達成に向けた助成などについて意見を募集してきた。欧州委員会は寄せられた意見を検討したうえで、投資促進に関して以下のような重点政策を提示した。

  • 既存電気通信事業者から競争事業者に対する非差別的卸売りの必要性
  • 過剰な介入の制限と柔軟性の維持
  • 規制による直接的・間接的な影響への配慮
  • 技術中立性と需要にあった技術の組み合わせ
  • 卸売り料金の水準が事業者の投資インセンティブに与える影響への配慮
  • 規制の安定性と一貫性
  • 銅回線の価格が投資に与える影響

これらの重点政策と関連して、欧州委員会は2020年頃までに、(1)非差別的提供、(2)ネットワーク接続の卸売り料金を規制する費用算出方法、(3)新規参入を活性化するための支配的事業者への規制に関するガイドラインの設置を計画している。また、次世代網整備における国家や自治体への公的支援、次世代網整備費用の低廉化、周波数政策プログラム、欧州単一のデジタルコンテンツ市場の形成といった施策についても欧州委員会は推進していく。

(2012年8月)

高速ブロードバンドの普及に向けたEUの取り組み

EUでは現在、欧州経済戦略「Europe2020」の枠組みのもとで、ICT推進政策「欧州デジタル・アジェンダ」を実行している。 同アジェンダでは「超高速インターネットを基盤として、ヨーロッパ全体の『デジタル単一市場』を創設し、これにより持続可能な経済的、 社会的便益を得ることが可能になること」を全体目標として掲げている。 この目標を達成するために高速・超高速ブロードバンドの普及は必須であり、(1)2013年までに全市民のブロードバンド利用を実現、 (2)2020年までに全市民が最大通信速度30Mbps超のブロードバンドに接続、(3)同年までに50%以上の市民が最大通信速度100Mbps超のブロードバンドに接続、 という具体的な数値目標を掲げて、高速・超高速ブロードバンドの普及にかかわる政策を実施している。

2010年9月、欧州委員会はEUの高速・超高速ブロードバンドの普及を促進するため、(1)次世代網のアクセスに共通の規制アプローチを設定する勧告、 (2)無線周波数政策プログラムの確立を欧州議会と欧州理事会に働きかける提案、(3)ブロードバンドの普及目標の達成に向けた政府や民間による投資促進に関する指針(コミュニケーション)という三つの補完的政策を採択した。

また、欧州委員会では高速・超高速ブロードバンドの普及を図るために公的資金の投入を行っている。2011年1月には、EUの国家補助ガイドラインに基づき、ブロードバンドの普及に関連する公的基金の補助申請20件の承認を発表した。 補助金の総額は18億ユーロ超にのぼり、カタルーニャ、フィンランド、バイエルンなどの地域におけるブロードバンドの普及に充てられた。 そして、2011年10月には、高速ブロードバンド網の敷設、およびブロードバンド利用サービスにかかわるプロジェクトに対して、2014年から2020年の間で約92億ユーロの投資を行う提案が欧州委員会から発表された。 投資は株式、債券、助成の形式で行われ、民間投資の補完、ならびに地域、地方、国家、EUレベルの公的基金の補助を狙いとしている。 なお、92億ユーロの投資のうち70億ユーロは高速ブロードバンドのインフラ整備への利用を想定している。

モバイル

EU域内における国際ローミング料金の撤廃、市民の約7割が認識

2017年9月26日、欧州委員会はEU域内のローミングに関する意識調査「Flash Eurobarometer survey」の結果を公表した。調査は、EU域内における国際ローミング料金が2017年6月15日に撤廃されてから初となる夏季休暇期間を経た8月末に実施され、報告書ではEU市民が新規則による恩恵を実感し、国外旅行でのモバイル端末利用習慣にも変化が起きつつあることが指摘されている。調査結果の概要は以下のとおりである。

  • ローミング料金の撤廃については71%の市民が認識しており、ローミング料金の撤廃が自分や周囲の人々にとって利益になると回答した人の割合は72%に達した。また、6月15日以降に国外へ旅行した人は86%が新たな規則を認識していた。
  • 国外旅行で自国同様の頻度でデータ通信を利用した人の割合は、ローミング料金が撤廃される数か月前は15%であったのに対し、2017年6月15日以降は31%と倍増した。
  • 国外でモバイルデータ通信を一度も利用したことがないと回答した人の割合は、規則の施行前は42%であったのに対し、施行後は21%に半減した。
  • 国外でモバイル通信を控えると回答した割合は全体的に減少し、国外では携帯端末の電源を切ると回答した人の割合は規則施行前20%から施行後は12%へ減少した。
  • ただし6月15日以降も、居住国での携帯端末利用と比べて国外では利用を控えたと回答した旅行者の割合は60%に達した。
(2017年10月)

欧州委員会、ローミング撤廃にかかわるフェアユースの実行規則を公表

2016年12月15日、欧州委員会は、2017年6月15日のローミング撤廃にかかわる「フェアユース(公平利用)規則」を盛り込んだ実行規則を公表した。実行規則はEUの官報に近く掲載され、官報掲載から20日後に発効する。

実行規則は、消費者権利の明確化や通信事業者の経営環境を維持する内容が盛り込まれている。まず、「安定したリンク(stable link)」という概念が提起され、国境周辺労働者、国外派遣労働者、学生、退職者など本国以外の国に一定期間滞在する者に対してはローミング利用制限の適用が免除される。

次いで、過剰なローミング利用が疑われる利用者への事業者への「観察期間」は最短4か月に設定し、過剰なローミング利用の認定、ないし、追加料金の請求などの措置を実行する際には14日前に事業者は利用者に対して通知しなければならない。

この他、ローミング料金の撤廃による収益の減少を事業者が国内の通信料金を値上げすることでまかなうのを防ぐために、欧州委員会はいくつかの料金プランをファクトシートの中で提示している。

(2017年1月)

欧州委員会、モバイル・ブロードバンド料金の調査結果を公表

2016年10月20日、欧州委員会はモバイル・ブロードバンド料金の調査結果を公表した。調査はEU28か国およびEU域外の数か国(ノルウェー、アイスランド、トルコ、日本、韓国、米国)の85事業者を対象に実施され、2012年のOECDによる方法論に基づいて、2016年2月現在提供されているモバイル・ブロードバンド・サービスの料金比較を行った。

主な調査結果は、次のとおりである。
  • 2015年同様に、EUにおける料金水準はかなり分散している。特にデータ容量については差がある。
  • 利用端末(携帯端末、ラップトップ、タブレット)の違いで料金は異なっているが、大きな差は認められない。
  • ラップトップやタブレット向けのサービス料金は同水準である。
  • 先進的なスマートフォンを通じたモバイル・ブロードバンド利用では国ごとに料金の差は大きい。
  • EU28か国の平均でみると料金水準は2015年からわずかに下落している。
  • モバイル・ブロードバンド料金とモバイル・ブロードバンド普及率には相関があり、モバイル・ブロードバンド料金が低い場合、普及率は高くなる。
  • EU28か国のパフォーマンスは対象としたEU域外の国と比較して良好である。
(2016年11月)

欧州委員会、ローミング料金のフェアユース制度をめぐる方針で苦慮

2016年9月5日、欧州委員会は2017年6月に実施を予定している域内ローミング料金の撤廃に対応する実施法令案を提出した。欧州委員会はローミング料金の撤廃に伴う諸問題について検討を重ねており、特にローミングサービスの乱用を防止するためのフェアユース(公正利用)制度の導入を大きな課題と位置づけてきた。

欧州委員会はこれまで実施してきたパブリック・コンサルテーションの結果などを参考としながら、ローミングサービスの利用について、年間90日間までは自国における利用と同額料金が適用され、仮に年間90日を超えた場合には、卸売ローミング料金の上限(通話は1分0.04ユーロ、SMSは1件0.01ユーロ、データ通信は1MBあたり0.0085ユーロ)を超えない範囲での料金の上乗せが移動体通信事業者に認められるという案を提示した。

しかし、9月21日、欧州委員会でデジタル単一市場部門を担当するアンシプ副委員長は先の提案を撤回し、ローミングサービスの乱用や料金の上乗せに関する対応は各事業者に任せるという案を示した。

ローミングサービスの乱用に関しては、加入者のローミング利用が居住国のトラフィックを超えているか、長期間アクティブではなかったSIMカードがローミングに使用されているか、ローミング用途で複数のSIMを契約しているか、といった観点から事業者が判断するという案が示された。また超過料金については、以前の提案と同様に卸売ローミング料金の上限を超えない範囲とし、事業者は過剰利用が認められた加入者に対してその旨を通知したうえで、加入者が過剰利用を認めた場合に超過料金が適用されるという案も示された。なお、加入者は事業者が課す超過料金に対して不服を申し立てることが可能で、最終的には国内の規制機関に判断をあおぐことができる。

(2016年10月)

欧州の大手通信事業者やベンダー、5Gマニフェストを公表

2016年7月7日、欧州の大手通信事業者やベンダーは将来の5G技術・サービスの利用に関する提案を盛り込んだマニフェストを公表した。マニフェストに名前を連ねた各社は、5Gの推進にはサービスに関連する規制の緩和や十分な国家支援が必要であると指摘し、EUに対して適切な施策をとるよう求めた。

マニフェストでは5Gのトライアルに関するタイムテーブルが提示されており、2017年には多国間のコンソーシアムによる技術的トライアルの実施が予定されている。そして、2018年には利用者向けの大規模トライアルの実施、2020年までにEU加盟国のいずれかの都市で商用サービスを開始するという計画が示されている。

事業者は一連の計画を実行するには周波数関連でEUのサポートが必要であるとして、700MHz帯、3.4-3.8GHz帯、高周波数帯(24GHz超)についてEUで統一的な周波数免許を交付するよう求めた。加えて5Gの大規模な実験には多額の資金が必要であるとしてEUに財政上の支援を求めた。また、5Gの技術やアプリケーション開発に携わるスタートアップの支援策としてベンチャー基金の創設を提案した。

規制の観点では、先ごろ発効したEUのネット中立性の規則に関して5Gへの投資を妨げる恐れがあると警告している。事業者側は5Gの活性化には様々な産業を対象とした特別サービスの提供が重要であると指摘し、現在、BEREC(欧州電子通信規制者団体)が策定にあたっているガイドラインについて、事業者が5G投資のリスク回避に走らないような内容となることを求めた。

欧州委員会でデジタル経済を担当するエッティンガー委員は事業者が提示したマニフェストを歓迎し、現在、欧州委員会が実施中のコンサルテーションでも検討材料に加え、2016年秋頃の公表を予定している「5Gアクションプラン」に反映させていくとコメントした。

(2016年8月)

欧州委員会、卸売ローミング料金の規制に関する提案を採択

2016年6月15日、欧州委員会は2017年6月15日を予定しているEU域内の小売ローミング料金の撤廃に向けて卸売のローミング料金を規制する提案を採択した。

欧州委員会は卸売市場に関する様々な分析をふまえて、卸売のローミング料金の上限を通話が1分あたり最大0.04ユーロ、SMSが最大0.01ユーロ、データ通信が1MBあたり最大0.0085ユーロに設定した。

欧州委員会でデジタル経済・社会分野を担当するエッティンガー委員は、「ローミング料金の撤廃は消費者と市場関係者の双方が不利益をこうむらないように適切に実行されるべきである。このたびの提案により卸売市場の適切性が確保される。今後は、欧州議会と欧州連合理事会での採択に向けて作業を進めていく」とコメントした。

小売ローミング料金の廃止に向けた取り組みとしては、このたび採択された卸売ローミング料金の規制に加えて、消費者によるローミングサービスの乱用を防止するフェアユースポリシーや、これまで事業者が得ていたローミング料金の減損を補い、事業を存続させるメカニズムの構築といった検討課題が残されている。これらの課題について欧州委員会は2016年末までに関連する規則を提案する予定である。

(2016年7月)

新たなローミング規則が発効

2016年4月30日、EU域内において新たなローミング規則が発効した。

ローミング規則については2017年6月中旬を予定しているローミング料金の撤廃を控えた最後の料金引き下げとなり、ローミング料金は通話が1分あたり0.19ユーロから国内料金+最大0.05ユーロ、SMSの送信が0.06ユーロから国内料金+最大0.02ユーロ、データ通信が1MBあたり0.2ユーロから国内料金+最大0.05ユーロにそれぞれ引き下げられた。

欧州委員会のアンシプ副委員長は、ローミング料金の引き下げや撤廃は単に消費者の負担減少だけでなく、デジタル単一市場の実現に欠かせないものであるとコメントを寄せた。

(2016年5月)

欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会、ローミング料金の撤廃とネット中立性原則の法制化で合意

2015年6月30日、デジタル単一市場の実現に向けて欧州委員会が2013年9月に提案した法案に盛り込まれていたローミング料金の撤廃とネット中立性(オープン・インターネット)原則の法制化に関して、欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会の3者が合意に達した。

2017年6月にローミング料金を撤廃
欧州委員会は長年にわたりEU域内のローミング料金の引き下げに取り組んできた。2015年現在、2007年比で通話とSMSのローミング料金は80%低下し、データローミング料金も91%低下したが、2017年6月15日付でローミング料金を一律に撤廃する。EU域内のモバイル通信にかかる料金は、どの国で通信をしても居住国と同額となり、追加料金が課されることはない。なお、国際ローミング料金の撤廃には、一連の技術的要件を満たす必要があり、欧州委員会は2017年6月の実施に向けて全力で取り組む意向を示している。

ネット中立性原則の法制化
ネットの中立性(オープン・インターネット)原則をEUの法律として施行する。ユーザのコンテンツへの自由なアクセスは保証され、事業者による不当な遮断や減速は禁止される。また、料金による優先順位付けも禁止される。オープン・インターネットの下ではすべての通信トラフィックが公益に反すると判断されない限り平等に扱われる。同時に、オープンなインターネットの性質を損なわない限りにおいて、インターネットサービスプロバイダなどが高品質な特別サービスを提供することも認められる。世界で最も強固で包括的なオープン・インターネット規則を設けることにより、単一市場の断片化を防ぎ、法的な確実性により国境を越えたビジネスの促進が期待される。

今後、法案は欧州議会と欧州連合理事会による正式な承認を経て、各加盟国の公用語に翻訳された後にEU官報に掲載され、正式に法律として発効する予定である。

(2015年8月)

EU域内の国際モバイルデータローミング料金の上限額が7月1日から50%以上の引き下げ

欧州委員会は2014年7月1日から、域内における国際ローミング料金の上限額を引き下げると発表した。モバイルデータローミング料金は昨年同期よりも55.5%引き下げられ、ダウンロードは1メガバイト当たり45ユーロセントから20ユーロセントとなる。データローミング料金の引き下げにより、居住国以外でのモバイル端末を通じた地図の利用、動画の視聴、メールのチェック、ソーシャルネットワーク更新などの活性化が期待される。

音声通話やテキストメッセージの国際ローミング料金も引き下げられる予定で、音声通話の発信料金は2013年同期比で21%減の19ユーロセント、着信料金は同28.5%減の5ユーロセント、テキストメッセージ送信料金は同25%減の6ユーロセントとなる。

また、2014年7月1日から欧州の移動体通信のプロバイダ各社は国際ローミングに関して独自サービス提供が可能となり、消費者は旅行先では居住国とは異なるローカルプロバイダのサービスを利用できるようになる。欧州委員会は新たなサービスの提供による選択肢の拡大、そして競争の促進を期待している。

なおEUは最終的に、2015年末までに国際ローミング料金の全撤廃を計画している。

(2014年7月)

携帯ローミング料金の引下げ案を欧州連合理事会と欧州議会が承認、2012年7月1日に新規則が発効

EUでは高額な携帯ローミング料金が欧州委員会ならびに携帯電話利用者によって問題視されてきた。 この問題を受け、欧州委員会は2007年から域内の携帯ローミング料金に上限を設定する規制を施行し(2009年改正)、段階的に料金の引下げを実施してきた。 ただし、欧州委員会や携帯電話利用者は依然として料金が高額であると不満を抱いている。 また、現行の規制は2012年6月末が有効期限であることから早急に新たな規制を設ける必要性が指摘されてきた。

2012年3月28日、欧州連合理事会と欧州議会は、携帯ローミング料金のさらなる引下げを行う規制案の採択に向けて合意した。 規制案は、欧州域内移動時のモバイル通信サービスの利用に際して、ユーザーに過剰な料金負担が発生しないことを目的としている。 規制案は、2012年5月に開催された欧州議会本会議で、賛成578、反対10(欠席10)の賛成多数で可決・承認された。 また、議会承認後に開催された欧州連合理事会においても採択された。新しい規則は2012年6月30日に官報に掲載され、翌7月1日に発効、料金は毎年段階的に引下げられる。 有効期限は2022年6月30日までとなる。

新規則では、競争の導入と消費者の選択肢の増加を進める構造的措置を導入することで携帯ローミング料金の高額化を抑制していく。 2014年7月1日以降、利用者は海外において、自国で契約している事業者とは別のローミング・サービスを選択することが可能になる。 併せて、いわゆる「ビル・ショック」(想定外の料金高額請求)を防ぐため、域外に滞在する加入者に対し、データ受信料が50ユーロ、あるいは本人が申し出た上限以上に達した場合にはテキスト・メッセージやメール等で警告を発する措置も実施されることになる。

公衆モバイル通信網への卸売によるアクセスについても条件設定を行う。 加えて、競争事業者がローミング・サービス市場に参入できるよう、卸売料金の上限と小売料金の間に妥当なマージンを設定する。 そのほか、料金の透明性向上や料金に関する情報提供の改善についても規定が設けられる。

規制の効果については、欧州委員会がレビューを行い、2016年6月30日までに欧州議会ならびに欧州連合理事会に対して報告書を提出する予定である。

携帯ローミング料金 小売上限価格(付加価値税別)
現行 2012年7月1日
以降
2013年7月1日
以降
2014年7月1日
以降
データ(1MBあたり) 設定なし 0.7ユーロ 0.45ユーロ 0.2ユーロ
通話料金(1分あたり) 0.35ユーロ 0.29ユーロ 0.24ユーロ 0.19ユーロ
着信料金(1分あたり) 0.11ユーロ 0.08ユーロ 0.07ユーロ 0.05ユーロ
SMS(1通あたり) 0.11ユーロ 0.09ユーロ 0.08ユーロ 0.06ユーロ
携帯ローミング料金 卸売上限価格(付加価値税別)
現行 2012年7月1日
以降
2013年7月1日
以降
2014年7月1日
以降
データ(1MBあたり) 0.5ユーロ 0.25ユーロ 0.15ユーロ 0.05ユーロ
通話料金(1分あたり) 0.18ユーロ 0.14ユーロ 0.1ユーロ 0.05ユーロ
SMS(1通あたり) 0.04ユーロ 0.03ユーロ 0.02ユーロ 0.02ユーロ
出所:欧州議会プレスリリース(2012年3月28日)
(2012年6月)

クラウド、ビッグデータ、電子政府

欧州委員会、デジタル単一市場戦略の中間レビューを公表

2017年5月10日、欧州委員会は2015年5月に公表したデジタル単一市場戦略の中間レビューを公表した。デジタル単一市場戦略のイニシアティブは欧州議会や欧州連合理事会との政治的合意に基づき着実に実行され、電気通信規則の修正、投資促進、ネットワークの高速化などの面で成果を上げている一方で、さらなる取り組みが必要な分野もあると欧州委員会は指摘し、具体的に、データエコノミー、サイバーセキュリティ、オンライン・プラットフォームの3分野について方針を示した。

まず、データエコノミーについては、非個人的なデータの国境を越えた自由な流通を促進する法的イニシアティブ(2017年秋頃)や、公的データのアクセシビリティや再利用に関するイニシアティブ(2018年春頃)に着手する計画を欧州委員会は示した。また、データの扱いをめぐる責任や諸問題に関しても適宜取り組んでいく姿勢を示した。

次いで、サイバーセキュリティに関しては、EUレベルでの新たなサイバーセキュリティ枠組みの構築を視野に入れながら、現行のサイバーセキュリティ戦略、ならびにENISA(欧州ネットワーク・情報セキュリティ機関)の権限に関するレビューを行う方針を欧州委員会は示した。また、サイバーセキュリティの標準、認証、認定(ラベリング)の策定にも随時取り組んでいく意向を示した。

最後に、オンライン・プラットフォームについては、2017年末までに、オンライン・プラットフォームのビジネスに見られる不公平な契約条項や通商慣行を解消するイニシアティブを立ち上げる計画を示した。また、オンライン・プラットフォームに関連する主体との各種のダイアローグを通じて、権利保護の強化や不法コンテンツの撲滅に取り組む姿勢を示した。

(2017年6月)

欧州委員会、EUのデータ・エコノミー分野に関する政策および法的解決策を提案

2017年1月10日、欧州委員会は、デジタル単一市場戦略の一環として、EUのデータ・エコノミーの発展を目的とした政策および法的解決策に関するコミュニケーションを公表した。

欧州委員会は、法的および技術的な障壁によってEU域内における自由なデータ流通が制限されており、データ産業の有する潜在力は十分に発揮されていないと認識している。こうした認識に基づき、EU域内の中小企業やスタートアップ企業がIoT事業などの新たなビジネス機会で成功するためにも国境を越えるデータに対する不当な制限や、法的な不確実性を解消する汎欧州的なアプローチが必要であると欧州委員会は指摘している。

コミュニケーションでは、利害関係者間での国境を越えたプロジェクトへの関与が提示され、コネクテッドカーや自動運転のプロジェクトを通じてデータのアクセスや責任に関する規制の実行に向けた含意の獲得を狙いとして掲げている。法的な不確実性の問題については、データアクセスと転送、データを基盤とする製品やサービスにかかわる責任、データ・ポータビリティといった項目が争点として挙げられている。

EUの2015年のデータ産業市場は年間成長率5.6%、2,720億ユーロ規模と推計されており、2020年には740万人の雇用創出が予測される。さらにEUのデータ市場を制約するような各国のデータ・ローカライゼーションを取り除くことで、年間最大80億ユーロの付加価値額が創出されると試算している。

このたびの各種提案とあわせて、欧州委員会はEU加盟国および利害関係者とデータ・エコノミー分野の諸課題について話し合うパブリック・コンサルテーションを立ち上げた。意見募集期間は2017年4月26日までとなっている。

(2017年2月)

欧州委員会、欧州クラウド・イニシアティブを発表

欧州委員会は2016年4月19日、ビッグデータによる利益を確保していくためにクラウドを基盤としたサービスや世界トップレベルのデータインフラの推進を図る行動計画「欧州クラウド・イニシアティブ」を発表した。

イニシアティブでは、既存の研究インフラを統合することで170万人の研究者および7,000万人の専門家が分野や国境を越えたデータの共有や再利用が可能となる仮想環境「欧州オープン・サイエンス・クラウド」の創設が計画されている。また、欧州オープン・サイエンス・クラウドを支えるインフラとして、高帯域幅のネットワーク、大容量のストレージ設備、高性能コンピュータにより構成される「欧州データインフラストラクチャ」の構築も計画されている。

欧州クラウド・イニシアティブは今後次のような展開が予定されている。
  • 2016年:既存の科学クラウドや研究開発インフラを統合・強化し「欧州オープン・サイエンス・クラウド」を構築する。
  • 2017年:EU研究開発促進プログラム「ホライゾン2020」の支援を受けたプロジェクトにより科学的データへのオープンアクセスを実現する。
  • 2018年:次世代スーパーコンピュータの基礎となる量子テクノロジーの初期開発を促すイニシアティブを開始する。
  • 2020年:大規模な高性能コンピューティング、データ保存、ネットワーク・インフラを開発し展開する。

欧州クラウド・イニシアティブの実現に必要な投資額は67億ユーロと見積もられている。内訳は「ホライゾン2020」による助成金が20億ユーロ、官民セクターからの投資額が47億ユーロとなっている。

(2016年5月)

欧州委員会、デジタル単一市場戦略を公表

2015年5月6日、欧州委員会は欧州域内の電気通信市場統合に向けた具体的な計画を盛り込んだ「デジタル単一市場戦略」を公表した。欧州委員会はデジタル単一市場の創設により年間4,150億ユーロの経済効果と数十万の雇用創出がもたらされると試算している。

戦略の策定に当たった欧州委員会のアンシプ副委員長は「われわれの戦略は野心的で、対象領域に必要なイニシアティブが設定されている。デジタル化の未来において欧州が実りを得る準備は整った」とコメントしている。

デジタル単一市場戦略は、三つの柱とそれぞれに連なる16の重要アクションで構成されており、欧州委員会はすべてのアクションを2016年末までに完了させるという目標を示した。概要は次のとおりである。

1 消費者と企業によるデジタル製品やサービスへの国境を越えたアクセスを改善する

  • (1)国境を越えた電子商取引の簡便化する規則を設ける。
  • (2)消費者保護に関する規則を見直し、迅速かつ一貫した消費者保護の規則を施行する。
  • (3)より効率的で利便性の高い荷物の配送体制を確立する。
  • (4)商取引における不当な地域制限をなくす。
  • (5)欧州の電子商取引市場の競争にかかわる懸念材料を明確にする。
  • (6)現代的な著作権法を制定する。
  • (7)放送事業者によるオンライン配信や国境を越えたサービス提供の進展をふまえて衛星やケーブルテレビ関連の指令を見直す。
  • (8)付加価値税(VAT)制度の違いのような事業展開に際して障壁となる行政上の課題を減らす。

2 デジタル・ネットワークや革新的なサービスの繁栄につながる適切な条件や公平な競争領域を創出する

  • (9)現行のEUの電気通信関連規則を徹底的に見直す。
  • (10)視聴覚メディアのフレームワークを21世紀の時代に即すように再検討する。
  • (11)検索エンジン、ソーシャルメディア、アプリストアといったオンライン・プラットフォームの役割について包括的な分析を実施する。
  • (12)個人データの適切な運用のためデジタルサービスの信頼とセキュリティを強化する。
  • (13)サイバーセキュリティ分野で産業界とのパートナーシップを強化する。

3 デジタル経済の成長と潜在性を最大化する

  • (14)EUにおけるデータの自由な移動を推進するためのイニシアティブを提案する。
  • (15)eヘルス、交通計画、電力(スマートメーター)といった分野で標準化や相互運用のためのプライオリティを設定する。
  • (16)インターネットスキルの向上や新たな電子政府アクションの実行により市民のデジタル社会への参加をサポートする。
(2015年6月)

欧州委員会、電子政府サービスの利用状況をまとめた報告書を公表

2013年5月28日、欧州委員会はEU加盟27か国にクロアチア、アイスランド、ノルウェー、スイス、トルコの5か国を加えた合計32か国、2万8,000人の市民を対象に実施した電子政府サービスの利用状況に関する調査結果をまとめた報告書「電子政府ベンチマーク2012」を公表した。

報告書によると、現在、市民のおよそ半数(46%)が求職、図書館の利用、所得申告、出生届、パスポート申請などで電子政府サービスを利用しており、時間の節約(80%)、柔軟性(76%)、料金の節約(62%)といった面で電子政府サービスに高い評価を与えている。しかしオンライン・バンキングやオンライン・ショッピングと比較した場合、サービス利用者の満足度は高くないことも明らかとなった。

その他の調査結果は次のとおりである。

  • 利用がポピュラーなサービスとして、所得税の申告(73%)、住所変更(57%)、高等教育の入学手続きや奨学金の申請(56%)などがあげられる。
  • 調査対象の54%は依然として対面的な手続きを好んでいるが、そのうち30%はサービスが充実すれば電子政府サービスを利用する意向を述べた。
  • 電子政府サービス利用者の47%は希望するサービスがオンラインで十分に得られると回答した。

他方、欧州委員会は課題も挙げており、失業・求職、会社設立、教育などに関連するオンラインサービスの充実が必要であるという認識を示している。

欧州委員会と各国の公的機関は、2010年12月に発表された「電子政府アクションプラン」に基づき、インターネットを通じて提供されるパブリックサービスの拡大・改善に努めている。

(2013年6月)

欧州委員会、クラウド・コンピューティング戦略を発表

欧州委員会は、情報化戦略「欧州デジタル・アジェンダ」の七つの優先課題の一つ「研究・開発」の中で、広範なクラウド・コンピューティング戦略の必要性を指摘するなど、クラウド・コンピューティングの活性化を政策目標として設定している。

2012年9月27日、欧州委員会はクラウド戦略「EUにおけるクラウド・コンピューティングの潜在力の発揮」を公表した。戦略を通じて、経済分野におけるクラウド・コンピューティングの利用を推進し、250万の新たな雇用創出と、2020年までにGDP換算で年間1,600億ユーロ(約16兆円)の経済成長を図っていく。

本戦略では以下の取り組みが重要アクションとして提示されている。

  • 技術標準を整備し、相互運用、データ可搬性、可逆性を向上させる。2013年までに標準を作成する必要がある。
  • クラウド事業者の信頼証明に関するEU広域スキームを設ける。
  • SLA(サービス品質保証契約)も含め、「安全で公平」なクラウド・コンピューティング契約のモデルを発展させる。
  • クラウド市場を形成するために加盟各国と産業界は連携して公的セクターのバイイング・パワー(購買力)を活用する。

クラウド戦略の公表に際して、欧州委員会の担当委員がそれぞれコメントを寄せている。デジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は、「クラウド・コンピューティングはEU経済のゲーム・チェンジャー(ゲームの流れを劇的に変える者)である。アクションを怠ると数十億の経済的利益を逃してしまう。今後はEU全域に適用される単一規則が必要となる」と語った。また、司法・基本権・市民権担当するレディング副委員長は、「EUは大局的見地に立たねばならない。クラウド戦略はコンピュータ・ソリューションの信頼性を向上させ、競争的なデジタル単一市場を加速させる。こうした事態に対応するため、年初に提起した新たなデータ保護枠組みの採択を急ぐ必要がある」と述べた。

(2012年10月)

スマート社会

欧州議会、ロボティクスや人工知能に関する規則の提案を行うよう欧州委員会に要求

2017年2月16日、欧州議会の本会議において、ロボティックスや人工知能(AI)の倫理基準や自動運転車両による事故が発生した際の責任等の規則に関する決議が行われ、決議は賛成396、反対123、棄権が85で可決された。欧州議会は、ロボティックスやAIの経済的な潜在性から利益を獲得し、安全性やセキュリティを保証するためには汎欧州的な規則が必要であるとして、欧州委員会に規則の提案を行うよう要求した。

欧州議会は、規則の策定に際しては、特に自動運転車両の責任を明確化する必要があると強調し、自動運転車両による事故の被害者を補償するための強制的な保険制度や補償基金の設置を提案した。また、ロボットが被害をもたらした際の責任を明確化するために特別な法的地位の設置を検討するよう欧州委員会に要求した。その他、労働市場へのロボットの投入に伴う仕事の創出、置換、喪失、ロボットの研究開発やデザイナー向けの自主的な倫理行動規範の確立、ロボティックスやAIの技術、倫理、規制の専門家によって構成される専門的な欧州機関の設置も提案された。

決議のための報告を作成したマディ・デルボー氏は、本会議で決議が採択されたことを歓迎しつつ、右派連合が労働市場におけるネガティブな影響という観点から反対したことには失望したと、コメントした。

なお、欧州委員会は、欧州議会の提言に従う義務はないが、拒否する場合には説明が求められる。

(2017年4月)

欧州連合理事会、国境を越えた宅配サービスに対する規制機関の権限を強化する規則案に合意

2016年5月に欧州委員会が提出したEU域内における国境を越えた電子商取引の促進を目的とする法案のうち、国境を越えた宅配サービスに対する規制機関の権限を強化する規則案が2017年2月20日、欧州連合理事会において合意に至った。今回合意に至った法案は、国境を越えた取引における消費者保護を強化するために、各国間の協力体制のメカニズムを見直す内容となっている。

各国の規制機関の権限が強化され、自国以外のEU加盟国の利用者を「ジオブロッキング」しているウェブサイトのチェック、ホスティング詐欺を行うウェブサイトの即時閉鎖、ドメイン登録者や銀行に対する情報提供の要求などが可能となる。同時に、EU規模の広範囲にわたる消費者の権利侵害に対しては各国の法執行機関および欧州委員会が緊密な協力の下に行動することが要請されている。

今後は通常立法手続きへと移行し、欧州連合理事会と欧州議会の間で協議が行われる予定となっている。

(2017年3月)

欧州委員会、新ガイドラインでシェアリング・エコノミーへの過度な規制を牽制

欧州委員会は、6月2日、AirbnbやUberのようなシェアリング・エコノミー型サービスに対してより寛容な姿勢を示すように求めるガイドラインを発表した。このガイドラインの中で、シェアリング・エコノミーへの規制は公益に見合う形で行うべきであり、それらに対する制限や禁止は最終手段とすべきとの見解を示した。

具体的には、ホテルやタクシーなどの既存産業を保護するためにシェアリング・エコミーを全面的に禁止するのではなく、例えば、民泊の宿泊日数に制限を設けるなど、段階的に解禁するよう求めている。

このガイドラインは法的拘束力こそないが、欧州委員会はこれを今後EU加盟国が検討する国内法案がEU協定に適合しているかどうか判断する際の材料にするとしており、シェアリング・エコノミーへの過剰な規制を牽制している。

欧州の一部の自治体は、ホテルやタクシーなどの既存産業と競合するこのようなシェアリング・エコノミーに対して、禁止・制限措置を取るところもある。Uberはフランス、ドイツ、スペインでの同社に対する規制に苦情を提出しており、欧州委員会はこれについて調査を開始した。欧州委員会のヴィオレタ・ブルツ運輸担当委員は、一部の規制はEU法に抵触する可能性があり、委員会が対応に乗り出さねばならないかもしれないと語っている。

◇ベルリン裁判所、民泊禁止条例を支持
ベルリンの行政裁判所は6月8日、Airbnbなどの民泊を禁止した条例を支持する判決を下した。

ベルリン市内では、1万~1万4,000のアパートがAirbndやWimdu、9flatsなどの民泊サイトに登録。多くの家主が収益を求めて民泊ビジネスを始めたことで、住宅不足とそれに伴う家賃上昇が社会問題となっている。この状況を受けてベルリン市政府は2014年に民泊禁止条例を制定し、2年間の猶予期間を経て、2016年5月1日に施行開始した。これに民泊事業者のWimduが住居者の権利を侵害しているとして、市政府を提訴していた。

新条例は、民泊を全面的に禁止しているわけではなく、民泊スペースが50%以下の場合はこれまで通り民泊として部屋を貸し出すことが可能。一方、住宅をまるまる貸し出す場合には行政の許可が必要となるが、そのためには住宅そのものを民泊向けに改装し、住居として使用できないようにするなど、厳しい規定をクリアしなければならない。違反者には最大10万ユーロの罰金が科される。

一方、パリでは民泊として部屋を貸し出す場合、貸出期間の累計が120日未満であれば特別な行政手続きは必要ない。違反者した場合、最大2万5,000ユーロの罰金が科される。今年3月にはAirbnbはパリ市と協力して、違法民泊の撲滅に取り組むと発表。また、昨年10月にAirbnbはパリ市の観光税(1人1泊当たり83セント)徴収を代行するサービスを開始し、今年1月までの3ヶ月で約120万ユーロの税金回収に成功している。

(2016年6月)

欧州委員会、国境を越えたデジタル・コンテンツ利用と電子商取引の促進を目的とする法案を公表

2015年5月、欧州委員会は「デジタル単一市場戦略」を公表した。同戦略は、欧州域内の電気通信市場統合に向けた具体的な計画を盛り込んだものであり、三つの柱とそれぞれに連なる16のイニシアティブで構成されている。そのうち、国境を越えたデジタル・コンテンツのアクセス改善と電子商取引の促進を目的とする法案を、2015年12月9日に欧州委員会が公表した。

一つは、国境を越えたデジタル・コンテンツへのアクセス改善を目的とする法案(オンラインのコンテンツおよびサービスの国境を越えたポータビリティに関する規則)で、著作権の改正により、消費者は自らが購入した音楽、電子書籍、映像、ゲームサービスなどのデジタル・コンテンツを居住国以外のEU域内の国でも利用できるようになる。同案は「規則(Regulation)」であり、欧州議会および欧州連合理事会の承認により、国内法の改正を伴うことなく即座にEU法として発効する。欧州委員会は2017年の発効を見込んでいる。

もう一つは、国境を越えた電子商取引を促進するために契約ルールの簡素化を図るものであり、ストリーミング音楽のようなデジタル・コンテンツの販売に関する指令案と、商品のオンライン販売に関する指令案の2法案が公表された。いずれの法案も国境を越えた電子商取引の推進を狙いとしており、同案の発効により、EU域内の各国で別々の消費者契約に関する規則が適用されるといった事態は解消され、デジタル・コンテンツや商品のオンライン販売に際して同一の法律が適用される。欧州委員会は、法律の発効により事業コストの削減が図られ企業にも利益がもたらされると見込んでいる。

(2016年1月)

欧州委員会、IoTアライアンスを結成

2015年3月、欧州委員会は、EU地域におけるインターネット・オブ・シングス(Internet of Things:IoT)の経済的・技術的発展を促進するための官民パートナー・プロジェクトとしてAlliance for IoT Innovation(AIOTI)を正式に発足させた。

既に、欧州委員会は、2014年1月、EUにおける技術開発プログラムHorizon 2020(※)において、IoT(ICT30-Internet of Things and Platforms for Connected Smart Objects)に2015年度5,100万ユーロを割り当てることを決定するなど、IoT分野において、世界的にリーダシップを確立することを目指しており、AIOTIの発足により、産業面で多様な産業にわたる企業間相互のエコシステム形成を促し、官民一体でIoTの推進を強化することとなった。

また、幹事企業(Bosch、Philips、Sigfox)とAIOTI発足の調印を交わした欧州委員(デジタル経済・社会担当)のギュンター・エッティンガー(Günther H. Oettinger)氏は、IoTが経済成長の牽引力となり、雇用創出と社会問題の解決に貢献するとし、AIOTIが、官民で構成される欧州のIoTエコシテムにおけるアクター間のシナジー効果、プラットフォームと技術標準の共通化、欧州委員会への規制や政策の改善のための助言の提供を期待していると述べている。

AIOTIの実施事項は概ね次の通り。
  • 産業:多様な産業にわたる企業間相互のエコシステム形成を促し、新サービスの構を目指す。
  • 政策:欧州委員会が進める研究開発、標準化、規制に関する民間からの意見を聴取し、政策に反映させる。
  • 研究開発:Horizon 2020プロジェクトの窓口的役割を果たす。Horizon 2020の2016年-2017年プログラムでは、環境問題、スマートシティ、モバイルなどの領域を横断するIoTの大規模テストを実施する予定であり、民間企業の協力体制などの調整を行う。

参加企業のうち、ICT関係では、通信キャリア、ナノエレクトロニクス/セミコンダクター、サービスプロバイダ、プラットフォーム(IoT/Cloud)プロバイダ、セキュリティ等の関連企業がAIOTIに参加している。大手デジタル技術関連の参加企業は以下のとおり。

電子商取引(B to C)市場発展度国別ランキング(2014年末)
通信キャリア Orange、Telecom Italia、Telefonica、Vodafone
ベンダ、サービスプロバイダ等 Alcatel、Bosch、Cisco、Hildebrand、IBM、Intel、Landis+Gyr、Nokia、ON Semiconductor、OSRAM、Philips、Samsung 、Schneider Electric、Siemens、NXP Semiconductors、STMicroelectronics、Telit、Thales、Volvo、 Sigfox

今後、エネルギー、公共事業、自動車、モバイル、照明、建設、製造、ヘルスケア、公共団体等などの参加者の業種を拡大するとともに、欧州地域の中小企業の参加を促していく予定である。

(2015年5月)

EU市民はインターネット上の健康情報に強い関心

2014年11月に欧州委員会が公表したデジタルヘルス・リテラシー調査の結果によると、欧州市民は健康や健康的なライフスタイルに関するオンライン情報に強い関心があることが明らかになった。調査は2014年9月に実施され、EU加盟28か国の市民約2万6,000人から回答が寄せられた。主な結果は以下のとおりである。

  • 75%超がインターネットは健康情報を探す際の有力な情報源と回答した。
  • 欧州市民の6割が健康情報を探索する際にインターネットを利用した(なお15から39歳では約8割であったが、対照的に55歳以上では3分の1未満であった)。
  • インターネットを通じて健康情報を検索したことがある回答者のうち90%が、インターネットがヘルスケア関連の知識改善に役立ったと回答した。
  • インターネットで情報収集する際の関心トピックは栄養、身体活動、喫煙などである。

国別の調査結果も含めた回答は以下のとおりである。

  • 約9割がインターネットで検索した健康情報に満足しているものの、残りの1割は不満を覚えている。不満を覚えている者のうち、半数が信頼性に欠けると回答(信頼性に欠けるとの回答の割合が最も高かった国はルクセンブルクで75%、最も低かったのはエストニアで12%)、約48%が商業主義的と回答した(最も高い国はチェコで74%、最も低い国はキプロスで11%)。そして約46%が、情報が不十分であると回答した(最も高い国は73%のベルギーとポーランド、最も低い国はマルタ)。
  • 回答者の8割がインターネット上の情報は役に立ち(最も割合が高いのは英国で94%、最も割合が低いのはスロベニアの53%)、わかりやすい(英国94%、スロバキア44%)と回答した。
  • しかし、約4割の回答者は適切なソースからもたらされた情報とは思えないと回答した(英国で11%、スロバキアで82%)。
  • インターネットで検索した情報を友人や親戚と共有する割合は47%(最も比率が高い国はチェコの63%、最も低い国はエストニアの22%)で、医者の予約を取る際にインターネットを活用するは40%であった(最も高い国はギリシャで50%、最も低い国はフィンランドで23%)。

インターネットで健康情報を検索する市民の割合は国家間で差があり、オランダ(73%)やスウェーデン(70%)、デンマーク(70%)の割合が高かった一方で、ルーマニア(47%)、マルタ(49%)の割合が低かった。

(2015年2月)

欧州委員会、EU加盟国におけるeヘルス普及率についての調査結果を発表

欧州委員会は2014年3月24日、EU加盟国におけるeヘルス普及率についての調査結果を発表した。短期・救急診療にあたる病院および一般開業医院を対象とした調査の結果によると、一般開業医院における2013年のeヘルス利用率は6年間で5割増の60%となっており順調な伸びを示しているものの、多くの課題を抱えていることが明らかとなった。主な調査結果は以下の通りである。

  • 病院におけるeヘルス導入率上位3か国は、デンマーク(66%)、エストニア(63%)、スウェーデンおよびフィンランド(62%)の順となっている。
  • eヘルスサービスの用途は従来的な記録や報告書を目的としたものが多く、オンライン診察のような臨床目的のものは少ない(オンライン診察を実施している一般開業医院は10%にとどまる)。
  • 患者のカルテの電子化が進んでいる上位3か国は、オランダ(83.2%)、デンマーク(80.6%)、英国(80.5%)である。
  • 患者本人による自分のカルテへのオンラインアクセスを許可している病院はわずか9%で、しかも多くの場合、閲覧可能な内容が限定されている。
  • eヘルス導入障害の要因として、相互運用性の欠如、規制枠組の不在、および資金不足などが挙げられている。
(2014年5月)

欧州委員会、コネクティッド・カーの欧州標準策定を発表

2014年2月12日、欧州委員会はインターネット接続自動車「コネクティッド・カー」の欧州標準の策定を発表した。コネクティッド・カーの標準はETSI(欧州電気通信標準化機構)とCEN(欧州標準化委員会)が欧州委員会の求めに応じて策定したもので、本標準の採用により様々な業者間でコネクティッド・カーの製造に関して共有が図られるようになる。

欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は欧州標準の策定を高度交通システム実現の重要な一歩と位置付け、「乗り物とインフラ間のダイレクトな通信は、安全かつ効果的な交通の流れをもたらす。それはドライバーや歩行者、そしてわれわれを取り巻く環境や経済にも好影響を与えるだろう」とコメントを寄せた。

EUは高度交通システムの研究開発に重点を置いており、2002年以来関連する約40のプロジェクトに総額1億8,000万ユーロ以上を投資してきた。通信システムとの融合に伴う次世代自動車の発展により1,300万の雇用が関連産業にもたらされるとEUは試算している。

(2014年3月)

欧州委員会、学校のICT化状況に関する調査結果を公表

欧州委員会は、2013年4月19日、学校のICT化状況に関する調査結果を公表した。欧州の生徒と教師はいずれもデジタル化対応に熱心であり、コンピュータの数は2006年比で2倍、インターネットの常時接続も多くの学校で達成されている。しかし、ICT利活用とデジタル・スキルのレベルにばらつきも見られる。

今回の報告書は、2011年1月から2012年11月の間にEU加盟国を中心とした27か国の19万人に対して実施された調査に基づいて作成された。調査結果には、回答率が低かったドイツ、アイスランド、オランダ、英国は含まれていない。

調査結果の主な概要は以下のとおりである。

  • 9歳の生徒が通う学校のうち、最新機器、高速ブロードバンド(10Mbps以上)、高い接続度(ウェブサイト設置、生徒と教師への電子メールの割り当て、LAN、仮想的な学習環境)を備えた「高度デジタル化学校」は4分の1にとどまる。
  • 16歳の生徒のうち「高度デジタル化学校」に通うのは半数にとどまる。
  • 中学校に通う2割の生徒が学校の授業でコンピュータを一度も触れたことがない。
  • 学校がICT利用に関する特定の方針を定めている場合、ICTベースの学習活動の頻度は高くなる。
  • 国別で違いが見られる。スカンジナビアや北欧諸国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク)の設備は進展している一方、ポーランド、ルーマニア、イタリア、ギリシャ、ハンガリー、スロバキアは設備が不十分であった。
  • しかし設備が不十分なであっても、ブルガリア、スロバキア、キプロス、ハンガリーなどではコンピュータの利用は活発であった。

報告書の内容を受けて欧州委員会は次のような勧告を行っている。

  • 学校におけるICT教育はインフラへの投資だけでなく、教師のトレーニング、ICTを活用する教師への報奨、ICTコーディネーターの役職の創設などが必要である。
  • 欧州委員会はEUレベルでICT教育の格差解消を図るために関連プロジェクトや教育資源へのサポートを行い、ICT教育の進捗状況を定期的に監視していく。
(2013年5月)

欧州委員会「eヘルス行動計画」を発表

欧州委員会は、欧州の医療システムにおけるデジタル・ソリューションの十分な活用を妨げる諸問題に対応する「eヘルス行動計画」を作成し、2012年12月7日に発表した。欧州委員会は行動計画の主な目標として、患者の利益にかなうヘルスケアの改善、患者によるケアコントロールの増加、コストの削減を掲げている。

行動計画では次のような項目が改善点としてあげられている。

  • 法的に曖昧な領域を明確化する
  • システム間の相互運用性を改善する
  • 患者及び医療専門家の技能及び認識を高める
  • 個人の健康管理に関わるイニシアティブの実行を通じて患者中心の医療を行う
  • eヘルス分野の新興企業に無料で法的助言を行う

また、欧州委員会は2014年までに「mヘルス(モバイルヘルス)・グリーンペーパー」を発表する予定である。同ペーパーはモバイルヘルスの品質及び透明性問題への対応を主眼としている。

なお、今回発表された行動計画には、医療関係者が国境を越えて遠隔医療(テレメディスン:遠隔放射線、遠隔医療相談、遠隔モニタリングなどのサービス)を行う際に直面する法的問題を概観・明確化したスタッフ作業文書が添付されている。その主な内容は以下のとおりである。

  • 患者の居住する国の免許や登録が必要であるか
  • ヘルスデータの扱いをどうするか。経費はどうするのか
  • 法的アクションが伴うケースの責任制度について

今回公表された新たな行動計画は2009年に加盟国から提出された要求に対応するものであり、行動計画の策定に向けて欧州委員会は2011年にパブリック・コンサルテーションを実施した。

(2013年1月)

EU統計局、世帯におけるインターネット利用に関する調査を公表

2011年12月14日、EUの統計局であるEurostatは、EU27か国、およびアイスランド、ノルウェー、クロアチア、マケドニア、トルコの世帯におけるICT利用に関する調査の結果を公表した。 同調査によると、2006年3月末に49%であったEU27か国の世帯インターネット利用率は、2011年3月末には73%となった。 また、ブロードバンドの接続率は2006年の30%から68%(2011年3月末)に増加した。

2006年と比較するとインターネット利用とブロードバンド接続が欧州全域で拡大していることがわかる。 その一方、各国間の差も確認される。 世帯のインターネット利用率は、オランダ(94%)、ルクセンブルク(91%)、スウェーデン(91%)、デンマーク(90%)は9割を超えているものの、ブルガリア(45%)、ルーマニア(47%)、ギリシャ(50%)は5割以下となっている。 同様に、世帯のブロードバンド接続率は、スウェーデン(86%)、デンマーク(84%)、オランダ(83%)、英国(83%)、フィンランド(81%)は8割を超えているものの、ルーマニア(31%)、ブルガリア(40%)、ギリシャ(45%)は低い値を示している。

また、インターネット非利用者の割合も各国間で大きな差がある。 EU27か国における16~74歳までのインターネット非利用者の割合は24%となり、2006年の42%から20%近く減少した。 スウェーデン(5%)、デンマーク(7%)、オランダ(7%)、ルクセンブルク(8%)、フィンランド(9%)の非利用者率は10%を切っている。 一方で、ルーマニア(54%)、ブルガリア(46%)、ギリシャ(45%)、キプロス(41%)、ポルトガル(41%)の非利用者率は高い割合を示している。

なお、本調査では電子政府や電子商取引の利用に関する調査も行っている。 インターネット利用者のうち、過去1年以内に公的機関のウェブサイトから情報を入手した人は48%、税金申告などの電子政府サービスを利用した人は28%、インターネット経由で商品やサービスを購入した人は58%となっている。

セキュリティ、プライバシー

欧州委員会、オンラインにおける違法コンテンツ対策のガイドライン・原則を公表

2017年9月28日、欧州委員会は、オンライン・プラットフォームにおいて、憎悪、暴力、テロリズムを誘発するような違法コンテンツの事前抑止、発見、削除を推し進めるガイドラインおよび原則を公表した。

現在、テロリストのプロパガンダや排外的・人種差別的スピーチといった暴力や憎悪を誘発する違法コンテンツがオンラインで急増しており、そのような問題に対応するためのオンライン・プラットフォームの役割、ならびに社会的責任の必要性が増している。このたび公表されたガイドラインおよび原則では、オンライン・プラットフォームに対して、違法コンテンツの拡散を防ぐ対策の強化を要求し、とりわけ、テロリズムやヘイトスピーチに対して迅速な行動をとるよう求めている。そして、違法コンテンツ対策として三つの手段(ツール)を提示している。

  • 検出・通知:オンライン・プラットフォームは違法コンテンツの削除に対応する担当者を設けるなどして、各国の関連する機関と密接に連携する必要がある。また、違法コンテンツの検出を迅速化するために違法コンテンツの専門的知識を有する「Trusted Flagger(信頼できる警告者)」と連携を図るべきである。その他、ユーザーによる違法コンテンツの発見を可能とするようなアクセシブルのメカニズム構築や、自動検出テクノロジーへの投資促進を図るべきである。
  • 効果的な削除:重大な危険が生じる前に違法コンテンツは速やかに削除されなければならない。欧州委員会は違法コンテンツの影響に関するタイムフレームの分析を行い、オンライン・プラットフォームは利用者に対してコンテンツポリシーを説明したり、透明性レポートを公表したりすべきである。また、インターネット企業はリスクを防ぐためのセーフガードを導入すべきである。
  • 再発の防止:オンライン・プラットフォームは、ユーザーが違法コンテンツを再びアップロードすることを思いとどまるような方策を講じる必要がある。また、欧州委員会は再発防止を促進する自動ツールの開発を支援する。
(2017年10月)

欧州議会、米国のプライバシー保護規則の変更に懸念を表明

2017年4月6日、欧州議会は、米国の通信サービスプロバイダが本人の許可なく第三者へとウェブ履歴を販売することが可能となる法案が下院で可決したことを受けて、国家安全保障局(NSA)によって、私的なデータが裁判所の監督や議会の承認なしに、連邦捜査局(FB)を含む複数の政府機関と共有される可能性があるとして、懸念を表明する決議を実施した。決議は、賛成306票、反対240票、棄権40票で採択された。

決議の背景には、2015年に発覚した国家安全保障局(NSA)と連邦捜査局(FBI)によるインターネット監視、ならびに、監視に端を発したEUと米国間のデータ移転をめぐる問題があり、欧州議会は米国のプライバシー保護の規則の変更により、米国との間で新たに締結したデータ移転の枠組みである「プライバシーシールド」にも影響を及ぼす可能性があるとして懸念を示した。そして、欧州委員会に対して、プライバシーシールドに基づく個人データの移転が、欧州連合基本権憲章およびEUの新たなデータ保護規則に照らして十分であるか評価を行うよう求めた。

欧州議会の市民的自由・司法・内務委員会のクロード・モラエス委員長は、プライバシーシールドは、EUと米国の間で以前締結されていたセーフハーバー協定と比較して、大幅な改善が見られるが、法的な確実性を市民に提供する上で迅速に解決すべき、明確な欠陥もいまだあるとしている。

(2017年5月)

EU、サイバーセキュリティ強化義務付ける新法で合意

EUは、12月7日、域内で活動する重要分野の大手企業にサイバーセキュリティ対策を強化し、サイバー攻撃を受けた際には、その情報を当局に報告することを義務付ける新しい規則で合意した。今後、欧州議会と各国代表の正式な承認を受ける必要がある。

「Network and Information Security Directive」は、エネルギー、運輸、医療、金融、医療・保険、デジタルインフラの各分野の大手企業に加え、検索エンジンやクラウドコンピューティング、電子商取引などのテクノロジー企業に対し、適切なサイバーセキュリティ対策を講じ、深刻なサイバー攻撃を受けた場合、その情報を当局に報告し、情報を共有することを義務付けている。ただし、小規模な企業はこの対象に含まれず、またフェイスブックなどのSNSも含まれない。

今後、加盟各国間の連携強化を図る調整チームやコンピュータ・セキュリティ・インシデントに対応するための専門チーム(CSIRT)を設立する予定だという。

EUでは、これまでプライバシー保護が重視されていたが、パリ同時多発テロで風向きが変わりつつある。テロ対策強化の名目で、暗号化された通信を傍受・解読できる手段を確保しようという動きが強まっており、プライバシー保護団体等が警戒を強めている。

情報筋によると、EU及び加盟各国の政府・司法当局とフェイスブックやツイッター、マイクロソフト、アップル、グーグル等のテクノロジー企業は、テロ対策での連携強化について協議が行われた模様。この中には、SNSの監視や暗号化データへのバックドア提供義務付けについての話合いも含まれていた。

プライバシー保護団体等は、暗号化されたデータにアクセスするためのバックドアを設けることは、ハッカーがこれらのデータにアクセスする窓口を用意することでもあり、セキュリティを弱体化させ、プライバシー侵害を招くだけでテロ対策としての効果は乏しいと指摘している。

(2015年12月)

欧州連合理事会、データ保護規則案に合意

2015年6月15日、EU加盟国の代表閣僚で構成される欧州連合理事会の司法・内務理事会は、欧州委員会による「EUデータ保護規則」の提案に暫定合意した。今後、欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会の3者間で協議が実施され、2015年末までには最終合意に至る見通しである。

2012年に欧州委員会はデジタル時代に即した包括的な法律が必要であるという問題意識に基づき、現行法である「EUデータ保護指令」を改正し、新たに「EUデータ保護規則」を設ける提案を行った。欧州委員会は、EUデータ保護規則の施行により、EU域内における厳密かつ包括的なデータ保護が実現され、法的および実務的な確実性が市民、企業、公的機関にもたらされる、と述べている。

このたび暫定合意に至った「EUデータ保護規則」提案の概要は次のとおりである。

  • 一大陸で一貫した法律:EUデータ保護規則は、EU全域で適用されるデータ保護の法律である。一貫した法律により、煩雑な行政手続きが不要となり、企業のコスト削減につながる。
  • 権利の強化と追加:忘れられる権利が強化される。市民は自身のデータ流通や保全を望まない場合、データを統御する者に個人データの消去を要請することができる。また、自らのデータに対するハッキングが行われた場合の情報通知も改善される。
  • EU域内ではEUの規則に従う:EU域外の企業がEU域内でサービスを提供する際にはEUのデータ保護規則が適用される。
  • 各国のデータ保護機関の独立性の強化:規則の執行における各国のデータ保護機関の権限が強化される。データ保護規則を侵害した企業には最大で100万ユーロ、もしくは世界における年間の売り上げの2%が罰金として科される。
  • 「ワンストップショップ」:規則は企業や市民に「ワンストップショップ」を提供する。企業がEU域内で事業展開を行う際には一国のデータ保護機関の手続きだけで済むようになる。個人も同様に自国のデータ保護機関で関連する手続きを済ませることができる。
(2015年7月)

欧州で高まる米ネット企業への批判

EUは、米国企業がインターネット市場を支配することへの警戒を強めている。欧州委員会は5月6日、2015年内にグーグルやフェイスブック、Amazonなどのインターネット事業者の欧州での事業活動について大規模調査を開始する方針を発表した。調査は、検索結果の透明性や料金体系、事業者が取得するデータの利用形態、他の事業者との関係、自社サービスの優遇など広範囲に渡る。2015年上期の動きをまとめた。

グーグル
個人情報保護を扱うフランスの独立行政機関CNILは、6月12日、米グーグルに対し、「忘れられる権利」を認定した2014年の欧州司法裁判所の判決をEU内のサイトだけでなく、世界のサイトにも適用するよう指示。15日以内に全てのサイトで判決への対応を見せなければ、最大30万ユーロの一括罰金を含む罰則が適用される可能性があると示唆した。これに対し、グーグルは、この判決が適用されるのは「Google.de」などEU内で運営しているサイトだけで、「Google.com」をはじめとするEU外のサイトで「忘れられる権利」に対応する必要はないと主張している。

グーグルは、4月27日、欧州の新聞社8社と提携する「デジタル・ニュース・イニシアチブ」を発表した。同社は、この取組みの下、3年で1億5,000万ユーロを投資する「イノベーション基金」を設け、新聞社の商品開発を支援する。同社は必ずしもうまくいっていなかった欧州新聞社との関係を修復するため、今後は欧州全域の新聞社のワーキンググループとともに収入、トラフィック、読者とのエンゲージメントを増やす商品開発を進めていく。このイニシアチブには、英国のガーディアン、フィナンシャル・タイムズ、ドイツのFAZ、フランスのレゼコーなどが参加する。

EUは、4月15日、グーグルがインターネットの検索結果を操作して自社ショッピング・サービスを優遇しているとして異議告知書(Statement of Objections)を送付したと発表した。また、Androidについても競争法違反で調査を開始する。グーグルはこの告発に対して、10週間以内に対応するよう求められている。欧州委員会は、競争法違反に対して最大で年間売上高の10%に相当する額の罰金を科すことができ、グーグルの場合、罰金額は最大66億ドルに達する可能性がある。

独ハンブルクのデータ保護当局は、4月8日、グーグルに対しユーザの個人情報の収集・解析と、これら情報の使用についてユーザの管理権限を拡大するよう命令した。今回の命令はハンブルクだけでなく、全国に適用される。グーグルが命令に従わない場合は罰金を科されることになる。

イタリアのデータ保護当局は、2月20日、グーグルとプライバシー保護方針で合意したと発表した。グーグルは、2016年1月15日までにイタリアの国内法への適合を行い、その一環として、プライバシーポリシー改善、ターゲット広告のオプトアウト手段導入、ユーザデータ保管期間の開示を義務付けた命令に対する適合状況を定期的にチェックし、四半期毎にイタリア・データ保護当局に報告を提出することに同意した。

英国のデータ保護当局(ICO)は、1月30日、グーグルと同社の個人情報の取扱いについてユーザへの説明を改善することに同意した。ICOは、グーグルに対して6月30日までにプライバシーポリシーを変更し、今後2年でさらなる改善を進めていくことを約束する正式な合意文書に調印することを義務付けた。

アマゾン
欧州委員会は、6月11日、アマゾンの電子書籍事業について、独占禁止法違反の疑いで正式調査を開始した。同社は既にルクセンブルクでの税優遇措置について調査を受けているが、今回は、出版者との契約に競合他社に有利な条件を提示した場合はアマゾンにもその内容を知らせるよう義務付ける条項があることが問題視された。同委員会は、この条項が、市場の支配的立場を乱用し、商行為を制限することを禁止したEUの反トラスト規則に違反する可能性があると指摘した。

欧州委員会のマルグレーテ・ヴェスタエアー競争政策担当委員は、3月26日、アマゾンなどの電子商取引事業者が国境間貿易を制限することでEUの反トラスト法に違反していないかを調査すると発表した。EU内で消費者が国境を超えて商品を購入することを妨げる契約その他の面での障壁がないかどうかについて、製造業者や地上波放送事業者、オンライン・プラットフォーム運営事業者なども含めた幅広い範囲で調査を進める。

フェイスブック
ベルギーのプライバシー保護委員会は、6月15日、フェイスブックのユーザ追跡や非加入者の待遇について民事訴訟を提起した。同委員会は、フェイスブックが加入者やその他のインターネットユーザの個人情報を事前の同意やデータをどのように使用するかについての十分な説明なしに収集していたことを問題視。また、欧州本社の所在するアイルランドのデータ保護規則にのみ適合していればよいとする同社の姿勢を厳しく批判した。

(2015年6月)

WP29、Googleに個人情報保護のための具体的行動基準を提示

EU加盟各国の個人情報機関が結成するワーキンググループWP29は、9月23日、Googleに対して、同社が欧州諸国でサービスを展開する際の個人情報保護に関する具体的行動基準のリストを提示した。

今回提示されたリストは、ユーザへの情報開示、ユーザによる個人情報公開制御、データ保持の3項19条から成る。各項の骨子は以下のとおりである。

  • ユーザへの情報開示
    Googleの運営するサイトのトップページから、どの端末を利用するユーザに対しても、即時にアクセスできる形式で、Googleのプライバシー保護原則を網羅的に掲示すること。
  • ユーザによる個人情報公開制御
    ユーザが個人情報を入力するページにおいては、入力前にユーザの同意を確認する欄を設け、またユーザの意向により入力データの消去が容易に行われる形式とすること。Cookiesやその他のツールの使用についても、事前了解を確認すること。
  • データ保持期限
    Googleが収集したすべての個人情報について、各国法に従い保持期限を設け、その期限を順守すること。データの匿名化についても、その対象と方式を明示すること。
(2014年10月)

欧州委員会、サイバーセキュリティ戦略を発表

欧州委員会は2013年2月7日、欧州連合外務・安全保障政策上級代表と共同で、ネットワーク・情報セキュリティ関連の指令提案を盛り込んだサイバーセキュリティ戦略を公表した。

「開かれた安全が保証されたサイバー空間」をスローガンとするEUのサイバーセキュリティ戦略は、サイバー攻撃への対応に関する包括的なビジョンを提示するものであり、自由とデモクラシーの深化、ならびにデジタル経済の安定した成長を促す狙いもある。同戦略には特定アクションとして、情報システムのサイバーレジリエンス(復旧)向上、サイバー犯罪の減少、域内統一のサイバーセキュリティ政策の強化などが盛り込まれている。

欧州委員会は以下の五つをサイバーセキュリティの優先課題として挙げている。

  • サイバーレジリエンスの達成
  • サイバー犯罪の劇的な減少
  • サイバー防衛政策の推進、および共通のセキュリティ防衛政策の実現
  • サイバーセキュリティ関連の産業資源・技術資源の発展
  • EUの中心的な価値を推進する包括的なサイバー空間政策の確立

一方、戦略の公表と同時に提示されたネットワーク・情報セキュリティ指令案について、欧州委員会は戦略遂行の要と位置づけ、全加盟国、情報関連サービス提供者、基幹インフラ事業者(電力、運輸、金融等)による順守を求めていく。指令案の方針は以下のとおりである。

(a)加盟各国にはネットワーク・情報セキュリティ戦略の採択を義務づけ、ネットワーク・情報セキュリティ関連のリスクやインシデントに対応する機関を設立し、適切な資金や人材を割り当てる。

(b)加盟各国と欧州委員会の間でネットワーク・情報セキュリティ関連のリスクとインシデントの早期警告を共有するシステムを構築する。

(c)基幹インフラ事業者(金融、運輸、電力、保険・衛生)、情報社会サービス提供事業者(アプリストア、電子商取引プラットフォーム、オンライン決済、クラウド・コンピューティング、検索エンジン、ソーシャル・ネットワーク)、ならびに行政機関は、リスク管理実践を取り入れ、中核サービスのセキュリティ・インシデントに関する報告を義務づける。

(2013年2月)

欧州委員会はデジタルアジェンダの一環として、サイバーセキュリティ研究をサポート

世界では15万種類のコンピュータウイルスやその他の悪意あるプログラムが常時インターネットを流布しており、毎日数百万以上の利用者がウイルスなどに感染している。また、ボットによる遠隔操作がサイバー犯罪の温床となっている。こうしたサイバー犯罪は年間7,500億ユーロの損害を世界にもたらしている。

欧州委員会は、欧州サイバーセキュリティ戦略を策定し、サイバーセキュリティとリスクへの具体的対策をとることを2012年11月に表明した。また、サイバーセキュリティを改善するため、各国政府、産業界、大学、NGOと共同で革新技術の開発にあたる。

欧州委員会は2007年~2013年の間で約3億5,000万ユーロをサイバーセキュリティの研究に支出している。そして、2013年~2020年にはセキュリティ、プライバシー、信頼といった重要な産業技術をサポートするために4億ユーロを割り当てる計画である。加えて「安全社会」の研究に4億5,000万ユーロを充当するとしている。

欧州委員会は、サイバーセキュリティの主要問題への対応を目的としたEU出資プロジェクトとして、「サイバー事件の防止」、「安全なソフト及びシステムの設計」、「安全な『モノのインターネット』の促進」、「クラウド環境のセキュリティ」、「暗号ソリューション」を挙げている。

(2012年12月)

EU Kids Online、子どものネットいじめに関する報告書を公表

EUのインターネット安全推進戦略「Safer Internet プログラム」の資金をもとに、 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが実施している子どものインターネット利用に関する調査研究プロジェクト「EU Kids Online」は、 2011年7月に、子どものネットいじめに関する調査報告書「Who bullies and who is bullied online?(誰がいじめを行い、誰がいじめられているのか)」を公表した。 調査結果の分析によると、9歳から16歳までの93%はネットいじめをまったく経験していなかった。

しかし、3%は他の子をいじめた経験があると回答していた。 いじめる側に回る性別としては、男子も女子も同程度の比率であることが分かった。 インターネットを介さないいじめは男子の方が多いという研究の知見とは対照的な結果となっている。 なお、いじめる側といじめられる側の間には連関があり、いじめる側の60%がいじめられた経験があるという。

いじめる側もいじめられる側も、心理的に不安定か社会的に恵まれない場合が多く、 オンラインとオフラインの両方でメンタリング・スキーム(対話を通じた助言)のような支援策を講じることが事態の改善を導くと報告書では指摘している。 プロジェクトに携わる研究者の一人であるGorzig教授は、「われわれの調査によりネットいじめは深刻でないことが明らかとなった。 しかし、子どもたちが社会的・個人的に脆弱な傾向にあることもうかがえた。 いじめやその他の問題をなくすため、子どもたちに的を絞ったアクションが必要となるだろう」と述べている。

このたび公表された報告書は、EU Kids Onlineのプロジェクトチームが、欧州25か国の約2万5,000人を対象に実施したアンケート結果の分析に基づいたものである。


EUにおける青少年のSNS利用の実態と問題

2011年4月、欧州委員会はEU全域を対象に行った青少年のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)利用実態に関する調査結果を公表した。 同調査により、9~12歳の38%、13~16歳の77%がSNSにプロフィールを持っていることが明らかとなった。そのうち25%はプライベートのプロフィールを公開しており、その中には自分の住まいや電話番号を公開している者もいた。 また、SNSのプライバシー設定の変更方法を知っているのは11~12歳では56%にとどまっていた。 このようにオンラインで青少年のプライバシー情報が公開されている状況に対しては、グルーミング(性的誘引)やネットいじめといったオンラインリスクの観点から懸念が示され、対策がとられている。

EUではインターネットの安全を推進する戦略「Safer Internet」を1999年から実施しており、現在は2009年から2013年までの5か年計画である「Safer Internet プログラム」が実施されている。 同プログラムはEUの情報通信政策「欧州デジタル・アジェンダ」で優先課題の一つとして挙げられており、オンラインの安全対策はEU社会全体の課題と位置づけられている。その中で青少年のオンラインリスク対策は中核を占めている。 そしてSNSに関しても、2009年に「安全なソーシャル・ネットワーキングのための原則」を定め、事業者にSNSの安全対策を推進するよう求めてきた。

しかし、青少年のSNS利用をめぐる安全対策は不十分であるとの指摘がされている。 2011年6月に欧州委員会が公表した、未成年のSNSプロフィールへのアクセスに関する調査結果によると、初期設定で承認制を採用しているのはBeboとMySpaceの二つだけで、調査した14のSNSサイトのほとんどはヘルプによる対応や外部検索エンジンからのアクセス除外にとどまっていた。 また、欧州委員会が2011年9月に公表した「安全なソーシャル・ネットワーキングのための原則」の実行状況に関する調査によると、対象とした九つのSNSサイトのうち、承認リストに載っている人以外にアクセスを許可しない措置をデフォルトで講じているサイトはHabbo HotelとXbox Liveの二つのみであった。 こうした調査結果を受けて、欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するネリー・クルース副委員長は「子どもたちにとって安全なインターネット空間を形成するため、保護とエンパワーメントを組み合わせた包括的な戦略を2011年の後半に設定する」という見通しを示している。

放送・メディア

欧州委員会、視聴覚メディアサービス指令の改正案を提出

2016年5月25日、欧州委員会はデジタル単一市場戦略の一環として視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)の改正案を提出した。1989年の「国境なきテレビ指令」、そして同指令の改正法であるAVMSDにより文化の多様性やEU域内のコンテンツの自由な流通は確保されてきた。だが、ネットフリックスやMUBIのようなビデオ・オンデマンド・サービスや、YouTubeやデイリーモーションといった動画共有プラットフォームを利用する人々が急増する中、文化の多様性、視聴覚関連の規制機関の独立性、放送局の柔軟性など、現状に対応する法律が必要であるという認識に基づきこのたび改正案が提出された。

AVMSDの改正案には、すべてのメディア事業者にとっての公正な競争環境の創出、欧州制作作品の振興、有害コンテンツからの児童の保護、ヘイトスピーチ対策強化などが盛り込まれている。また、オンラインプラットフォーム事業者に対する新たなアプローチに関する条文も盛り込まれている。

今回の主な改正点は以下のとおりである。

  • 有害コンテンツに対する動画共有プラットフォーム事業者の責任の在り方:有害コンテンツから青少年を保護し、ヘイトを煽るコンテンツからすべての市民を守るために大量のコンテンツの分類などを手掛けることを各事業者に求める。
  • 各国の視聴覚関連規制機関の権限強化:EU加盟28カ国のメディア規制機関で構成されている欧州視聴覚メディアサービス規制者グループ(ERGA)の役割を明記する。
  • 欧州のクリエイティビティの活性化:テレビ放送事業者には放送時間の約半分を欧州で制作された作品に割り当てることを求める。オンデマンド事業者に対してはカタログに掲載するコンテンツの20%を欧州制作作品に割り当てることを求める。
  • テレビ広告の柔軟性:広告の放送時間について、現在は1時間あたり12分を超えてはならないと規定されているが、制限範囲を1日全体に拡大し、放送事業者がより柔軟に選択できるようにする。
(2016年6月)

EU22か国で地上デジタルへの切り替えが完了

欧州の39か国が参加し、視聴覚産業に関する情報の収集と調査を行っている欧州視聴覚研究所(European Audiovisual Observatory:EAO)が発行した2012年報によると、2012年までにEU加盟27か国のうち22か国でアナログ放送を終了したことが明らかとなった。

EUが地上デジタル放送への切り替え期限に設定していた2012年には、加盟国のうち、アイルランド、イタリア、リトアニア、ポルトガル、スロバキア、英国でアナログ放送が終了した。今後、2013年にギリシャ、ポーランド、ブルガリアで、2013~2014年の間にハンガリーで、2015年にはルーマニアで地上デジタル放送への移行が予定されている。

EUに加盟していないクロアチア、スイス、ノルウェー、アイルランドでも地上デジタル放送への切り替えが完了しており、EAO加盟39か国中26か国でアナログ放送が終了している。今後、2014年にはボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアで、2015年にはアルバニア、ロシア、モンテネグロ、トルコで地上デジタル放送への切り替えが予定されている。

(2013年3月)

欧州委員会、視聴覚メディアサービス指令の実行状況に関する初の報告書を公表

2012年5月7日、欧州委員会は「視聴覚メディアサービス指令」(Audiovisual Media Services Directive:AVMSD)の実行状況に関する初の報告書を公表した。 AVMSDは、2007年11月に欧州議会で採択されたもので、視聴覚コンテンツの自由な流通、憎悪助長禁止、有害コンテンツからの未成年者保護、欧州製視聴覚作品の奨励といった重要な公共政策の達成を目標としている。 現在、EU加盟国のうちポーランドとベルギーを除く25か国でAVMSDの国内法制化が完了している。

報告書では広告活動を中心にAVMSDの実行状況の概観を行っている。

広告
テレビ広告やテレショッピングは1時間あたり12分を超えてはならないと規定されている。 欧州委員会が加盟8か国の広告実態の調査を行ったところ、いくつかの国で違反が確認された。 この結果を受けて、欧州委員会は該当国に行政レターを送付し、協議を続けている。

アルコール
欧州委員会の調査では、アルコール関連の広告は広告全体の0.8~3%にとどまっており、明白な侵害は確認されなかった。 AVMSDを履行している22か国ではアルコール関連広告に厳密な制限を設けていた。

青少年保護
AVMSDでは青少年の身体・モラルを侵害する商業コンテンツを禁止している。 具体的には、青少年の未熟さや純粋さにつけ込み製品・サービスの購入を促すコンテンツ、青少年が両親らに商品やサービスの購入をねだるようなコンテンツ、両親や教員の信頼を利用するコンテンツ、危険な映像を分別無く青少年に見せるようなコンテンツ、が該当する。 放送のスポット広告を対象に100超の内容分析を行ったところ、AVMSD違反に該当する事例は少数であった。 ただし、青少年を魅了するようなテレビ広告の技法が散見された。 加盟国の対策として、5か国は子ども番組における広告を禁止している。 また、4か国は子ども番組における広告を、時間帯や製品などで部分的に制限・禁止している。 7か国では子ども番組におけるスポンサーロゴの提示を禁止している。

差別表現
8か国、100超の放送スポット広告を対象に、性差別やジェンダー・ステレオタイプの観点で内容分析を行ったところ、21~36%にステレオタイプ的なジェンダー役割が認められた。 いくつかの国では社会的地位、職業、製品と特定ジェンダーを結びつける傾向が顕著であった。

以上のような概観の後、報告書では伝統的放送とインターネットが急速に融合する時代に、重大な技術的変化が規制枠組に及ぼす影響について未来を見据えつつ記述している。 そこでは主に「コネクテッドTV(インターネットに接続可能なテレビ)」に関する追加ガイダンスの必要性と広告慣行が問題として取り上げられており、この問題に対応するために欧州委員会は、2012年下半期にコネクテッドTVに関するパブリック・コンサルテーションの実施、ならびに2013年にテレビ広告に関する指針の更新を予定している。

(2012年5月)

電波関連

欧州委員会が700MHz帯の割当に関するコンサルテーションを開始

EUでは、欧州委員会が、2015年1月に、700MHz帯(694-790MHz)の今後の割当に関するコンサルテーションを開始した。

現在、デジタルTV用周波数として割り当てられている700MHz帯については、これを無線ブロードバンドに再割当することが検討されている。2014年9月には、元欧州委員パスカル・ラミー(Pascal Lamy)氏を長とする専門委員会が、ブローバンド、放送、他の無線通信の分野にわたる総合的かつ長期的な展望の視点から、将来の発展に最も有効な利用方法を検討し、報告書(Lamy Report)を提出している。同報告書では、放送事業者の利害に配慮しつつ、ブロードバンド事業者へ再割当する2つのオプションを提案しており、今回のコンサルテーションは、Lamy Reportにおいて提案された以下のオプションについて、無線ブロードバンドや放送分野に関連する業界関係者、有識者、サービス利用者から広く意見を求める内容になっている。

(1)「2020-2030-2025」方式("2020-2030-2025" formula)

次の段階でブロードバンド事業者に700MHz帯を割り当てる。

  • 現在地上テレビ及びワイヤレスマイクロフォンに利用されている700MHz帯(694-790MHz)については、2020年(前後2年を許容)までにブロードバンド専用に割り当てる。
  • 2030年まで、地上放送事業者に対し、700MHz帯以下の帯域(470-694MHz)で残されている周波数の安定した利用を規制上保証する。
  • 2025年までに、技術及び市場発展に関する評価の見直しを行う。

(2)柔軟性のオプション("flexibility" option)

470-694MHz帯におけるUHF放送周波数のブロードバンド利用をダウンリンクに限定する。これにより、放送事業者は、同帯域の優先的な利用が可能になる。一方、国内環境に応じて地上放送に利用されていない特定のチャンネルやロケーションにおいては、無線ブロードバンドのダウンリンクサービスを利用できるようにする。

意見募集の期限は2015年4月12日までであり、各分野から寄せられた意見を踏まえ、同帯域に関する長期戦略が、欧州委員会を中心に検討される予定である。

(2015年2月)

欧州委員会、800MHz帯のブロードバンド割当て期限を再調整

EUでは、デジタルTV周波数移行後の空き周波数800MHz帯(790-862MHz)を、2013年1月までに無線ブロードバンドに割り当てることを基本方針としていたが、実際の割当て手続きが遅延している状況であり、2013年7月24日、欧州委員会は、9か国について、割当延期を承認する決定を下した。

800MHz帯の割当て期限は、2012年3月に採択された「無線周波数政策プログラム(Radio Spectrum Policy Programme:RSPP)を策定する決定」(243/2012/EU)で規定されており、加盟国はこれを遵守することとされているが、これを実施した国は、2013年7月現在、加盟28か国中11か国にとどまっている。RSPPでは、800MHz帯の割当ての障害となる正当な理由がある場合、実施延期の特例(derogation)を認めることとしており、欧州委員会は、申請のあった14か国について延期事由の審議を進め、うち9か国について、軍が使用する帯域に関する調整ほかを理由に承認し、2か国については割当手続きなど組織上の問題が承認の理由として不十分であるとし申請を却下した。また残り3か国は継続審議となった。

今回、9か国の割当て延期を承認したことで、800MHz帯の無線ブロードバンド導入の日程が再調整されることとなったが、EU域内における無線ブロードバンドの統一市場の形成が後退することが懸念されており、欧州委員会は、今後、800MHz帯の早期割当てを、主要課題として検討することとしている。

★手続き実施済み(11か国)(2013年7月時点)
デンマーク、ドイツ、アイルランド、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、 オランダ、ポルトガル、スウェーデン、英国、クロアチア

★延期申請と結果 (下表参照)
◇延期承認(9か国): スペイン、キプロス、リトアニア、ハンガリー、マルタ、オーストリア、
ポーランド、ルーマニア、フィンランド
◇延期却下(2か国): スロバキア、スロベニア
◇継続審議(3か国): ギリシャ、ラトビア、チェコ

表 申請国が承認を求めた割当て実施時期
実施時期(各国申請) 実施国
2013年半ばまで リトアニア
2013年末まで スペイン、オーストリア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア 、チェコ (ベルギー、エストニア)(注)
2014年半ばまで ルーマニア、ポーランド、スロベニア
2014年10月まで ギリシャ
2014年末まで マルタ
2015年7月まで ラトビア
2015年末まで キプロス
2017年中 (ブルガリア)(注)
(注)今回、特例措置の承認申請を行っていないが、ベルギー、エストニアは2013年末までに、ブルガリアは2017年中の割当手続実施を予定。
(2013年8月)

現在UMTS用途で使用されている2GHz帯の周波数を4G向けに開放することを欧州委員会が決定

EUはデジタル・アジェンダにおけるブロードバンド普及目標の達成、ルーラル地域への高速ブロードバンド・サービスの提供、経済・雇用の活性化などを実現するために無線ブロードバンドの普及を政策課題としている。その中で現在、中心的に取り組まれているのは、周波数の確保や効果的な管理・運用である。2012年2月には、2013年1月1日までにアナログテレビ向けに利用されている800MHz帯を無線ブロードバンド用に開放する措置を取るよう全てのEU加盟国に要求するプランを欧州議会が承認した。

そして2012年11月には、現在UMTS通信に使用されている2GHz帯の1920-1980MHzと2110-2170MHzをLTE等の4G向けに開放する決定を欧州委員会は行った。決定に基づきEU加盟国は該当する周波数を2014年6月30日までに開放し、異なる技術間の協調を図る措置が義務づけられる。

欧州委員会の決定により、移動体通信事業者は収益が見込まれる通信網への投資機会を得ることとなり、高速ブロードバンド・サービスを求める消費者の要求に応えることができる。また、欧州委員会がデジタル・アジェンダの中で掲げるブロードバンド目標(2020年までに欧州全域で30Mbpsのカバレッジを達成)にも貢献する。欧州委員会でデジタル・アジェンダを担当するクルース副委員長は、加盟各国はすみやかに免許条件の変更に着手しなければならないとコメントしている。

なお、欧州委員会は今回の決定により米国の倍量の高速無線ブロードバンド向け周波数を確保したと述べている。

(2012年12月)

欧州におけるホワイトスペースの利活用に向けた取組

電波の一層の有効利用を実現するとされる、コグニティブ無線(Cognitive Radio)の技術開発に向けた取組は、 米国を中心に進められてきたが、欧州でも、2009年初頭より、CEPT(欧州電気通信主管庁会議)のECC(Electronic Communications Committee)によって、 本格的な検討が進められている。コグニティブ無線は、周囲の電波環境を自らセンシングして、空いている帯域を随時使用するもので、 既存の電波利用者に干渉を与えてはならないが、自らが干渉から法的に保護されることはない。 現在、"コグニティブ的"なセンシング技術としては、RFIDで採用されているLBT(listen before talk)、5GHz帯のRLANs(Radio Local Area Networks) で採用されているDFS(Dynamic Frequency Selection)などがある。

米国その他諸外国と同様に、ECCでも、UHF帯のテレビジョン放送帯域(470-790MHz)を、「ホワイトスペース機器」(white space devices: WSD) に使用することが検討されている。しかし、これらの帯域には、PMSE(Programme Making and Special Events、ラジオマイク等)などの、複数の2次業務の電波利用者が存在するための、 これらの電波利用者を随時検出して干渉を与えないような仕組みを整備する必要がある。欧州でも、これら2次業務の電波を、WSDが自動的にセンシングする技術開発が進められているが、 現状では技術的な課題が多いため、米国同様に、地理位置情報データベースを活用した、WSDの利用を進めるとしている(ECC Report 159、2011年1月公表)。

また、制度的な今後の課題としては、地理位置情報データベースを提供する事業者の認定評価の仕組みや、コグニティブ無線機器(Cognitive Radio device)を個別に承認するのか(individual authorisation)、 それとも免許不要を含む一般認証(general authoraisation)とするのかといった免許制度枠組みの検討が挙げられている。欧州では、モバイルブロードバンド・サービスの質を担保することを目的に、 コグニティブ無線機器を免許制で運用するための新たな枠組みである、「Authorised Shared Access」という概念が提唱されている。


世界的に注目が集まるHi3GのTDD/FDD対応のLTE網展開

現在、世界で商用化されているLTEサービスは、FDD方式(周波数を上り回線と下り回線で区切って使用: FDD-LTE)によるものであるが、 今後は、TDD方式(周波数を区切らず、同一帯域の中で、上りと下りの信号を伝送: TDD-LTE)によるLTEの普及も見込まれている。 TDD-LTEは、中国が旗振り役となって開発が進められているもので、TDD帯域を使用するWiMAX事業者や、2.3GHz帯や2.6GHz帯のTDD帯域を保有する事業者から、世界的に注目が集まっている。

中国はもとより、インドでもリライアンス・インダストリーやクアルコムが2.3GHz帯を使用してTDD-LTE網の構築を計画中であるほか、従来、TDD-LTEに注目していなかった欧州でも、 ドイツ携帯3番手のEプラスが、2.6GHz帯でのTDD-LTEの実用化試験を開始している。 また、スウェーデンとデンマークでは、香港ハッチソン・ワンポアグループ傘下のHi3Gが、オークションや2次取引(インテルから購入)で獲得した2.6GHz帯を使用して、 世界初のTDD-LTEとFDD-LTEの統合網を、中国ベンダーのZTEと協力して構築することを発表し、固定サービスの提供も視野に入れた事業展開を計画している。

これまで、欧州で実施された2.6GHz帯の周波数オークションでは、TDD帯域は、FDD帯域に比べて安い金額で落札され、また売れ残るケース(オランダ、スペイン等)も散見されたが、 Hi3GによるTDD/FDD対応のLTEサービスの普及次第によっては、今後、TDD帯域に対する価値が高まっていくものと見られている。

なお、2011年9月13日には、2.6GHz帯を利用した世界初のTDD-LTEの商用サービスが、サウジアラビアで開始されている。


欧州委員会、WRC-12に向けたEU共通の政策課題を採択

欧州委員会は、ITUのWRC-12(World Radiocommunication Conference 2012)で議論される周波数政策に関するEU共通の政策課題を、同委員会の諮問機関であるRSPG(Radio Spectrum Policy Group) の意見を踏まえながら、欧州議会及び欧州理事会への通達文書として、2011年4月6日に採択した。国際レベルでの周波数調整や干渉保護が必要となる重要課題として、以下の3つが掲げられている。

  • アナログ跡地("digital dividend")を使用する無線ブロードバンド
    EU域内では790-862MHzを無線ブロードバンドに使用する予定であるが、EU東部国境地域で運用されている同帯域を使用する航空無線航法システムとの干渉が懸念されている。
  • 汎欧州で利用する衛星ナビゲーションシステムのGalileo
    現在Galileoは5000-5030MHzを使用しているが、将来の拡張サービス向けに、2483.5-2500MHzを追加割当てすることが検討されている。
  • 欧州単一の航空管制管理システム
    EUでは、今後30年間の世界規模の次世代航空管制システムを開発することを目的に、単一欧州航空管制研究プログラム(Single European Sky Air Traffic Management (ATM) Research programme: SESAR)を実施、 当該システムの円滑な導入に向けた周波数の確保が検討されている。

その他、通信衛星、無人航空システム、ソフトウェア無線/コグニティブ無線、短距離無線機器、科学研究、気候変動観測、電子ニュース取材に必要な周波数の検討が、EU共通の重要な政策課題として掲げられている。