中国

スマートフォン

低価格端末を中心に普及が進むスマートフォン

中国では、第三世代(3G)移動体通信サービスの急速な成長に伴い、スマートフォンの普及も広がりを見せている。 通信キャリア3社によるスマートフォン利用状況を見ると、中国聯通の3G(W-CDMA)端末に占めるAndroid端末の割合は、2010年上半期3%から2011年同期35%に上昇している(網易科技データ)。 中国移動のスマートフォンの比率は、2011年6月現在で3G(TD-SCDMAS)加入者の15%(注1)、中国電信では2011年1-6月間の3G端末(CDMA2000)の約50%である(注2)。 特に都市部での普及が著しく、2011年11月に発表された米グーグル社とIPSOS Research社の共同調査の結果(注3)では、中国の都市部でのスマートフォン普及率は35%で、シンガポール(62%)、オーストラリア(37%)に次ぐものであることが報告されている。

端末の製造では、工業・情報化部(MIIT)傘下にある電信研究院の報告によれば(注4)、国内におけるスマートフォン端末の製造台数は、2011年1~9月期で、携帯端末全体の22%に相当する7,000万台で、同期に市場投入されたスマートフォン端末の機種は340機種、そのうち80%がAndroid OSを搭載した端末と報告されている。

端末価格を1,000元(注5)程度の低価格帯に設定した「1,000元端末」が利用者の裾野を広げる牽引となっている。 例えば、中国電信では、1,000元端末が、スマートフォン全体の60-70%を占め、中国移動では、1,000元端末の機種が100機種を超えるなど(注6)、通信キャリアも加入者を囲い込む有効な手段として1,000元端末の販売強化に注力している。 低価格でありながらも、スペックについてはミドルレンジの機能を装備した機種もあり、例えば、通信機器ベンダー大手の中興通訊(ZTE)が、中国聯通を通じて販売しているフラッグシップモデル「Blade」は、端末価格が1,499元(高額料金プランで価格割引)で、 Android2.2を搭載、CPUはMSN7227 600MHz、通信方式GSM/3G対応、Wi-Fi(802.11 b/g)、Bluetooth、A-GPS等をサポートしており、ZTEは、2010年9月から1年間の1日平均販売台数は1万7,000台に上ったと発表している(ZTE 2011年9月23日プレス発表)。(注7)

また、各通信キャリアは、独自のOS開発を進め、端末の差別化を図っている。 中国移動は、独自OSを搭載した端末として、Androidを自社端末用にカスタマイズしたプラットフォーム「OMS」(Open Mobile System)を搭載したスマートフォン「OPhone」を2009年に市場投入し、中国聯通は、Linux2.6に基づいて開発した「沃(Wo)Phone OS」を搭載した「沃Phone」を2011年7月に発表している。 同社は、沃Phone端末の価格を1,000~2,000元に設定し、沃Phoneユーザーに対して、料金の50%以上の補助を行うとしている。 また、中国電信はLenovo(レノボ)と共同でAndroid2.0をベースにした「楽(Le)Phone」を販売している。 キャリア以外の企業による独自OSの開発も進められており、検索サービス最大手「百度」(Baidu)が2011年9月に独自のモバイルOS「百度易」(Baidu Yi)を発表している(注8)。 また、電子商取引大手のアリババ社が、Androidベースで独自のモバイルOSを2011年中に発表する予定である(注9)。

アプリケーション・ストアについても、各通信キャリアが自社のアプリケーション・ストアを立ち上げ、キラーアプリケーション開発と提供を通じて、加入者の取込みとデータ通信のサービス収入の増大を図っている。 各社アプリケーション・ストアの概況は次の通りである(2010年10月現在)。

通信キャリアのアプリケーション・ストアの概況
キャリア 概況
中国移動 2009年8月にMobile Market(MM)を開設。3万件のアプリケーションを提供している。
中国聯通 沃商店(Wo Store)を2010年10月に試商用サービスを開始、11月に正式開設。2,154件のアプリケーションを提供。天語、レノボ、モトローラ、ノキア、サムスン電子、ソニー、ZTE、ドゥーポッド(多普達)、クールパッド(酷派)、HTC、華為の11メーカーの端末がサポートしている。
中国聯通 天翼空間(estore)を2010年3月に開設。4,000のアプリケーションを提供し、ダウンロード数は累計320万件超。
出所:enfodesk資料を基に作成

(注1) http://www.chinamobileltd.com/images/present/20110818/pp01.html
(注2)C114 2011年5月24日付け情報( http://www.c114.net/news/117/a603778.html
(注3) http://www.ixwebhosting.mobi/google-to-push-smart-phones-reported-in-chinese-cities-70-of-users-every-social/ 、 及び http://www.cnii.com.cn/index/content/2011-11/11/content_932884.html
(注4) http://www.cnii.com.cn/index/content/2011-10/21/content_927117.html
(注5)1元≒12.11円(2011年11月18日現在)
(注6)マルチメディア振興センター「ICTワールドレビュー2011年10-11月号」
(注7) http://wwwen.zte.com.cn/en/press_center/news/201109/t20110923_253422.html
(注8) http://yi.baidu.com/
(注9)21世紀経済報道(2011年7月21日付け情報)
http://www.21cbh.com/HTML/2011-7-21/wNMDcyXzM1MjIwNA.html

クラウド・コンピューティング

北京、上海など5つのクラウドコンピューティング・サービスの試行都市に対して15億元の資金援助

国家発展・改革委員会は2011年10月に、北京、上海、深セン、杭州、無錫の5都市におけるクラウドコンピューティング事業に対して15億元に及ぶ資金援助を行うと明らかにした。 これら5つの都市は2010年10月に、クラウドコンピューティング・サービスのテストを行うモデル都市として指定された。

主な作業内容および狙いとして、以下4点が挙げられている。
  • 国内の情報サービス業者が、政府、企業、個人のニーズに応じて情報サービスを提供し、SaaSなどのクラウドコンピューティング・サービスのモデルを模索する。
  • 企業を主体として、クラウドコンピューティングのコア技術の研究開発と産業化を強化する。
  • 国レベルのクラウドコンピューティング産業聯盟を設立する。
  • 技術標準、サービス標準、セキュリティの管理規定などを策定する。
また、工業・情報化部ソフトサービス業司の謝渡嬰副司長は、中国のクラウドコンピューティング産業はまだ発展の初期段階にあり、今後は発展計画および業界標準等の研究・策定を強化すべきと指摘していた。 クラウドコンピューティング産業について、今後、工業・情報化部は主に以下の5項目を重点とすると明らかにした。
  • 重大プロジェクトを通じて、ネットワークに対応するプロジェクト、高度化IDC等のコア技術の研究開発及び産業化を支援する。
  • クラウドコンピューティングに関するソフト技術を研究開発し、サービスの標準を研究・策定する。
  • 優位性のある企業によるクラウドコンピューティング産業チェーンの構築を加速する。
  • 国家発展・改革委員会と協力して、北京、上海、深セン、杭州、無錫の5都市でSaaS、IaaS等を推進する。
  • クラウドコンピューティング事業者をサポートする。

メディア融合

CMMB規格モバイル・テレビ、ネットワークが全国カバーへ

CMMB(China Multimedia Mobile Broadcasting)は中国独自の知的財産権を持つモバイル・テレビの規格で、「天地一体」(衛星+地上ネットワーク)で構成されたモバイル・テレビ・システムである。 全国放送の番組は原則衛星を利用するのに対して、受信の難しい地域、人口密度の高い都市部などは、UHF帯(470-798MHz)での放送を利用するという具合にすみ分ける。 また、地方放送局の制作した番組は、8MHzの幅を利用し、8~10チャンネルの視聴が可能となる。CMMBは、国土が広大でかつ人口分布のバラつきの大きい中国の実情に適したシステムだとされる。

CMMBは2007年10月に上海で試験サービスを成功させ、北京オリンピックの開催に合わせて受信端末を無料配布した試験的商用サービスを実施し、知名度アップにつなげた。 その際に使用された携帯端末は中国移動のTD-SCDMA方式のトライアル端末である。 このことから、TD-SCDMA方式を全力でサポートする政府の方針と相まって、モバイル・テレビの規格選定においてSARFTと対立していた工業・情報化部も、結局、CMMB機能つきのTD-SCDMA (注)端末にネットワーク接続許可を出さざるを得なかった。現在、移動電話端末への搭載はTD-SCDMA方式に限られており、2011年6月までの同方式の端末出荷台数は1,000万台に達した。

CMMBの運営会社として、2008年9月に中広衛星移動放送有限公司が設置されたが、2009年8月に中広伝播(CBC)に名称を変更し、ブランド名を「睛彩」とした。 2011年6月現在、CBCは31あるすべての省・直轄市・自治区に1,000以上の発射台を構築し、300以上の都市をカバーしている。CCTV-1(総合)などテレビチャンネルのほか、 中国国際ラジオ局(CRI)など四つのラジオチャンネルの視聴が可能となっている。

今後の目標については、CMMBネットワークを拡張すると同時に、コンテンツも強化するとしている。 番組コンテンツを豊かにし、地震等の災害に関わる応急放送サービスをはじめとする公共情報や生活情報を提供する。 また、コンテンツの多様化を図り、音声、動画の他、ミニブログの情報も収集・編集して放送することが計画されている。

一方、2009年1月に予定されていた衛星の打ち上げが大幅に遅れており、いまだにスケジュールが決まっていない。 打ち上げの遅れがいずれサービス全体の展開に影響が出てくることも懸念されるが、背景には、行政機関間の調整がついていない事情がささやかれている。

(注)中国独自の第3世代携帯電話方式。

FTTH網構築

通信事業者三社、ブロードバンドの高速化を図り、FTTH網の構築に取組む

通信事業者三社は、ユーザの固定ブロードバンドに対する堅調なニーズに応えるために、光ファイバ網の整備に積極的な姿勢を示している。

中国電信は念願のモバイル通信サービスの運営権を手に入れたが、現時点での事業ウェイト的には依然固定通信が大きい(固定とモバイルの売上比は78:22)。中でも特に固定ブロードバンドが大きな稼ぎ頭となっている。 今後の目標について、中国電信は2011年2月に「ブロードバンド中国・光ネットワーク都市」プロジェクトを発表した。 それによれば、今後3年間で中国南部の都市においてFTTHの接続サービスを提供し、3~5年以内にブロードバンド接続速度を現在の10倍以上に向上させるとしている。

具体的な目標として、まず、2011年に都市部においてFTTH(注)ユーザを新たに3,000万世帯増やし、総数を4,000万世帯に引き上げる。南部の都市及び県レベルの町には、すべて8Mbpsで接続でき、 70%が20Mbpsの接続速度を実現する一方、東部の大規模都市及び中部、西部の省都都市は、80%以上で20Mbpsの接続速度を実現する。 次に、2013年に南部の都市及び県レベルの町にある個人ユーザに20Mbpsの接続サービスを提供し、8,000万世帯のFTTHユーザ獲得を目指す。 さらに、2015年末に南部都市における個人、政府、企業に光ファイバの接続を提供し、FTTHユーザは1億以上の達成を実現する。

中国聯通の場合は、2010年におけるブロードバンド収入の年間伸びが約24.8%に達し、同サービスは同社にとっても一大事業分野である。 2010年末時点におけるブロードバンド加入者数は4,722万で、このうちの86.8%は2Mbpsに達する接続速度のサービスを利用し、前年に比べて3.6ポイント上昇したという。 中国聯通は今後、さらに通信速度の高度化を目指し、2011年には8Mbpsのサービスを利用できるようにするとしている。

中国移動は、かつての鉄道通信を主事業とした旧レールコムを吸収したが、固定通信インフラが不十分のため、家庭向け固定通信サービスは現時点では思うように展開されていない。 それを補うために、2010年以降、大々的な光ファイバ・ブロードバンド網構築計画を打ち出し、ブロードバンド分野での新規参入者として、中国電信と中国聯通に攻勢をかけている。 江蘇省、福建省、雲南省、湖南省など南部の省においてEPONを中心に既にFTTx網を構築し始めた。2010年には600万回線、最終的には全国をカバーする目標を掲げている。 サービスの提供として、2012年までに家庭や法人向けに2Mbps、20 Mbpsのサービス、5年後には、100Mbpsのサービスを提供可能にする。

(注)Fiber to the Home:一般家庭への通信回線を光ファイバ化し、電話、インターネット接続、デジタルテレビ視聴等のサービスを提供する。 光ファイバケーブルの終端の場所によりFTTB(Fiber to the Building)、FTTCab(Fiber to the Curb)等の方式もあり、FTTxと総称される。

大手事業者の合併・買収・国外進出

中国電信と米AT&T、戦略的提携協議を締結し、業務提携範囲を拡大へ

中国電信と米AT&Tは2011年11月、戦略的提携協議を締結し、今後、両社は両国間のデータ通信ネットワークを相互接続させ、ユーザにより質の良いWi-Fiローミングサービスを提供することで合意達成した。

両社間の事業協力の始まりは2000年まで遡る。 当時、両社及び上海市情報投資会社と共同で上海信天通信有限公司を設立し、AT&Tは中国においてVPNを含む通信サービスを提供するようになった。

2002年に、中国電信は米国に設置された事務所を子会社に昇格させ、米国通信市場の開拓も視野に入れながら、国際専用線、IDC、VPNなどを中心としたサービスを現地顧客に提供し続けた。 2010年までの同子会社の売上高は年率40%のペースで順調に伸びてきている。

今回の協議では、両社はインフラ及び資源の共同利用を通じて、コストを削減し、ユーザのサービス利用環境を改善し、各種アプリをはじめ、HDテレビ会議やクラウドコンピューティング・サービスといった市場の共同開拓も目指す。

協議に関する具体的な内容は次のとおりである。
  • 中国電信と米AT&Tは、米国における両社のデータ通信ネットワークの相互接続を行い、海外進出した中国企業に対して一体化した情報サービスを提供する。
  • 中国電信との提携を通じて、米AT&Tはネットワーク・技術・コスト等の面を見直し、多国籍企業に対してより質の高いサービスを提供する。
  • 両国外の市場を共同開拓する。
  • 双方の顧客により良いWi-Fiローミングサービスを提供する。
  • 企業間業務プロセスを簡素化し、効率化を図る。

モバイルトレンド

移動体サービス加入が1億人を突破、LTEもサービス準備が進展中

中国の情報通信分野の主管庁「工業・情報化部」(MIIT)が発表した通信統計によれば、2011年9月末現在、国内携帯電話加入者数は約9億5000万、普及率71.1%となり、 うち第三世代(3G)移動体サービス加入者は約1億200万と、1億の大台を突破した。

移動体全体に3Gが占める割合は約10.8%と、成長の途上にあるが、同年1-9月期における加入数増分5,500万は、3G加入者全体の約54%を占めるなど、2011年に入り3G市場は急増傾向にある。 また、同期の新規加入者数との比較でも、同分野全体の新規増分9,800万に対し3Gの増分は約56%を占めている。

MIITの電信研究院による分析では、3Gサービスの急速な成長の主な要因にスマートフォンの普及が挙げられている。 2011年1-9月期に中国国内におけるスマートフォン端末の生産台数は、前年比倍増の7,000万台で、携帯端末全体の22%を占めている、と報告されている。 OSとして、Android、Windows Phone、Symbian、OPhone(中国移動の独自OS)がサポートされているが、そのうち、Android OS対応のスマートフォンが全体の80%を占めている。 3Gサービス市場が潜在性を有してることに加え、中興通訊(ZTE)や華為技術(Huawei)を始めとする国内有力ベンダが1,000元端末と呼ばれる低価格帯のスマートフォン端末を投入しているところから、 スマートフォンを牽引力として、3G加入者の増加傾向は今後も続くものと見られている。

通信技術では、時分割(TD)方式による中国の独自技術の開発が進められている。 中国移動(チャイナモバイル)が、TD-SCDMA方式による3Gサービスを提供しているほか、4GのLTEに関しても、TD-LTE方式による商用サービスを2012年中に提供することを目指して、上海、杭州、南京、広州、深セン、アモイ、北京などの主要都市で試験網を構築中である。 中国移動を中心に、システムベンダーからは、華為、ZTE、大唐、ノキア・シーメンス、上海ベル、モトローラ、エリクソン、普天、烽火、新郵通の10社が、チップメーカーからは、海思半導体有限公司(HiSilicon Technologies)、創毅視訊 (Innofidei)、クアルコム、Altair、Sequans、中興微電子の6社が参加している。

試験網の構築計画は、2つの段階で進められる。第1段階は、基地局1,210局を構築、周波数は2.3GHz帯及び2.6GHz帯を利用して、TD-LTEのシングルモード・システムの運用を検証するというもので、中国移動が、2011年9月末に、TD-LTEの試験網の第1段階が終了したことを発表している。 第2段階では基地局を3,400局以上に増設し、TD-SCDMAを含むマルチモードのシステム運用を検証する予定。

中国における移動体通信加入者の状況
キャリア 加入者数(万) 1-9月期増数(万)
移動体全体 うち3G 移動体全体 うち3G
チャイナ・ユニコム(中国聯通) 18,903 3,023 2,161 1,617
チャイナ・テレコム(中国電信) 11,695 2,843 2,643 1,614
チャイナ・モバイル(中国移動) 63,352 4,316 4,950 2,246
93,950 10,182 9,754 5,477
出所:各社サイトより作成

ブロードバンド

固定ブロードバンドの高速化が加速

工業・情報化部のデータによれば、2011年末における中国の固定ブロードバンド加入世帯数は1億5,600万に達した。このうち、約84%が2Mbps以上のサービスを利用しているという。

2010年以降、固定通信分野大手の中国電信と中国聯通が相次いでブロードバンドの高速化に力を入れ始めた。 背景には、同年1月に国務院(内閣相当)が「三網融合」を加速させるための「工程表」 を公表したことで、 トリプルプレイを巡る通信と放送事業者間の競争が激化するとの見方が強まったからである。 固定通信事業者らは既存ネットワークの高速化を通じて、トリプルプレイ・サービスの本格展開に向けて布陣しようとしている。

2011年2月に、中国電信は「ブロードバンド中国・光ネットワーク都市」プロジェクトをスタートさせた。 2013年までに同社の主戦場である南方21の省・市・自治区にある都市において、最高で100Mbpsに達するサービスをはじめ、 平均では20Mbpsを上回るサービスを順次導入するとしている。2011年末現在、同地域において既に70%の世帯に20Mbpsのサービスを提供可能となった。 また、これまで同社の勢力が比較的弱い北方の各省・市・自治区においてもサービスを強化していく方針を打ち出した。 例えば、内モンゴルにおいて、2011年末現在、既に20~100Mbpsのサービスを提供できるようになっており、2015年までには、300万世帯加入の獲得を目指す。

一方、中国聯通の場合、2011年6月末時点におけるブロードバンド加入者数は5,232万で、このうちの35%は4Mbpsに達する接続速度のサービスを利用しているという。 同社は2012年に入り、ブロードバンドの更なる高速化を全国で展開すると発表した。 計画では、今後3年間、一部の重点都市では、100Mbpsに達するサービス、またその他の都市部では、10~20Mbpsのサービスを順次普及させていく。 その一環として、2012年2月から、北京での無料高速化が開始した。具体的には、512Kbpsを1Mbpsに、1Mbpsを2Mbpsに、2Mbpsを10Mbpsにそれぞれ、無料でアップグレードする。

(注)「三網融合」は、電話網、放送網(CATV)、インターネット網の三つのネットワークを統合することで、トリプルプレイ・サービスの提供を目指しているが、 制度上の統合が最大のネックとなっている。国務院は、2010年1月に、「三網融合」を加速させる「工程表」を決定した。 それによれば、まず、2010年から2012年は、放送と電気通信サービスの双方でテストを行ない、融合が円滑に展開できる政策システム及び体制メカニズムを模索する。 そして、2013年から2015年は、テストの経験を総括した上で、融合を全面的に実現するのに適応したメカニズムと体制を確立させるとしている。

国家ブロードバンド計画

固定・モバイルブロードバンド網における政府の取組み

通信分野を所管する工業・情報化部をはじめ、複数の関係政府機関(日本の省庁相当)が連名で、2010年3月に、光ファイバ・ブロードバンド網、及び3G網の整備を推進する二つの政策を打ち出した(表参照)。 名を連ねたこれらの関連政府機関から分かるように、政府は、固定及びモバイル・インフラの整備がスムーズ、かつ迅速に展開できるように、財政、税務面での支援強化にとどまらず、土地、建物利用の面からも 有利な環境が確保できるように後押ししようとしている。政府がブロードバンドの高速化に関してこれほど具体的な数値目標を打ち出したのは、今回の政策が初めてである。

表 固定・モバイルブロードバンド網の高速化促進策の概要
光ファイバ・ブロードバンド網 3G網
2010年3月17日 発表時期 2010年3月17日
工業・情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部、財政部、国土資源部、住宅・都市農村建設部、国家税務総局 関係機関 工業・情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部、財政部、国土資源部、環境保護部、住宅・都市農村建設部、国家税務総局
- 同ネットワークの整備推進は、内需拡大、成長確保、及び雇用確保の実現だけではなく、長期的には国全体の競争力向上にも重要な戦略的な意義を持つ。
- 現状では、都市、農村間の発展が不均衡で、利活用が不十分。さらに、収益性の低い農村地区におけるインフラ整備に通信事業者の積極性が欠けている。
問題意識 - 3G網の構築は3Gサービスの発展における重要な段階だけではなく、同サービスの成否にかかわることでもある。
- 現状では、基地局構築用地の選定が困難に直面し、アプリケーションサービスが不足している。
年内に、光ファイバ・ブロードバンドのポート数を8,000万か所以上に増やし、都市部の平均接続速度を8Mbps以上、農村部を2Mbps以上、オフィスビルを100Mbps以上に引き上げる。 今後3年間に1,500億元以上を投じ、新規ユーザ5,000万の獲得を目指す。 目標 年内に、すべての地方都市、大部分の県、郷・鎮、主要高速道路、観光地等をカバーできるように3G網を整備し、投資総額は4,000億元、基地局数は40万以上の達成、1億5,000万の3Gユーザ獲得を目指す。
- 各関係機関を通じて所管分野内での調整を求める。
- 一定の条件を満たした企業に対して税制優遇措置を与える。
- 関連製品・サービスを「国家自主創新製品リスト」と「政府調達用自主創新製品リスト」にリストアップする。
- 既存の「村村通電話」プロジェクトや、その他の農村の情報化推進政策などの進行もあわせて進める。
- 電子政府、医療、都市管理等分野での普及を促進する。
- 研究開発への投入拡大を強化する。
- 事業者間相互接続の関連措置を改善し、インフラの共同建設・利用の改善を図る。
主要措置 - 各関係機関を通じて所管分野内での調整を求める。
- 一定の条件を満たした企業に対して税制優遇措置を与える。
- 認定されたTD-SCDMA製品・サービスを「国家自主創新製品リスト」と「政府調達用自主創新製品リスト」にリストアップする。
- 行政の情報化及びeビジネスにおいてのTD-SCDMAを初めとする3G技術の利用を奨励する。
- 重点プロジェクト、技術改造専用資金等の利用を徹底する。
- 事業者間相互接続の関連措置を改善し、インフラの共同建設・利用の改善を図る。
出所:発表政策を基に作成

特に、光ファイバ・ブロードバンド網整備の目標実現について、工業・情報化部は他の関係機関からの協力を呼びかける一方、 既存の「村村通電話」プロジェクトや、その他の農村の情報化推進政策などの進行もあわせて進めるようにしている。固定ブロードバンド網の整備は都市部に限定されず、 広大な農村地域まで大掛かりに拡大しようとしている狙いが伺える。 一方、3G網については、現時点では比較的経済発展が進んでいる地域に限定し、3方式(TD-SCDMA、W-CDMA、CDMA2000)(注)あるネットワークのうち、 中国政府が威信をかけて育成してきたTD-SCDMA方式を手厚く支援する姿勢は変わらない。

(注)いずれも第3世代携帯電話(3G)方式の一つ。 「符号分割多元接続」(CDMA)と呼ばれる無線通信の技術標準に基づく。TD-SCDMAは中国独自の仕様である。CDMA2000は北米、W-CDMAは日本及び欧州で主に用いられている。

ICT利活用

電子政府事業の促進

電子政府の建設は、国家情報化推進の重点項目として進められてきた。 その中で、1990年代以降、中央政府主導の下、「三金プロジェクト」と呼ばれる、「金橋」(経済情報プロジェクト)、「金関」(税関ネットワーク化プロジェクト)、 及び「金カード」(電子マネープロジェクト)が進められてきた。

2006年3月に国家情報化リーダー・グループが「国家電子政務の総体枠組み」を発表した。 その中で、「第11次5か年規画」期間(2006~2010年)における電子政府の発展目標として、2010年までに、全国レベルで相互接続のできるネットワークを基本的に完成し、 管理体制を一層整備し、50%以上の行政許認可手続をオンラインに切り替え、オンライン・サービスの利用による行政コストの削減を実現し、監督・管理能力や公共サービスの質を高めるとしている。

また、2006年5月、国務院の発表した「2006~2020年国家情報化発展戦略」においても、電子政府の推進が取り上げられた。 中央と地方が協力し、多種の技術手段が互いに結合する電子政府の公共サービスの体系を徐々に構築すること、電子政府の公共サービスが町内、コミュニティとルーラル地域への延伸の推進を重視すること、 サービス内容を徐々に増やし、サービス範囲を拡大させ、サービスの質を高めることによって、サービス型政府の建設を推進するとの方針が示された。

最新の5か年規画に当たる「第12次5か年規画」では、同規画期間中(2011~2015年)において、電子政府建設の更なる発展を推進するとしている。 特に、重点は各部門が独自に構築したネットワーク間の相互接続、及び業務の高度化に置かれる。

デジタルコンテンツ振興

コンテンツ資源・生産・伝播手段のデジタル化を中心とした2015年までのデジタル・コンテンツ振興策について

中国共産党中央弁公庁、国務院弁公庁は2012年2月に「国家第12次5か年規画期間中における文化改革・発展規画綱要」を発表し、デジタル・コンテンツの振興に関する具体的な措置を示した。

同綱要には2015年までの文化改革・発展に関する10大目標が掲げられている。 例えば、ケーブルテレビ、直接放送衛星、通信網といったコンテンツの伝送手段の世帯普及率を50%に高め、国民のコンテンツに接する権益を保障することや、デジタル・コンテンツのデータ総量を530TBに引き上げることなどが含まれている。

目標の実現に向け、九つの重点プロジェクトが明記されている。コンテンツのデジタル化建設プロジェクトがその一つである。 同プロジェクトは、コンテンツ資源のデジタル化、コンテンツ生産のデジタル化、及びコンテンツ伝播手段のデジタル化の三つの部分に分かれている。

コンテンツ資源のデジタル化は、具体的に、デジタル技術を用いて、共産党の歴史文化資源の修復・整理、放送機関が保有するドキュメンタリーや国産映画の修復・保存、国家知的資源および全国文化遺産のデータベースなどの建設、 デジタル図書館・博物館・美術館、さらに少数民族文化資源のデジタル化などが対象となっている。

コンテンツ生産のデジタル化は、具体的に、デジタル・コンテンツの生産、転換、加工プラットフォームの設立、伝送網の整備をはじめとする携帯など各種端末用のデジタル・コンテンツの提供システムの構築、アニメやネットゲーム、 デジタル書物の発展、3D視覚産業の育成、デジタル印刷の発展などを指す。

コンテンツ伝播手段のデジタル化の内容は、具体的に、ケーブルテレビのデジタル化転換、次世代放送網の建設、地上デジタルテレビやモバイルテレビのカバー範囲の拡大、通信ブロードバンド網の建設、国家デジタル図書館の整備、出版物のデジタル化などとなっている。

放送・メディア政策

SARFT、海外テレビドラマ・映画の輸入及び放送管理をいっそう強化へ

放送分野を司る国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は2012年2月9日、「海外テレビドラマ・映画の輸入及び放送に関する管理を強化する通知」を発表した。 海外テレビドラマ・映画の輸入審査や、輸入後及び放送時間等に関する管理を強化する方針を改めた。

海外テレビドラマ・映画(以下「海外作品」)の輸入に対する審査を強化する。 SARFTは、毎年1月及び7月の1~10日に海外作品の輸入に関する申請を受理する。 高画質の海外作品の輸入を優先し、ドラマは原則50話以内のものとする。

輸入された海外作品の契約延長に対する管理を強化する。 輸入された海外作品について、SARFTによる「テレビドラマ発行許可証」の期限が切れた後、関連契約を延長するためには、省レベルのSARFTの出先機関を通じてSARFTの許可を取得する必要がある。 SARFTは、各四半期の最後の1ヶ月間に関連作品に対して審査を行い、許可証を再発行する。

輸入された海外作品の放送への管理を強化する。 海外作品は、ゴールデンタイム(19:00-22:00)に放送してはならない。 1日に放送する海外作品は、同日に放送するすべてのテレビドラマ・映画作品の4分の1以下にする。 また、海外作品を紹介する番組についても、1回当たり引用できる海外作品は3分間以内、累計で10分間以内に制限する。

なお、上記通知は、公表日から施行され、あわせて、既存の関連規定が廃止されることになる。

第12次五か年規画(2011-2015)期間中、直接放送衛星方式による「ラジオ・テレビ戸戸通プロジェクト」を推進へ

放送を全国に行き届かせるために、国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は1998年より、「ラジオ・テレビ村村通」プロジェクトを進めてきた。 第11次五か年規画が終了した2010年末時点において、目標とおり、20世帯以上の電気の通った自然村におけるラジオ・テレビの開通が実現された。

これを受け、SARFTは2011年9月に、第12次五か年規画(2011-2015)期間中における同プロジェクトの実施対象を主に20世帯以下の電気の通った自然村にし、 「村村通」から「戸戸通プロジェクト」の推進に切り替えると発表した。そのために導入されたのは、直接放送衛星公衆サービスである。

2011年4月より、寧夏、内モンゴル、河北省の農村部において、直接放送衛星公衆サービスの試行が開始し、40系統以上のラジオ・テレビ番組の視聴の他、 緊急放送の受信、総合情報の取得、電気通信などの利用もできる。 具体的には、テレビ番組の場合は、16系統のCCTV番組、1系統の教育テレビ番組、1系統の省内衛星テレビ、および7系統の少数民族言語の番組の受信が可能で、 またラジオの場合は、計17系統の番組の受信ができる。 さらに、セットトップボックスには移動電話の通信機能が内蔵されており、電話としての利用も可能となっている。

同期間中の目標として、2015年までに、電気の開通している20世帯以下の自然村のすべてをカバーする予定である。 具体的には、2011年内にCATVが開通していない郷・鎮(県以下、行政村以上の行政区画単位)で直接放送衛星の受信設備のサービス拠点を設け1,000万世帯をカバーし、 2012年に累計5,000万世帯、2013年に1億世帯、2014年に1億5,000万世帯、2015年に2億世帯をカバーする。

周波数関連政策

工業・情報化部、電波管理の第12次五か年規画(2011-2015)を発表

工業・情報化部は2011年6月30日に、電波管理に関する第12次5か年規画を発表した。 規画には、第12次5か年規画期間(2011-2015)における目標、任務及び重点プロジェクトについて、下記のように示されている。

【目標】
  • 電波の周波数及び無線局に対する管理能力を高め、重点地域をカバーする電波の監測・記録システムを構築し、全国の周波数及び無線局に関する情報の完成度及び正確さを95%以上にする。
  • 重点とする無線業務の電磁環境適合性を分析するとともに、短波及び衛星に対する監督を強化する。超短波の固定監視局のカバー率を現在の15%から50%に引き上げる。
  • 関連人材を育成し、電波管理従事者の学歴水準を引き上げる。
【主な任務】
  • 電波の周波数割当計画及び衛星軌道の分配を総括的に策定する。
  • 電波管制、特に緊急事態時の電波管制の計画を策定する。
  • 無線局に対する管理を強化する。
  • 周波数割当に関わる協力及び国際的な協力を強化する。
  • 電波管理の基礎研究を強化する。
  • 民用・軍用電波への管理の融合を推進する。
  • 無線産業の持続的な発展を誘導する。
【重点プロジェクト】
  • 電磁環境適合性分析システムの構築
  • 電波管理システムの情報化
  • 短波監視ネットワークの更新
  • 衛星監視ネットワークの更新
  • 無線設備の測定システムの構築
  • 国家電波管理技術の検証プラットフォームの構築
  • 超短波監視ネットワークの構築
  • 衛星による電波監視データの転送ルートの構築