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一般財団法人マルチメディア振興センターでは、ICT分野の発展に資することを目的として、ICT分野の政策・制度整備、市場開拓・拡大、技術発展、社会での利活用といった視点からテーマを設定して、調査研究を行っています。主要な研究テーマについては、研究報告書としてとりまとめています。
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2017.10.01

  • 最新研究
  • 坂本 博史

シンガポール新・情報通信基本計画「Infocomm Media 2025」に向かう情報通信産業の趨勢

本調査研究は、前年度FMMC自主研究「シンガポール情報通信基本計画「iN2015」による情報通信産業への経済的影響(以下、前年度調査研究)」と併せ、副題である「シンガポールにおける情報通信市場の競争環境、同産業の成長率、波及効果、生産性に関する分析」を実施するため、2か年計画で実施された調査研究である。

 シンガポールでは2006年度から2015年度まで、第6期情報通信基本計画「インテリジェント・ネイション2015 (intelligent Nation 2015 : iN2015)」が実施された。なお、iN2015の経済政策的含意は「次世代情報通信インフラストラクチャの構築」及び「情報通信分野における高度職能育成」を通じた生産性の向上により、「主要経済部門の構造変化」を生じさせ、情報通信産業における付加価値額の増大をもたらすことであった。

したがって、本調査研究では、当該期間におけるシンガポールの情報通信市場及び情報通信産業に関する経済指標を調査、分析し、同計画の経済政策的成果を定量的に把握することを目的とした。なお、調査により得られた結果は以下の通りである。

(1)N2015により構築された「次世代全国ブロードバンド網(NGNBN)」は、「固定ブロードバンド市場にFTTHを主流とする市場環境」をもたらした。加えて、「固定ブロードバンド市場における市場集中度の低下」も生じ、シンガポールにおけるブロードバンドの可用性は十分に拡大した(第1章)。

(2)iN2015により実施された、中小企業対象の施策である「ビジネスモデル支援プログラム」や「人材開発プログラム」は情報通信産業の生産性向上に影響しなかった。iN2015全期間を通じて「情報通信機器産業」、あるいは「情報通信サービス産業」内の「通信・放送・出版」部門では高い労働生産性が維持されたが、大部分が中小企業で構成されている「ITサービス」部門では労働生産性は停滞し続けた(第2章)。

(3)主要経済部門のひとつでもある「情報通信産業」自体では、iN2015後半期にあたる2013年に「情報通信サービス産業」の実質付加価値額が「情報通信機器産業」の同額を初めて上回り、サービス産業が主導する産業構造への産業シフトが進展している。また、クラウド事業等を含む「情報サービス」部門が最大の高成長部門となり、新興部門が影響力を高める事態が生じた(第1章)。

(4)2005年と2013年を対象とした産業連関分析の結果、「情報通信機器産業」及び「情報通信サービス産業」の双方に生じた需要増加に基づく、経済波及効果額は両年とも微額であり、産業別構成比についても両年の数値に明確な違いはなかった。つまり、同期間においては、情報通信産業とその他産業との関係性に変化は乏しく、両年の間で情報通信の需要増加によって経済全体の産業構造が変化したとは言い難い(第3章)。

なお、第4.章は上記の定量調査の結果を取りまとめた、本調査報告の結論である。

 また、第5章では2015年8月より開始された、iN2015に代わる新たな情報通信基本計画「インフォコム・メディア2025(Infocomm Media 2025: ICM2025)」を概説する。新計画ICM2025は、iN2015の「専門性の高い人材開発」により「情報通信産業の生産性を向上」し、「経済的、社会的な構造変化」を誘発するという基本ヴィジョンを継承しつつ、2010年台後半に生じている5G、ビッグデータといった情報通信分野の技術革新を反映して、新たな戦略目標を設定している。
加えて、第5章ではICM2025の戦略目標について、前年度及び本年度調査研究にかけて実施した定量調査の結果を反映させ、同目標あるいはICM2025自体の有する経済政策的含意について展望し、2年間にわたる本調査研究の結語としている。